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VOL.23-05
  2021年05月

  アメリカ・カンザスシティおよびその周辺地域」
長島 弘道

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   1992年8月1〜7日、国際地理学連合・変貌する農村システム委員会の会合がカンザス州で行われました。最初の3日間はエクスカーション、後半はカンサス州立大学での研究発表。エクスカーションのコースは、集合地であるコロラド州のデンバーを起点としてコロラドスプリングス−ガーデンシティ(泊)−ダッジシティ−ヘイズ(泊)−シャイアン ボトムス−マンハッタン。移動手段はバス。全走行距離:1150.4km。この会合のオーガナイザーはカンザス州立大学のデュアン・ネリス教授。彼は、準備の段階から実施まで、もちろん各見学地点・施設ではそこの担当者の協力を得ているが、全行程をほとんど一人で統括していました。他に見かけたのはエクスカーションに同行した若い研究者(助手か大学院生)と大学でのシンポジウムに係わっていた女性事務員のふたりのみ。アメリカの大学は、国際会議を引き受ける体制がかくも組織化され、教員個人もプロにふさわしい素質と能力を備えていると感嘆しました。

 エクスカーションでは、大規模肉牛飼育農場、灌漑と地下水(オガララ帯水層)問題、湿地の環境保全などアメリカの農業の現状と課題を知ることができ大いに収穫がありました。加えて、多年生作物を基本とした持続可能な農業システムを研究している民間の研究機関(Land Institute)も訪問しました。帰国後、この研究機関から研究活動の紹介と寄付を求める書式が送られてきました。撮影者は、その趣旨に賛同し、応分の寄付をしたところ研究成果および関連事項を掲載した冊子およびニューズレターが届きました。この係わりはその後10年以上続きました。その過程で、アメリカの民間研究機関が取り組んでいる課題、資金調達の方法、研究成果を公表することの意義・必然性など多くの事柄を学ぶことができました。

 この会合では、カンザスシティには行く機会がなかったので、いつか折があったら行ってみたいとと考えていました。こうしたことがありましたので、2017年のアメリカ行きではカンザスシティと関心のあるいくつかの地域を考えていたのですが、結果的にはカンザスシティとその周辺のみになってしまいました(5泊6日)。ここでは、カンザスシティの中心部、シティマーケット、カントリークラブ プラザ、インターステート道路69号線沿線の景観、農家民宿見学について紹介します。
     


         
 写真1 ユニオン ステーション
現在の駅舎建設年次:1914年。第二次世界大戦後鉄道利用が低下、駅舎も老朽化。
1990年代に入り駅舎改修の機運が高まる。1999年改修完了。シカゴ・ロサンゼルスを結ぶアムトラックは毎日運行されている。
       写真2 ユニオン ステーションのグランド ホール
天井の高さおよそ80m。
         
         
 写真3 ダウンタウンの高層ビル群とストリートカー(注1)
ユニオン ステーションとクラウン センター(注2)を結ぶ屋根付き・側面ガラス張りの歩道橋からダウンタウン方向を見る。
       写真4 シティマーケット 開設150周年記念碑
         
         
 写真5 ファーマーズ マーケット出店者
いかにも畑から積んできたといった店。後方の“Huns Garden”は隣の出店者の車。その広告には、「自宅で栽培された野菜、ハーブと切り花。すべて有機栽培、農薬散布なし、化学肥料なし」と書かれてある。
       写真6 ハローウイン用のカボチャのオンパレード
         
         
 写真7 ギターを弾き歌う
これもひとつのパブリック・エンターテイメント
       写真8 マーケットに隣接した「蒸気船アラビアの宝」展示館
1856年に沈没したままになっていた蒸気船アラビア号が、1988年に発掘され、外輪、陶器などが回収された。ここにはその宝が展示されている。
         
         
 写真9 カントリークラブ プラザの中心部
1906年から開発された郊外型高級住宅地に1923年に開設されたショッピングセンター(1950年開発完了)。建物のデザインには、スペイン・セビリアの影響がみられる。
       写真10 カントリークラブ プラザ入り口の噴水
乗馬姿の彫刻のある噴水。このプラザには、多くの彫像、壁画が設置されているとのことである。
         
         
  写真11 インターステート道路69号線に沿って  (1)農村のシンボル:サイロ 
カンザスシティの市街地を抜けて車で20〜30分走るとこうしたサイロが見えてくる。
       写真12 インターステート道路69号線に沿って  (2)カンザス大平原まっすぐに伸びる道路
この辺りは州全図によると“Scenic route”とのこと。道路の先に緩やかな坂、地形の起伏に気づかされる。
         
         
 写真13 農家民宿 Netherfield Natural Farm
インターネット検索中に見つけた農家民宿。1882年、イリノイ州から移住。農地は当初120ha、
現在は60ha。観光用に牛、鶏、ホロホロチョウなどを飼育。
       写真14 農家民宿2階からの眺め
カンザス大平原の一軒家。近隣の人は視界に入ってこない(no visible neighbors)。
これはこの民宿のひとつの売り。
         
         
注1 ストリートカー 運行開始:2016年、運行区間:ユニオン ステーションとシティマーケット間を往復、距離は3.5km。料金:無料、1日平均利用者:6448人(2019年)、運営主体:カンザスシティストリートカー局。
注2 クラウン センター:Hallmarkカード会社を主体に開発された複合商業施設。1971開業。 面積:34ha。施設内容:Hallmark本社、ホテル、劇場,スケートリンクなど。                                  (2017年9月27日−10月2日 名誉教授 長島弘道)






                                              

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