しらほメール
発行者:鷲尾雅久、谷崎樹生、小林 孝;
shiraho@estate.ocn.ne.jp


サンゴ礁研究者、支援者のみなさま

 残暑厳しき折り、皆様には調査研究活動にご活躍のこととお慶び申し上げます。
現在、沖縄県は新石垣空港をカラ岳陸上で建設すべく、環境調査に入っている段階です。この新空港建設について、石垣島内では住民の間で充分な論議がなされているとはいえない状況です。そこで、以下のようなメールマガジンを創刊し、新石垣空港問題について少しでも意見交換ができる機会作りをしたいと考え、また情報を提供したいと考えました。
 当初は八重山住民を対象にして立ち上げましたが、より多くの方々にも石垣の現状を知っていただきたく思い、みなさまにも送信させていただきます。このメールは、2000年1月に、池原 貞雄、伊藤 嘉昭、井龍 康文、中森 亨、長谷川 均、松田 伸也、目崎 茂和の各先生からの呼びかけで、「新石垣空港建設位置選定にかかわる要請文へのご署名のお願い」にご協力いただきた方々にお送りします。
 なお、送信がご迷惑な場合は、遠慮なくお知らせ下さい。すぐに止めるようにします。
 みなさまへの送信担当者は、
WWFジャパンサンゴ礁保護研究センター「しらほサンゴ村」小林です。
(2001/8/15)

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発刊にあたって・・・・
 「白保メール」を発刊します。
主に八重山在住の方にお送りしますがみなさま御存知の八重山在住の方、他の地域にお住まいの方に転送して頂ければ発行者一同大変ありがたく存じます。
 当面隔週程度でお送りしたいと思っています

発行者 鷲尾雅久 宮良在住、谷崎樹生 石垣島ウミガメ研究会会長、
小林 孝WWFジャパン「しらほサンゴ村」

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     V..v              白  保  メ  ー  ル│\               Dec.27.2002
   >>∈∋<<    v..V                           。      No. 40
 ""     >>⊂⊃<<                             .   .         。
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白保メール NO.40 02.12.27
発行者:鷲尾雅久、谷崎樹生、小林 孝shiraho@estate.ocn.ne.jp
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                             //転載歓迎//
 
<新石垣空港方法書をホームページに掲載>        鷲尾 雅久

 白保メールNo.39でお知らせしたように、新石垣空港の環境影響評価方法書の縦覧が 12月24日から始まりました。
 縦覧場所は、那覇市の沖縄県庁と石垣市内だけですので、方法書の抜粋を白保メー ルのホームページに掲載しました。
  http://www1.ocn.ne.jp/~shiraho/

[縦覧の期間と場所への疑問]

 縦覧期間は、12月24日(月)から来年1月29日(水)までとされました。法定の1 か月に役所の年末年始の休み6日間を加えるという変則的な形で、今年は4日間だけ です。今回の環境アセスメントは、沖縄県も、2年程度かかると想定しているようで す。先は長いはずなのに、なぜこうまでして急ぐのでしょうか。

 縦覧場所は、沖縄県の土建部と八重山支庁、石垣市役所、竹富町役場、しらほサン ゴ村の5か所で、1か所那覇市、4か所は石垣市内です。以前の『白保海上案』の環 境アセスメントのときには、制度上は定められていなかったにもかかわらず、全国か ら多数の意見書が提出され、それを沖縄県も尊重せざるを得ませんでした。その後環 境影響評価法が制定されて誰でも意見を出せるようになったのですから、県外の沖縄 県事務所などでも縦覧すべきだったと思います。離島に縦覧場所が置かれていないこ とも問題です。
 
[縦覧の様子]

 早速初日に八重山支庁に行ってみたところ、4階の喫煙コーナーの横のスペースに 長テーブルとイス2脚を出し、縦覧用方法書が2冊置いてありました。
 今回は貸し出し用の方法書もありました。これは評価できますが、翌縦覧日の朝ま でに返すこととされているのは、不便です。しかも、27日金曜日に石垣市役所に行っ て貸し出してもらおうとしたら、年末年始は貸せないと言って断られました。通常の 金曜日の場合は月曜日まで貸すそうですから、役所の都合で休む年末年始に貸さない のは、一貫していないと言わざるをえません。

 この方法書は、県のホームページでは公開されませんでした。縦覧の公告文だけが 掲載されています。IT産業の振興に力を入れている沖縄県なのですから、方法書の 主要部分だけでも載せてほしかったと思います。
  
[ざっと見た方法書]

 縦覧された方法書は、A4版で563ページもある分厚いものです。しかし、計画 内容について書いてある第2章「対象事業の目的及び内容」は11ページ、その半分 以上は新空港の必要性と案の選定経過が書かれています。計画の細部や工事内容、工 程は示されていません。肝腎の第4章「環境影響評価の項目並びに調査、予測及び評 価の手法」は64ページにすぎません。

 一方で、第3章「対象事業実施区域及びその周囲の概況」が350ページ、「素 案」のときはこれに含まれていた表や図の一部が「資料編」として別立てとされ11 9ページあります。両方で全体の8割以上です。「概況」とは到底言えないものです し、方法書にふさわしい分量ではありません。しかも、このうち、方法書作成以前 に、言わば「見切り発車」で行った現況調査の結果が多くの部分を占めます。こうし た調査が方法書の軽視であることは、白保メールでお伝えしてきたとおりです。

 『白保メール』ホームページには、方法書の主要部分、第1、2、4章を掲載しま した。


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# 『白保メール』では、以前からホームページ作成を計画していましたが、
  今回、取りあえず方法書の抜粋だけでホームページを作り、公開しました。
  今後、バックナンバーや写真なども載せて充実させていきたいと思っています。
      http://www1.ocn.ne.jp/~shiraho/  

♪ 送信がご迷惑な場合は、遠慮なくお知らせ下さい。
   すぐに止めるようにします。

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白保メール NO.40  02.12.27
発行者   鷲尾雅久 谷崎樹生 小林 孝
      shiraho@estate.ocn.ne.jp



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白保メール NO.39  02.12.21
発行者:鷲尾雅久、谷崎樹生、小林 孝shiraho@estate.ocn.ne.jp
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                           //転載歓迎//

<地元調整会議と新空港基本計画案>           鷲尾 雅久

 12月11日、あわただしく『第5回新石垣空港建設位置地元調整会議』が開かれまし た。委員への事前通知は電話だけで、招請状は当日会場で手渡されたそうです。議題 は主に、『新石垣空港整備基本計画(案)』の説明でした。

