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VOL.24-02
  2022年02月

  高知県安芸市のランドスケープ−植生景観を中心に−

磯谷 達宏


※写真や画像の引用に関する問い合わせは、こちらのリンク先ページをご覧下さい。

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 3年生の野外実習で高知県安芸市を広く見て回る機会があったので、植生景観を中心に特徴的なランドスケープの様子を紹介します。野外実習の様子はこちらからどうぞ:

http://bungakubu.kokushikan.ac.jp/chiri/HPphoto/20211019_22_野外実習C%E3%80%80磯谷/newpage2.html


                   

   
写真1 安芸市の案内図    写真2 安芸市の表玄関「ごめん・なはり線」安芸駅    
高知県安芸市は、高知平野の東方に位置する、安芸川と伊尾木川に沿った安芸平野を中心とした市です(写真1)。土佐湾に面した長い海岸線やナスなどの施設園芸で有名な平野をもつほか、山あり川ありの、各種の地理的要素をとてもコンパクトに観察することができる自治体です。写真2は、土佐くろしお鉄道ごめん・なはり線の安芸駅の様子です。駅には、「ぢばさん市場」という、特産品や土産物を扱う店舗が併設されています。
 
 
写真3 正面にソテツが植えられた安芸市庁舎
  写真4 安芸市の中心街の様子    

写真3に示したように市庁舎の入口では、南国らしくソテツがよく茂っていました。写真4は、安芸市中心街の落ち着いた街並みの一部です(老舗旅館「山登家」から撮影)。

 
 
写真5 岩崎弥太郎の生家   写真6 ごめん・なはり線の球場前駅    

 安芸平野北西部の山際には三菱グループの創始者である岩崎弥太郎の生家があり、無料で公開されていました(写真5)。また安芸市は、プロ野球阪神タイガースのキャンプ地として知られており、市営球場は「安芸タイガース球場」の愛称で呼ばれています。写真6は、この市営球場に隣接した、ごめん・なはり線の球場前駅の様子です。この辺りは「タイガースタウン」と呼ばれているとのことです。

 
     
写真7 平野部に多い津波避難タワー       写真8. 海岸線に近い旧街道沿いの街並み

写真7は、平野部に数多く設置されている津波避難タワーの一つです。2021年現在、市内には6基の津波避難タワーが設置されているとのことです。安芸市では、このような津波避難タワーが設置されているほか、いくつかの建物が「津波避難ビル」に指定されています。写真8は、安芸漁港近くの、海岸線に近い旧道街道沿いの街並みです。

 
     
写真9. 安芸漁港の様子      写真10 安芸海岸での「しらす」干し
写真9は安芸漁港の様子で、長大な防波堤がみられます。写真10は、市街地付近の安芸海岸にて「しらす」が干されている様子です。ここは水産加工場前の海岸で、さまざまな魚介類が天日干しにされていました。なお、写真10の右奥は室戸岬方面で、発達が良いことで有名な海岸段丘がみられます。
 
     
写真11 施設園芸設備の多い安芸平野中部  
  写真12 貯木場に針葉樹材を運ぶトラック   

写真11は、安芸平野の中部から北部を望んだ様子です。秋・冬・春でも温暖な気候を利用してナスなどが栽培されるハウスが、水田とともに広くみられます。写真12は、安芸市東部の海岸付近にある貯木場に、針葉樹材を満載したトラックが入っていく様子です。木材価格の低迷により長らく停滞してきた林業ですが、写真が撮影された2021年頃は、木材価格の上昇により比較的好況だったようです。

     
写真13:伊尾木川中流域の黒瀬集落      写真14:安芸平野に隣接するシイ二次林 
写真13は、安芸平野から伊尾木川に沿って7〜8km上流側にある黒瀬集落の様子です。写真の中央付近でみられる耕地は水田から転換されたユズ畑で、背後の里山はおもに、アラカシなどの常緑広葉樹が多い二次林となっています。シカやイノシシなどの獣害を避けるためのネットが複数見られます。写真14は、写真13の地点よりも低標高側の、安芸平野に隣接した二次林で、常緑広葉樹のシイノキが優占しています。  
     
   
写真15:安芸川中流域の様子   

写真16:海岸に多いハマゴウ群落(安芸市西部)

 写真15は安芸川中流域の様子です。近年の台風による豪雨や浚渫工事の影響のためか、水辺の1年草群落の発達が極めて悪く、水際から1段上の土地に生育するツルヨシ群落の発達が顕著です(写真左手前など)。また、安芸市の砂浜海岸では、砂(砂礫)の粒径が粗粒なためか匍匐性低木種のハマゴウが優占する群落が顕著に発達していて、1年草群落がほとんど見られない上に、コウボウムギ・ハマヒルガオ・ハマグルなどが優勢な多年草群落の発達も、狭い範囲に限定されていました。

 <写真1~16:2021年10月19-22日,磯谷達宏 撮影>

                                              

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