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VOL.10-06  2008年6月

インドの鉄道を旅する

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 広大なインド亜大陸には、6万キロ以上の鉄道路線が走っています。近年は主要な都市を結ぶ幹線を中心に電化が進んでいると聞きますが、私がインドを訪れた20年前には、都市部でもまだまだ蒸気機関車が現役でたくさん走っていました(写真1、写真2)。
<写真1>アーグラーFort駅に到着 <写真2>ティルチラパッリ、カーヴェリー河川鉄橋を渡るSL

 かつてイギリスやフランスの植民地だった国のターミナル駅の例に漏れず、大都市のターミナル駅は、ヴィクトリア時代の大英帝国を彷彿とさせる巨大で豪壮な造りとなっており、歴史と威厳を感じさせます(写真3、写真4)。

<写真3>ボンベイ(ムンバイ)・ヴィクトリア・ターミナス駅前 <写真4>マドラス(チェンナイ)・セントラル駅

 しかしながら、どこの鉄道でもそうですが、幹線をはずれたローカル線の列車にこそ旅情があることが多いものです。一般に北インドはこすっからく気が抜けないのに対し、南インドは基本的におおらかでのんびりしているというのが定説ですが、鉄道についても同じことが言えそうです。写真5~7は、そんな観光メインルートではない旅の中での一コマです。

 ところで、インドの列車すべてに共通する不思議な特徴として、写真5を見るとよくわかりますが、どの車両の窓にも必ず鉄格子が取り付けられている点が挙げられます。この頑丈な鉄格子は、せっかくの車窓風景を眺めるのに邪魔になるため、はた迷惑なのですが、おそらくこれは窓からの乗り降りや盗難を防止するために付けられてものと思われます。たしかに一部列車の殺人的な混み具合を見ると、鉄格子は必需品なのかもしれません。ちなみにエアコン車(冷房付きの車両をこう呼び、料金も冷房なしとは異なる)だと窓が曇りガラスのはめ殺しとなっていて、全く外の景色が見えません。しかも、同様のことは熱帯の国の列車やバスによくあることですが、冷房は総じて利きすぎる傾向にあり、何時間も乗っていると凍えることも稀ではありません。

<写真5>マドラス~コーチン間の途中の小駅で <写真6>カルカッタ~プリー間の途中の小駅で

  さいごに、おそらくラージダーニ急行と並んでインドで最も有名な鉄道、ダージリン・ヒマラヤ鉄道についても触れておきましょう。標高2134mの高原都市ダージリンから低地に位置するニュー・ジャルパイグリまでの87kmを、トイ・トレインと呼ばれる蒸気機関車牽引のミニ列車が8時間半もかけて(しかもしばしば遅れる)走ります。軌間61cmの狭軌鉄道で、1999年には世界遺産にも登録されました(写真8)。とにかくのろのろ走るので、自動車や自転車はもちろん、走っている人間より遅く、何度となく道路を横切るたびにいちいち道路の車を止めるのには驚きましたが(写真9)、途中3つのループと10あまりのスイッチバックがあり(写真10)、さすがに世界でも有名な鉄道路線の一つであることは実感できます。終点のニュー・ジャルパイグリは何もない乗換駅で(写真11)、著名な避暑地でもあるダージリンからここまで降りてくると、再び暑いインドに戻ってきたと実感させられます。

<写真7>バンガロール~マイソール、とある田舎で臨時停車

<写真8>ダージリン・ヒマラヤ鉄道
<写真9>道路と並行して走るダージリン鉄道 <写真10>ダージリン鉄道、バタシア・ループ
<写真11>終点のニュー・ジャルパイグリ駅

<写真1~11,1986年 内田順文 撮影>


                                              

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