[変更された点]
 この『基本計画(案)』で、今まで環境検討委員会や工法検討委員会で説明された 計画内容から変わったのは、次のような点でした。
1 計画図に海上保安庁エプロンが示されていない。
  これについて、小林孝委員が質問したところ、沖縄県は、海上保安庁と調整中の ため入れていないと答えました。海上保安庁が新空港を使うことは決まっているとも 答えましたが、これまでの計画図に載っていたものが削除されているということは、 現空港を引き続き使う可能性もあるということでしょうか。
2 エプロン面積を小さくした(86,450平米 → 78,850平米)。
3 供用開始は、「国の事業採択の見通しが不明なので未定」とされた(位置選定時 には2010年度とされていた)。
  ただし、委員への事前配付資料には、供用開始は「2011年10月20日(予 定)」とされており、需要予測も2011年度から始まっているので、沖縄県として2011 年度供用開始を予定したが、国との調整がつかなかったということかもしれません。
  なお、工期は工事着工から供用開始まで約7年(予定)、概算事業費は約420 億円(旅客ターミナルビル、貨物ターミナルビル等を除く)と説明されました。これ までは、工期は6年程度、概算事業費は約500億円とされていました。国の空港整 備特別会計の財政が厳しく、削減を求められているようですが、それで環境への影響 が避けられるのかどうか、注目する必要があります。
  
[需要予測、費用便益分析など]
 このほか、旅客の需要予測は、昨年発表されたものに比べ、2011年度は下方修正、 それ以後は上方修正されました。2001年度の実績143万人に対し、2011年度188万人、 2016年度224万人、2021年度260万人という数字になります。
 また、貨物の需要予測はいずれも下方修正されました。2001年度の実績10,028トン に対し、2011年度11,190トン、2016年度12,500トン、2021年度13,736トンです。
 国の方針を受けて、今までのような過大予測を避けたようですが、2007年から2010 年にかけてGDP年率1.9%の伸びを前提とした予測となっているのは、まだまだ「右肩 上がり」的発想が生きているのだと思います。
 また、小林委員が、B767などの「中型機」の運行について航空会社の意向を聞いて いるかと質問したところ、沖縄県は、滑走路が2000メートルになり、さらに需要が増 えたら検討するとのことだったと回答しました。航空会社の需要予測は、役所のよう に楽観的ではないようです。  費用便益分析では、時間短縮や費用軽減などの利用者便益502億円と空港使用料収入 等の供給者便益132億円で計634億円、これに対して建設費・用地費・将来の改良費等 の費用374億円、前者を後者で除した費用対効果は1.7と説明されました。
 内訳は説明がなかったので、検証のしようがありませんが、これは建設後50年間 の数字だとのことですから、不確定な要素の多いものでしょう。
 なお、「地域経済への影響」の説明で、「公共工事依存型といわれる八重山におい て大型工事となる新石垣空港建設工事により建設産業及び関連産業に様々な経済効果 が期待される」と書かれていたのは、「語るに落ちた」と言うべきものでしょうが、 現状に対する何らの反省も感じられません。

[パブリック・インボルブメント]
 先ごろ、国交省の交通政策審議会航空分科会が出した今後の空港整備に関する答申 では、「構想・計画段階におけるパブリック・インボルブメント(PI)等の手続きを ルール化」すべきだとされました。すなわち、国民や住民の意見を幅広く聞くという ことです。
 沖縄県の考えでは、地元調整会議に説明したことが「パブリック・インボルブメン ト」の一環だということのようですが、ほとんど一方的な説明で、質問をした委員は 二人だけ、意見を述べた人はいませんでした。一方、「地元の意見」という形を整え るためでしょうか、委員に入っていた県職員2人をはずし、空港の南側進入路に近い 2公民館長を加えました。
 しかし、公民館長と経済団体、自然保護団体で構成されている地元調整会議では、 住民の意見を広く聞くことにはならないでしょう。例えば、離島住民や空港利用者の 意見も聞くべきですし、団体役員だけでなく一般から委員を公募することも考えるべ きです。それに、沖縄県は、意見を聞いたとしても計画を修正する考えはないようで す。これでは、「パブリック・インボルブメント」になりません。
    形を整えることに腐心するのではなく、多様な意見に耳を傾けてほしいものだと思 います。

<<24日から環境影響評価方法書の縦覧>>
 沖縄県は、新石垣空港整備事業の環境影響評価方法書の縦覧を12月24日(火) から来年1月29日(水)まで行うと発表しました。これに対し、誰でも意見書を出 すことができますが、提出期限は2月12日とされています。  縦覧場所は、沖縄県の土建部と八重山支庁、石垣市役所、竹富町役場、しらほサン ゴ村の5か所です。八重山でも、与那国町は入っていません。竹富町役場は、変則的 ですが、町民の一人もいない石垣市内にありますから、町民の多い西表の方が適当で しょう。多くの方に見ていただこうという精神が希薄だと思います。
 『白保メール』では、今後、方法書の内容を紹介していこうと考えています。
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送信がご迷惑な場合は、遠慮なくお知らせ下さい。    
すぐに止めるようにします。 ♪♪ 転載を歓迎しますが、著作権は各執筆者に属します。    
引用される場合は、執筆者にお断り下さい。
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白保メール NO.39 02.12.20 発行者   
鷲尾雅久 谷崎樹生 小林 孝       shiraho@estate.ocn.ne.jp



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白保メール NO.38  02.12.11
発行者:鷲尾雅久、谷崎樹生、小林 孝shiraho@estate.ocn.ne.jp
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<早期建設と言うけれど>(その2)            鷲尾 雅久

[今はスタートラインの手前
 前回は、新石垣空港を造るとしたら、どのような手続きと作業が必要か、また「順 調」に行っても、完成までに最低10年くらいはかかるのではないかということをお 話しました。それでは、今は、その中のどこまで進んでいるのでしょうか。
 実のところ、前回挙げた手続きのどれも、正式には始まっていません。いわば、ス タートラインの手前で準備運動をしているといったところです。
 沖縄県の説明では、空港の基本計画について、国(国土交通省航空局)と調整して いるとのことです。しかし、基本計画は、2001年6月に一応できていたはずです。公 共事業全般の見直しの中で、審査が以前より厳しくなり、なかなか国の了解が得られ ないのでしょう。2003年度からの空港整備の方針が固まったので、これから動き出す のかもしれません。

[見通しを明らかに]
 事業者である沖縄県は最近、新石垣空港について、2004年度の事業採択を目指すと 言っています。「事業採択」とは、国が予算を付けることです。しかし、そうなった らいつ頃完成しそうかということは、言っていません。2000年4月に『カラ岳陸上 案』を選定したときには、2010年開港を目指すとされていました。それが延びそうな ら、どのくらい延びそうかということをはっきり言うべきです。  「早期建設」とか「早期着工」と言っているのは、石垣市や業界団体などで、県が 直接言っているのではないのかもしれませんが、見通しをあいまいにすることによ り、いたずらに期待をあおるのは、無責任です。
 言われて(しぶしぶ)出すのが情報公開ではありません。すすんで、住民や関心の ある方達に知っていただくようにするのが情報公開です。県の情報公開の姿勢には、 問題があると思います。

