※ 「今月の衛星画像」 2005年のテーマは 道 です ※

Vol.7−04   2005年04月号

ブルゴーニュワインの故郷コート・ドールのワイン街道を行 

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 デイジョン(Dijon)から南にフランスの国道74号線にそって約40kmに渡って続く、東向きの斜面はコート・ドール(Cote d'Or:黄金丘陵)といわている(図1)。この帯状の丘陵にある、いくつもの名醸村やブドウ畑の区画から、シャンベルタン(Chambertin)、ロマネ・コンティ(Romanee Conti)、コルトン・シャルルマーニュ(Corton Charlemagne)、モンラッシェ(Montrachet)といった名前をあげたらきりがないくらいたくさんの世界的に有名なブルゴーニュの高級ワインが生み出されている(図2)。
 コート・ドールのほぼ真ん中にあるボーヌ(Beaune)は、ブルゴーニュワインの取引の中心地であり、ブルゴーニュワインのメッカである。ルイ・ジャド(Louis Jadot)、プジャール・ペール・エ・フィス(Bouchard Pere et Fils)、ジョセフ・ドルーアン(Joseph Drouhin)などの多くのネゴシアン(ワイン商)が集まり、町の地下には、セラーが掘られ、大量のワインが保存されている。
 コルトンの丘を取り囲む、アロス・コルトン村(Aloxe Corton)、ラドワ・セリニ村(Ladoix Serrigny)、ペルナン・ヴェルジュレス村(Pernand Vergelesses)の特級畑からは、赤ワインならピノ・ノワール種を使用したコルトン、白ワインならシャルドネ種を使い世界最高のワインのひとつといわれているコルトン・シャルルマーニュが造られている。これらの畑は、複数の生産者に分割して所有され、数多くのドメーヌ(畑を所有して、ブドウ栽培からワインの出荷を行う)やネゴシアン(ワイン商)がワインを生産している(図3、4)(注)。

注)ブルゴーニュのワインの特徴は、同じ名前のワインが生産者の数だけ存在することである。例えば、コルトン・シャルルマーニュを名乗れる区画の畑を所有している生産者は何人もいる。Aさんのコルトン・シャルルマーニュ、Bさんのコルトン・シャルルマーニュという具合で売っている。

 なお、より詳しくブルゴーニュワインについて知りたい人には、下記の文献が地図や造り手の情報が充実していて参考になる。
遠山 俊之ほか(1999):ブルゴーニュワインとグルメ歴史にひたる、日経BP社
山本 博(2000):ブルゴーニュワインの故郷黄金丘陵コート・ドール、柴田書店
ヒュー・ジョンソン、ジャシス・ロビンソン(2002):地図でみる世界のワイン、産調出版
マット・クレーマー(2000):ブルゴーニュワインがわかる、白水社


図1:フランス・ブルゴーニュ州ディジョン市周辺図
ディジョンは、パリから約300km南東にあるブルゴーニュ州の州都で、人口20万人ほどの都市である。ブルゴーニュ州の東縁は、ジュラ山脈によってスイスと接する。 (DEMIS World Map Sereverを編集)


図2:コート・ドール(黄金丘陵)
(Landsat ETM Path/Row: 197/27 RGB3/2/1トゥルーカラー, 2001年8月13日撮像)
 東向きの斜面に、約40kmほどブドウ畑が続いている。世界のワイン産地でも、細長いブドウ畑がこれだけ続く所は珍しい。気候や緯度、斜面方位、傾斜などがワイン生産に絶好な条件である。しかし、ブルゴーニュワインの品質決定要因としては、断層により、切断された地層が複雑に組みあわさって露出していることにあると多くの専門家に考えられている。このような様々な要素がブドウ畑の斜面の諸条件に反映され、各村や畑の区画ごとに性格の異なるワインを生むことになる。 AVCOのページでは、コート・ドールにある各村の位置やワインの特徴などを紹介している。


図3:コルトンの丘とボーヌ
(Landsat ETM Path/Row: 197/27 RGB3/2/1トゥルーカラー, 2001年8月13日撮像)
 左上に大きな孤立丘が見えているが、これがコルトンの丘である。この丘は、周りを裾野から頂上付近までブドウ畑で囲まれ、有名な白ワインの特級コルトン・シャルルマーニュと赤ワインの特級コルトンを生み出す。同じ丘から赤と白の特級ワインが生まれるのは、畑の地質が、鉄分まじりの粘土、泥炭土、石炭岩、チョークの部分と違ってくるためである。左手から裏手にかけての区画が白ワインのコルトン・シャルルマーニュ、国道74号から正面の区画から赤ワインのコルトンが生まれる。左下に見えているのが、ブルゴーニュのワイン取引の中心地ボーヌである。


図4:コルトン・シャルルマーニュのラベル
 コルトン・シャルルマーニュのラベル。これはラドワ・セリニ村に本拠地を置くドメーヌ・カピタン・ガニュロものである。コルトン・シャルルマーニュで有名なのがネゴシアン(ワイン商)のルイ・ラトゥールのもので、これが世界中で一番よく知られている。コルトン・シャルルマーニュを名乗れるブドウ畑の区画を100haも所有する大地主である。ちなみにカピタン・ガニュロは、わずか0.4haしかコルトン・シャルルマーニュの区画を所有していない。

大学院地理・地域論コース研究生 内山慶之

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