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VOL.9-11  2007年11月

南米の地の果て:パタゴニア」

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 地理の教科書に出てくるので名前だけは聞いたことがあるのだけれど、実際にどんな場所か見当もつかない、という場所がいくつか存在します。サハラ砂漠とかグリーンランドとかがそうでしょうし、パタゴニアもそういった場所の一つではないかと思われます。パタゴニアとは、アルゼンチンとチリの国境にかかわらず、一般に南アメリカ大陸の南緯40度あたりより南の地域を指すようですが、東南アジアやヨーロッパなどと比べると、行ったことのある日本人はそう多くないようです。地球儀を見ると、ほぼ日本の反対側に当たり、おそらく日本から最も遠い土地と言ってもいいでしょう。実際、私もアメリカン航空で成田からロサンゼルス経由でマイアミまで16時間、乗り換えてブエノスアイレスまで8時間、さらにアルヘンティナ航空で途中リオ・ガジェゴスで乗り換えて6時間で、南米の最南端フエゴ島のウシュアイアに着きました(写真1、写真2)。

1:上空から見たウシュアイアの町とビーグル水道 2:サン・マルティン通り、ウシュアイア唯一の繁華街

 ここから路線バスを使ってパタゴニアを縦断するのですが、チリとアルゼンチンの国境を何度も越えなければならず、当然そのたびにパスポートチェックがあるので結構面倒です(写真3)。フエゴ島と南米大陸の間にあるのが有名なマガジャネス(マゼラン)海峡です(写真4)。強風吹きすさぶ海峡を渡ると、この地域最大の都市プンタ・アレナス(人口約12万人)に着きます(写真5)。

3:リオ・グランデ~プンタ・アレナス:アルゼンチン・チリ国境 4:マガジャネス海峡を渡る連絡フェリー
5:プンタ・アレナス、対岸はフエゴ島 6:プンタ・アレナス~プエルト・ナタレス:強風による扁形樹と風倒木

 プンタ・アレナスから北上し、パイネ国立公園の入口となるプエルト・ナタレスへ向かいます。あたりは荒涼たる風景が続きます(写真6)。パイネ国立公園はトレス・デル・パイネ峰をはじめとする多くの山と湖で構成される、チリ・パタゴニアを代表する観光地です(写真7)。野生動物も豊富で、南米の家畜リャマの祖先であるグアナコもよく見かけることができます(写真8)。

7:アマルガ湖とトレス・デル・パイネ峰 8:パイネ国立公園:野生のグアナコ

 ここから再び国境を越えてアルゼンチン側へ出て、ロス・グラシアス(氷河)国立公園に向かいます。世界遺産にも登録され、近年テレビなどでもよく目にするあの有名なペリト・モレノ氷河を擁する自然公園です。青白い氷の固まりが眼前で砕け落ちる景色は壮観です(写真9)。ちなみに、最近よくこの氷河崩壊のシーンが地球温暖化の象徴として用いられることが多いようですが、ここの氷河が崩壊を始めたのは最近のことではなく、地球温暖化とは直接関係はありません。氷河国立公園からは観光の基地となるリオ・ガジェゴスを経て一気に北上します。周辺は相変わらずの荒野が続きます(写真10)。石油産出地としても有名なコモドロ・リバダヴィア(写真11)を経て、さらに北上、北部パタゴニアの代表的観光地サンカルロス・デ・バリローチェに到着です。

9:氷河国立公園:ペリト・モレノ氷河 10:カラファテ~リオ・ガジェゴス:地溝帯とアンデス山脈

 サンカルロス・デ・バリローチェは南米のスイスとも呼ばれる風光明媚な保養地で、シーズンには欧米から多くの観光客が訪れます(写真12)。ここの最大の見所はアンデス山脈の麓に広がる森と湖の風景(写真13)、砂埃と乾燥の台地を越えてくると、ここがパタゴニアの終点であることがよく理解できます。

11:コモドロ・リバダヴィア:砂丘に面した市街 12:バリローチェ:セントロ・シヴィコ、スイスを真似た建物が多い
13:ナウエルウアピ湖とアンデスの峰々

<写真1〜13:1995年,内田順文 撮影>


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