[今すべきこと]
   さて、「早期建設」と言われ続けると、新空港が今にもできそうな錯覚に陥りがち ですが、それにより、今ある問題の解決をすべて新空港待ちにしてしまう問題が生じ ていると思います。
 例えば、現在は夏場の旅客が混み合うときに、マンゴーやパイナップルなどの果物 の出荷で積み残しが出るという問題があります。これは、今すぐ解決しなければなら ないもので、新空港を待つわけにはいかないはずです。新空港ができるまでの間のこ とも考えなければならないと言われてはいますが、あまり身が入っていないように見 えます。
 なお、新空港ができたとして、この問題が本当に解決するかどうかの検証は、十分 に行われていません。今より多くの貨物を積める「中型ジェット機」が飛ぶというこ とが前提とされていますが、実際に飛ばすのは航空会社です。採算が取れなければ、 機材を変更することはありません。2000年4月にカラ岳陸上案が選定されたときの新 聞報道では、航空各社は、「中型ジェット機」を飛ばすかどうかは未定、と言ってい ました。また、今と同じ飛行機だとしたら、滑走路が長くなることにより、どれだけ 多くの貨物が積めるようになるかということも、具体的に計算されていないようです。
 問題解決の手段として、新空港がよいのかどうかの検討が、「早期建設」のスロー ガンのかげでおろそかにされ、今すべきことがされていないのではないかと思います。

[10年後を考える]
 根本的な問題は、10年かけて新空港を作るというなら、その前に、10年後のこ この姿を想像してみなければいけない、ということです。10年後の空港は、そのと きの社会にとって必要な、それにふさわしいものでなければなりません。
 今から数年すると、日本の人口は減り始めます(沖縄県は人口増加率が高いので、 減少は先になりますが)。おそらく、低成長経済が定着するでしょう。そして、人の 数が減るのですから、低成長でも一人ずつの「取り分」は増えます。今は過渡期で混 乱がありますが、うまくバランスを取っていければ、今よりずっと落ち着いた社会に なることができるでしょう。
 そのような中で、観光客がどんどん増えるとか、農水産物の出荷が増えるというこ と は、そぐわないような気がします。観光にしても、農林水産業にしても、10年 後の 構想が必要です。そして、「拡大路線」を見直したとき、どういう空港を構想 するか は、まだ問われていないと思います。
 また、将来の社会では、今よりもっと自然との調和や風景が大切にされるようにな るでしょう。山を削り、海岸部に高く土を盛って造る空港が、そのときどう評価され るかということも、考えてみる必要があります。
 「早期建設」といくら言っても、すぐにはできないことが分かったところで、10 年後の石垣、八重山にふさわしい空港とはどんなものか、もう一度考えてみてはどう でしょうか。

 <<次の空港整備計画で新石垣は?>>
 12月6日、国土交通省の交通政策審議会航空分科会は、2003年度からの空港整備 方針についての答申を出しました。
 地方空港については、これまでのように整備する空港名を並べることを止めること にしました。したがって、新石垣空港の名前も、計画書から消えることになります。
 地方空港の新設は原則として中止とする方針も出されましたが、離島は例外とされ ました。そこで、新石垣空港については今までと変わりはない、といった説明が沖縄 県などによりされています。
 しかし、今回の整備方針は、これまでの空港整備があまりに安易に「バラマキ的 に」行われてきたことの反省の上に出されたものであるはずです。新石垣空港につい ても、その必要性や造った場合の影響を十分考慮して、可否を判断すべきものだと思 います。



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送信がご迷惑な場合は、遠慮なくお知らせ下さい。
すぐに止めるようにします。 ♪♪ 転載を歓迎しますが、著作権は各執筆者に属します。
引用される場合は、執筆者にお断り下さい。

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白保メール NO.38 02.12.11 発行者   鷲尾雅久 谷崎樹生 小林 孝
      shiraho@estate.ocn.ne.jp


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白保メール NO.37  02.11.21
発行者:鷲尾雅久、谷崎樹生、小林 孝shiraho@estate.ocn.ne.jp
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                             //転載歓迎//  
<早期建設と言うけれど>(その1)           鷲尾 雅久

 石垣の街を歩くと、ところどころに「新石垣空港早期建設」と書いた看板が立って います。地元紙にも、この言葉が載ることがあります。しかし、「早期」というの は、どのくらい「早い」のか、説明を読んだり聞いたりしたことはありません。ただ のスローガンで、誰もその内容など気を留めないのかもしれませんが、もし新空港が できるとしたら、一体どのくらい年数がかかりそうか、調べてみました。

[環境アセスメント]
 新空港を作るためには、法律に決められたものだけでも、3種類の手続きを取らな ければなりません。
 まず、大規模な建設事業の場合に行う、環境アセスメントをする必要があります。 新石垣空港の場合は、環境影響評価法に基づいて行われることになります。
 環境アセスメントは事業者が行いますが、最初に、どういう点について、どのよう な調査・予測手法でアセスメントを行うかを示した『方法書』を作成しなければなり ません。それを1か月間公開し(縦覧)、住民など関心のある方たちや地元自治体の 意見を聞いて、修正します。住民などは、縦覧が終わってから2週間の間に意見を出 すことができます。
 それから、現地調査をし、工事をした場合の環境への影響を様々な方法で予測し て、『準備書』を作ります。調査は通常、最低1年(四季)か2年行われますが、今 回の新石垣空港の場合、事業者である沖縄県は、『方法書』作成以前にすでに調査を 始めています。これが環境影響評価法から見て不適当であることは、『白保メール』 No.36に書きました。『準備書』についても『方法書』と同様、1ヶ月間の縦覧と2 週間の意見提出期間があり、住民などの意見を聞いて修正し、『評価書』を作ります。
 『評価書』に対しては、環境大臣と事業を許可するかしないか決める権限のある国 土交通大臣とが意見を述べ、手直しが行われます。この意見の内容次第で、アセスメ ントのやり直しがされたり、場合によっては事業計画が見直されることもあります。
 沖縄県は、環境アセスメントは、2004年度一杯かかるのではないかとの見通しを示 していますが、アセスメントのやり直しや事業計画の見直しが必要となったら、これ では済まないでしょう。

[空港の設置許可]
 次に、航空法に基づく国土交通大臣の設置許可が必要です。地方自治体が設置する 場合は、空港整備法に基づき、設置と管理について議会が議決してから、設置許可申 請をします。新石垣空港の場合、沖縄県と石垣市の両方の議会の議決が必要です。ま た、『環境影響評価書』を縦覧しないと、事業には着手できないことになっており、 これまでの例では、『評価書』の縦覧後、設置許可申請が行われているようです。  地方自治体が設置する空港に対しては、国土交通省から国の補助金が出ますから、 実際は事前に基本計画の審査が行われ、国が認めた場合に、自治体が許可申請を出す ことになります。このように実質的な審査が済んでいても、申請後、公聴会開催など の手続きが必要なので、今までの例では、許可まで数ヶ月かかっています。国土交通 大臣は、環境アセスメントの結果も判断材料として、許可をするかしないか、決める ことになります。

