2022年10月25~28日 佐々木ゼミ3年地理学野外実習C 愛媛県大洲市

  佐々木ゼミの13名は,愛媛県大洲市において,土砂災害,河川災害と土地利用,気象観測(局地風,ヒートアイランド)の調査グループに分かれて野外実習を実施しました。土砂災害の調査グループは,平成30年7月豪雨によって発生した土石流の発生域・滑走域・堆積域において地形や堆積物を観察し,土石流の発生メカニズムについて考察しました。河川災害と土地利用の調査グループは,やはり平成30年7月豪雨によって大洲市内に氾濫した肱川と矢落川の越水地点を含め,河川の堤外・堤内の地形や土地利用を観察しました。ヒートアイランドの調査グループは,大洲の盆地内の広域に温度計を設置し,それらの間を移動観測によって気温測定を実施しました。日が昇る前からの自転車を利用した広域の調査は困難を極めました。詳細な分析はこれからです。局地風の調査グループは,大洲盆地に堆積した冷気が肱川沿いに流れ出てくる肱川あらしと,日中の海風の観測を実施しました。肱川あらしは早朝から10時頃まで吹走するため,毎日早朝から観測に出かけ,朝食後には海風への切り替わるタイミングを捉えるために再び観測地点に戻るハードな調査になりました。
   
長浜大橋は1935年に架設された日本国内に現存する唯一の道路可動橋であり,肱川の河口近くに架けられています。この橋を含め肱川に架かる6つの橋の欄干に温湿度計を設置し,気温・湿度を1分間隔で自記記録しました。また,橋上においてアスマン通風乾湿計を用いた温・湿度の観測と風向風速の観測をそれぞれ10分おきに実施しました。   肱川の谷。この谷の奥に見えるのが大洲市の盆地です。ここから冷気が流れ出て,河口付近で最大風速になるのが「肱川あらし」の特徴です。
   
   
河川災害の調査グループは,肱川やその支流の堤内と堤外を踏査し,氾濫原の土地利用状況を地図に記録しました。また,河川の合流点付近では礫の形態やサイズを記載しました。これにより,支流と本流の河川の掃流力を考察しました。  平成30年7月豪雨の際に土石流が流れた谷野川を踏査している様子です。河床の堆積物の状況や新しい洗掘の痕跡などを記載しました。
 
   
   
 平成30年7月豪雨で土石流を発生させた地点。標高460m地点で発生した土石流は道路を破壊して標高350m付近まで流下しました。5年経過した現在,崩壊発生域と土石流滑走域にはなぎ倒された樹木が残され,土石流の破壊力の凄さを感じさせました。 
   
   
 崩壊が発生した地点の周囲の斜面で岩盤の状況を調査しました。岩盤は泥質の片岩で非常に脆いことが解りました。走向と傾斜を記載し,岩盤と崩壊発生との関係を考察しました。 平成30年7月豪雨の際に発生した土石流が,岩盤の崩壊によるものではなく,谷頭部を2mほどの厚さで埋めていた崩積土が崩壊したことに起因したことを明らかにしました。 
   
   
 夕食の様子。みなさんおしゃべりしたいけど,そこは黙食です。ホテル・ウエストリバーのご主人は近鉄や阪神,広島で10年プレイした元プロ野球の投手です。ご主人自慢のハモ料理や鯛の肝あえ,大洲名物の「いもたき」など,毎日地物の料理を堪能しました。 
   
   
 夕食後はミーティングを行い,その日の報告と翌日の計画を話し合いました。ミーティングの後は,密にならぬよう各グループに分かれて,取得したデータや試料などの整理,図作業,翌日の準備などを行いました。作業は毎日夜遅い時間まで 続きました。 
   
   
大洲盆地のヒートアイランド調査のグループは,盆地底に気温観測の定点を11箇所設置し,それらの間を埋めるべく早朝と日中に気温の移動観測を行いました。伊予大洲駅前で借りたレンタサイクルは強力な武器となり,広域にわたる観測をやる遂げることができました。また,肱川あらし調査グループと共同で盆地の斜面にも温度計を設置しました。冷気湖とヒートアイランドの関係についても議論することができそうです。 
   
   
 早朝の肱川河口付近。大洲の盆地には霧が発生しています。冷気湖が形成されているようです。この時間,まだ風速は強くありません。 冨士山(とみすやま)の山頂付近からみる大洲の盆地。霧が発生して標高200m付近までを埋めています。強力な放射冷却によって冷気湖が形成されているようです。さて,肱川あらしは発生しているのか? 
   
   
 大洲盆地に冷気湖が形成された日に,朝6時過ぎの長浜大橋では風速10mを越す南東風が吹走しました。一方,上流の各観測点では1~2mほどの南東風でした。やはり河口付近で強風になるようです。各観測点における気温や湿度の変化,大洲盆地における冷気湖の形成過程などと併せて肱川あらしの発生について考察します。 4日間お世話になったホテル・ウエストリバーの前で記念撮影を行いました。宿泊した3日間は全館貸し切りでご対応いただきました。最終日も荷物を置かせていただき,機動的な調査を行うことができました。本当にありがとうございました。この時点で気温の移動観測を実施している学生もおり,実質的な解散は伊予大洲駅となりました。最後まで頑張って調査を行い,事故も無く無事に実習を終えることができました。おつかれさまでした。