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内田順文

 

<専門分野>  地理的イメージ、人文主義地理学,文化地理学

 

uchida@kokushikan.ac.jp

 

自己紹介

 
 尊敬とまではいかぬまでも、あの人のように生きたい、あの人の生き方が羨ましいという人物が三人います。おそらく、多少ともその生き方が現在の私に影響を与えていることは疑いがありません。いわば私の人生のお手本みたいなもの、裏を返せば、私の理想とする生き方に最も近いところにいる人たちだということもできるでしょう。
 一人目は、ヴィンチのレオナルドです。私がこのルネサンスの巨匠をいつ知ったか定かな記憶はないのですが、おそらく小学生の頃テレビか何かによってであったと思われます。当時、発明発見に憧れていた私は、あらゆることに才能を発揮し、次から次へと新しいことを始めるレオナルドの姿にすっかり魅せられてしまったようです。今年は「二刀流」がブームですが、レオナルドこそ元祖理系と文系の二刀流、私が結果的に「地理」の道を選んだのもそれと無関係ではありません。また彼の「最後の晩餐」(実は壁画だということは後に知るのですが)は、小さい私の科学趣味とカタログ趣味を満足させました。思えば、今に至るあらゆるものの収集癖はここから始まっているような気がします。
 二人目は、竹林の七賢のひとり阮籍です。阮籍といっても、数多い中国史上の人物の中では影が薄く、歴史の教科書でも七賢の首魁格として小さく欄外に名が出るくらいで、しかも彼らは時世に背を向ける人として否定的に書かれているのが常なので、知らない人も多いかもしれません。だが、そういう世に容れられぬ賢者たちの屈折した生き方に、私は惹かれました。彼らは確かに酒ばかり食らって、結局歴史を変えるような社会への貢献を何もなさなかったわけですが、その高い理想ゆえに、名を挙げるよりむしろ世を捨てることを選んだことに共感を覚えます。しかも竹林の七賢とは早い話が変人の集まりですが、阮籍は竹林に遊び数々の奇行を続けながら、ちゃんとお役所勤めをし、役人としてはかなりの地位についていました。己の欲するままに生き、天寿を全うしている。この点、口が過ぎて首を斬られてしまった?康とは違います。阮籍のように確固とした知識も地位も生活をも築いて、なおかつ変人としての奔放な人生を実践することは難しい。このような余裕ある奇行こそ、阮籍にあこがれている一番大きな点だと思います。
 三人目は、日本の曲亭馬琴です。といっても、馬琴の場合、前二者と違って、特別その生き方に憧れているわけでも、羨ましいわけでもありません。中学生のとき、岩波文庫で読んだ原書の「南総里見八犬伝」が馬琴との最初の出会いでしたが、とにかくその長大なストーリーと、あちこちに張り巡らされた細かなプロットの連関の妙にすっかり感激してしまい、それ以来、私の「ものがたり」に対する好みが決定づけられました。同時期に読んだ「水滸伝」の影響も同程度に大きいのですが、その後「千夜一夜物語」「マハーバーラタ」から「ダルタニャン物語」「大菩薩峠」まで長大な物語を遍歴することになります。さらに「八犬伝」のなかで馬琴がひけらかす膨大な知識には、当然圧倒されました。ご存じのように馬琴は教条主義者で神経質でけちで怒りっぽくて、やたら知識をひけらかしたがり、人を小馬鹿にしていてという、あまり人から好かれるタイプの人物ではなかったわけですが、しかしこういった性癖は、卑劣漢や鈍感や軽薄な連中と比べたら、ずいぶんとましなものだと私は思います。
 以上、生きた場所も時代も異なるこの三人には、いくつかの共通する点があることにお気づきでしょうか。それは私の理想とする生き方であり、もしも自分の中にそのようなものが多少でもあるとすれば、それは私が彼らから受けたささやかな影響と言えるかもしれません。まず、あらゆることに興味を持ち、そのいずれにも精通し一家言をなす、広くて深い知識と、その知識を越える天才的な創造力。次に、権力者の圧力や大衆の数の暴力からうまく身をかわして世を生き抜く技と、しかしながら決してそれらの圧力に屈しない反骨精神。さいごに、仁義を知り、何事にも感動できる純粋で豊かな感性と、その感性を余人には知らせぬ悟らせぬダンディズム・奥ゆかしさ。そして、彼らはいずれも天寿は全うしたものの、孤独のうちにその死を迎えたことを記しておかねばならないでしょう。畏るべきことではあります。

 

趣味と記録


 これまで訪れた場所は国内800箇所国外600箇所以上。1987年に国鉄全線完乗。集めた音楽約6000曲。自転車走行距離12km。名古屋〜熊本1000kmを4日1/4で自転車走破(2回)。御殿場駅発富士吉田駅着で富士山を登破(所要26時間)。クイズ番組出場(戦績は4戦2勝、賞金総額120万円)。タロット占断的中率70-80%。中国小説『蕩寇志』を全訳(いまだ出版できず)。その他雑多なもののコレクション。


最近の研究業績


・国士舘大学文学部地理・環境専攻における入試成績と入学後の成績との関連.国士舘人文学6, 67-91, 2016
・小京都に見る日本的風景のイメージ.国士舘人文学5, 77-86, 2015
・大岡昇平『武蔵野夫人』の舞台に関する地理学的考察「はけ」の家の位置をめぐって.国士舘大学地理学報告No.22, 1-11, 2014.(大野勲と共著)
・国士舘大学文学部における「FDに関する教員アンケート」の結果と分析.国士舘人文学2, 165-176, 2012
・アニメの中の物語性旅物語としてのアニメ『宇宙戦艦ヤマト』.まほら62, 20-21, 2010


指導した卒論の例


・菅原 孝太:湘南イメージの変遷について藤沢・鎌倉・茅ヶ崎のタウン誌をテキストとして
・江連 大貴:工場見学に対する意識と地域差関東地方と近畿地方の飲食料品工場を事例に
・國田 大喜:埼玉県川越市における観光イメージ小江戸川越を事例に
・牛尾 祐太:広島県宮島における観光客の行動様式
・渡邉 貴生:大都市圏郊外居住世帯の居住経歴に関する分析 −多摩ニュータウン永山団地居住者を事例に−
・野澤 直人:バブル期以降の温泉観光地の変容と住民意識 −山梨県石和温泉を事例として−
・高水 絃:都市公園利用者の行動特性 −東京都葛飾区を事例に−
・浮田 沙希:大学生の海外旅行に対する意識とその行動
・千島さつき:まちなかの言語表記からみた地域差 −小田急線の新宿駅、下北沢駅、経堂駅、新百合ヶ丘駅を事例に−
・片岡 滉貴:コンベンション活動がもたらす効果−福岡市を事例として−
・長谷川玲大:認知地図に基づく東京の山の手と下町の範囲