Back Number をみる

VOL.23-12
  2021年12月

  軽石漂着 国頭村の海浜
長谷川均

※写真や画像の引用に関する問い合わせは、こちらのリンク先ページをご覧下さい。

「今月の衛星画像」 を見る


 2021年8月13日,小笠原諸島の「福徳岡の場」という海底火山で大噴火が起こり直径1kmほどの新島が形成されました.この噴火は、日本国内で戦後最大級の規模と見られています.8月17日にこの新島は東西二つに分かれ,10月20日には東側の島が侵食により海面下に没したとみられていました.
 いっぽう,10月になって福徳岡の場の噴火で生じたと思われる大量の軽石が,1000km以上離れた大東諸島、沖縄諸島、奄美諸島各地の海岸に漂着し始めました.噴火直後から海面を漂う軽石は観察されていたそうです.しかし,この軽石が海流に流され西に向かい、10月に入ってから沖縄県内に漂着するなどということは予想外のことだったようです。漂着した軽石の影響は大きく,船舶の運航に支障が出たり養殖魚が死ぬといった被害の他に,観光面での影響も懸念されています.


  
 画像1 Sentinel2のナチュラルカラー画像 2021年10月31日 東シナ海を北から南にのびる幾筋もの線が軽石である
 大量の軽石は,地球観測衛星によって観測され,ヨーロッパ宇宙機関の地球観測衛星Sentinel2が捉えた軽石の画像が,NHK他で報道されました.Sentinel2の観測データは,アメリカ地質調査所(USGS)のサイトから無料で入手できます.ここでは,USGSから入手したデータを画像処理したものを掲載しました.
  
 画像2 Sentinel2のトゥルーカラー画像 2021年10月31日  国頭村辺土名岬から奥港 にかけて漂着した軽石.奥港は湾奥部に軽石が停滞している.また,その北部のサンゴ礁では,礁嶺の切れ目(クチ)からサンゴ礁ないに侵入した軽石の様子がわかる.
 
 画像3  2021年11月02日  Sentinel2のトゥルーカラー画像  画像4  2021年11月07日  Sentinel2のトゥルーカラー画像
ケールと方位は画像2を参照ください. 
沖縄本島北東岸では、画像2の10月31日頃が軽石漂着のピークだったようです.除去したのか、外洋へ流出したのかは画像だけからは判断できません.
 
 
 画像5  2021年11月15日  Sentinel2のトゥルーカラー画像  画像6  2021年11月20日  Sentinel2のトゥルーカラー画像
 スケールと方位は画像2を参照ください.  
   
   
  写真1 8月29日の長谷川均 撮影の安田の海浜の景観   写真2 10月27日の広田聖さん撮影の安田の海浜の景観 軽石漂着後
   
 沖縄県北部の国頭村はここ数年の私(長谷川)のフィールドワークの場です.2021年8月に撮影した安田(あだ)海岸(衛星画像の範囲外(南)です)の景観と,軽石漂着後に沖縄県の住む友人が撮影した同じ海岸の画像を掲載しました.沖縄県の島々の海浜を歩くと,普段でも結構たくさんの軽石が流れ着いています.過去の沖縄諸島の周辺で噴火した海底火山に由来するものでしょう.ただ,今回流れ着いた軽石は量が桁違いに多いようです.海浜の景観に影響を及ぼすことはもちろんですが,影響が長引けば多くの生物にも悪影響を及ぼすことになります.台風が吹き払ってくるという期待もありますが,冬に向かう時期ですから,しばらくは沿岸域に漂うかもしれません.冬の季節風の活躍に期待したいところです.   余談ですが,国頭村の村長さんは国士舘大学のOBの方です.
   
   
  写真3 8月29日の長谷川均 撮影の安田の海浜の景観   写真4 10月27日の広田聖さん撮影の安田の海浜の景観 軽石漂着後
 
 画像7 11月20日のSentinel2 の画像  沖縄本島西岸の東シナ海には、漂流する軽石と思われる帯状の筋模様がサンゴ礁の外側に南北に連なっています.
スケールと方位は画像1を参照ください.
 
 
写真1,3 2021年8月29日,長谷川均撮影     写真2,4 2021年10月27日の広田聖さん撮影,提供

                                              

今月の地理写真バックナンバー