VOL.16-02 2014年02月
「熊野古道:中辺路の風景」
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いわゆる熊野古道は、平安時代の貴族が熊野詣でと称し、畿内から熊野三山へ向かった、古代~中世の参詣道です。2004年、高野山や吉野などとともに「紀伊山地の霊場と参詣道」としてユネスコの世界遺産に登録されました。熊野古道は、一般に紀伊路、小辺路(こへち)、中辺路(なかへち)、大辺路(おおへち)、伊勢路の五つに分けられるようですが、今回はそのうちの中辺路を紹介します。 |
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写真1 牛馬童子像 |
写真2 継桜王子、とがの木茶屋 | |
熊野古道はその名の通り山道です。その行程の多くは峠越えのアップダウンの繰り返しで、場所にもよりますが、足元が悪い場所も多く、いわゆる山歩きになります。しかし、近年の世界遺産ブームとともに訪れる人は増え続けているようです。そういった熊野古道ブームの中で、最も有名なポイントの一つが牛馬童子像でしょう。高さ30センチほどの素朴な石像ですが中辺路を代表する名所となっています(写真1)。ここからいったん日置川の谷を渡って再び山道をたどったところに、継桜王子(つぎざくらおうじ)があります(写真2)。 | ||
写真3 継桜王子、野中の清水 | 写真4 中川王子 | |
王子とは、いわゆる神社(祠)であり、熊野の修験者たちによって儀礼が行われ、熊野詣での参詣者たちも参拝したと考えられています。継桜王子の直下には野中の清水という、日本名水百選にも選ばれた湧水があります(写真3)。さらに鬱蒼とした山道を進むと、中川王子を過ぎ(写真4)、日当たりの良い斜面をたどりながら小広峠を越えます(写真5)。 | ||
写真5 熊野古道より小広峠を望む | 写真6 発心門王子 | |
中辺路の目的地である熊野本宮の神域の入口となるのが、発心門王子です(写真6)。ここから水呑王子、伏拝王子を経て、本宮へと降りていきます(写真7)。途中、古道を少し外れた展望所からは、大斎原(おおゆのはら)と熊野川が遠望できます(写真8)。 | ||
写真7 伏拝王子・祓殿王子間の熊野古道 | 写真8 ちょっとよりみち展望台より大斎原と熊野川 | |
熊野本宮から先、中辺路は那智山熊野那智大社を経て、新宮の熊野速玉神社へと向かいます。那智山には熊野那智大社と並んで西国三十三所第一番札所の西岸渡寺があり、ここから眺める那智の滝は絶景として知られています(写真9)。ここから那智山を下るのが大門坂で、熊野古道の雰囲気をよく残している場所として有名です(写真10)。坂を下りきると海岸まで那智川沿いに下っていきますが、途中立ち寄る市野々王子などに、鄙びた風情を感じることができるでしょう(写真11)。 | ||
写真9 那智山西岸渡寺、三重塔と那智大滝 | 写真10 那智山、大門坂 | |
写真11 市野々王子 | ||
<2013年10月 内田順文撮影> |