Back Number をみる

VOL.9-2  2007年2月

「モンサンミッシェルの景観」
※写真が多いので、電話回線での閲覧は時間がかかります。
このページは、1024×768以上の画面でごらんください。画面が小さいと写真の配列位置がこわれます。

 世界遺産・モンサンミッシェル.海に浮かぶ修道院として有名であり,名前だけでは分からなくても,一度は写真等でその姿を目にしたことはあるはず(写真A).
 島に入ると,そこは要塞のようでもある(写真B).世界中からの観光客と一緒に路地や階段を進んでいく(写真C).途中のゲート(修道院そのものの入口)で入場料を払い,さらに進む(写真D)と,修道院の中心部(写真E)へと進むことができる.

 東京周辺の人に分かりやすいようにいえば,ちょっと小振りの江ノ島という感じである.ただし,モンサンミッシェルは西暦700年頃から,増築・改築が繰り返されて,ようやく現在の形になったものである.したがって,建物の場所によって,建築年代だけでなく,建築様式も異なっており,それを観察することは,さながらヨーロッパの建築史を辿るようでもある(ちょっとオーバーかもしれないが……).実際,構造はかなり複雑で,モンサンミッシェル自体が研究の対象であり,フランスの文化庁(にあたるところ)で研究員として活躍する日本人の方もいる(写真F:モンサンミッシェルを正しく理解してほしいということで,もう1組の方々と文字通りボランティアで、日本語で案内をしてもらいました).
 ところで,本来,満潮時には海に浮かぶ修道院であったモンサンミッシェルも「陸地化」が進行し,満潮時でも海に囲まれることが少なくなってきた.その最大の要因は,本土とモンサンミッシェルを結ぶ堤防とされる.かつては鉄道も敷かれていたが,現在は駐車場として利用されている(写真G).この堤防が潮流を堰き止めることから,土砂の堆積が進んでいる.このままでは干潟の中の島(写真H)どころか,草原の修道院になることが懸念され,2006年からは,写真Gの堤防と駐車場を取り壊し,代わりに,連絡橋をかける工事が始まった.写真Iは計画案内のパンフレットからの図.堤防を橋にし,駐車場を図の下方(青い部分)に移動,川に堰も作って水流を調節しようという計画である.計画通りにいけば,写真Jのように,干潟に浮かぶ島になりつつあるモンサンミッシェル(中央)が,海に浮かぶ修道院(右下)に「戻る」予定である.
 観光客には不便になることから,反対がなかった訳ではないようである(詳しくは,朝日新聞,2006年8月24日などを参照).とはいえ,「海に浮かぶ修道院」として維持することが,長期的には観光地であり続けることになる.「持続可能な」観光開発というコンセプトが浸透しているがゆえに,こうした計画が指示されるといえるであろう.
 最後に,モンサンミッシェルへの行き方を紹介します.

 パリからバスでの1日ツアーもありますが,列車でも行けます.パリからTGVでレンヌへ行きます(写真K:レンヌ駅).ここからTGVの時間にあわせてバスも出ます(バスで約1.5時間;乗り場は北側出口の右側にあるバスターミナルの裏側。案内等が明確でなく少しわかりにくい).また,ローカル線(写真L)に乗って,Pontorson(ポントルソン)まで行って,そこからバス(約15分)という方法もあります.ポントルソン(駅の正式名称はPontorson-Mont-Saint-Michel)は小さな駅(写真M).世界遺産の最寄駅とは思えない駅前です(写真N).ついでに,フランスの田舎を見るという上では,ローカル線経由もお勧めです.


A B
C D
E F
G H
I J
K L
M N

<写真A〜H,K〜N:2005年8月,加藤幸治撮影.写真I・J La Baie: Journal de l’ operation 13, Dec. 2003より引用>
資料:朝日新聞,2006年8月24日(ここにはあげてない図もあって分かりやすい)

今月の地理写真バックナンバー