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VOL.21-03  2019年03月

  「久米島 ヤジャーガマ

長谷川 均

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「洗骨」という映画が、そこそこ好評だそうです。私はまだ観ていません。洗骨というのは、土葬で弔った人の遺骨を、死後数年経ってから掘り起こし、親族の手で丁寧に洗った後に骨壺に収めて墓に納める弔い方のことをいいます。私は大学院生の時期に、沖縄久米島に3年ほど夏の間滞在していました。在学していた大学が久米島の総合調査団を組織し、そこで助手として連れて行ってもらったのでした。
 毎年夏の一か月くらい滞在して、原付バイクを駆ってふらふらしていました。私は、島の西部の集落に下宿していましたが、一緒に調査に行っていたもう一人の助手は、島の南端にある古い集落に一軒家を借りて暮らしていました。その彼が、たまたま洗骨の一部始終を取材することができたと、取材が終わってから言ってきました。携帯電話などない時代ですから、私に連絡したくてもできなかったのです。というわけで私は洗骨を経験し損なってしまいました。現在は、沖縄の離島であっても、火葬場はあるでしょうから土葬-洗骨という習慣はほとんど消えつつあるのではないでしょうか。彼の記録はとても貴重なものになりました。
 ところで、久米島には骨壺の並んだ鍾乳洞がいくつかあります。昨年、そのうちの一つであるヤジャーガマを再訪しました。神聖な場所なのに、観光スポットになっているらしく、洞の周辺が整備されてまるで昔の面影がありません。そこで、1982年当時の写真を何枚か引っ張り出してみました。この時は、島の郷土史家の先生に連れられての調査でした。素焼きのかめは、落石で割れたものもあり人骨が散らばっています。いまでは、ここまで奥に入ることはできないようです。興味本位で来るような場所でもありません。
 久米島に限らず、沖縄の離島では海食崖の洞窟などに風葬の跡を見ることがあります。崖上の洞窟にどのようにしてご遺体を安置したのかと思うような高所にあることもあります。写真*の崖にも、何か所かそのような跡を見ることができます
 
   
<地図>久米島は沖縄本島の西、約100qほどにある   <写真1>整備され、手すりまでついたた階段を降りるとガマの底に出る(2018年1月)  
   
   

 
 

<写真2>1982年当時のガマ内部の様子奥に鍾乳石が見える

   <写真3>素焼きの骨壺の蓋に、納められた人の名前などが読める  
 
   
   

<写真4>ガマの天井から落ちた石などで、多くの骨壺が壊れている 。写真は明るく加工してある。本来は薄暗くて奥まで見通すことはできなかったような気がする。

  <写真5>久米島北部の海岸 海蝕崖にできた穴に人骨が安置されていることも多い  
 
 
写真1,5 2018年1月 長谷川均撮影  
写真2,3,4 1982年8月 長谷川均撮影  
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

                                              

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