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VOL.23-10
  2021年10月

  神奈川西部・伊豆にみられる断層変位地形
佐々木明彦

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 伊豆半島は北上するフィリピン海プレートに載って,約100万年前に日本列島に衝突した。その衝突によって丹沢山地が隆起した。衝突境界は,相模トラフから国府津-松田断層,神縄断層を経て駿河トラフに至る。今回はこの衝突境界領域にみられる断層露頭や断層変位地形について紹介する。
                   

   
写真1 国府津-松田断層,平山断層,丹那断層の位置(Google map の写真画像に加筆)   写真2 大磯丘陵と足柄平野を分ける国府津-松田断層の断層崖

 
松田山から大磯丘陵・足柄平野を望むと両者の境界が非常にシャープであることに気づく。ここには平均変位速度が4m/1000年の活断層である国府津-松田断層が通っていて,大磯丘陵側が隆起,足柄平野側が沈降している。 
 
 写真3 平山断層の露頭    写真4 平山断層の露頭
東京電力山北発電所の対岸に露出する断層露頭である。ここでは足柄層群の凝灰質泥岩部を不整合で覆う段丘礫層がみられ,それらを足柄層群の礫岩部が切断している。20000年前から2500年前までに少なくとも5回の活動が認められ,累積変位量は10m以上になる。


   
写真5 天然記念物「丹那断層」の看板    写真6 丹那断層の活動による地表の変位
丹那断層の最新の活動は1930年11月26日の北伊豆地震(M7.3)を引き起こした。死者272名,全壊家屋2165戸の大災害となった。このとき,丹那トンネルの掘削工事が行われており,水抜きのための副トンネルが断層によって2mほど食い違った。看板は丹那盆地にある丹那断層公園のもの。
  丹那断層公園には北伊豆地震時に2mほど左横ずれした水路が保存されている。写真の赤い指標の延長上を丹那断層が通っている。その向こう側の水路が左側にずれているのがよくわかる。

     
 写真7 丹那断層のトレンチ断面    写真8 火雷(からい)神社の鳥居と石段のずれ
丹那断層公園では,丹那断層を横断するトレンチを掘削し,その南北の断面を地下観察室で展示している。最上部の盛土よりも下位の地層がシャープな垂直の断層面で変位している様子を観察できる。   鳥居の正面に神社に登る石段があったはずであるが,石段は鳥居の左側にずれている。鳥居と石段の間に丹那断層があり,1930年の北伊豆地震の際に約1.4mの左横ずれが発生した。
 佐々木明彦 撮影 


                                              

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