[農地関係の手続き]
 今回の『カラ岳陸上案』の場合、農地、しかも、もっぱら農業に使わなければなら ない『農業振興地域の整備に関する法律』の『農用地』が含まれています。地方自治 体が行う空港整備事業の場合、転用ができますが、手続きは大変そうです。
 まず国土交通省の承認を得て、『県土地利用基本計画』を変更し、次に市が県と協 議して『農業振興地域』の区域変更を行います。さらに『石垣市農業振興地域整備計 画』の変更が必要ですが、農業委員会などの意見聴取のほか、変更の縦覧と異議申出 の受付け(合わせて45日間)などの手続きがあります。
 沖縄県が以前作った資料では、以上の手続きに設置許可後約1年4か月かかるとさ れていました。

[工事など]
 こうした手続きを終えてから、工事にかかることになります。人の土地に勝手に空 港を作るわけにはいきませんから、まず用地の買収が必要となります。しかも今回の 案では、カラ岳を削ることになっていますが、カラ岳は土地ころがしに関係した会社 が所有しています。交渉がそんなに簡単に進むでしょうか。
 工事の前には、詳細な設計=実施設計が必要です(大まかな設計=基本設計は、設 置許可申請までに行われます)。これにも、半年か1年かかるでしょう。  工事期間は6年程度と見込まれています。これも、梅雨時や台風のときに工事の中 断が続けば、延びる可能性もあるでしょう。

[10年はかかる?]
 こうしてみると、同時に並行してできる手続きや作業もあるでしょうが、順調に行 っても、空港ができるまでに10年程度はかかると見ていいのではないでしょうか。 これを長いと見るか、短いと見るか、人により様々でしょうが、私には「早期」とは 言い難いように思えます。
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、著作権は各執筆者に属します
。     引用される場合は、執筆者にお断り下さい。
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白保メール NO.37 02.11.21 発行者   鷲尾雅久 谷崎樹生 小林 孝       shiraho@estate.ocn.ne.jp



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白保メール NO.36  02.10.31
発行者:鷲尾雅久、谷崎樹生、小林 孝shiraho@estate.ocn.ne.jp
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 <環境アセスメント意見交換会>             鷲尾 雅久

 去る9月24日、しらほサンゴ村を会場に、『白保メール』主催の『環境アセスメ ント意見交換会』を開催しました。折から来島中の、環境アセスメント学会会長島津 康男先生を招いて開いたものです。
 はじめに、島津先生から、方法書とはどういうものか、この4月の『環境検討委員 会』第6回会合で参考資料として提出された『環境影響評価(素案)』をどう見るか について、お話しいただきました。

[方法書とは]
・環境アセスメントというのは、こういう事業なり開発をやったらこういう影響があ って、それに対し、こういう風に影響が少なくなるように努力するということを、事 業者が証明するもの。それのOKを出すかどうかは、手続き上は知事や大臣だが、実 はその根底にあるものは、住んでいる人がOKしたかどうかである。
・方法書とは、これからこういう調査をする、ということを事業者が示し、それに対 して、これが足りないとか、どうしてこう考えていないのかということを地元の方が 言うと、事業者が、それでは調査はこうしますと言って先へ進むための入口。方法書 は、試験の問題を決めているのであって、答を出しているのではない。


[新石垣空港「素案」は最悪]
・新石垣空港の方法書「素案」は、大体500ページある。方法書は100ページく らいにおさまるはずである。中を見ると、今までにやった調査がほとんどで、これか らする調査はごく少ない。これは環境影響評価法の精神に反している。
・もしこのままの形で出たなら、今日本で一番ひどい方法書だ。中身が正しいか正し くないか以前の問題である。答が出来ているものを、形式だけ出しても意味はない。
・内容を見ても、例えば、空港アセスの基本は気象データだが、これが完全に抜けて いる。随分今までにも調査をしているはずなのに、観測点の位置、調査計画について 書かれていない。やるところはやるが、やらないところは、ぜんぜん手をつけておら ず、偏っている。予想外の結果が出たときはどうするかも書かれていない。問題の多 い方法書である。


[地元では]
 島津先生からは、外からは、昔(『白保案』)と同じ場所としか見えない、それな のに、地元の発言があまりないようだ、地域の中ではどういう関心をもって見られて いるか、と質問がありました。
 参加した白保の住民からは、今まで、海を埋めるのは大反対で、海の汚染が問題だ と思っている。しかし今は赤土をちゃんと止めることができたら、いいんじゃないか ということで、安心感が住民にある。本当に空港ができたらどうなるかという怖さが 分からないのではないか、との発言がありました。
 これに関連して出席者から、赤土の汚染があるかどうかは、環境アセスメントをし てみないと分らない、それなのに沖縄県は、「赤土による海の汚染はありません」と リーフレットやホームページで宣伝しているとの指摘がありました。

[方法書にどう対するか]
  方法書については、島津先生から、これからどういう調査をするか、どこのデータ を取るのかということをチェックするような意見を出してほしい、とのアドバイスが ありました。
 参加者からは、アセスのことを知らない人が多いので、それを知れば、地元住民か ら、ここを調べてほしいという人も出てくるのではないか、との発言がありました。
 最後に白保メール発行者が、役所から出てくる文書は中味がなくて分かりづらい、 方法書が出されたら、それを分かりやすくかみくだいて紹介したい、と発言し、会を 終わりました。
 なお、島津先生から、方法書を読むにあたって、環境影響評価情報支援ネットワー ク・ホームページの『よりよいアセスに向けての提案集』の中の、『アセス助っ人 (市民からの環境アセスメント)』と『参加型アセスの手引き』を参考にしてほしい、 とのアドバイスがありました。 http://assess.eic.or.jp/
 また、新石垣空港の方法書「素案」についての島津先生の評が、環境技術研究協会 ホームページの『アセスメント情報』の中に、『沖縄での二つの空港アセスメント』 というタイトルで出ています。 http://www3.osk.3web.ne.jp/~riet/

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♯ 石垣島では、10月29日夕から30日夕にかけて、気象台で335ミリ、空港で は436ミリに達する大雨が降りました。床下浸水、道路の冠水・陥没、イネの倒伏と いった被害が出ています。赤土も大量に流出しています。
  沖縄県の考えでは、新石垣空港は10年確率の大雨(1日雨量で253ミリ、2日 雨量で324ミリ)を想定して工事をするそうですが、今回の雨はそれを超えています。
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白保メール NO.36 02.10.31 発行者   鷲尾雅久 谷崎樹生 小林 孝       shiraho@estate.ocn.ne.jp
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白保メール NO.35  02.10.09
発行者:鷲尾雅久、谷崎樹生、小林 孝shiraho@estate.ocn.ne.jp
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<第4回新石垣空港建設工法検討委員会>         鷲尾 雅久

