^
VOL.25-12
2023年12 月
「フェズ:迷宮都市の路地を歩く」
内田 順文
※写真や画像の引用に関する問い合わせは,こちらのリンク先ページをご覧下さい.
「今月の衛星画像」 を見る
8世紀末、アッバース朝の迫害からバグダードを逃れたイドリース1世が、ベルベル人の住むモロッコ中部にイスラームの都市を建設したことからフェズの歴史は始まります。このモロッコ最初の都であるフェズの街は、その子孫たちによって繫栄し、その後多くの王朝の首都となることで、1000年以上にわたってモロッコの宗教・学問・芸術の中心地としての歴史を刻んできました。 |
写真1 上空から見たフェズの市街地 |
写真2 旧市街への入り口となるブー・ジュルード門 | ||
伝統的なイスラーム都市の姿を残す「フェズの旧市街(フェズ・エル・バリ)」は、東西約2.2㎞南北約1.2㎞の城壁によって囲まれたまさに迷宮都市で、1981年にユネスコの世界遺産(文化遺産)に登録されました。写真1はフェズ上空から撮った市街の姿ですが、写真に写る市街地のうち東側(右側)にある街路が見えない住宅の密集地が旧市街で、北西南に幹線道路とともに広がる市街地が新市街になります。 |
|||
写真3 タラア・ケビーラ通り、食料品のスーク |
写真4 ブー・イナーニヤ・マドラサ | ||
タラア・ケビーラ通りの入り口付近は食料品中心のスーク(市場)となっており(写真3)、しばらく行くと右手に14世紀半ばに建てられたフェズ最大の神学校であるブー・イナーニヤ・マドラサが現れます(写真4)。このあたりからフェズ川の谷に向かって下り坂になりますが、少し先で右に折れるとタイルの美しいモザイクで知られるネジャーリン広場に行くことができます(写真5)。 |
|||
写真5 美しい給水所があるネジャーリン広場 | 写真6 サヴィア・ムーレイ・イドリス廟 |
||
この広場からさらに下ると、フェズを築いたイドリース2世の墓所があったとされるサヴィア・ムーレイ・イドリス廟があり(写真6)、周辺は旧市街で最もにぎやかな商店街となっています(写真7)。そこを抜けると、857年に創建され、その後北アフリカ最大のモスクとなったカラウィーン・モスクに到着します(写真8)。このモスクが旧市街の中心になり、迷路のような曲がりくねった街路によって城壁に穿たれた各門へとつながっています(写真9、10)。 |
|||
写真7 旧市街中心部の商業施設キッサリア |
写真8 旧市街の中心にあるカラウィーン・モスク |
||
|
|||
写真9 タラア・セギーラ通り、衣料品のスーク | 写真10 狭い街路で荷物を運ぶ驢馬 |
||
写真11 フェズ川の谷にあるタンネリ |
写真12 南の陵堡より見たフェズ旧市街 |
||
モスクの裏手からフェズ川の谷へ降りていくと、そこが有名な革なめしの職人地区(ダッバーギ-ン)で、タンネリと呼ばれる革染めの工場が置かれ、強烈な臭気の中で作業をする職人の姿を見ることができます(写真11)。 旧市街を一周したら、城壁を出て市街の南方にある南の稜堡に上りましょう。ここからは旧市街の全景を眼下に収めることができ、これは絶景です(写真12)。 |
|||
(2019年 内田順文 撮影) |
|||