Vol.5−09   2003年09月号
「エトナ山とイオニア海の見える町 「グレート・ブルーの舞台 
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「今月の衛星画像」で使用したデータの中には、「研究利用目的配布」で購入したデータが含まれています。
ADEOS衛星の場合、データ所有および提供は宇宙開発事業団 です。MOS,MOS-1bの場合、データ所有および提供は宇宙開発事業団 です。
LANDSATの場合、データ所有は米国政府、提供はSpace Imaging(R)/宇宙開発事業団 です。SPOTの場合、COPYRIGHT CNES、提供はSPOT(R)/宇宙開発事業団 です。


※ 「今月の衛星画像」 2003年は名画・名作の舞台を宇宙からみる という特集を企画しました。
ただし、途中で息切れ、中断があるかもしれません。
 ※

 今月は、「グラン・ブルー」の舞台となったエトナ山麓、イオニア海に面したタオルミーナです。

 今月はシチリア島にしたかった理由がある。5月のこのページで「ベスビオ山がヨーロッパ唯一の活火山」と書いた。正確にはヨーロッパ大陸唯一の活火山としなければならなかった(多分そうだろうと思う と修正済み)。
 ご指摘のメールをいただき、ありがとうございました。_(._.)_

 ヨーロッパで最大の(標高が)活火山が、シチリア島(シシリー島)のエトナ火山である。巨大な円錐形をした大きな山体に、巨大な裂け目や250もの小火口を持ち、間違いなくヨーロッパ最大級の火山である。東斜面にある幅約5キロのバレ・デル・ボーベという深い谷は、噴火口に由来するそうだ。標高900m付近まで耕地がみられ、その上は森林、1900m付近から上は植物がまばらとなり、山頂部では1年の大半が雪におおわれているという。山すそを鉄道がはしり、主要駅カターニアから山腹の標高1880m地点まで道路が、そこから2915m地点まではケーブルカーがのびている。山頂の標高は、3323mである。
 エトナ山は、18世紀から噴火の記録があり、その後もしばしば噴火している。最近では、92年の大噴火のあと活動が活発化し、2002年10月には、火口から200mの高さまで溶岩が噴出する大規模な噴火がおこった(ここまでの記述はエンカルタ総合大百科2003を参考にした)。たまたま火山の本を読んでいたら、92年の噴火では、爆弾を使って溶岩流の主流の向きを変えることに成功したと書いてあった。噴煙をあげる火口の様子は、ライブカメラで見ることができる。NASAのサイトには、スペースシャトルからみた噴煙を上げている画像も載っている。エトナ火山の詳しい情報はWebで見ることができる

 シチリア島を舞台にした映画というと、「ゴッド・ファザー」や「「ニュー・シネマ・パラダイス」を思い浮かべる人が多いだろう。この二つは、いかにも名画である。今回取り上げた映画は、Webの映画寸評で「海に興味のない人にとっては、退屈な映画が「グレート・ブルー」だ」と書いてあった。そうかもしれない。
 この映画に、エトナ火山の北東にあるタオルミーナ(タオルミナ)が登場した。タオルミーナは、古代ギリシャの遺跡をもつ、シチリア島の著名な観光地の一つである。この地から眺めおろす地中海(イオニア海)の明るく美しい眺めに魅了された人も多いと思う。シチリア島は、標高数百メートルの台地状の地形が卓越する。北アフリカから地中海をわたって島をふきぬける、暑く湿った風シロッコも有名だが、たえず干ばつに見まわれるこの地を湿らす効果はあまりないようだ。エトナ山の山麓は、オレンジやオリーブの林でおおわれ、台地には小麦畑がひろがっている。そんな景観もこの映画では見ることができたような気がする。

 大きな本屋へゆくと、いまだにジャック・マイヨール(Jacques Mayol、1927〜2001)の本が平積みになっている。日本では、テレビでもイルカと泳ぐ癒し系スイマーのような扱われ方だった。コマーシャリズムにうまいこと使われているようで、少し気の毒な気がした。晩年は毎年のように一年のある時期、房総半島で暮らしていたそうだ。彼は上海のフランス租界で生まれ、子供の頃は毎年佐賀県の唐津で夏を過ごしていたというから、もともと日本との関わりは深かった。
 1988年、マイヨールをモデルに素もぐりの記録に挑戦する男たちをえがいた「グレート・ブルー」が公開され、世に知られるようになった(未収録シーンを追加した「グラン・ブルー」の方が有名かもしれない)。この映画はまた、ライバル役を演じたジャン・レノ を日本で有名にした映画でもあった。
 マイヨールの最後は謎に包まれている。2001年12月23日、イタリアのエルバ島の自宅で首をつって自殺したのだ。ただ、深い海に沈んでゆく映画のシーンを思い出すと、孤独のうちに最後を迎える人生を自ら選んだ、この人らしい死に方のような気もする。
 

地図1 
地図2(下)
画像1(左)地図2のエトナ山からタオルミーナにほぼ対応する範囲。海岸には浅海域を示す色調が見られず、すぐに深みへ落ち込んでゆくことが推察される。マイヨールが潜ったのはこの海だ。 LANDSAT TM 1987年6月。
画像2(下) エトナ山の山頂付近。東側に大きな裂け目が見える。また、たくさんの噴石丘や小さな火口が分布している。この画像では南東にたなびく噴煙が見える。画像の北東の端付近がタオルミーナ。 1987年6月 LANDSAT TM

 

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