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VOL.17-12  2015年12月

  近接リモートセンシングの世界

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 ここのところネガティブなイメージばかりが先行するUAV(ドローン)ですが、国士舘大学地理学教室では、ブームになる前からこれを飛ばしています(写真1)。ただ、2015年12月以降は、DID(1平方キロあたり4000人以上の人口がある 写真2)域内で飛ばすには、国交省の許可が必要になるし、許可を取って飛ばしていてもきっと誰かが警察に通報して面倒くさいことになるでしょうから、都内で飛ばすのはほとんど無理になってしまいました。ドローンは必ず落ちますから、必要な措置だったとは思いますが、飛ばす側からすれば、広い河川敷は大目に見てほしかったところです(図1)。
 UAV(Unmanned aerial vehicle)の大半はマルチコプタとよばれる4発程度の電動モーターで飛ぶヘリコプタです。高速で回転するプロペラが、ハチの羽音に似ているのでドローン(Drone)とよばれます。もともとラジコンヘリの操縦は、極めて難しいといわれています。ところが、三軸ジャイロやGPSが小型化し、飛行安定化装置とよばれるマッチ箱みたいな大きさの装置が、3万円ほどで供給されるようになったおかげで、一気にUAVは普及しました。いまでは自作もできるほどです。
 市販のUAVとPC間で通信できるようにすれば、PCで作ったルートに沿って写真を撮ることができます。写真5~8は、10万円ほどの機体(Phantomという中国製の趣味用マシン)を改造してオートパイロット化した機材で撮影しています。PCで標定図を描いてやれば、その通りにUAVを飛ばせて一般のデジタルカメラで空中写真を撮影することができるようになるわけです。100m上空から撮影した写真の解像度は1ピクセル当たり2.5cm程度で十分実用な解像度を持っています。
 さらに、空中写真をならべて地表の凹凸を点群として捉え、自動的に位置や高さの求めることができるソフトが開発されました。この結果をGISソフトに渡せば、等高線も描けるのです。このようにして作成した地形図の精度は驚くほどよくて、三次元レーザーで作成した地形図との誤差はほとんどありません。
 また、カメラを近赤外カメラなどに積み替えれば植物活性度などを簡単に測定できることになります。このような技術を近接リモートセンシングとよびます。
写真1 ドイツ製のUAVファルコン 8つの電動モーターを備える  写真2 地理院地図で表示したDID
写真3 ファルコンのオートパイロットソフト 写真4 サンゴ礁を撮影した可視画像
写真5 沖縄本島北部海岸を撮影した際のUAVの撮影位置と接合写真 写真6  写真5のエリア内を拡大したオルソ写真
写真7 三浦半島城ヶ島の離水ベンチの地形図と地形断面図 等高線は10cm間隔 写真8 長野県白馬村に出現した地震断層の空撮画像と地形図、地形断面図 等高線は10cm間隔
写真1~8 長谷川均

                                    


                                              

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