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VOL.13-10  2011年10月

陸に上がったパヤオ

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 数年前のこと、沖縄のとある漁港の集会場で地元の海人(うみんちゅう=漁師)の方々と楽しく語らっていた夜のこと。そのうちのお一人が同行の若い人に「これからパヤオに連れて行ってやる」「どのくらいかかりますか?」「行き帰りと仕事で二日」・・・。といような会話をしていた。本人は行きたがったが、その時のボスのひとこと「ダメだ」で実現しなかった。
 パヤオ とは大仕掛けな浮き魚礁のことである。フィリピンでの呼称を踏襲して日本でもこのようによぶ。海底にチェーンで固定された構造物で、流木や流れ藻に小魚が集まりそれを狙って大きな魚が集まる習性を応用してつくられた漁場である。沖縄県では宮古地方で1980年代はじめに設置されて以降、多くのパヤオが利用されている。
 写真1は、2010年に沖縄本島中部の名護市で撮影したものだ。このパヤオは、ニライ14号といい伊平屋島の西方に設置されていた。ところが、2009年3月に固定していた鉄製のチェーンが切れて漂流してしまったという。回収して陸に揚げてから見物にいった。何がすごいって、付着した生物の多さ。見ていて飽きない(写真2~5)。これは良い教材になる、きっとうまく活用されるんだろうね などと語らいながら一緒に見に行った地元の方々と感心しながら見物した。
 一年後の写真がこれ(写真6)。とてもステキな休憩所に生まれ変わっていて、「感心」した。「使い方を知らないなぁ」と誰かが言った。その通りと私も思う。帰ってから調べてみると、沖縄県のホームページにこんな記載がある「今後は、当浮魚礁ニライ14号が名護漁港のシンボル的存在となり、漁業に対する市民の関心と理解を深めることに繋がると考え、水産業及び漁港周辺の活性化に寄与するものと期待される」。こんなものに化けてしまうと、そうなると良いですね としかいいようがないのであります。せめて海に沈めてやれば良かったのに  というのは、私のきわめて個人的なおもい。

 

写真1 名護港に仮置きされたニライ14号

写真2 造礁サンゴ

写真3 フジツボのなかま

写真4 石灰分を分泌するさまざまな生物が着床していた

写真5 これはコケムシのなかま

写真6 一年後の姿「漁業に対する理解と関心に貢献」できると良いのだが・・・・

写真1~5 2010年8月、写真6 2011年9月 長谷川均 撮影 

                                           

                                              

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