Vol.4−06   2002年06月号
スルー海の島々 -漂海民と海賊とサンゴ礁-

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「今月の衛星画像」で使用したデータの中には、「研究利用目的配布」で購入したデータが含まれています。
ADEOS衛星の場合、データ所有および提供は宇宙開発事業団 です。MOS,MOS-1bの場合、データ所有および提供は宇宙開発事業団 です。
LANDSATの場合、データ所有は米国政府、提供はSpace Imaging(R)/宇宙開発事業団 です。SPOTの場合、COPYRIGHT CNES、提供はSPOT(R)/宇宙開発事業団 です。


 ミンダナオ島(フィリピン)からボルネオ島(マレーシア・インドネシア)の間にあるスルー海の島々は、翡翠のネックレスにたとえられる。熱帯林に被われた低島の多くも、もとはサンゴ礁の島々であることが多い。島々の海岸線や河川の河口部にはマングローブが生い茂り、島にすむ人々は海岸沿い低地に街をつくり、またあるものは浅い海の砂地に丸太を刺し、そこに床を張って家を造っているという。
 スルー海にすむ漁民たちは「漂海民」と呼ばれている。小さな家船にすみサンゴ礁の内側で小魚をとり家族が寄り添うように暮らしている。そして、スルー諸島がボルネオ島とぶつかるあたりは海賊たちの海である。ここにはフィリピンとマレーシアの国境があり、海賊たちは警備の目が届かない縁辺部で犯罪を繰り返している。マシンガンで武装し簡単に人を殺し、死体を海に捨てる。年間に200から300人の人たちが殺されているといわれている。そして、彼らの餌食になるのが漂海民たちなのだ(門田修(1990)『海賊のこころ』筑摩書房 による)。

 画像1、2,3は、かつての日本の海洋観測衛星MOS-1(もも1号)が撮像したものである。国境のTAWITAWI(タウイタウイ)島を中心に、周辺の浅い海と、サンゴ礁の島々を捉えている。地図は、リーフベースというサンゴ礁のデータベース(http://www.reefbase.org)にあるWebGISの地図を加工した。
 画像でムラサキ色の部分は、サンゴ礁の浅瀬で白いサンゴ砂が堆積していると思われる。画像3に見られる小さな島々は大部分がサンゴ礁の高まりに堆積した洲島に背の低い樹木が生い茂っているものであろう。サンゴ礁研究者にとっては、一度は訪れてみたい地域であるがとにかく治安が悪く、調査どころではないらしい。そして、周辺のサンゴ礁の環境も決して良いものでは無いという。前述のリーフベースに示された「Threats: Reefs At Risk」によれば、この海域のサンゴは危機的状況にある。その原因の多くは、漁業によるオーバーユースにあるらしい。インドネシアと並んで、広いサンゴ礁に囲まれたフィリピンの代表的なサンゴ礁地域であるスルー海も、確実に生態系が損なわれつつある。フィリピンでは、いまだに広い範囲で「ダイナマイト漁」が行われている。この地域も例外ではないのだろうか。
 

 なお、この地域の自然環境に関しては、WWFのデータベースが頼りになる(http://www.worldwildlife.org/wildworld/profiles/terrestrial/im/im0156_full.html)。

 
位置図 タウイタウイ島と周辺のサンゴ礁島
        
画像1 タウイタウイ島 MOS-1 1990年7月3日 RGB:231
  
画像2 タウイタウイ島西部     画像3 タウイタウイ島の東部にあるサンゴ礁島

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