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VOL.25-09
  2023年09月

  喜界島 ジオパークをめざす島

長谷川 均

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 ジオパーク(Geopark)とは、地球や大地,地形や地質を意味するGeoと公園を意味するParkを組み合わせてできた造語です.地球科学的な価値を持つ遺産を保全し,生態系やそこに暮らす人々の歴史とか文化との結びつきを考え,教育やツーリズムに活用しながら、持続可能な開発を進める地理的領域のことをいいます.本コースの卒業生の中にはジオパークの施設に勤務していた人もいますし,これからジオパークをめざす自治体に専門の職員として勤務している人もいます.地理・環境コースの学生にとっては,キャリアデザインを考えるときに,このような職場は一つの候補になるかもしれません.
 日本には、日本ジオパーク委員会が認定した「日本ジオパーク」が46地域あるそうです(2023年5月現在).そのなかの10地域が,ユネスコ世界ジオパークにも認定されています.また,ユネスコが認定するユネスコ世界ジオパークは、48か国に195地域におよび日本の10地域も含まれています.
 奄美大島の東にある喜界島は,現在「喜界町ジオパーク基本構想」をかかげ,ジオパークの認定を目指しています(https://www.town.kikai.lg.jp/kankou/geopark2.html).2016年11月,この島を調査で訪れました.その時の写真を見ながら思い出話に浸ろうと思います.
 喜界島はいわゆる隆起サンゴ礁の島です(写真1,2,3).島の周辺に礁池の顕著な発達はありませんから現生サンゴは,沖に潜って見ることになります.沖へ出ればそれなりに見事な造礁サンゴの群落を見ることができます.喜界島はフィリピン海プレートが潜り込む場所の近くに位置し,潜り込まれる側に乗っているので普段は隆起しています.年間2㎜程度隆起しているといわれています.島の周辺には何段もの海岸段丘が形成されており,太平洋側に面した東側でその発達が顕著です.喜界島にあるサンゴ礁研究所の展示物をご紹介しましょう(写真4,5).島の断面図と地形模型です.太平洋に面した東側の段丘が何段にも分かれて西へ傾動している様子がわかるでしょう.
 喜界島はサンゴ礫や石灰岩を積み上げ,組み上げた見事な石垣の島でもあります.風よけが目的なのでしょうが,人けのない静かな小径は何とも風情があります(写真6).70年前の戦争の歴史も島のそこかしこで感じることができます.戦闘機を隠した掩体壕などを空港周辺で見ることができます(写真7).
 写真8から11は,この島の特産物です.この農産物の国内消費量の99%は輸入に頼っているそうです.消費量の1%が国産だそうですが,そのうちのなんと99%をこの島で産するといわれています.それは白ごまです.私が訪れたのは11月の初めでした.収穫の時期らしく,防波堤の内側に刈り取ったゴマを立てかけて乾燥させていました.
 写真13は空港の野外待合所です.写真のここだけを切り出すと,南太平洋のサンゴ礁島で見た飛行場のようです.最後の写真はぽつんと立つ煙突です.かつてのサトウキビ工場の跡地だといいます.いまこの煙突は撤去されてしまったそうです. 

 写真1   写真2 
   
 
写真3  
 写真4  写真5 
 写真6 写真7 
 写真8 写真9 
 写真10  写真11
 
 写真12
   
 
写真13
   
   
   
   
 (写真1~14 2016年11月 長谷川 均撮影) 
     



                                              

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