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VOL.12-05  2010年5月

水の都:ヴェネツィアは歩くに限る

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 サンクトペテルブルク、アムステルダム、蘇州、大阪・・・と、水の都と呼ばれる都市は多いですが、やはり「水の都」といえば、ここヴェネツィアが第一でしょう。水上都市ヴェネツィアの起源は、5~6世紀頃外敵の進入を避けるために干潟(ラグーナ)に定住した人々に遡ると言われます。以降数百年以上にわたり、深い泥の層が堆積したアドリア海の干潟に、人工の都市が建設されてきました。驚くべきことに、ヴェネツィアの街を構成する建物は、干潟の泥中に打ち込まれた大量の丸太の杭を土台としているのです。
写真1:鉄橋を渡ってヴェネツィアへ
写真2:朝霧にかすむサンタルチア駅前の大運河
 ヴェネツィア・ミストレ駅を出た列車は、すぐにアドリア海へ伸びる鉄道橋を渡りはじめ、海上をゆっくりと直進した後、ヴェネツィア・サンタルチア駅に到着します(写真1)。頭端式の駅舎を出ると、そこが大運河で、水上バス(ヴァポレット)や水上タクシー(モトスカーフィ)の乗り場が並んでいます(写真2)。まずはヴァポレットに乗って大運河を縦断し、島の反対側にあるサン・マルコ広場へと向かいましょう。船着き場を降りるとそこはドゥカーレ宮殿前の広場(写真3)。かつてヴェネツィア共和国の総督が住み、立法・行政・司法の中枢だったドゥカーレ宮殿の隣りに見える巨大なクーポラ(丸屋根)がサン・マルコ寺院です(写真4)。このあたりはヴェネツィア最大の観光名所で、ハイシーズンの夏に行くと、観光客でひしめいています。この有名な聖堂の正面に広がるのが、これまた有名なサン・マルコ広場です(写真5)。広場にそびえ立つ大鐘楼には登ることができます(有料)。ここに登ると平坦なヴェネツィア市街が一望の下に眺められるのでお勧めですが、人気のスポットなのでとにかく混んでいます。シーズン中は長い行列待ちになることを覚悟してください(写真6)。

 
写真3:ドゥカーレ宮殿より、サン・マルコ運河の船着き場 写真4:ドゥカーレ宮殿とサン・マルコ寺院
写真5:サン・マルコ広場と鐘楼
 写真6:鐘楼からの眺望
 さて、ここからは島内を歩いてみましょう。意外かもしれませんが、ヴェネツィア本島内では自動車やバイクを見かけることはありません。ヴェネツィアの街は大小無数の運河によって分断され、それらは階段の付いた橋で結ばれ、各家は迷路のように入り組んだ細い路地によって繋がっているため、自動車はおろか自転車ですら移動することは不可能だからです。1932年に完成した、鉄道橋と並行して走る自動車用道路の「リベルタ橋」が島とイタリア本土を結ぶ唯一の道で、終点のローマ広場までしか自動車の乗り入れはできず、島内や島同士の連絡にはヴァポレットやモトスカーフィが用いられています。したがって島内をくまなく観光するには、自分の脚で歩くしかないのです。
写真7:路地裏には洗濯の花 写真8:リアルト橋と大運河
写真9 サン・マルコ運河とサン・ジョルジョ・マッジョーレ島 写真10: アカデミア橋より、大運河とサンタ・マリア・デラ・サルーテ教会
 最初は島のほぼ中央に位置し、ヴェネツィア発祥の地でもあるリアルト橋をめざします。一応分かれ道には行き先案内があるのですが、右へ曲がったり左へ曲がったり、人一人通れるくらいの狭い道を通ったり、いくつもの橋を渡っているうちに、おそらく道に迷ってしまいます(写真7)。それでも行き止まりの道はあまりありませんから、試行錯誤を繰り返しているうちに、何となく歩く人の数が多い方へと向かっていると突然前方が開けて大運河に行き当たります。おそらくそこがリアルト橋です(写真8)。こんなかんじで小一時間も迷路をさまよっていると、だんだん方向感覚が定まり、最短距離を歩くコツのようなものがわかってきますから、自信がついたら自分の脚で島内を探検してみましょう。徒歩でしか見ることのできないさまざまな風景を発見することができるはずです(写真9・10・11)。

写真11:月夜に浮かぶフラーリ教会 <写真1~11:内田順文 撮影>

                                              

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