 去る9月25日、那覇で第4回新石垣空港建設工法検討委員会が開かれました。傍聴 には行けませんでしたが、当日の資料等により、概要をお知らせします。

[雨水の地下浸透]
 前回の第3回委員会で、大雨が降った場合は一部しか地下に浸透しないというシミ ュレーション結果が出されたことへの対策として、盛土表面での浸透を促進する構造 とし、上部の浸透口の幅をできるだけ広くする考え方が示されました。
 一方、浸透しきれずに滞留する雨水の水深が、空港設備の設計指針との関係で検討 され、許容限界とされています。しかし、そもそもの始まりは、環境への影響を避け るため、「現在の水収支(雨水の浸透、表面流出、地下水の流れ)を極力変えないも のとする」というのが基本的な考え方だったはずです(『白保メール』No.21参照)。 全部浸透しなくてもいいというのは、方針の変更です。また、浸透しなかった水をど こに排水するかは、今回の資料では明らかにされていません。

[施工計画]
 今回の委員会では、工事エリアを区分し、6段階に分けて施工するという計画が示 されました。大まかに言うと、まずターミナル部分、次いで、下流域への雨水流出を 遮断するため海側から区切って盛土を進めることになっています。工事中、計画地周 囲に排水路を設けることも示されましたが、東側はカラ岳南東側の1箇所で海に直接 排水することとされており、大量の水が流入することがないか、チェックが必要でしょ う。
 用地造成期間は3年半とされました。滑走路やターミナルビルの工事も含めた全体 工事期間は6年ですが、マスコミ報道では、全部で3年半と取れるものがありまし た。正確な報道を期待したいものです。
 施工上注意の必要なものとして、計画区域周辺の動植物への環境上の配慮などのほ か、海域等に対する環境上の配慮が挙げられていますが、影響を与える項目として、 赤土流出だけが取り上げられています。しかし、環境検討委員会では、海底に湧出す る地下水の減少や地表からの淡水の流入の影響も、指摘されていました。

[赤土流出対策]
 前回委員会で、「赤土等対策の基本方針」が出されましたが(『白保メール』 No.31参照)、工事中はモニタリング委員会を設置して赤土対策が機能しているか確 認し、供用後は事後評価委員会を設置する、という改訂が示され、了承されました。 しかし、モニタリング委員会の環境検討委員会との関係は不明確ですし、現地に設置 するのでなければ、意義は薄れるでしょう。
 濁水処理は、機械処理脱水方式を採用するとされました。醤油や酒を絞って糟と分 けるときのように、フィルタで漉すというものです。3ヶ所に設置し、一番大きなも のは、処理能力0.3立米/s(1,080立米/h)、敷地面積3,300平米という巨大なもので す。このような規模の施設でも、沖縄の赤土での効果が実証されているのでしょう か。豪雨に備え、大規模な「雨水調整池」を設置するとされていますが、処理装置が 期待通り働かないと、濁水が流出することになります。ここで実験してみるというわ けには行きません。
 また、機械処理とはいえ、前段階では凝集剤を使うことが想定されているようで す。このほか、表土保護のために土壌団粒化剤も使うとされています。こうしたもの の環境への影響も慎重に検討すべきでしょう。

[評価は環境アセスメントで]
 一番重要なことは、これらの工事の環境に与える影響については、すべて、環境ア セスメントの中で予測、評価されるべきだということです。しかし、今回は、環境ア セスメントには何ら触れられていません。環境アセスメント軽視は相変わらずのよう です。
 沖縄県は近く環境影響評価方法書の公告縦覧を行うつもりのようですが、この工事 内容も、方法書の中に明記すべきです。どのような方法書が出されるのか、注目した いと思います。

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白保メール NO.35 02.10.9 発行者   
鷲尾雅久 谷崎樹生 小林 孝       shiraho@estate.ocn.ne.jp




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白保メール NO.34  02.09.18
発行者:鷲尾雅久、谷崎樹生、小林 孝shiraho@estate.ocn.ne.jp
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 <部分と全体>                   
                         谷崎 樹生
 川の勉強をしていたとき一番驚いたのは、沖縄の川のような小さな川でさえ流域全 体を把握している人がどこにもいないということでした。例えば新川川(あらかわが わ)では、本流は二級河川ですから河床から土手までは県が管理しています。ところ が本流沿いの道路は市道で市の管轄です。さらに、支流や排水溝に至っては、土地改 良区や市有地・個人有地の中を通っている場合もあり、管理責任がどこにあるのかよ くわからず、放置されているというのが現状です。
 水は上流から下流に流れますから河川改修も上流側から行えば良さそうなものです が、なぜか河口からさかのぼっていきました。上流で土地改良が進み、遊水池やドリ −ネなどの浸透地形が無くなって、コンクリートの排水溝が整備されると、大雨が降 れば一気に水かさが増えるので、下流側では洪水対策のために河川の断面積を増やす 改修工事が必要になってくるということが繰り返されているようです。
 これではいつまで経っても川は完成しません。川に限らず、どうもこの国の役所に は、街の完成・港の完成・河川の完成・風景の完成などという「完成イメージ」がな いようです。だからこの国はいまだに未来に向かって果てしなく発展し続けることが できるという幻想を追い求めているのかも知れません。
 話を川に戻しましょう。河川の流域面積は大規模な土地造成工事や地殻変動がない 限り変わらないものですし、流域に降る雨の量も極端な異常気象でも起こらない限り 急増することはないでしょう。ならば、流域全体で水をコントロールする工夫さえす ればいつまでも河川改修を繰り返さなくても済むはずです。
 土地改良の嵐にさらされた石垣島でも所々に取り残されたような原風景が残ってい ます。土地改良に反対する頑固な地主の土地です。そのような土地では、地主は自分 の土地の役割を充分に心得ていて、無茶な改変に反対しています。自分の土地に湿地 や遊水池が有れば、それを埋め立てて農地にした場合、周りにどんな悪影響を及ぼすかをちゃんと心得ているので「土地の有効利用」という偽物の合理主義者の誘いには 易々とは乗りません。いくら自分の土地でも、して良いことと悪いことをわきまえて いるのです。
 「個人の力では小さな部分しか管理できなくても、全体の中での部分の役割をわき まえることで、全体に良い影響を与えることができる」このような考え方は、私達 「白保メール」のようなささやかな抵抗勢力?のよりどころにもなっています。
 さらに私達は、土地の役割という空間的なとらえ方だけでなく、時間の流れの中で、 今私達が生きている時代に個人が果たすべき役割(大げさに言えば歴史的な責任)に ついても考えなければなりません。
 この島の長い歴史の中で、たまたまこの時代に居合わせた幸せに感謝しつつ、島の 未来が全体の幸福につながるようにささやかな努力を続けていきたいと思っていま す。
 今、この島には大規模なリゾート開発計画が3つも有ります。どれも似たり寄った りで、どこにでもありそうなリゾート団地とゴルフ場の組み合わせです。どの計画も 新空港の着工を待っているようで、今のところ具体的な動きはありませんが、将来 「リゾート遺跡」にしかならないようなものは作らないのが賢明です。
 この島では、役所も政治家も経済界もマスコミも大きなものをありがたがる性癖が あるようです。ゴミ焼却施設も複雑で巨大なものを作ってしまったので、焼却ゴミを 減らすことができても経費の削減にはならない維持費の塊のような施設を抱え込んで しまいました。ゴミに関しては、近い将来「島ぐるみのゼロエミッション」を実現す べきですが、全体像をイメージできる人がどこにもいないという状況です。  大きなものを作ってしまって持て余すより、状況の変化に素早く対応できる小回り のきく小さな施設を効率的に運用する方が得策だと思うのですがいかがでしょうか?  役所や政治家に島の完成イメージがないのなら、私達で島の未来について具体的な ビジョンを描き、夢の実現のために地道に小さな一歩を踏み重ねていくしかありま せん。

