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VOL.2-8  2000年8月

「奥多摩の夏緑広葉樹林」
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 東京都西端に位置する雲取山の山麓から山腹の一部には、おもに落葉広葉樹からなる原生林が残存している(写真1)。以下に示すのは、東京都高尾自然科学博物館を中心とした調査の結果である。


  

(写真1)                   (写真2)


 標高1400m付近では、斜面中部から尾根筋にかけてはミズナラ・イヌブナ・シナノキ・ブナなどの大径木が多い(写真2、3)。写真2の太い木がミズナラ、写真3の幹はブナである。最も太いミズナラは、直径1.2mに達していた。 夏緑広葉樹林帯の自然林の代表としてはブナ林がよく知られているが、太平洋沿岸から内陸部にかけての範囲では、ブナはあまり優勢でない場合が多く、ミズナラやイヌブナなどが優占する場合が多い。この林でも、ブナの分布は尾根に近い緩斜面の一等地に限られている。谷筋ではシオジやサワグルミといった樹種がよく成長し、樹高30m以上に達している(写真4)。  最近、各地でシカによる植物への食害が問題にされるようになっている。この林でもシカが多く、5年前には生きていたウラジロモミの若木は、樹皮を一周全部食べられたため枯死してしまった(写真5、中央)。ウラジロモミの樹皮はシカが好んで食べることが知られている。そのほか、各地で冬季にササが食べられることが報告されているが、ここでは昨秋まで青々としていたスズタケが、たった一冬の間に大方食べ尽くされてしまった(写真5の中央後部)。


    

(写真3)            (写真4)            (写真5)    


   <写真撮影 磯谷達宏、2000年6月19日>

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