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VOL.19-10  2017年10月

  スコットランド ハイランドの農村

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 イギリスという国が連合国であるということはご存知のことと思います。イギリスは,イングランド,ウェールズ,スコットランド,そして北アイルランドの4つの国で構成されています。20166月に実施された国民投票で「EU離脱」が決まり,現在,イギリスとEU(欧州連合)との間で離脱交渉が進められています。こうした動きに対して,複雑な思いをもっているのがスコットランドです。20149月に行われたスコットランド独立を問う住民投票は,記憶に新しいことでしょう。そのときは,わずかな差で(独立賛成票 44.7%:独立反対票55.3%),独立が否決されました。「EU残留」を望む住民が多いスコットランドでは,今回の決定を経て,再びイギリスからの独立へ向けた声が高まっているとも言われています。

  そんななか,私は2013年以降,何度かイングランド,スコットランドへ出掛ける機会を得ました。イギリス農村の地域づくりを見学,調査するためです。今回は,2016年の夏にめぐった農村の一部を紹介しましょう。

     
1.インヴァネス空港    2.インヴァネスの中心街 

 スコットランドの首都はエディンバラですが,私たち(複数の研究者で調査しています)のフィールドはハイランドと呼ばれるスコットランド北部一帯です。この年は,ロンドンのヒースロー空港から空路でインヴァネスへ入りました。小さな地方空港です。

   インヴァネス(市)は,人口6万人ちょっとの町で,ハイランド地方の中心都市です。ネス湖から流れ下るネス川の河口部に発展した町で,インヴァネス城のふもとに広がる中心街にはさまざまな商店や飲食店が立地しています。
     

3.インヴァネスの夕景

  4.ネス湖

 ネス川のほとりからみた夕景。思わずみとれてしまいました。

   グレート・グレン断層に沿って,氷河の侵食を受けたネス川の窪地に形成されたのがネス湖です。ハイランド屈指の観光地です。湖は,北東から南西方向に長さ約35km,東西の長さ約1.53kmの細長い湖です。深さは一番深いところで約230mにもなりそうです。

 1930年代以降,「ネッシー」と呼ばれる怪獣?の目撃情報が相次ぎ,その後,様々な研究機関等が湖のなかの生物調査に乗り出しました。その様子は,ネス湖のほとりにある「ネス湖 エキシビジョンセンター」でみることができます。・・・今日なおミステリアスなんです。
 

5.ネス湖周辺の農村

6.ハイランド・カウンシル(Highland Council
 牧草地が広がっています。    私たちの調査の拠点は,インヴァネスにあるハイランド・カウンシルです。カウンシルというのは,スコットランドにおける地方行政区画のことで,現在はスコットランド内に32のカウンシルがあります。日本の地方行政区画でいえば県に相当するでしょうか。ハイランド・カウンシルは,スコットランド内最大の面積を管轄しています。ここで,ハイランドの基本的な統計データや地域政策の内容,EUからの補助金の受け入れ方などについてヒアリングをしています。
 
7.ハイランドの農村景観(1)

8.ハイランドの農村景観(2)

 インヴァネスからネス湖を経て,フォートウイリアムに抜ける途中の景観です。牧草地に羊がみえます。スコットランドの農村をみて気づくのは,山に木が少ないということです。山麓部は,かつて森林を伐採し牧草地に変えてきたのでしょうか。一方で,植林を進めている地域もあります。    最近,森林を伐採して牧草地に変えたところです。牧草地のなかにみえる黒いぽつぽつものが木の切り株です。のどかな農村の風景ですが,牧草地を広げなくてはならない農村(住民)の事情は,スコットランドあるいはイギリスを含めたヨーロッパ諸国のある程度共通したものであるようです。
     
9.フィールドワークの現場(1)インヴァネス近郊・エヴァントン村 10.Evanton Wood Community Companyによって整備された森林公園
 インヴァネスから北へ約15マイルにあるエヴァントン村で調査しました。村の北側に広がる森林は企業の所有地だったのですが,これを地元の住民がコミュニティ企業を立ち上げ,森林を買い戻す取り組みを始めています    ここは,@地域のコミュニティを守ること,A子どもたちに森でいきるための技を伝えることを目的に整備された森林公園です。子どもたちの校外学習やウオーキングやクロスカントリーのイベント,アルツハイマー病や精神的な疾患を抱えた患者の療養に活用されているそうです。今では,年間14000人ほどの来訪者がいるとのことでした。 
     
 11.整備が進む森林内の施設等を説明する看板    12.フィールドワークの現場(1)インヴァネス近郊・カルボーキー村
 普段の森林管理は,村民のボランティアによって支えられています。そのなかには,新たにエヴァントン村へ移り住んだ「新住民」も参画していて,新しい地域づくりのアイディアが生まれているそうです。企業から森林の所有権を買い戻すための資金は,複数のファンドを得て集められました。    エヴァントンから程近いカルボーキー村でもヒアリングの機会を得ました。写真に写っている男性は,前職を定年退職後にイングランドからこの地へ移住された方で,現在はこの村の地域づくりの主要ポストを担っています。この村では,空き地に高齢者向けのバリアフリー住宅団地を建設する計画が進んでいるとのことでした。
     
 13.この風景に魅力を感じないのか?!    14.調査が終わった後には・・・
 私が写真12の男性へ「なぜこの地に移住されたのですか?」と質問した際,最初にもらった一言がこの一言でした。あまりの迫力に言葉を失いましたが,その後,イングランドに居住していたときからスコットランドにはたびたび旅行で訪れていて,この地の風景に魅力を感じていたこととともに,インヴァネスに近いことから買い物や医療面での不安がないことを理由に挙げていました。いま,ハイランドでは人口が増加傾向で推移していますが,その理由の一つが,他地域からの移住者が増えている点にあります。  
 インヴァネスにあるパブ。地ビールもいいですが,ここにきたらやはりウィスキー。ウィスキー街道があるスペイサイドもいいですが,ハイランドまできたのならちょっとくせのあるオークニーやスカイなど,島のウィスキーもなかなかです。バグパイプの演奏を聴きながら,スコットランドの「文化」を堪能できます。
 

写真11420169月,宮地忠幸撮影


                                              

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