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VOL.17-04  2015年05月

  香川県さぬき市付近のランドスケープ

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 3年生の野外実習で香川県さぬき市とその周辺地域を見て回る機会を得たので、その特徴的なランドスケープについて紹介したい。

 
           
    写真1:第87番札所の長尾寺 写真2:長尾寺前の民宿  
     四国では地域景観の要素として、お遍路さんが巡る寺院とその周辺の宿舎等からなる町並みが特徴的である。写真1は、さぬき市の中央部付近に位置する87番目札所の長尾寺の様子である。境内の巨木はクスノキである。札所は88番目の大窪寺(長尾寺の南約25km)までなので、順を追ってきた巡礼者にとっては、ここからが最後の行程となる。長尾寺の周りにも何軒かの宿がある(写真2)。お遍路さんが泊まる宿には料金の割にとても居心地の良いものが多いが、これも積年の文化によって築かれてきたものであろう。  
     
写真3:讃岐平野に多いため池の一つ  写真4:本場の美味しいうどん店
 讃岐平野を特徴づけている景観要素の一つが「ため池」である(写真3)。ため池は、他の水利の発達や農業用水需要の減少などによって減り続けてきたが、地域景観の保全や生物多様性維持のために、ため池存続のための努力が続けられている。写真3の手前に見えるような土手の管理が、ため池存続のための重要な課題の一つである。
 近年、全国的に流行っている讃岐うどんの店も、このあたりの景観を特徴づける要素である。全国展開している店の多くはチェーン店であるが、本場のさぬき市内では独立営業の店が目立つ(写真4)。野外実習に参加した我々も、宿の方から美味しい店を紹介していただいき、本場の味を楽しんだ。
     
     
    写真5:讃岐平野を南から北に眺める  写真6:さぬき市役所裏から北西方向を眺める  
写真5は、さぬき平野を南から北(瀬戸内海側)に向かって眺めた様子である。広大な棚田状の水田のほか、さまざまな形をもつ小起伏の山並みが顕著である。写真5の中央奥に見える突起した山については以下で述べる。写真6は、さぬき市役所裏の瀬戸内海に面した場所から撮影したもので、中央に見える突起状の山が写真5でも見られた五剣山(ごけんざん)であり、その左に見えるカマボコ状の地形が「屋島の戦い」で有名な屋島(高松市)である。
         
         
    写真7:特徴的な山容をもつ五剣山  写真8:さぬき市南部に広がる爛川流域  
 写真7は、五剣山の特異な山容をクローズアップしたものである。屋島も五剣山も、1千万年以上前の第三紀中新世に活動した火山の地質に由来するとのことで、残丘状に削り残された部分が今日の山体を構成しているようである。
 写真8以降は、讃岐平野の南側に広がる山地とそれを刻む流域の様子である。写真8は、南から北に向けて讃岐平野に注ぐ河川の爛川(ただれがわ)等の流域で撮影されたものである。この一帯の山地は主に花崗岩で構成されており、これまでに何度も集中豪雨に伴う土砂災害を経験している。写真8でも露出した花崗岩が顕著である。
       
       
写真9:風化花崗岩からなる白砂とツルヨシ群落が目立つ川    写真10:ドングリをつけたウバメガシ
 写真9はこの付近の河川の様子で、風化花崗岩に由来する粒の粗い白砂が顕著である。河川中流部では、四国の他の地方と同様にツルヨシ群落が優占している(写真9右)。標高の低い里山では全体にアラカシ林が目立つが(写真11、14などの林)、土壌の薄い場所では備長炭で知られるウバメガシ(写真10)の林が見られた。
     
写真11:自然薯畑 写真12:自然薯の蔓と葉
爛川流域の一部では、珍しい自然薯(じねんじょ=ヤマノイモ)畑が見られた(写真11)。蔓植物のヤマノイモ(写真12)が、ここでは写真のようなドーム状の形で栽培されていた。
         
       
    写真13:中流部の集落を囲う獣害防除柵 写真14:廃校を活用した自然学校    
     西日本の中山間地域の例に漏れず、ここでもイノシシやサルなどによる獣害が発生しており、中流部の集落では、個々の田畑ごとの対策の他、山際に長く設置された防護柵によって、イノシシなどの獣が山から侵入してくるのを防いでいた(写真13)。 またここでは、廃校となった小学校が自然学校として活用されていた(写真14)。写真15のプールの左側が炊事場である。    
         
       
    写真15:プールの左は炊事場 写真16:上流部における農地利用の事例    
     写真16以下は、このような流域の上流部の様子である。過疎化に対応して農地を維持するため、写真16に見られるように、無料での農地の貸借が実施されている様子であった。    
         
       
    写真17:電気柵で防護された上流部の棚田  写真18: トタン板で防護された上流部の棚田    
      上流部の集落では、農地は個々の田畑ごとに、獣害から厳重に守られていた。写真17は収穫期を迎えた1枚の棚田が電気柵で守られている様子である。写真18はトタン板による対応の様子である。守られている農地の周辺等では、イノシシの活動痕跡が高密度で観察された。    
           
       <写真1~18:2014年10月21-24日,磯谷達宏 撮影>    

 

                                    


                                              

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