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VOL.19-04  2017年04月

  イスタンブール -タルラバシュ地区(再開発)とマスラク地区(開発)-

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 タルラバシュ地区は、イスタンブールの最も繁華なイスティクラル通りのすぐ北側にあります。この地区は、17世紀には墓地があり、19世紀以降はギリシャ人、アルメニア人、ユダヤ人なども住むようになり商業地域として発展。第二次世界大戦後、1986年にタルラバシュ通りの建設に伴い、古い住宅地が分断され、通りの北側にあたる地区では居住環境が悪化、家賃の低下、低所得者の密集、スラム化が進んだとのことです。1980年代にはイスタンブールでも再開発が行われるようになります。その後世界経済のグローバル化に伴ってイスタンブールの経済活動が活発化し、金融センターとしての機能が集積されると、より積極的な再開発が進められるようになりました。そうした流れの中で、この地区でも2006年にベイヨール市自治体と民間企業の共同事業体による再開発事業が開始され、今日に至っています。

マスラク地区は、イスタンブールの北部、中心部・タクシムからおよそ6km。この地区は、1950年代は農地、1970年代に開発が始まり、1980年代には外国資本の導入、併せてイスタンブール主要部を取り巻く環状道路の建設(注)などの基盤整備が国家プロジェクトとして実施されました。開発面積:14万平方メートル。1992年に着工されたタクシムとマスラクを結ぶ地下鉄は2009年に完成。
開発の現状:多国籍企業の進出、イスタンブール証券取引所の移転(1995年)、イスタンブール工科大学キャンパス(面積247ha、学生収容可能数576人、スタジアムあり)の開設など。
     
 写真1 タルラバシュ通りとタルラバシュ再開発地区  写真2 タルラバシュ地区再開発の完成予想図
 再開発地区は写真左手中央、クレーンのあるところ。

 TARLABASI360はこの再開発の名称。右下にベイヨール区のロゴがある。面積は20,000平方メートル。事業に伴い立ち退きを求められた居住者数はおよそ4,000人とのこと。開発に際しては、歴史的建物は残すことになっている。正面に装飾が施されたビルは、この地区の過去を語る証として修復保存されるものと思われる。手前はタルラバシュ通り。

   
 写真3 再開発地区の一角 写真4 再開発隣接地区(1 
 右手が再開発地区。中央部に入り口、ガードマン詰所。通りから離れるにしたがって地形的に低くなる。その先の丘には高層ビル。既存の低層住宅地と高層ビル、
こうした景観はあちこちで見られる。
 右手再開発地区。フェンスに囲まれた立ち退き完了地区。手前には、まだ人が住んでいる建物もある。廃棄物の袋、何かざわついた様子が伺われる。
 
 写真5 再開発隣接地区(2  写真6 再開発隣接地区(3
  高いフェンスを前にしながらの日常   左手、わずかな空き地に建てられた掘っ立て小屋風の建物。後部は狭い路地と古い建物。
写真7 再開発隣接地区(4 

写真8.再開発地区から少し離れた地区(1 

 左手の建物。入り口と窓のデザイン、2階の出窓、半地下の部屋。こうした建築様式は19世紀末から20世紀初めにかけて建てられたとのこと。かつてのタルラバシュの街並みを想起させる景観。  タルラバシュの現在の街並みのひとつ。
   
写真9.再開発地区から少し離れた地区(2 写真10 再開発地区から少し離れた地区(3
 タルラバシュ地区の北部。タルラバシュ通りから一本横に入った路地。ここにも坂。右手、修復された建物。2階はレストラン、その上は住宅として利用。ここにも出窓、半地下の部屋が見られる。写真中央部、不動産販売物件の広告であろうか。      歩道が設けられた道路もある。     
 
 写真11 マスラク・ビジネスセンターの高層ビル群 写真12 マスラク・ビジネスセンター(1 
左端ビル(上部に名称)、Deloitte(デロイト)は経営コンサルタント会社。写真中央の文字、Groupamaはフランスの保険会社の名称。最も高いビルABDiBRAHiMはトルコの製薬関連企業。 
写真13 マスラク・ビジネスセンター(2 写真14 自動車関係の事業所が集中している地区。
 写真中央、ING Bankはオランダ資本の銀行。トルコの銀行を買収してここに本店を開設。写真右手、白枠のあるビルはMaslak Park Plaza24階建てのオフィスビル、1998年完成。  

注:第1ボスポラス海峡大橋の開通は1973年、第2大橋の開通は1988年。   

参考文献
・Arda Inceoglu and Ipek Yurekli (2011): Urban transformation in Istanbul: potentials for a better city, Enhr Conference 2011, 5-8 July, Toulouse.
・M.L.Turanalp Uysal & N.Korostoff (2015): Tarlabasi, Istanbul: a case study of unsustainable Urban transformation, WIT transaction on Ecology and the Environment, Vol. 194.
                                                          (
上記、いずれもインターネットで検索可  

           (2015712日―13日、名誉教授長島弘道 撮影)


                                              

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