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VOL.18-01  2016年01月

  徳島県阿南市付近のランドスケープ-植生景観を中心に-

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  3年生の野外実習で徳島県阿南市付近を広く見て回る機会を得たので、植生景観を中心としたランドスケープの写真を提示したい。
写真1:JR牟岐線の阿波橘駅 写真2:第22番札所白水山平等寺
 阿南市は、徳島県の東~南東部に位置する、海の幸・山の幸に恵まれたのどかな地域である。JR牟岐線が市内を南北に走っている(写真1)。市内にはお遍路さんの札所が2カ所あり、地域のシンボルとなっている。写真2は、新野(あらたの)地区にある第22番札所の白水山平等寺である。
 
写真3:平等寺近くの遍路道  写真4:平等寺付近を流れる桑野川
 四国では、お遍路さんが歩きやすい遍路道が方々に整備されているが、そのようなルートは自然観察にも好都合である(写真3)。平等寺のある新野地区は、門前に広がる由緒ある集落で、桑野川(写真4)沿いの沖積低地を中心に発達してきた様子である。
 
写真5:新野のクスノキの群生   写真6:立派なクスノキが生い茂る鎮守の杜
 新野の鎮守の杜は、クスノキの巨木が生い茂る荘厳な社叢となっていた(写真5、6)。
 
写真7:新野集落の秋のランドスケープ(遠景はクスノキ林) 写真8:イヌマキの生け垣と民家
 写真7は、平等寺のすぐ前に広がっていた一面のコスモス畑の様子で、奥には写真5・6のクスノキ林が見られる。写真8は付近でみられた美しい民家の様子で、南国らしいイヌマキの生垣がみられた。
 
   
 写真9:望遠レンズで撮影した岩山上のマツ個体群   写真10:竹林は里山の尾根まで拡大中
  付近の里山では、かつて繁茂していたアカマツ林はマツ枯れを伴う植生遷移の結果かほとんど姿を消していたが、尾根筋の岩山では元気なマツ個体が生育している様子が確認できた(写真9)。いっぽう、この一帯でも竹林の繁茂(分布拡大)は顕著で、拡大した竹林はしばしば尾根筋にまで達していた(写真10)。
 
   
 写真11:海岸から数キロ内陸の雑木林   写真12:コジイ等による照葉樹林化が進行中
  新野付近は海岸から数キロ程度離れていたが、付近の雑木林に典型的なコナラ林(夏緑広葉樹林)はほとんど見られず、雑木林の多くが、コジイやアラカシなどの繁茂により照葉樹林化していた(写真11、12)。
 
   
 写真13:美波町由岐の海岸に近い雑木林   写真14:海岸近くのウバメガシ林
 写真13は、阿南市の南に隣接する美波町(みなみちょう)の太平洋沿岸付近でみられた雑木林で、やはり照葉樹が大半を占めていた。数キロ内陸の林(写真11・12)ではあまり見られなかったウバメガシ(備長炭の樹種)がしばしばまとまって生育していた(写真14)。 
 
   
 写真15:耕作放棄地の石垣沿いに連なるウバメガシ   写真16:ウバメガシが列状に連なる
  このような里山でウバメガシが優占するパターンの一つとして、耕作放棄された土地の生垣に沿ってウバメガシが列状に繁茂する様子が見られた(写真15、16)。
 
   
写真17:イノシシやシカ等による獣道 写真18:シカ剥ぎの被害を受けたスギ
 今日では阿南市付近でも広い範囲において、シカ・イノシシ・サルなどによる農林業への獣害が顕著である。写真17はよく利用されている様子の獣道(里山から里に下りてくる所)である。付近にはイノシシの足跡やシカの糞などが少なからず見られた。写真18は、シカ剥ぎの被害を受けたスギの様子である。
 
   
 写真19:里の入り口に仕掛けられたイノシシ用の罠    写真20:大切な樹木が念入りに囲われていた
  里への入口付近にはしばしばイノシシ用の罠が設置されている(写真19)。また、耕作地付近ではさまざまな獣害対策の柵やネットが顕著にみられる。写真20では、とくに大切と思われる樹木が念入りに保護されていた。
   <写真1~20:2015年10月19-22日,磯谷達宏 撮影>
   




                                              

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