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VOL.8-07  2006年07月

新旧住宅地開発−仙台市の大規模宅地開発地の景観−

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 住宅地の開発,とくに大規模宅地開発の景観をみると,その新旧がおおよそわかる.
 2006年度経済地理学会春期学術大会における巡検地であった仙台市を事例にその様子をみてみよう.

 写真Aは仙台市営地下鉄南北線・旭ヶ丘駅の東側に位置する「南光台」という住宅地.ここは1957年に仙台市でも初期に宅地開発がなされたところ.開発主体は民間企業.歩道はあるが,道路幅はあまり広くない.バス停も歩道上に置かれる形になる(写真B).バス停に人が並ぶと歩行者も通行しづらい上,バスが停車すると車道も渋滞することになる. 

写真A 写真B
写真C 写真D
 写真Cは南光台の路地を入ったところの様子.専用歩道はなく,歩道スペースに電柱がむき出しになる.南光台ではどうかは分からないが,こうした道路は私道として各戸が権利を所有している場合もある.その権利を市町村など自治体に譲渡すれば市町村道として管理されるが,その場合,各戸の同意が必要なことなどから手続きが頓挫し,こうした道路が私道のままであることも少なくない.
 写真Dは南光台の東に位置する「鶴ヶ谷」という住宅地.ここは1967年に仙台市が開発した住宅地.比較的早い時期の開発であるが,市の開発ということもあって,道路幅・歩道幅とも広く,街路樹のスペースもある.バス停も専用スペースを設け,停車中も自動車交通が滞らぬようになっている(写真E).
写真E 写真F
 写真Fは鶴ヶ谷の一戸建てと集合住宅.集合住宅(鶴ヶ谷第一市営住宅)は建築後40年近く経過して老朽化していること,現在では各戸が(間取りなどの点で)狭小となってしまっていることから建て替えられることになった.窓に板がはめられているところは,建て替えのために住民が退去しているところ(写真G).こうした住宅の建て替えは,これも権利の問題からなかなか進まないことが多いが,ここで計画が進んでいるのは市営住宅だからこそという点が大きいであろう.写真Hは集合住宅地内の商業施設.「センター」と呼ばれ,計画的に配置されたものである(国士舘大学の諸兄は鶴川校舎のある鶴川団地を想起されたい).
写真G 写真H
写真I 写真J
 写真Iは仙台市の北部にある「泉パークタウン」の様子.仙台市の高級住宅地として知られている.道路幅・歩道幅はみてのとおり.街路の植栽もあるが,これは開発主体である三菱地所が管理しているとのこと(写真J).企業が管理・維持することで整備された景観を保ち,住宅地としての「格」を落とさずに,不動産価値を維持している.泉パークタウンは民間単独開発では日本一の広大な面積(1,070ha)を有すること,その一方で開発地内には駅がないこともあって,最寄りの地下鉄駅(泉中央駅)から遠い場所では必ずしも宅地販売が好調ではないところもある(写真K).
写真K 写真L

 最後は住宅開発にともなうものではないが,仙台市中心部の北部のある通り.自然発生的に都市化,住宅地化が進んでいったため,道路は狭小で歩道もない(写真L).

 以上のような開発景観は全て開発時期によって規定されるわけではないが,皆さんの住んでいる周辺でもみられる景観であろう.住宅地開発の時期なども考えながらみてみれば,いつもの風景も違ったものにみえることでしょう.

<写真A〜L:2006年5月,経済地理学会巡検にて,加藤幸治撮影>

 


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