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 <<環境アセスメント意見交換会を開きます>>

 新石垣空港の環境影響評価方法書の公告縦覧が、この秋にも行われようとしていま す。また、このところ相次いで、リゾート計画の環境アセスメントが始まっています。
 このたび、環境アセスメント学会会長・島津康男先生が来島されるのを機会に、島 津先生を囲んで、意見交換会を開くことにしました。奮ってご参加ください。

1 日 時  9月24日(火) 午後7時から
2 場 所  しらほサンゴ村(WWFジャパンサンゴ礁保護研究センター)
       石垣市白保118 T.09808-4-4135(よいさんご)
3 主催   白保メール  
準備の都合上、参加される方は、できるだけ事前にメール等でお知らせください。
もちろん当日思い立っての参加も大歓迎です。         

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白保メール NO.34 02.9.18 発行者   鷲尾雅久 谷崎樹生 小林 孝       shiraho@estate.ocn.ne.jp

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白保メール NO.33  02.08.28
発行者:鷲尾雅久、谷崎樹生、小林 孝shiraho@estate.ocn.ne.jp
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<カグラコウモリ3000頭の意味>    
小林 孝       WWFジャパン「しらほサンゴ村」

 今年4月16日に那覇で行われた第6回新石垣空港環境検討委員会で、新空港予定 地のゴルフ場内に新たな洞窟が発見され、そこにはカグラコウモリ3000頭が生息 していることが報告されました(『白保メール』No.24で既報)。カグラコウモ リ3000頭がいるということの意味を、すこし吟味してみましょう。

[新空港予定地内の洞窟に稀少小型コウモリ類が生息]
 おさらいをしてみましょう。新空港予定地のゴルフ場内には、当初A,B,Cの三 箇所の洞窟があることがわかっていました。そこに生息するコウモリ類だけに着目す ると、A洞窟には、カグラコウモリ(以下はカグラと表記)約100個体、ヤエヤマ コキクガシラコウモリ(以下はコキクガシラと表記)約50個体、リュウキュウユビ ナガコウモリ(以下はユビナガと表記)約200個体が休息していることが確認され ました。またB洞窟には、コキクガシラ3個体、C洞窟ではコキクガシラ1個体が確 認されたことが報告されています。つまりA洞窟での確認数が予定地内の洞では最大 で、地形も奥行きが約210mあり、一番大きいものでした。ちなみに石垣島では、 小型コウモリ類は、この3種だけが確認されています。これらの調査報告は、すべて 沖縄県の新石垣空港建設対策室から発表されたものです。

 この3種のコウモリは、環境省レッドデータリスト(日本の絶滅のおそれのある野 生生物)では絶滅危惧1B類に分類されています。1B類とは、1A類<ごく近い将 来における野生での絶滅の危険性が極めて高いもの>ほどではないが、近い将来にお ける野生での絶滅の危険性が高いもの、と定義されています。
 また沖縄県環境保健部自然保護課が編集・発行している「沖縄県の絶滅のおそれの ある野生生物」では、コキクガシラは絶滅危惧種<絶滅の危機に瀕しているもの(概 念:現在の状態をもたらした圧迫要因が引き続き作用するならば、その状態の存続が 困難なもの)>、カグラとユビナガは危急種<絶滅の危機が増大しているもの(概念: 現在の状態をもたらした圧迫要因が引き続き作用するならば、「絶滅危惧種」のラン クに移行することが確実と考えられるもの)>と分類されています。

[石垣島全体の小型コウモリ類、1382個体]
 さて、その後、石垣島全域でコウモリ類の2000年度予備調査として、新空港予 定地以外の洞窟調査がなされました。島内のどこに洞窟があるかは、聞き取りや現地 踏査で確認されました。その結果、自然洞20箇所、人工洞26箇所の合計46箇所 の洞のうち、コウモリ類の生息または生息の痕跡が確認されたのは、自然洞が12箇 所、人工洞が19箇所、生息していたコウモリ類は全体で、カグラ318個体、コキ クガシラ554個体、ユビナガ510個体、合計1382個体となっています。この データは、2001年3月の第2回新石垣空港環境検討委員会で発表されたものです。 [新たな洞窟で3000頭のカグラコウモリ]  石垣島全域での稀少コウモリ類の生態が多少把握できてから1年経った2002年 4月の第6回環境検討委員会で、コウモリ類に関する重要な発表がなされました。

 予定地周辺に新たな洞窟(仮にD洞窟としておく)が発見され、そこにはカグラが 3000頭というオーダーで生息していることが確認された、というのです。一年前 の発表では、予定地外の石垣島全体で1400頭弱の稀少コウモリが生息していると いうデータが提示されたわけですが、それをはるかに上回る数の個体が、新たに発見 された洞窟を利用していることがわかりました。D洞窟の場所は明確には示されませ んでしたが、新空港予定地の海側にあるようです。  恐らく調査を重ねれば、コウモリの生態に関するデータはどんどん更新されてゆく でしょうが、取りあえず石垣島で最大級の生息数を数える洞窟が、新空港建設予定地 内か、そのすぐ周辺にあることが明らかにされたわけです。

[狭められている生息環境]

 石垣島の平野や台地は、隆起したサンゴ礁が作り上げた陸地がほとんどです。地質 が水に溶けやすい石灰岩なので、地下水によって溶かされた地中の水路が地下水位の 低下によって洞窟になることが多い、という地質的な特徴があり、もともとは洞窟が 多い地形でした。しかし土地改良によって、自然洞がかなりの勢いで壊されていき、 それらの洞を利用していた小型コウモリ類は、生息場所が狭められてきているのが現 状でしょう。そうしたなかで、カグラだけでも3000頭が生息している洞窟の存在 が、どれだけ大切な意味を持っているのか、容易に想像できると思います。

 小型コウモリ類は、自分たちが生きる環境に対し、かなりデリケートであると聞い ています。新空港建設によって、そうした洞窟が残されたとしても、地下水脈、湿度 などの環境が変化し、ジェット機が離発着する振動などの要因が加わった場合、彼ら の生存権はどう保証されるのでしょうか。  そうした問題を把握するために、現在環境アセスメント調査の方法書を作成してい るところです。実際には予備調査と称する本格調査が行われていますが、どのような 調査をすれば、例えばコウモリ類への影響が予測できるのか、その内容を厳しく見定 めるのが現段階での重要な作業だと考えます。

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白保メール NO.33 02.8.28 発行者   鷲尾雅久 谷崎樹生 小林 孝       
shiraho@estate.ocn.ne.jp

