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VOL.14-11  2012年11月

  「小江戸」:その1―川越・栃木―

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 関東地方および東海道筋に「小江戸」と称しているいくつかの町がある。現在の観光ガイドブック等では「江戸の風情のある古い町並みを残している町」を「○○の小江戸」などと呼ぶようであるが、「小江戸」という言葉は昔からあり、川越がその代表であったようである。1996年から開催されている「小江戸サミット」に参加しているのは、埼玉県川越市・栃木県栃木市・千葉県香取市佐原であり、その参加条件として 1)江戸との舟運で栄えた町であること 2)蔵のある町並みが存在すること 3)山車の出る祭りがあること を挙げている(松崎2010)。またこのほかに、千葉県大多喜町・静岡県磐田市掛塚・滋賀県彦根市が「小江戸」と称しているという。
 今回は上記3市のうち、川越と栃木を取り上げ、次の機会に佐原を取り上げたい。
   

写真A

    写真B
  写真Aは、川越の蔵造りの町並みで、1999年に重伝建地区に選定された。この町通りは、近世川越城下町の札の辻を起点とする城下町の中心的な町屋であるが、蔵造りの町並みが形成されたのは明治26年(1893)の大火からの復興によるものである。写真Bは、重伝建地区選定される前の1991年の町並みである。まだ電線が地中化されていない。
 
   

写真C

   

写真D

 写真Cは、栃木の蔵造りの町並みで、現在重伝建地区選定に向けた取り組みが行われている。近世栃木町の日光例幣使街道の宿場町に当たる町屋で、蔵造りの町並みが形成されたのは幕末期の大火の後といわれている。写真Dは、2001年の同じ町並みである。既に電線の地中化も行われており、現在とほぼ同じ景観となっている。栃木市では10年以上前から、歴史的町並みの景観保全に力を注ぎ、景観形成地区を設定して修景を行っており、必ずしも重伝建地区選定のみを目指すのではない独自の手法を展開してきた。
   
 写真E     

写真F

 写真Eは、栃木の岡田記念館前の町並みで、今年(2012年)重伝建地区の選定を受けた。蔵造りの町並みに連続する街道筋であるが、近世は嘉右衛門新田という村方である。岡田記念館とは旧代官の岡田嘉右衛門家の屋敷遺構である。写真Fは、2001年の同じ町並みである。道路がカラー舗装されていない程度でやはり現在と同じ景観である。この地区の電線の地中化はこれからである。
   
写真G
    写真H
 写真Gは川越城下町の現存する数少ない遺構の一つである川越御殿である。本丸御殿はシンボル的な天守とは異なり、実際の政務が執られたり、大名自身の生活空間であった建物であるが、現存しているところは少ない。市外に移されていた建物も移築して近年復元が進められた。写真Hは江戸と結んで荷物や木材を運んだ巴波川水運旧栃木河岸の2001年の景観であるが、やはり現況と変わらない。
   
(参考文献として松崎憲三編2010『小京都と小江戸』岩田書院/写真A・Gは2011年10月、Bは1991年1月、C・Eは2012年10月、D・F・Hは2001年10月、いずれも岡島 建撮影)
                                           

                                              

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