Back Number をみる

VOL.19-03  2017年03月

  伊豆半島のみかん産地・稲取」

※写真が多いので、電話回線での閲覧は時間がかかります。
このページは、1024×768以上の画面でごらんください。画面が小さいと写真の配列位置がこわれます。

※写真や画像の引用に関する問い合わせは、こちらのリンク先ページをご覧下さい。

「今月の衛星画像」 を見る


 日本における主要果樹の一つであるみかん。農林水産省によると、2015年における都道府県別のみかんの収穫量は、1位が和歌山県(全体の約21%)、2位が愛媛県(同16%)、そして3位が静岡県(同13%)となっています(2015年作物統計による)。  
 
 かつて細井淳一(1958)は、静岡県下における主要なみかん栽培地域として、この稲取を含む伊豆東海岸地域をあげています。また、松村祝男(1977・1980)によれば稲取地域におけるみかん栽培は、明治時代にその萌芽を認められるものの、地域的に拡大していくのは繭価格の暴落による栽桑養蚕業の衰退を契機とした昭和初期以降のことであったとのことです。1960年代の「果樹ブーム」の下で、稲取地域の南部一帯に広がる斜面地はみかん園地へと変化していきました。

 1960年代から50年あまりが経過しました。稲取みかん産地はどうなっているのか?短い時間でしたが、見学してきました。

 
01:伊豆といえば金目鯛。その代表的な水揚げ港である稲取漁港     02:金目鯛をはじめ新鮮な魚介類を食べさてくれる食堂が多数あります
 
 
 03:県営事業で設置された広域農道について説明する看板   04:すでに細井(1958)でも指摘されていますが、この地域のみかん栽培は、温州みかんのみ  ならず甘夏やポンカンなどの中晩柑類も多く導入されているようです。
  ほぼ一年中何がしかの柑橘が栽培され、収穫されています。

 
 
05:広域農道に沿って、果樹園(みかん園地)が広がっています。   06:ハウスも設置されています。ハウスみかん栽培も行われているようです
     
 
        07:粗放的な管理になっているみかん園地

一見、みかんがよくなっているな〜と思えるみかん園地ですが、よくみると地面にたくさんのみかんが落ちています。ある農家のご夫婦に伺うと「生産者が高齢化していて、とても収穫しきれない」と嘆いておられました。みかん価格の動向が担い手不足を生み出しているのではないかと推測できます。
           08:耕作放棄地に変わるみかん園地

かつてみかん園地が広がっていたであろう斜面地が、徐々に荒地(耕作放棄地)へと変化しています。いずれは林地になる(戻る)のでしょうか。

   
 
09:ソーラーパネルが設置されている農地もありました             10:稲取地域に程近い河津町の名所:河津川沿いの河津桜

2月上旬〜3月上旬にかけて河津桜が見ごろを迎えます。桃色の桜と黄色の菜の花が、すばらしい景観をみせてくれます。

(参考文献)
細井淳一(1958):静岡県に於ける蜜柑栽培地域の概況―社会経済体制の進化を背景として―(序報).新地理2-4、pp.20-38.
・松村祝男(1977):『地域の近代化と果樹作の展開―静岡県下のみかん作を中心として―』多賀書店.
・松村祝男(1980):『みかん栽培地域―その拡大の社会的意義―』古今書院.
<写真は20162月撮影   撮影・文責:宮地忠幸>

                                              

今月の地理写真バックナンバー