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VOL.4-05  2002年05月

滋賀県愛東町のWOFプラント
※写真が多いので、電話回線での閲覧は時間がかかります。
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 天ぷらや炒め物等に使う食用油.あまり気にせずに排水口へと捨てている人も多いと思うが,大さじ一杯の食用油の浄化には風呂桶10杯の水が必要といわれている.
 そこで,この廃食油を回収し再利用する取り組みが行われてきた.これまでは石けんへのリサイクルが多かったが,現在では廃食油をバイオディーゼル燃料(BDF)として利用することも始まっている.しかも,この廃食油リサイクルは,食用油を地元で菜の花を栽培して作り,食用に使った廃油をリサイクルへ,という地域資源とその地域内利用による資源循環型の地域づくり(「菜の花プロジェクト」)へと広がりをみせ,その活動が全国各地でみられるようになってきている.

 この「菜の花プロジェクト」の「本家」といわれるのが滋賀県愛東町である.愛東町では琵琶湖の赤潮発生(1977年)をきっかけとして,廃食油の回収と石けんへのリサイクルが行われてきたが,石けん使用率の低下から,廃食油の新しい利用の道として滋賀県環境生活協同組合と連携し,1995年からBDF燃料化への取り組みがなされてきている.1996年には廃食油燃料化プラントが稼働し,現在,町の公用車4台がBDFを燃料としている.

写真A 写真B

 写真A.これが愛東町のWOF(Waste Oil Fuel)プラント.愛東町の資源回収ストックヤード(リサイクル・ゴミの集積所)内に設置されている.
 愛東町ではプラントのことをWOFプラントというように,BDF(Bio Diesel Fuel)も定まった訳語はなく,バイオ燃料,バイオディーゼル,軽油代替燃料,廃食油再生燃料などとも呼ばれる.用語の不統一さは取り組みが始まったばかりであることを示しているともいえよう. 
 写真B.プラントといってもそれほど大きいものではない.ひとつの機械といった方がわかりやすい.
 

写真C 写真D

 写真C.プラントとプラント責任者(撮影当時).といっても愛東町役場の職員である.月数回,通常業務の合間に訪れてプラントを作動させているとのこと.
  写真D.廃食油100リットルにメタノール20リットルと触媒(水酸化カリウム)800グラムを加えて数段階の処理を行う(プラントがほぼ自動でする)と100リットルBDFが生産される.
 ペットボトルの一番右側が廃食油.触媒反応後,黄色の粗オイルと茶色のグリセリンに分解される(右から2番目).粗オイルを水で洗浄し,水を静置分離と高温処理によって脱水することでBDF(1番左)になる.BDFはエンジンの改造なく,そのままディーゼルエンジンの燃料として利用できる上,硫黄酸化物を含まない,黒煙排出量が減少する(軽油の1/3以下)などの特徴がある.
写真E 写真F

 写真E.BDFで走る公用車.「廃食油リサイクル燃料で走っています」とのステッカーが見える.改造はしていない.BDFでも軽油を使った場合と車の性能等に違いはないが,さすがにゴムパイプなどの腐食は軽油よりは若干早いとのこと.
 写真F.公用車なので街の宣伝が扉にある.京都市では全てのゴミ収集車と一部の市バスにBDFが使用され,その利用が広がりつつある.

 ここではWOFプラントのことだけを扱ったが,「菜の花プロジェクト」全般については,http://www.biwa.ne.jp/~econavi/ に詳しいので,そちらを参照されたい.

【参考】 菜の花エコライフネットワーク・菜の花プロジェクトネットワーク準備会「Hello ! 菜の花プロジェクト」(パンフレット:パンフの内容も上記HPに含まれている)


(写真A〜F:いずれも2001年5月,経済地理学会大会巡検にて,加藤幸治撮影)


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