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VOL.25-07
  2023年07月

  ブルガリアの山(3)・ヴィトシャ山

佐々木 明彦


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 2006年9月にブルガリアに行く機会があり,その際にブルガリアの山を3座登った。それらのうちムサラ山とヴィフレン山についてはこれまでに紹介したので,最後にヴィトシャ山を紹介する。ヴィトシャ山(Vitosha)は首都ソフィアの南側に位置する直径20 kmほどの比較的大きなドーム状の山体で,大部分が花崗岩からなる。標高2000m以上のピークが11峰あり,最高峰はチェルニ・ヴラフ(Cherni vrah:黒い峰;2290m)である。ヴィトシャ山は1934年に国立公園に指定されたバルカン半島で最も古い自然公園であり,270km2の自然公園内に2つの生物圏保護区がある。ヴィトシャ山には多くの遊歩道や登山道が整備されており,様々なレベルの登山が楽しめるほか,冬季にはスキーリゾートしても賑わう。

写真1 首都ソフィアの南側に聳えるヴィトシャ山は,ソフィアのシンボルでもあり,市内からのアクセスが容易であることから多くの登山者で賑わう。ソフィア市街地の標高は約550mなので,ヴィトシャ山との標高差は約1700mある。 写真2 ヴィトシャ山中腹のアレコ(Aleko)からリフトに乗ると標高2190mまで高度を一気に稼ぐことができるが,多くの人は標高1600mくらいの中腹から登山道を登っているようだ。
写真3 標高2200m以高は広大な緩斜面となっている。最高峰のチェルニ・ヴラフまで草原の斜面となっているが,所々に花崗岩の岩塊斜面がみられる。岩塊のサイズは1~2 mほどで,かなり大きい。 写真4 最高峰チェルニ・ヴラフはヴィトシャ山の平坦で広い尾根上にある岩山(トア)である。

写真5 チェルニ・ヴラフ山頂の近くには避難小屋があり,冬季登山の際にも利用できる。

写真6 チェルニ・ヴラフ山頂では気象観測が行われている。年平均気温は-0.3℃で,ソフィア市街地より10℃ほど低い。
写真7 チェルニ・ヴラフ山頂からみるソフィアの市街地。距離は近いものの,常にガスが出ていて視界が悪い。雲に厚く覆われたり突然快晴になったりする。これもヴィトシャ山の特徴のひとつである。 写真8 ヴィトシャの頂部斜面に広がる岩塊斜面は末端から谷のなかに流れる岩塊流に移行する。
写真9 チェルニ・ヴラフの北側に位置するトルフェノ保護区(Torfeno Branishte)の草原では2000年前くらいから高山性の泥炭の堆積が始まった。融雪水や湧水によって涵養されているようである。草原にはドイツトウヒの侵入もみられる。 写真10 草原の縁部にみられるドイツトウヒは,強風によって枝を損傷した偏形樹となっている。
写真11 森林帯のなかにも岩塊がひろくみられる。そこでは岩塊は土層に覆われている。岩塊は現在より寒冷で森林が成立していない時代に堆積したのであろうか。 写真12 岩塊流の末端は標高1000mほどの森林帯にあり,岩塊流は谷幅いっぱいにひろがる。岩塊は角が取れた亜円礫で,最大の岩塊で長径は3mほどある。
     
    (2006年9月 佐々木撮影) 
     



                                              

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