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VOL.14-01  2012年01月

「万里長城を歩く:金山嶺から司馬台へ

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 万里の長城といえば、月から見ることのできる唯一の建造物と言われ(どうもこれは俗説のようですが)、東は渤海に臨む山海関(秦皇島市)から西はゴビ砂漠のただ中にある嘉峪関まで3000kmあまり、総延長では約8000kmにもなる世界最長の城壁として有名です。一般に長城を観光するとなると、北京から最も近い(といっても60kmほどありますが)八達嶺長城が有名ですが、ここはあまりにも観光客が多く、近年おおいに俗化しているため、今回はより知名度の低い(しかし景勝的には勝るとも劣らない)金山嶺長城を紹介します。なお、万里長城は1987年に世界遺産として登録されています。

 

写真1 京承高速道、金山嶺トンネル

写真2 金山嶺長城入口
 金山嶺長城は、北京中心部から東北へ150kmほど、北京とこれも世界遺産に登録されている避暑地承徳とを結ぶ京承高速道沿いに位置しています。京承高速は金山嶺の直下を長大トンネルで抜けているのですが(写真1)、その先に金山嶺長城旅遊区への分かれ道があって、しばらく進んだところにある旅遊区の入口で門票(50元)を払い入場します(写真2)。長城は尾根に沿って走っているので、ここから谷沿いに100mほどの高度を登り、碾垜 (ばんだ)口から長城の城壁へ取り付きます。写真3は、その碾垜口から西を望んだところで、ここからがいわゆる金山嶺長城となり、その先に司馬台長城がつづきます。長城は尾根沿いに連山の上り下りを繰り返しながら延々と繋がり、だいたい各ピークごとに望楼が造られています(このあたりは写真7を見るとよくわかる)。それぞれの望楼には、黒楼・将軍楼・四方台といった名が付けられ、簡単な解説板も置かれています(写真4)。

写真3 西方台より、碾?楼と庫房楼

写真4 各望楼に設置されている解説板

 碾?口からかなりきつい坂を上り詰めると、そこに庫房楼という復元された大きな望楼があり、再び下り坂となります(写真5)。沙嶺口を過ぎると上り坂になって、黒楼・小金山楼・大金山楼とさまざまな形の望楼が連続し、見所の一つとなっています(写真6)。小金山楼へは麓からロープウェイが通じており、この周辺は長城が最もよく修復され、金山嶺長城ではいちばん観光客が多いところです。大金山楼からはしばらく緩やかな坂道がつづくのですが、それも后川楼まで。ここから長城は急峻な坂道となり、一気に100m以上の高低差を登るために、これまで歩いてきた金山嶺長城の全貌が眺望できるようになります(写真8)。とくに拐角楼から将軍楼への最後の急坂は45度以上の傾斜があるうえに未整備で、かなりのスリルを味わえるでしょう(写真9)。

写真5 沙嶺口より、西域楼・庫房楼

写真6 小金山楼

 
   
写真7 小金山楼より、大金山楼 写真8 拐角楼より、金山嶺長城全景
 
   
写真9 拐角楼から将軍楼への急坂 写真10 将軍楼より、長城と京承高速
この坂を登りきると一気に視界が開け、東西につづく金山嶺~司馬台長城を見渡せるだけでなく、京承高速道が自分の真下を通過していることにも気付きます(写真10)。ここからは司馬台長城へ向かって単調なアップダウンがつづくのですが、今回はその途中の麒麟楼までで引き返すことにしました。ここからは、険しさで有名な司馬台長城のピークである望京楼、その手前の仙女楼もはっきりと見ることができます(写真11)。ちなみに仙女楼から先は数年前に転落事故が発生したために、現在は閉鎖されているようです。
   
写真11 麒麟楼と司馬台長城、仙女楼・望京楼
(2010年9月 内田順文撮影)
                                           

                                              

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