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白保メール NO.32 02.08.15
発行者:鷲尾雅久、谷崎樹生、小林 孝shiraho@estate.ocn.ne.jp
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 ‥‥白保メール 1周年‥‥  
 昨2001年8月15日に石垣島在住の三人が『白保メール』を発刊して、ちょう ど一年経ちました。
 公式見解ばかりが幅を利かせ、一人一人の思いが表明されることの少ないかに見え るこの島で、「個人の資格と責任で」発言することを基本に置いて、おおむね隔週の 頻度で発行してきました。読者の皆様の御声援と御愛読に感謝しております。
 この一年を振り返り、発行者三人がそれぞれ、今思うことを書いてみました。

 <進路決定>                     谷崎 樹生
 この一年、私達白保メールのメンバーはそれぞれの立場で八重山の望ましい未来に ついてみなさんに正しい判断をしていただけるよう、正確な情報を提供し、具体的な 提言もしてきました。
 私達三人の考えは基本的に一致しています。新空港の建設は島の自然環境だけでな く、社会環境をも大いに混乱させる危険性があることは明らかですから、現空港の改 良がもっとも現実的な選択肢であるということです。効果的な騒音対策を何も施して いない現空港の現状をこのまま放置して良いわけがありません。
 現在、八重山では役所・政治家・経済界・マスコミが、こぞって「郡民の総意で新 空港の実現を!」という気運づくりに躍起になっていますが、世の中の流れを決める のはいつの時代でも「大衆」なのだということを忘れてはいけません。
 金と権力を持った一部の人がマスコミなどあらゆる機会を利用して世論を操作し、 大衆を誘導しようとするのが世の常で、愚かな大衆がまんまとそれに乗せられてしま うというのがこれまでのこの国の姿でした。しかし、時代は変わらねばなりません。
 私を含めて金も権力も持たない愚かな大衆は、いつまでも愚かであってはいけない! そう思います。八重山の人と社会と自然にとってどのような未来がもっともふさわし く、望ましいのかを、大衆の一人として私達が自分で考え、自分で判断せねばなりま せん。  島の進路を決めるための正しい判断をしていただくために「白保メール」があなた のお役に立てることを信じています。

 
<新石垣空港が島にもたらすものとは?>        小林 孝
 石垣島北部のいわゆる過疎地域に、新たなリゾート計画が興っています。おそらく 新空港が出来るという前提で、本土資本がお金儲けのために動き出したのでしょう。 本土の資本によるリゾート施設であれば、そこで観光客が落としていったお金は、本 土に逆戻りです。石垣島は、本土の資本を肥やすために、自分たちのたぐいまれな自 然環境が残る楽園を提供し、あとは「まぁいいさぁ」で済ませてしまうのではないか。 そんな懸念が頭をよぎります。
 現在、沖縄ブームであるようです。しかし、表面的な沖縄人気が高まっているだけ でしょう。ブームというものは大抵がそうですが。「沖縄ブーム」の流れの中でも、 結局は沖縄がヤマトゥに利用されているだけではないか。この島にやってくる来訪者 の中にも、「人の島にお邪魔している」という感覚に欠けた無作法な人々が、今年は 特に目についています。
 新空港が完成すれば、そういう無遠慮な人や資本が流れ込み、この島の「素朴で純 情」な体質が、ずたずたにされてしまうのではないかという心配が、最近さらに強く なっています。「考えすぎだ」という島の人もいらっしゃいますが、本土の資本がど ういうものか(最近では食品会社の不祥事が続いていますが、日本の企業というのは 多かれ少なかれあのような体質でしょう)を知っている身としては、この心配は当た らずといえど遠からず、と懸念しています。だから、この島をそうした被害から遠ざ けるためにも、新空港問題の本質論議をしたいものです。自分たちとは意見が違うよ そ者を黙らせるための「シマンチュvsナイチャー」という論点のすり替えでは、新 空港問題が抱えるさまざまな疑念が解決しないことは明らかでしょう。
 この島の幸せな未来のために、もっと真摯にやるべきことがあるはずです。

 
<与那国にジェット機が飛んで>           鷲尾 雅久
 3年前、1999年の7月16日は、与那国空港にジェット機が就航した日でした。滑 走路をかさ上げして強度増加を図り、それまで飛んでいたYS-11型機に替えてボーイ ング737型機が飛ぶことになったのです。  当時の新聞によると、与那国町長は、ジェット機就航を「島の発展を担うもの」と して歓迎し、「町民生活への貢献だけでなく、水産物などの物資の搬送や観光客誘致 の面での貢献は計り知れない」と述べたといいます。沖縄県八重山支庁長も似たよう なあいさつをしています。
 しかし、ジェット機就航で乗客定員が2倍に増えたため、1日2往復あった石垣路 線は1往復に減らされました。利便性の低下は明らかでした。
 それまでほぼ増え続けてきた飛行機の旅客数が1999年度には減少したため、2000年 7月から急きょ39人乗りのプロペラ機を週3往復ずつ石垣間及び那覇間に追加就航さ せました。しかし、2000年度の旅客数は1995年度をも下回っています(2001年度は未 発表)。入域旅客数も減り、2000年下半期は、90年以降で最低となっています。ジェッ ト機就航で観光客誘致を目論んだはずが、むしろ観光客にそっぽを向かれるという、 皮肉な結果となったようです。貨物量の方は1999年度に増加しましたが、2000年度に は減少しており、これも期待に応えてはいないように見えます。
 問題は、こうした事態は当然予見されたはずだということです。「バラ色の夢」を 振りまいた人達はどう釈明するのでしょう。
 同様な「バラ色の夢」が新石垣空港についても言われています。それも、冷静に考 えれば、多くは「夢」に終わる可能性のあるものです。  新石垣空港の環境に対する影響の予測評価(アセスメント)はこれから始まります が、同時に、社会、経済面でのアセスメントが求められていると思います。

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    引用される場合は、執筆者にお断り下さい。 ^~^~^~^~^~^~^~^~^~^~^~^~^~^~^~^~^~^~^~^~^~^~^~^~^~^~^~^~^~^~^~^~^~^~^~^~^~^~
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V..v 白 保 メ ー ル│\ Mar.20.2002
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白保メール NO.31 02.08.1
発行者:鷲尾雅久、谷崎樹生、小林 孝shiraho@estate.ocn.ne.jp
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<第3回建設工法検討委員会>              鷲尾 雅久

 去る7月8日、那覇で第3回新石垣空港建設工法検討委員会が開かれました。事前 に開催を知ることができなかったため、傍聴に行けませんでしたが、沖縄県ホームペー ジで公開された議事録速報等により、概要をお知らせします。 [雨水地下浸透のための2案]  前回の第2回委員会では、地下水への影響を極力避けるため、雨水を地下に浸透さ せる3つの盛土設計案が提示されました(『白保メール』No.21参照)。
(第1案)部分的に透水性が高い琉球石灰岩の積層区域を作り、地下へ導水するもの
(第2案)鉛直ドレーン杭と呼ばれる、琉球石灰岩を充填した導水のための柱を地下 に多数設けるもの
(第3案)滑走路・誘導路以外は、現状と同じ琉球石灰岩を全面的に盛土するもの  これについては、シミュレーションが必要との意見が委員から出され、検討は今回 に持ち越されていました。

