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VOL.20-08  2018年8月

  「岡山県鏡野町・真庭市付近の植生景観とバイオマス発電プラント

磯谷 達宏

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 2017年の5月上旬、木質バイオマスエネルギー利用として全国的に有名な岡山県真庭市のバイオマス発電のプラントを見に行く機会があったので、真庭市に隣接した鏡野町等の植生景観とあわせて紹介したい。    
     
写真1:鏡野町の美しい里地・里山 写真2:鏡野町の山田養蜂場    
 岡山県鏡野町は、優しい山並みに囲まれた、美しい里地・里山が広がる地域で(写真1)、全国的に有名な(株)山田養蜂場の本拠地でもある(写真2)。    
     
     

写真 3:鏡野町近衛地区の景観  

 写真 4:鏡野町近衛地区の里山    
鏡野町近衛地区にも美しい里地・里山が広がっていた(写真3、4)。写真4の里山の黄緑色の部分は新緑のコナラ二次林(夏緑広葉樹林)で、深緑色の部分がスギ・ヒノキ植林(常緑針葉樹林)である。撮影時期が5月上旬なので、両者の対比がとても鮮やかである。    
     
   

写真 5:鏡野町で保全されているカタクリ群落(結実期)

写真 6 :蒜山高原の里山    
この付近には厳正に保護されたカタクリの群生地があり、地域の景観資源にもなっている。今回のカタクリ撮影時は、花期の後の結実期であった(写真5)。少し足を伸ばして蒜山高原まで行くと、標高が高いこちらの雑木林は開葉が始まる時期であった(写真6)。     
     
       
写真7:真庭産業団地の現地案内図

写真 8:バイオマス発電所(右)と銘建工業の工場(左)

   
 写真7〜11は、全国的に有名な真庭市のバイオマス発電プラントがある真庭産業団地の様子である。    
     
     

写真 9:真庭バイオマス集積基地

写真10:真庭バイオマス発電所    
写真9は、真庭バイオマス集積基地でみられたバイオマス資源である。真庭バイオマス発電所(写真10)で使用されているバイオマス資源の多くは、スギ・ヒノキ等の針葉樹材の切り出しから製材の過程で出される枝葉や樹皮等のバイオマスであり、地元の製材会社である銘建工業(株)が、真庭市のバイオマス発電事業の中核を担っている(写真11)。    
     
     

写真 11:バイオマス発電プラントに隣接した銘建工業(株)の工場  

写真12:木材搬入の様子
写真12は、この産業団地に木材が輸送車によって搬入される様子である。かつては全国の林業地域で普通にみられた光景であるが、林業が衰退した今日では珍しいものとなっている。 
   
     
       

写真 13:真庭市付近でみられた道路脇の針葉樹材

写真14:針葉樹林の伐採跡地
 以上のような木材生産と同時に行われるバイオマス資源の利用は、「木質バイオマスのカスケード利用」と呼ばれており、今日の木質バイオマスエネルギー利用の主力となっている。そのため、真庭市付近では、今日においても植林されたスギ・ヒノキ等の伐採や植林地の経営が継続的に行われている(写真13、14)。
   
     
<写真1〜14:2017年5月4-5日,磯谷達宏 撮影>    

                                              

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