VOL.1-2  1999年08月

「ブラジルアマゾン、パラ州東部の熱帯雨林とその消失」

      


 1996年7月、ブラジルのパラ州とマラニャン州の州境に位置するグルピ川付近の熱帯雨林とその伐採現場を観察する機会を得た。
この付近は熱帯雨林の分布域の中では辺縁に近い位置にあたり、乾季の影響がかなり強い。そのため、群落の最上層(超高木層)があまり発達しておらず、群落全体の高さもさほど高くはない(写真1)。とはいえ、直径1m近い樹木が多い立派な原生林である。
 この林では、原木の伐採と搬出が行われていた(写真2、3)。伐採業者の女性リーダーに話を聞いたところ、彼女は何のてらいもなく話してくれた。「私たちは原木の伐採をしているが、それは利用に適した一部の樹木を切るだけのことだ。手頃な大きさになった木を1本ずつ点々と伐採するだけだし、伐採後には後継樹もどんどん生えてきているので、私たちのやっていることには何の問題もない」
 彼女らの伐採だけでは森が消失しないことは事実であり、1年ほど前の伐採跡地には有用樹であるパラパラの木(Jacaranda copaia)の稚樹が数多く生えているのも見られた。
 森林消失の大きなきっかけは、伐採のための搬出道路の建設にある(写真4)。伐採が終わると、搬出道路に沿ってしばしば火入れが行われ、肥沃な畑地として利用される。焼畑として何回か使われて地力がやや低下した頃には、しばしば大規模な牧場が作られる。こうして、原木の搬出道路の建設をきっかけとして、何人もの人々がリレーするような形で熱帯雨林の多くが消失していくのである。
 アマゾンといえども良質な原木が減ってきたため、原木の価格は上昇している。そのため最近では、用材利用を目的とした本格的な植林が行われるようになってきているのが、将来に向けた明るいニュースである。      <1996年7月、磯谷達宏 撮影>

<バックナンバー>
 VOL.1-1 「カリブ海のサンゴ洲島、サンブラス諸島」