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VOL.6-10  2004年10月

「エコ・ツーリズム,エコ・ミュージアムの風景−ニュージーランド・ワイマング火山渓谷−

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 団体見学旅行に代表されるマス・ツーリズム(mass tourism)は,観光行動の成熟化や環境への関心とともに環境負荷が懸念されたことから,見直されるようになってきている.その「オルタナティブ」(alternative)として注目されるのが,エコ・ツーリズム(eco tourism)である.
 エコ・ツーリズムやその他,似たような意味で使われる言葉(グリーン・ツーリズム,ソフト・ツーリズム,農村ツーリズムなど)を厳密に定義しようとすれば,それだけで講義が成立するだろう.ここでは,さしあたりエコ・ツーリズムを「自然環境を観光対象にした,相対的に環境負荷が相対的に小さい観光行動」というような意味で考えておこう(なお,これらオルタナティブ・ツーリズムと呼ばれるものの定義や性格の検討,現実の取り組みなどについては,2003年12月13日・国士舘大学地理学会における横山秀司先生の講演が参考になる.インターネットでもその講演が配信されているので,興味ある人は以下にアクセスされたい:なお,当教室のHPの「地理・環境専攻写真帖」のNo.49からもアクセス可能です).http://libw01.kokushikan.ac.jp/data/001588/main/Chiri2003_files/default.htm

 とはいえ,そのイメージは実際行ってみた・体験してみたという人でないと把握しにくいこともある.そこで,今月はニュージーランドのエコ・ツーリズム・アワードを何度も受賞している,ワイマング火山渓谷(Waimangu Volcanic Valley)を紹介したい.ここは自然そのものを観察する博物館でもあり,その点でエコ・ミュージアムの一例ともいえよう.

 写真Aは入り口の看板.受賞について詳しく書いてある.写真Bはワイマング火山渓谷の唯一の建物といってもいいビジターセンター(他に途中にトイレはあります).中に展示等は基本的になく,事務所と土産店,レストランがあるだけ.
 博物館の全長は約4km.番号案内の看板をたどりながら,自然観察をしていく.写真Cは看板1の「パノラマ」と呼ばれるポイント.奥の池から蒸気が上がっているのが見える.ワイマングは1886年,それまで全く火山活動の兆しのなかった丘陵地帯が突然大噴火したところ(1886年6月10日).それが現在のような姿に再生した様子などを観察しながらのハイキングになる.写真Dのように案内は親切で迷うことはない.
 


写真B
写真A  
写真C 写真D

 写真Eは先ほど蒸気をあげていた池.フライパン湖と呼ばれている.平均水温55度の世界最大の温泉湖だ(こうした解説は入場口でもらえるパンフレットに書いてある.看板番号ごとに見所が書いてあるので理解しやすい.英語だけでなく,日本語,ハングル語など,数カ国語の解説パンフレットがあるようだった(私も日本語パンフレットをもらいました)).
 写真Fは歩道の様子.左は車道.行きは徒歩,帰りはバスというのが一般的な観察パターン.バスで往復したり,途中2カ所(折り返し地点も入れれば3カ所)あるバス停から乗ったり,途中で降りたりできるので,お年寄りやハンディキャップのある人も観察しやすいようになっている. 

写真E 写真F
写真G 写真H
 写真Gは露頭の観察ポイント.パンフレットに地層解説もあって,それを参照しながら観察ができる.写真HとIはポイント26の「温泉噴出口」.歩道と車道は,写真Fのように完全に分かれている上,しかも少し離れていることが多い.ちょうどポイント26の上をバスが通っているところ(写真H).この温泉噴出口では,耐熱性の異なる藻類や地衣類が噴出口から同心円状に並び,模様のようになっている光景が見られる(写真I)
 博物館の終点はロトマハナという湖(写真J).ススキのように見える植物はニュージーランド原産のトイトイという植物.ロトマハナ湖では小さな船でクルーズも楽しめる(写真K).船にはトイレがない.これも環境への配慮からかと思われる(このくらいの船だとそのまま流すことが多いので).
 最後はマイクバスで戻ります(写真L).入り口までは20分ほどです.
写真I 写真J
写真K 写真L

 <写真A〜L:2004年2月,加藤幸治撮影>
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