Back Number をみる

VOL.12-10  2010年10月

山口県東部を流れる錦川の中~下流部の景観

※写真が多いので、電話回線での閲覧は時間がかかります。
このページは、1024×768以上の画面でごらんください。画面が小さいと写真の配列位置がこわれます。

※写真や画像の引用に関する問い合わせは、こちらのリンク先ページをご覧下さい。


 中国山地を源流として山口県岩国市にて瀬戸内海に流出する錦川は、山口県では最も規模の大きい河川である。今回は、この錦川の中~下流部の様子を紹介したい。

写真1 上流部に近い雙津峡温泉付近 写真2 雙津峡温泉駅に停車中の「とことこトレイン」牽引車
写真1は、上流部に近い雙津峡(そうづきょう)温泉付近の様子である。これより数km下流の錦町(にしきちょう)付近にて、数本の大きな支流が合流する。この雙津峡温泉から錦町駅にかけて、観光用遊覧車(トロッコバス)が走っており、通称「とことこトレイン」と呼ばれている(写真2、3)。
写真3 雙津峡温泉駅に停車中の「とことこトレイン」の車両 写真4 「とことこトレイン」の「きらら夢トンネル」中の蛍光石による壁画
「とことこトレイン」は、正式には「岩日北線記念公園内遊覧車」と呼ばれる。これは、かつて計画されていた岩日北線(がんにちきたせん)の路盤を活用してタイヤで走る遊覧車である。かつて岩国駅から山口線の日原駅(島根県)までの開通が計画されていた岩日線は、国鉄時代に岩国駅から錦町駅まで開業されながら、北半分に相当する岩日北線部分の路盤工事が終了した段階でストップしてしまった。「とことこトレイン」は、この幻の岩日北線の路盤を錦町駅から雙津峡温泉駅まで6kmほど活用して運行されている。この遊覧線の錦町駅寄りには「きらら夢トンネル」があり、その一部の600mほどの区間では蛍光石を用いた美しい壁画を楽しむことができる(写真4)。このような「とことこトレイン」は、かつての鉄道施設を活用した地域振興の事例として注目されている。
写真5 錦川清流線の車両(錦町駅 写真6 錦川中流部

 かつて国鉄の岩日線として営業されていた岩国~錦町間は、今日では第三セクターの錦川鉄道(株)により、錦川清流線として営業されている(写真5)。上述の「とことこトレイン」の営業主体でもある錦川鉄道は、この種のローカル線の経営主体としては赤字幅が小さく、2010年の段階では存続が認められている。写真6は、錦町駅よりも少し下流側で錦川清流線の車窓より撮影された、錦川中流部の様子である。

写真7 錦川中流付近の尾根筋に発達するアカマツ林 写真8 錦川中流部はなだらかな中国山地を下刻している

 写真7と8も、錦川清流線の車窓より撮影されたものである。写真7は、かつては中国地方の山地の多くを占めていたアカマツ林が、尾根筋に限って残存している様子である。今日でも一部のアカマツは松枯れ病によって枯死しつつあるようである。しかし、ライバルとなる樹種が生育しにくい尾根筋では、残存したり芽生えから再生したりしたアカマツによって、アカマツの優勢な林分が形成されているようである。写真8は、なだらかな中国山地が刻まれてできた広い谷底部に水田が発達している様子である。

写真9 錦帯橋付近では鵜飼いを楽しむことができる 写真10 錦川下流の今津川から上流方面を望む

 錦川が山地から岩国平野に流出するあたりに、有名な錦帯橋がある。写真9は、夏に営業されている鵜飼い見物の遊覧船から撮影された、夜の錦帯橋の様子である。錦川は、錦帯橋の3~4km下流で分流し、きれいな形の三角州となって瀬戸内海に注いでいる。写真10は、この三角州の北側を流れる錦川の分流(今津川)の岸(寿橋付近)から、上流方向を写した様子である。このあたりは、江戸時代には錦川と瀬戸内海を結ぶ水運業の拠点として栄えていた。

<写真1~8:2010年8月22日,写真9~10:2009年8月23日,磯谷達宏 撮影>


                                              

今月の地理写真バックナンバー