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VOL.23-09
  2021年09月

  乾季のニジェール
桐越 仁美

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 アフリカ大陸のサヘル帯に位置するニジェール共和国(以下ニジェール)の乾季は、10~5月の8か月間におよびます。乾季になると雨は一切降らなくなり、雨季には緑に溢れていた畑も、乾季になると茶色く様変わりします。農耕民は一斉に農作物を収穫し、収穫が終わった畑には、牧畜民が家畜を連れてやって来ます。牧畜民は農耕民と契約して畑に数週間滞在し、畑に残った作物残渣を家畜に食べさせます。牧畜民が滞在することで家畜の糞尿が自分の畑に供給されるので、農耕民は積極的に牧畜民と契約を結びます。また、乾季にはハルマッタンと呼ばれる北東風が吹きつけます。ハルマッタンの運んできた砂塵により、辺りが真っ白になることも。今回はニジェールの乾季の様子を紹介します。                   

   
写真1 トウジンビエの収穫    写真2 穀倉
この地域に暮らすハウサの人びとはトウジンビエを主食としています。収穫期には、トウジンビエの穂を刈り取り、束にして並べて乾燥させます。
 
乾燥したトウジンビエの穂の束は、畑の中につくられた穀倉に保存されます。穀倉はトウジンビエの稈を使って、毎年あるいは数年おきに新しく作られます。 
 
 写真3 脱穀    写真4 風選
乾季にはあちらこちらでトウジンビエの脱穀がおこなわれます。穂を棒でたたき、穀粒を落とします。    脱穀したトウジンビエは風選して、実りの悪い穀粒を取り除きます。 


   
写真5 畑に滞在する牧畜民    写真6 刈り跡放牧
 農耕民と契約して、畑に滞在する牧畜民。簡易的な家を畑に設置して、数週間~数か月間、滞在します。滞在中は契約している牧畜民から水と食料を分けてもらって生活します。
  牧畜民の連れている家畜はウシやヒツジ、ヤギ、ラクダ、ロバなど。家畜は収穫の終わった畑を歩き回り、作物残渣を食べて過ごします。 

     
 写真7 牧畜民の家畜    写真8 水を求めて
 牧畜民は家畜をとても大切にしています。この年に生まれたヒツジを自慢げに見せてくれました。    乾季の間は水場が限られます。水が残っている水たまりには、家畜がどんどんと集まってきます。

     
 写真9 ハルマッタン   写真10 日干し煉瓦づくり
 12月くらいからハルマッタンと呼ばれる北東風が吹きつけるようになってきます。ハルマッタンは細かな砂塵を運んでくるため、風が強い日には辺りは真っ白に霞みます。ニジェールの人びとの長いまつげも、砂塵で真っ白に。    ニジェールの多くの家屋は日干し煉瓦でつくられています。雨の降らない乾季は日干し煉瓦をつくって家の修繕・建設をする絶好の機会。あちこちで日干し煉瓦をつくる光景が見られるようになります。
     
・写真1~2、写真5~8:2012年11月・写真3:2012年10月・写真4、写真9:2011年2月・写真10:2013年1月
 桐越 仁美 撮影 


                                              

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