VOL.12-09 2010年9月
「沖縄で見てきた人工海岸」
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この夏(2010年)に、ちよっとすごいものを見てきたのでその写真を紹介します。 沖縄の辺野古に住む旧知の方との約束をはたすため、那覇に住むお互いの知り合いも誘って、久しぶりに沖縄の北部やんばる(山原)へ行ってきました。沖縄の海は自然でいっぱいと思いがちですが、1985年の段階でさえ沖縄本島の海岸の30%は人工海岸になっていました(中村高一, 1989, 沖縄島における海岸の人工化と海浜地形変化, 沖縄地理, 2, 13-22)。1972年の復帰時に県全体の90%だった沖縄の自然海岸が70%まで減少しており、本土の二倍の速さで自然 海岸が減っている一方、コンクリート護岸は四倍の速さで増えている(沖縄タイムス 1999年12月4日)ということです。この報道から10年、事態は急速に変化しているようです。 |
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写真1 アダンの木 これは海岸で見かけたすごいものではありません。沖縄の海辺ではごく普通に見られる植物で、海岸砂丘に生えている植物の代表格の一つです。沖縄が初めてという人に、「これが自然のパインアップルだよ」というと「ホントかいな」という顔をしながらも「ウソでしょう」と強く言う人はあまりいません。本土に住んでいる限り、「パインアップルがどんなふうに育っているのか見たことがない」のはあたりまえでしょう。アダンは芯の部分を柔らかく煮付けていただくこともありますが、太いカンピョウのような、あるいは柔らかいタケノコのような食感で私は特に美味いとはおもいません。ただ、けっこう好きだという人もいます。 |
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写真2 名護市東江(あがりえ)海岸の人工リーフ | 写真3 防波堤に掲げてあった「東江海岸整備工事の完成予想図」のカンバン 人工リーフはなぜかほとんど見えないように薄く描かれている |
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那覇空港から、高速道路に乗って一時間北にあがると名護市です。この高速道路は平日も無料なので、ずいぶん高速道路の交通量が増えました。沖縄自動車道の料金所渋滞を初めて経験しました。それはさておき、最初の写真は名護市の中心地にほど近い東江(あがりえ)海岸です。人工リーフという工法そのものは目新しいものではなく、日本各地で見ることができると思います。ここでは、コンクリートのブロックを丁寧に組み立てて造られています。同行した人の話では、沖縄ではテトラポッドが露出しているのは景観上よろしくないということで、各地でテトラが撤去され代わりに人工リーフが造られているのだそうです(写真6,7)。東江では、埋め立て地に造成された市街地の先の護岸の沖に人工海浜を造り、そのさらに沖に人工リーフを沈めています。波は人工リーフで砕けて砂浜に影響を及ぼさないという考えでしょう。突堤の間のポケットビーチの砂は、遠方から運び込まれた海砂です。すばらしい景観が創成されたという人と、みっともない造形物を税金をかけて造ってくれたと非難する人がでるのは当然のことでしょう。あなたはどう思われますか? |
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写真4,5 辺土名海岸の得体の知れないオブジェ | |||||
国頭村(くにがみそん)の東シナ海側の辺土名(へんとな)に大きな砂州があり、先端の赤丸岬との間に陸繋島をつくっています。砂州の北側の浜辺は漁港が造られてから沿岸流の動きが変わったらしく、海岸侵食が激しくなったそうです。その様子を地元の大学の先生の案内で見に行きました。オクマビーチという米軍の保養施設に由来する古くからのリゾートがある反対側の海岸です。案内者が「いつの間にかこんなものが置かれている」とびっくりしたのがこれです。写真ではうまく伝わりませんが巨大です。サンゴ礁の岩に似せたつもりなのかもしれないが明らかに人工物。しかもこの海に置く目的がわからない。ここには三列の沈水ビーチロック(板干瀬ともいう海浜砂岩)があり、地形レッドデータブックに載せても良いようなものが見られる場所です。奇妙な物体は、たぶんこの近傍に置かれています。直上でないことを祈るばかりです。 | |||||
写真6 安田(あだ)集落の前に広がる人工リーフ | |||||
古き良き沖縄を残すいわれた国頭村安田(くにがみそん あだ)の集落も、いまではカラフルな屋根が見られるようになりました。少し前(2006年)に訪れた時には無かったものがこれです。ここでも“見事に”人工リーフが造られていました。せめてコンクリートに造礁サンゴが着床して覆い隠してくれればいいのですが。それでも奇妙なサンゴ礁の景観になることにかわりはないでしょう。 | |||||
写真7 2006年3月の安田 2006年に安田で撮影した写真です。のちに人工リーフが設置されることになる少し陸側に、テトラポッドの防波堤が造られていました。人工リーフとテトラポッドのどちらが見栄えがよいか?? 見かけの悪さは似たようなものではないでしょうか。 |
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写真8、10は、国頭村の楚洲(そす)集落を守るために造られた巨大な壁です。この沖にサンゴ礁の浅瀬があり、波はその先で砕けていることが写真8でわかります。行政としては、何十年に一度の大波から、この集落を守らねばならないということでテトラポッドの壁を造ったのでしょうか。集落の有力者から出された強い要請が行政を動かしたのだそうです。反対する人はいたのだそうですが、狭い集落の中では正面切って言えなかった という話しを聞きました。道路に沿って護岸堤防、テトラの壁、サンゴ礁と、この集落は三重の守りでもうこれは完璧?。 | |||||
写真8 楚洲(そす)集落を“守る”巨大なテトラポッドの壁というか、ほとんど山です | |||||
写真9.「海岸保全」に、海岸の「景観」の保全は含まれないようです。 |
写真10.ここでは、海岸に降りると海が見えません |
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(写真は2010年8月、2006年3月に長谷川均撮影) |