VOL.24-12
2022年12月
「
佐々木 明彦
※写真や画像の引用に関する問い合わせは、こちらのリンク先ページをご覧下さい。
「今月の衛星画像」 を見る
福井県の越前海岸の地質は,およそ2200万年前から1600万年前頃に形成された堆積岩や火山噴出物,およそ1300万年前に噴出した安山岩などからなる。前者は,日本列島が大陸から離れて日本海が形成された時期と同じ時代に形成されたもので,堆積盆が沈降して水深が深くなる過程で形成された堆積物と,その堆積盆が隆起して浅い水域から陸上へと変わる過程で形成された堆積物からなる。越前海岸では,海岸線とおおむね並行に断層が通り,そこには陸側の隆起によって形成された海食台などの地形がみられるほか,日本列島の形成に関連する前述の地質を見学できる露頭が点在する。敦賀市から坂井市の東尋坊までの海岸線を辿ってみた。 |
写真1 大谷から遠望する甲楽城断層がつくる海岸線 |
写真2 河野の海水浴場でみる隆起波食台 |
|
急峻で直線的な海岸線と上方にある截頭谷の分布によって海岸に沿う断層の存在が古くから指摘されている。海食台などの離水地形から平均変位速度1.9m/千年
平均活動間隔 は2700年と考えられている。2019年9月3日撮影。 |
甲楽城断層沿いの海岸では複数段の隆起波食台がみられる。波食台面から産出した貝殻などの放射性炭素年代測定によって,最新の離水時期は1650年であることがわかっている。ここでは岩礁に波食台が形成されている。2019年9月3日撮影。 |
|
写真3 河野北前船主通り |
写真4 岩盤崩落跡 |
|
越前海岸を含む北陸の海岸沿いには,江戸時代から明治時代にかけて「北前船」が盛んに廻航されていた。それにより財をなした船主の屋敷が現在まで残っている。2019年9月3日撮影。 |
1989年7月16日午後3時30分頃,越前町玉川の国道305号において,高さ40m,推定重量1500tにおよぶ大規模な岩盤崩落が発生した。崩落は受け盤構造の岩盤の緩みによって発生したとみられる。崩落した岩盤は落石防止用のロックシェードを突き破って走行中のマイクロバスを押し潰し,15名の尊い命が失われた。2019年6月30日撮影。 |
|
写真5 呼鳥門 |
写真6 愛染明王堂の海食洞 |
|
呼鳥門は礫岩でできたトンネルで,かつてはこの下を国道が通っていた。ここの地質はおよそ1800~1600万年前に扇状地あるいは河川の中流域に堆積した国見層の礫岩であり,礫の配列から当時の流水の方向が判る。2019年6月30日撮影。 |
鳥居の奥に海食洞があり,愛染明王がまつられた祠となっている。この海食洞は入り口の標高が8.6mで,開口部は高さ5.2mで幅8.5m,総延長は23.5mで最奥部の底面の標高は7.4mである。過去に形成された海食洞が隆起してこの位置にあるため,離水面から年代資料を得られれば地殻変動の速度を推定できる。2019年6月30日撮影。 |
|
写真7 軍艦岩 |
写真8 弁慶の洗濯岩 |
|
新第三系国見層の砂岩泥岩の互層からなる岩盤が隆起し,波食面がちょうど軍艦のようにみえるため軍艦岩と呼ばれている。互層する地層はしばしば下位層を侵食しており,河川の流路が頻繁に変わったことを想起させる。生痕化石や珪化木なども観察することができ,主に河川から干潟,海浜で堆積した地層であり,マングローブ林の発達した熱帯的環境であったことが判っている。2019年6月30日撮影。 |
新第三系国見層の海浜堆積物と火砕流堆積物が波食台をつくる。干潟から海浜の堆積物による地層には浅い海で見られる甲殻類の生痕化石や動物のフンの化石が認められるほか,珪化木の化石も含まれる。また,写真に映る白い地層は火砕流の堆積物である。2019年9月3日撮影。 | |
写真9 鯖の一本焼き |
写真10 東尋坊 |
|
夏に越前に行くなら必ず食べたいのが焼き鯖定食である。よく見る半身の焼き鯖ではなく,たっぷりと脂がのった夏の鯖に太い竹串を突き刺して姿一本の丸焼きにするもので,かなり豪快でボリュームも満点。2019年6月30日撮影。 |
東尋坊の岬自体は安山岩の貫入によって1270万年前に形成されたラコリスであると考えられており,柱状節理が発達する。越前海岸の代表的な景勝地であり,この日も悪天候であるにもかかわらず大勢の観光客が訪れていた。サスペンスドラマのラストシーンの定番の場所であり,うら寂しいイメージを持っていたが,この岩場の背後にはお土産屋が林立し,客引きの声も大きく,私のイメージはがらりと変わった。2019年6月30日撮影。 |
|
<写真1~10:佐々木明彦 撮影> |