Vol.5−02 2003年02月号
「カナディアン・ロッキーのボー川 River Of No Return 帰らざる河 のロケ地」
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「今月の衛星画像」で使用したデータの中には、「研究利用目的配布」で購入したデータが含まれています。
ADEOS衛星の場合、データ所有および提供は宇宙開発事業団 です。MOS,MOS-1bの場合、データ所有および提供は宇宙開発事業団 です。
LANDSATの場合、データ所有は米国政府、提供はSpace
Imaging(R)/宇宙開発事業団 です。SPOTの場合、COPYRIGHT CNES、提供はSPOT(R)/宇宙開発事業団 です。
※ 「今月の衛星画像」 2003年は名画・名作の舞台を宇宙からみる という特集を企画しました。
ただし、途中で息切れ、中断があるかもしれません。 ※
今月は「River of No Return」(邦題は「帰らざる河」1954年、アメリカ作品)のロケ地として知られるカナディアン・ロッキーのボー川とその周辺地域をとりあげました。
北アメリカから中央アメリカには、コルディエラとよばれる大山系が存在し幅数百キロ、長さ九千キロにもおよぶ。この山系は並行してはしる多数の山脈からなっている。下の画像1の地域は、ちょうどこのコルディエラ山系の東の縁とその東側にあるグレートプレーンズが接する部分である。1988年、冬季オリンピックの会場となったカナダのカルガリーもこの近くにある。
画像1の左側に、北西から南東方向に走る幅の広い谷がみえる。この谷は、かつてこの地をおおっていたコルディエラ氷床の下で氷に削られた幅の広い氷食谷である。この谷の中には、世界でもっとも絵になるハイウェイといわれるアイスフィールド・パークウェイが通り、およそ300キロにわたって続いている(画像3,4)。。
この谷に沿って、バンフ国立公園 と ジャスパー国立公園(この画像の範囲外北西方向)があり、バンフ、レイクルイーズ、ジャスパーなどのリゾート地や景勝地が続く(詳しい地図はこことここにある)。ハイウェイの所々には、ビューポイントがあり、だれが、どんなカメラを使っても美しい写真が撮れることになっている。それほど、絵ハガキみたいなイイ景色が続くのだ。「この風景を輸出できないなら、せめて世界の人たちをここへ輸入しよう」と、1887年バンフの一帯はカナダで初めての国立公園に指定された。こんにちでは日本人の観光客も多い。探したらWebに手頃な写真集を載せている人がいた。また、この地域の氷河の空撮写真集まである。
画像3には、氷食谷のなかに分布する氷河湖のいくつかが見える。ペイト湖とボー湖の間には、谷中分水嶺があり、ここから北へ向かう川はミスタヤ川という。いっぽう、ボー湖からはじまるボー川は、観光地バンフのあたりで氷河が削った横谷を横切り(画像4)、やがてグレートプレーンズへ流れ込みサウス・サスカチュウワン川となる。この川は北から来るノース・サスカチュワン川と合流しサスカチュワン川となり、ウイニペグ湖を経てハドソン湾へ流れ込む。この間、広大なグレートプレーンズを潤すのである。
映画「帰らざる河」では、River of No Returen のいわれを「急流にこぎ出して、帰ってきた者はひとりもいないから、先住民はこう呼ぶのさ」みたいなことをロバート・ミッチャムがマリリン・モンローに云う。帰らざる河のロケ地がボー川だったというだけで、ボー川そのものを先住民が「帰らざる河」と呼んだのではないと思うが、そのへんはよくわからない。実際のボー川は、映画で見せられるほどの急流ではないように思うのだが、観光地以外の場所ではすさまじい急流なのかもしれない。ホテルのツアー案内に、ラフティング(急流下り)があったような気もしないではないが、ボー川以外にも山に入れば急流はいくらでもありそうだ。なお、アメリカのアイダホ州には「帰らざる河」と名付けられた急流サモン川があるが、名付け親は先住民ではない。
さて、映画「帰らざる河」は駄作の最たるものと、したり顔の映画マニアはこきおろすけれど、わたしは楽しめるいい映画だと思う。マリリン・モンローは、なぜか清々しい酒場の女を演じ、最後に期待通り彼女と結ばれるロバート・ミッチャムはハリウッド映画の健全なヒーロー然としている。なによりも、この映画は単純でわかりやすい。映画が始まって5分後には、もう結末が見えてくる。難解な解釈をする必要もなく、小難しく時代背景を考える必要もない。ビールを飲みながら観るにはぴったりの映画なのだ。
「恋は帰らざる河の旅人、荒れた海に流され永遠に去りゆく・・・・」と歌い、赤いヒールを脱ぎ捨てて貧しくも普通の女の道を選ぶ(役を演じる)この頃のマリリン・モンローもなかなかです。
バンフ国立公園とボー川 スケールは30km | 画像1 カナディアン・ロッキーからグレートプレーンズ |
水色に見える部分は雪氷におおわれた地域 |
画像2 モレーンでせき止められた湖とワプティク アイスフィールド。広い谷底を走るのはアイスフィールド・パークウェイ。ボー川はこの谷を南に向かう |
画像3 バンフは、氷河が山脈の鞍部を突き破った横谷のなかにある。ボー川も大陸横断鉄道も道もこの谷底をとおってグレートプレーンズに続く |
氷食谷を走るアイスフィールド・パークウェイ | バンフの郊外を流れるボー川(ボー滝付近) | |
写真は画像1の北にあるSunwapta Pass(サンワプタ峠)から見た景観 | ペイト湖とその北側に続く谷 ボー川との分水嶺付近から撮影 ペイト湖に注ぐ氷河はこの左手にあるが、近年縮小が著しい。 |
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(1991年6月 長谷川均 撮影) |