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VOL.13-12  2011年12月

「島根県大田市波根付近のランドスケープ

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 島根県大田市(おおだし)は、世界遺産に登録された石見銀山のある市として知られている。今秋、3年生の野外実習にて、大田市東部(松江・出雲寄り)の波根付近を調べる機会があった。磯谷ゼミでは各地の農山漁村地域にて動植物の生態地理に関する野外実習を行っているが、波根付近も、海あり農村あり里山ありのよい調査地であった。今回はこのような波根付近のランドスケープのいくつかを紹介したい。なお、この付近で行われた磯谷ゼミの野外実習の画像は、次のサイトでご覧いただけます。
http://bungakubu.kokushikan.ac.jp/chiri/HPphoto/20111025_28島根大田市磯谷/newpage1.html

 

写真1 山陰本線波根駅における各駅停車の行き違い

写真2 クロマツが似合う波根駅の駅舎
 JR西日本山陰本線の波根駅は、松江・出雲の西方、大田市駅からは二駅ほど出雲市寄りにあるローカル駅である(写真1、2)。波根駅は日本海からすぐの場所にある。小さいながらもクロマツの似合うきれいな駅舎があり、テレビドラマの撮影にも使われたとのことである。

写真3 波根駅前の様子

写真4 波根駅近くからの海岸風景

 写真3は、旅館の看板が目立つ波根駅前の通りの様子である。景色のよい波根の海岸付近は、古くからの海辺の行楽地であり、今日でも日本海の眺望のよい宿が立ち並んでいる。写真4は、波根駅に間近の海岸から北東方向を見渡した様子である。写真右側にはオーシャンビューの素晴らしい旅館が立ち並んでいる。左手に見えるのは、波根のシンボル、立神岩と立神島である。

写真5 立神岩の間近にある波根東漁港

写真6 立神島と立神岩

 写真5は、立神岩に守られるように広がっている波根東漁港の様子である。写真6は、立神島のクローズアップ写真である。立神岩と立神島では、露出した砂岩・泥岩・凝灰岩の互層がきれいな縞模様を見せている。立神島の上部にはクロマツの生立木も見られるが、最近になって枯れた様子のマツも少なからず認められる。
   
写真7 アカマツが再生する里山 写真8 かつての波根湖の干拓地
 写真7は、波根の海岸から3kmほど山側にある標高約150mの里山の様子である。尾根に近いこのあたりでは、伐採等の撹乱があった跡地において、広葉樹と競い合いながらもアカマツの若木が元気に成長していた。写真8は、波根駅の南西側に広がる平野部を見渡したもので、手前がセイタカアワダチソウ群落(水田放棄跡地)、奥が水田地帯となっている。一面の沖積平野のように見えるが、実は、今日でも水田として利用されている一帯は、昭和18年までは波根湖という海跡湖があった地域である。かつての波根湖は、昭和18年から昭和25年頃にかけて行われた干拓事業によって消滅したとのことである。山陰本線は、かつての海跡湖を海から隔てていた砂州の上を通っており、写真1~4は全てこのような砂州の上にて撮影されたものである。
   
写真9 イノシシ対策の板で守られた畑 写真10 イノシシ捕獲用の檻
 波根駅から1kmほど南にある大西地区では、イノシシ対策の頑丈な板で守られた畑(写真9)やイノシシ捕獲用の檻(写真10)がみられた。近年ではイノシシ被害の拡大に伴いこのような光景は日本の農村の広い範囲でみられるようになっているが、この大西地区では最近は大きな被害はないようであった。
   
写真11 ジュンサイが生い茂るため池 写真12 ヒシが生い茂るため池
 写真11は大田市波根付近、写真12は太田市富山町で撮影された、ため池の様子である。近年では水田の減少に伴いため池も減少しているが、残されているため池で水草を観察してみたところ、生い茂っている水草は、写真のようにジュンサイやヒシといった食用になるものばかりであった。聞き取りはできなかったが、食用の水草が栽培されているものと推測される。
写真13 大田市役所の庁舎 写真14 道の駅「ロード銀山」にて
 写真13は、1982年に完成した大田市役所の特徴ある庁舎の様子である。「活力ある田園都市づくり」を推進するイメージが込められているとのことであるが、その甲斐あってか、石見銀山が世界遺産に登録されたのであった。道の駅「ロード銀山」においても、銀山のイメージを生かした地域振興が行われていた(写真14)。
<写真1~14:2011年10月25~28日,磯谷達宏 撮影>
                                           

                                              

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