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VOL.19-05  2017年05月

  富山県五箇山の合掌造り集落とその周辺のランドスケープ

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 2015年の夏に国士舘大学地理学会巡検の引率で、富山県五箇山(菅沼地区と相倉地区:南砺市)の合掌造り集落を見て回る機会を得たので、そのランドスケープについて紹介する。景観の主役である合掌造りの建造物そのものについてはWeb上でも多くの情報がみられるので説明を省略し、ここでは主に地形・植生・耕作地等を中心に紹介したい。
     
写真1:庄川(菅沼集落東端から下流側を望む)   写真2:菅沼集落付近の河岸段丘で多くみられたオニグルミ
  富山県五箇山の合掌造り集落は、岐阜県側の白川郷の集落とともに、世界遺産「白川郷・五箇山の合掌造り集落」(文化遺産)としてよく知られている。遺産登録された五箇山の集落には菅沼(すがぬま)地区と相倉(あいのくら)地区の2カ所があるが、いずれも一級河川庄川(写真1)の中流部に隣接している。写真2は、菅沼集落入り口付近の、庄川による河岸段丘の斜面上でみられた二次林の様子であるが、実や材が有用なオニグルミが数多く生育していた。
     
写真3・4:菅沼集落中心部の様子  
 写真3・4は、菅沼集落中心部の様子である。菅沼集落は庄川右岸の河岸段丘の段丘面上(標高約330m)に広がった、比較的小規模な集落である。今日では国際的な観光地としてよく整備されており、建造物周辺の土地はおもに水田として維持されていた。
   
写真5:菅沼集落上部の畑地 写真6:菅沼集落付近の山に広がる森林植生
  菅沼集落の中心部は平坦な段丘面上に広がっていたが(写真3・4)、集落の入り口付近は比高が少し高い緩斜面となっており、おもに畑地として利用されていた(写真5)。写真6は菅沼集落付近の山腹斜面に広がる森林植生の様子で、下部はスギ植林、上部は夏緑広葉樹林である。集落内でみられたおもな夏緑広葉樹としては、ブナ・コナラ・ケヤキなどがあげられる。   
 
写真7・8:相倉集落の入り口付近の様子
 いっぽう、相倉集落は、庄川中流左岸沿いの山腹部に位置する一連の緩斜面(標高400m前後)の上に成立している(写真7・8)。この緩斜面は、形態とその連続性、構成物質などの点から、河岸段丘の段丘面ではなくかつての地滑りによって形成されたものとみてよいようである。写真7・8でみられるように、相倉集落の地形は、一連の緩斜面ではあるが、一枚のきれいな平坦面とはなっていない。
     
写真9・10:相倉集落の中心部付近の様子
 写真9・10には相倉集落の中心部付近の様子を示した。集落が成立する緩斜面上において、建造物の周辺部はおもに水田や畑地などとして維持されていた(写真9)。
   
写真11:相倉集落のソバ畑 写真12:相倉集落の裏山の植生(雪持林)
 写真11は、相倉地区中心部付近でみられたソバ畑の様子である。また、相倉集落の裏山は、雪崩防止のための禁伐林(「雪持林」)として維持されてきたとのことである。写真12でみられる森林の下側はスギ植林であるが、その上の斜面上の夏緑広葉樹林は樹冠が大きくてよく発達しており、「雪持林」とみられる。
<写真1~122015年9月1-2日,磯谷達宏 撮影>

                                              

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