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VOL.21-02  2019年02月

  「日本一のキャベツ産地・嬬恋村

宮地 忠幸
(最後の担当となります)

※写真や画像の引用に関する問い合わせは、こちらのリンク先ページをご覧下さい。

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 小学校の教科書でも取り上げられているキャベツ産地・嬬恋村。浅間山の北麓を中心に2,900ha(2015年現在)ものキャベツ畑が広がっています。ここで生産されるキャベツは,7月から10月にかけて東京市場をはじめ全国各地の市場等を経由して,私たち消費者に届けられています。今月は,夏秋(かしゅう)キャベツの大産地・嬬恋村の最近の景観をご紹介します。  
   
<写真1>浅間山を望む高台からみた景観   <写真2>農地とともに整備された集出荷施設  
 浅間山の北麓を中心にキャベツ畑が広がっています。戦後直後は,標高1,000m付近までしか農地はありませんでした。その後,農家の自主開墾,緊急開拓事業による農地開墾,そして国営や県営等による農地開発事業が実施された結果,浅間山北麓部では1,400mを超えるところにまで農地が拡大しています。     嬬恋村では,農地の開墾とともに,野菜の集出荷施設や農道,予冷施設,灌水施設,堆肥施設などが農業基盤整備事業の一環として整備が進みました。写真は,農地のなかに建設された野菜の集出荷場です。出荷時期になるとトラックが横づけされ,次々とキャベツが搬出されていきます。   
   

 
 

<写真3>国営農地開拓事業(第一次:嬬恋西部地区)竣工記念碑

   <写真4>「山成工法」でつくられた農地(大笹地区)  
 1969年から1973年にかけて進められた国営農地開拓事業(嬬恋西部地区)の竣工記念碑です。受益面積は794.5ha,受益農家戸数は491戸に及びました。    嬬恋西部地区の農地開拓事業は,写真のように「山成工法」というもともとの地形を残しながら農地が開拓されました。それゆえ急傾斜の畑も多くあります。   
   
   

<写真5>国営農地開拓事業(第二次:嬬恋地区)竣工記念碑

  <写真6>「改良山成工法」でつくられた農地(田代地区)  
  1989年から2001年にかけて進められた国営農地開拓事業(嬬恋地区)の竣工記念碑です。受益面積は404.0ha,受益農家戸数は267戸でした。「産地よ永遠に栄あれ」,嬬恋村が農業によって支えられていることをよく表しています。
   嬬恋地区の農地開拓事業は,写真のように段々畑のように「改良山成工法」で整備されました。作業の機械化が進む中で,省力化も視野に入れた基盤整備が進みました。   
   
       
       
 <写真7>キャベツ産地を支える嬬恋村農協   <写真8>関連産業の立地  
 嬬恋村のキャベツ産地を支えてきたのが嬬恋村農業協同組合(JA嬬恋村)です。嬬恋村のご当地キャラクター「嬬キャベちゃん」も,嬬恋キャベツの販売促進に一役買っています。※系統外出荷によって商品化されていくキャベツもあります。
 
    村内には農業(農家)を支える運送業,農業用機械の販売,修理工場,金融機関,飲食店,商店などが立地しています。農業を軸にこうした関連産業の立地が嬬恋村経済を支えています。  
     
<写真9>夏場は農家の繁忙期   

<写真10>労働力確保は大きな課題

 
 7月から10月にかけて,農家はキャベツの収穫期をむかえます。連日早朝からキャベツの収穫と箱詰め,出荷作業が続きます。写真は,2008年に国士舘大学地理学会の巡検で見学させていただいた時のものです。    嬬恋村では2006年頃から外国人研修生(現在の技能実習生)を受け入れるようになりました。私が大学生の頃は,夏の収穫時期になると学生のアルバイトが収穫作業を支えていましたが,最近は学生のアルバイトも集まらないそうです。近年では,総勢約300人の技能実習生が嬬恋村の農業を支えているそうです(嬬恋村役場,JA嬬恋村でのヒアリングによる)。
※写真は収穫期をむかえたキャベツ畑です。村内を巡ると多くの外国人の方々に会うことができましたが,作業風景の写真を撮影できませんでした。
 
 
 
       
<写真11> 嬬恋村は「愛妻家の聖地」―農業と観光の共生を目指して@―   <写真12>キャベツを活用した「地元食」―農業と観光の共生を目指してA―   
 広大なキャベツ畑は観光資源の一つにもなっています。嬬恋村と嬬恋村観光協会は「農業と観光の共生」を目指してきました。その一環として,2006年から日本愛妻家協会と村の共催で「キャベツ畑の中心で妻に愛を叫ぶ(キャベチュー)」イベントが続いています。なぜ嬬恋村が愛妻家の聖地なのか?嬬(妻)恋の地名の由来にも関係しているそうです。次のwebサイトの記事が参考になります。
https://karuizawa-style.net/kitakaruizawa/kyabetyu/
https://www.vill.tsumagoi.gunma.jp/kankou/news/2017/files/kyabechu2017.pdf
   嬬恋村にある「割烹 中居屋」さんでは,キャベツの収穫時期になると「つまごい高原キャベツと大和豚の冷しゃぶおろしそば」が提供されています。キャベツはもちろん,そばも嬬恋村産だそうです。おいしくいただきました!

 
       
※今月の記事については,次の文献にもう少し詳細な情報が掲載されています。
宮地忠幸 2018.高冷野菜産地の現局面と振興課題―群馬県嬬恋村のキャベツ産地を中心に―.農業と経済84-10:70-79.をご参照ください。
 
写真1,3〜8,10〜12 2018年8月 宮地忠幸撮影
写真2,1999年8月 宮地忠幸撮影
写真9 2008年8月 宮地忠幸撮影
 
 

                                              

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