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VOL.17-06  2015年06月

  明治日本の産業革命遺産:三井三池炭鉱の産業遺産

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 先月、政府が世界文化遺産へ推薦していた「明治日本の産業革命遺産 九州・山口と関連地域」について、国際記念物遺跡会議(イコモス)による記載勧告が届き、日本で19番目の世界遺産リスト登録へ向けて大きく前進しました。「明治日本の産業革命遺産」はこれまでの日本の世界遺産と比べて、世界遺産を構成する資産が広い範囲に分散していることが特徴となっていますが、これは「連続性のある資産」(シリアル・ノミネーション・サイト)として登録を目指したためです。今回は「明治日本の産業革命遺産」の中から、福岡県大牟田市と熊本県荒尾市にまたがる三池炭鉱関連の産業遺跡を紹介します。
 三池炭鉱は、室町時代に地元の農夫が石炭を偶然発見したことに端を発し、江戸時代中頃から採炭が始まりました。1873(明治6)年三池炭鉱は官営となり、1889(明治22)年には三井組に払い下げられ民営化され、以後三井鉱山の中心鉱山として明治~戦後の日本のエネルギー産業の中核を担いました。

 
           
    写真1:三池炭坑宮原坑跡 写真2:三池炭坑万田坑跡  
     宮原坑(みやのはらこう)跡は、三池炭鉱に9つある主な坑口のうち5番目に作られたもので、三井組が三池炭鉱を国から払い下げを受けた後、初めて自ら計画・開発した坑口です。我が国現存最古の鋼鉄製の櫓である第二竪坑櫓と巻揚機室が残っています(写真1)。万田坑(まんだこう)跡は、宮原坑跡に続き開削された坑口で、かつては日本最大級の炭鉱施設でした(写真2)。炭鉱施設と設備関係が国内で最も良好な状態で残っています(写真3)。なお、1998年に宮原抗跡と万田抗跡は国の重要文化財に指定されています。  
     
写真3:三池炭坑万田坑跡、内部  写真4:三池炭坑宮浦坑跡
 宮浦坑跡は、1887(明治20)年に開坑した坑口で、三池炭鉱の主力坑として約4,000万トンの石炭を産出しました。煙突は、ボイラー排煙施設として1888年に建造されたもので、現在は国登録有形文化財となっています(写真4)。宮浦大斜坑は1924(大正13)年に揚炭開始。実際に使用されていた昇降用の人車が展示されています(写真5)。
     
     
    写真5:三池炭坑宮浦坑跡、大斜坑跡  写真6:三池炭坑宮浦坑跡より見た三池炭鉱専用鉄道  
 三池炭鉱専用鉄道は、官営三池炭鉱時代の1878(明治11)年に馬車鉄道として使われ始め、その後蒸気鉄道化すると、線路は次々と延長され、勝立坑や宮原坑、万田坑などをつなぎ1905(明治38)年には三池港まで線路が敷設され、現在の専用鉄道敷の全体像がほぼ出来上がりました(写真6)。一時期は地方鉄道として旅客輸送も行われましたが、石炭鉱業の衰退とともに縮小され、1997(平成9)年の閉山以降は、三井化学内を走る一部の路線を残して炭鉱に関わる路線は廃止されています(写真7)。
         
         
    写真7:三池炭鉱専用鉄道跡  写真8: 三池港  
  三池港は、1898(明治31)年ニューキャッスルやリバプールなど各地で港湾施設や積込方式を視察し帰国した團琢磨らにより企画され、1902年に着工、1908(明治41)年に竣工しました(写真8)。これにより船渠内では1万トン級の船舶の荷役が可能となり、三池港まで延長された炭鉱専用鉄道と一体となって、坑口から鉄道さらには港まで一貫した石炭運搬が可能になりました。三池港近くにある旧三井港倶楽部は、三池港に入港した外国高級船員の宿泊や接待の場所、また政財界人の迎賓館として、三池港開港と同時に完成した洋風建築物です(写真9)。2007年には経済産業省の近代化産業遺産に認定されています。敷地内には、1857 (安政4)年近代技術によって初めて開かれた大浦坑が1926 (大正15)年に閉坑した際、これを記念して團琢磨の手による碑が移築保存されています(写真10)。
       
       
写真9:旧三井港倶楽部    写真10:大浦坑遺跡と團琢磨銅像
           
       (2005年8月 内田順文撮影)    

 

                                    


                                              

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