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VOL.7-07  2005年07月

「オーストラリアを代表する世界遺産:ウルル=カタ・ジュタ国立公園」

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 一般に世界最大の一枚岩として知られるエアーズ・ロックは、かつてのオーストラリア植民地の総督の姓からつけられた名前で、地元に住む先住民(一般にはアボリジニと呼ばれる)たちからは、古くよりウルル(日陰)と呼ばれていました。この岩の周辺一帯は国立公園に指定されて一切の開発が禁止されており、ここを訪れる観光客はウルルより約30km離れたエアーズロック・リゾートを拠点として観光することになります(写真1)。

<写真1 エアーズロック・リゾートより見たウルル >

<写真2 遊歩道(マラ・ウォーク)より >

 ウルルの周囲は約9kmで、山裾をたどる遊歩道が付けられており、雨水の浸食によって作られたゴルジや、アボリジニの描いたロックアートを見学しながら岩の回りを一周することもできます(写真2)。しかし何といっても魅力的なのは「登岩」でしょう。毎日朝になると、多くの観光客たちがこの世界一の岩に登頂しようと登岩口に集まってきます(写真3)。ウルルの地上からの高さは348m(海抜高度は867m)、頂上までの道のりは1.6kmと、たいした距離ではありませんが、途中には結構険しい崖登りなどがあり、昼間は大変な高温になることから、これまで5人が滑落や熱射病で登岩中に死んでいるとのことです。頂上に登れば、眼前に広がるのは一面真っ平らな大地(アウトバック)で、日本では絶対に見ることができない、地平線の丸みを実感することができます(写真4)。

 

<写真3 ウルルの登岩口 > <写真4 ウルル岩上から見た風景

 この写真の左側に地平線を乱している岩の固まりが、この国立公園のもう一つの中心となるカタ・ジュタ(ジ・オルガス)です。知名度ではエアーズロックのほうが圧倒的に有名ですが、実際に現地へ行くと、その大きさといい異様なかたちといい、こちらのカタ・ジュタのほうがよっぽど印象的です(写真5)。

 もう一つエアーズロックといえば、夕陽に染まる岩の美しさでも有名です。夕方になるとすべての観光客がサンセット・ビューという展望地に集まり、手に手にカメラを持って日没までのわずか数分のドラマを待ちます。運がよければオレンジ色から赤へ、さらに深紅から紫色へと刻々変化するウルルの姿を見ることができます(写真6)。

<写真5 カタ・ジュタ <写真6 夕陽を受けて赤く色づくウルル

  このようにウルルとカタ・ジュタは世界的に有名な観光地であり、すでに1950年代より観光開発が始まったのですが、しかしこの地はそのずっと以前より先住民アボリジニの最大の聖地であり、いわばわれわれ観光客は彼らの先祖代々からの聖地に土足で足を踏み入れ、ましてやエアーズロック登岩に至っては彼らの神聖な山を汚す行為であることを知らなくてはいけません。じじつ、観光化を快く思わない先住民も多く、オーストラリア政府に対してウルルを含む土地の返還を求めた法廷闘争の結果、この地域における彼らの所有権が確認されています。1987年、この地域が世界遺産として登録されるにあたり、自然遺産としてではなく複合遺産として指定されたのも、また白人による通称である「エアーズロックとオルガス」ではなく「ウルルとカタ・ジュタ」の名で登録されたのも、この地が紛れもなくオーストラリア先住民固有の文化的な歴史遺産であると認められたからにほかなりません。

                                                   (内田順文 撮影:1998年)


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