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VOL.6-12  2004年12月

ルーマニア:首都ブクレシュチとトランシルバニアの街

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 ルーマニア語は南東ヨーロッパでは唯一のラテン系の言語として知られています。概して暗い感じの国が多い東ヨーロッパの中で、何となく陽気で華やいだ雰囲気があるのは、やはりラテン系民族の国だからでしょうか。首都のブクレシュチ(ブカレスト)は20世紀初頭には「小パリ」と呼ばれるほど華やかな街だったのですが、現在は凱旋門(写真1)にその名残を見ることができる程度で、当時の面影はほとんど残っていません。それというのも第二次世界大戦後独裁政権の座に着いた共産党の手によって古い教会や伝統的な建物はことごとく破壊されてしまったからです。その結果、歴史あるブクレシュチの町並みはすっかり単調なものになってしまい、かつての小パリはこれといった見所のない平凡な首都になってしまいました(写真2)。唯一の観光名所といえば、1965年以降権力の座に着いたチャウシェスクが贅を尽くして建設した巨大な宮殿(写真3:しかし名称だけは「国民の館」という皮肉なもの)くらいのものです。
 

写真1 写真2 
 しかし、地方にはまだまだルーマニアらしい素朴な町や村がいっぱいあります。とくに日本人にもよく知られているのは、中部の山岳地帯にあるトランシルバニア地方でしょう。ルーマニア第二の都市でもあるブラショフはこの地方の中心で、中世以来の町並みがあちこちに今も残る美しい都市です(写真4:トランシルバニア最大の教会である「黒の教会」)。この街の近郊には「吸血鬼ドラキュラ」のモデルとなった「串刺し王」ヴラド3世の居城として有名なブラン城があり、多くの観光客が訪れます(写真5)。
写真3 写真4
 また、トランシルバニア山脈の北端に位置する古都シビウは、12世紀ドイツ人によって開かれ、ヘルマンシュタットというドイツ語名も持つ落ち着いた雰囲気の街です。ルーマニアはラテン民族の国であるにもかかわらず、宗教はスラブ系の正教会系なのですが、この街の中心部には典型的なバロック様式のカトリック教会が建てられています(写真6)。
写真5 写真6
 もう一つこの地域で忘れてはならないのは、近年世界遺産に登録されたシギショアラでしょう。2時間もあれば廻れるほどの小さな山間の町ですが、まさに古き良き時代の中世のヨーロッパが、豊かな自然とともにそのまま残されたかのような印象を受ける美しい街です(写真7)。              
写真7


(撮影:1997年、内田順文) 
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