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沖縄県・慶良間諸島の海が11月、日本のサンゴ礁で初のラムサール条約登録地になった。
サンゴ礁をつくるのは、温暖で浅い海を好む「造礁サンゴ」。主に深海に生えていて磨くと美しく輝く「宝石サンゴ」とは別のグループだ。
サンゴはかつて、植物だと考えられていた。実際には刺胞動物で、イソギンチャクのような姿の「ポリプ」が硬い骨格を共有し、樹木状やテーブル状の「群体」を形づくっている。ポリプが無性生殖で自分の分身を増やし、群体は大きくなる。
夜の海で、サンゴから小さな粒が一斉に放出される現象が「サンゴの産卵」としてよく紹介される。しかし、その粒は、大半の種では「卵(たまご)」ではなく、精子と卵(らん)が一緒に入ったカプセルだ。カプセルが海中で割れ、別の個体の精子と卵が受精する。生まれた幼生は変身し、新たなポリプとなる。
造礁サンゴの特徴は、体内に「褐虫藻(かっちゅうそう)」という直径0.01ミリほどの単細胞の藻類が共生していることだ。触手で捕まえたプランクトンなども食べるが、褐虫藻が光合成で作った養分をもらって生きている。一方、褐虫藻は、サンゴの老廃物を養分にしている。「褐虫藻は、サンゴの食料生産と排泄(はいせつ)物処理を同時に行ってくれる存在」と本川達雄・東工大教授はいう。
ところが近年、サンゴから褐虫藻が抜けて白っぽくなる「白化現象」が目立つ。高い海水温などが原因で、世界各地でサンゴの大量死を招いた。沖縄本島沿岸のサンゴも大打撃を受けた。赤土の流出や水質汚染など、人為的な影響で弱っていたところに、白化が追い打ちをかけたらしい。
長谷川均・国士舘大教授は「サンゴの天敵はオニヒトデが有名。でも、本当の敵は人間かもしれない」と話す。
サンゴ礁は全海洋面積のたった0.1〜0.2%程度しかないが、そこに海の魚類種の4分の1が生息すると推定されている。近年の急激なサンゴ礁の減少は、生物の多様性にとって大きな脅威だ。(山本智之)
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