 今回は、(第3案)は、切土したが盛土材としては使えず残土として処理せざるを えないものが多く出るため除外され、(第1案)と(第2案)についてのシミュレー ション結果が示されました。結論は簡単に言えば、降雨量の少ないときは、どちらの 案でも大部分を地下に浸透させることができ、現状の地下水位をほぼ維持できるが、 大雨(10年確率降雨)が降った場合は現状の数%から10%しか地下に浸透せず、降雨 直後の地下水位は盛土をしない場合に比べ1メートル程度下がる、というものです。

 しかし、これについても、委員から質問が多く出され、次回これへの回答を整理し た上で再検討することになりました。 [赤土対策の基本方針]  今回は、「赤土等対策の基本方針」が示されました。主な内容は以下のとおりです。

1) 濁水の発生を抑制するため、多雨時には盛土・切土工事を集中させないようにす ると共に、広域的な切土や長期間の裸地状態を避ける。また緑地の維持創出を図る。
2) 計画地外の雨水は、計画地外周に水路を設置して区域内への流入を防ぎ、工事区 域内外の表流水を分離する。
3) 盛土・切土地域で発生した濁水は、沈砂池に一時貯留させ、排出濃度を1リット ル当たり25ミリグラム以下に抑えた上で、琉球石灰岩で形成する「浸透ゾーン」で地 下浸透させる。現況で轟川に流下している区域は、轟川への放流を行う。
4) 降雨の条件は、工事期間が6年と見込まれることなどから、10年降雨確率規模と 設定する(これで、過去29年間の全日降雨量の99.9%をカバーできるという)。
 新聞報道などでは、県赤土等流出防止条例では、濁水濃度を200ミリグラム以下と 定めているが、空港計画地東側の白保海域にさんご礁が広がっていることから、自然 環境に配慮して、厳しい基準を設けた、とされています。
 しかし、「濁水の排出濃度1リットル当たり25ミリグラム以下」というのは、1997 年に、当時計画化が進められていた『宮良案』の検討の中で、すでに決定されていた ものです。目新しいものではありませんし、これの水生生物への影響は別に検討しな ければなりません。
 また、この日の説明では、この基準達成は自然沈澱では難しく、専用の処理機や凝 固剤など薬品による処理が必要となる、とされています。凝固剤などの使用の影響に ついても、今後慎重に検討する必要があるでしょう。
 委員からは「工事後、赤土流出や地下水の状況をモニタリングするフォローアップ 委員会を設置すべきだ」といった意見や、「沈砂池で処理するだけではなく、芝や緑 地の保水力を生かす流出抑制策も盛り込んでほしい」といった意見が相次ぎましたが、 委員の意見を踏まえて次回までに正副委員長と事務局で修正することを前提に、基本 方針を了承しました。

 なお、県側から、次回(第4回)の委員会は、8月開催予定で、工事段階ごとの赤 土流出対策を示し、赤土処理設備の検討もしたいとの説明がされました。 [県ホームページでの議事録公開]  7月16日から、沖縄県がホームページ上(アドレスは下記のとおり)で新石垣空 港環境・建設工法検討委員会の議事録を公開しています。ただし、今回の第3回工法 委員会は速報として要旨だけです。環境検討委員会は6回のうち3回までの分です。
 しかし、残念なことに、委員会での配付資料は載っていないので、公開の意味が半 減しています。これは審議の前提となるものであり、読む人にとってもこれがないと、 発言の趣旨が理解できない場合があるでしょう。是非載せてほしいと思います。  また、委員名が明記されていないのも、問題だと思います。委員は、自らの専門性 と良識をかけて発言していると思いますから、名前を出しても何の問題もないはずで す。再考を求めたいと思います
。  今回は、委員会が開催されることを事前に知ることができませんでした。委員会議 事録をホームページで公開するのなら、開催のお知らせも載せ、いちいち問い合わせ なくて済むようにしてほしいものです。


(沖縄県新石垣空港建設対策室ホームページアドレス)



http://www.pref.okinawa.jp/shin-ishigaki/ ^~^~^~^~^~^~^~^~^~^~^~^~^~^~^~^~^~^~^~^~^~^~^~^~^~^~^~^~^~^~^~^~^~^~^~^~^~^~ ♪ 
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 <意見書への回答>      小林 孝  WWFジャパン「しらほサンゴ村」

 新石垣空港環境検討委員会に提出された環境影響評価方法書(素案)に対し、小林・酒井両委員の連名で、意見書を提出したことは、白保メールNo.28でお知らせしまし
た。
 この意見書に対する回答が、沖縄県土木建築部新石垣空港建設対策室の糸数室長から届きましたので、その内容をお知らせします。

■意見1=サンゴ礁の生態系調査項目の追加(要旨)
 方法書(素案)の「環境影響評価の項目並びに調査、予測及び評価の手法」の章の、生態系の項目に「サンゴ礁生態系」の項目を加えてください。

■回答(全文)
 海域における生態系の予測にあたっては、基本的に水生生物(海域)の調査結果と海底地形、水質・底質、流れ等の物理的・化学的項目の調査結果を適宜利用し、サン
ゴ礁内に構成される生物種間、生息環境の関係について解析していきたいと考えております。
 平成14年度の調査では、ご指摘のとおり、生物の生息場となるサンゴ類、海藻草類の生息・生育の状況を被度で把握するとともに、サンゴ群落や藻場に生息し、食物連鎖の中で上位に位置する魚類に着目して、魚類の群集組成や現存量を調査していく考えです。
 方法書では、上記の趣旨を踏まえて、生態系の項目に「サンゴ礁」を追記し、生態系として調査・予測していく旨を記述しました。

■意見2=方法書の公告縦覧について(要旨)
 環境影響評価方法書の公告縦覧にあたっては、(1)方法書は早期に環境検討委員会各委員に配布し、同委員会の了解を得てから公告縦覧に供してください。(2)公告は全国新聞紙上でも実施してください。(3)縦覧の場所は、県庁、八重山支庁、石垣市役所の他、在東京等の沖縄県事務所にも設定し、縦覧用の部屋を設けてください。
(4)充分な量の方法書を用意してください。(5)有償で構いませんから複写の便宜を図ってください。

■回答(全文)
(1) 環境検討委員会は、環境影響評価の手続きを進めるにあたり、適切な指導・助言を得ることを目的に設置されたものであります。
 方法書等は、事業者の責任でもって作成し提供していくことになりますが、委員の方々から頂いたご意見は、可能な限り反映していきたいと考えております。
 なお、方法書(素案)は現在、関係部局と調整中であり、方法書(案)が整い次第、公告・縦覧前に委員の皆様には配布したいと思います。
(2) 方法書についての公告は、環境影響評価法第7条及び同法施行規則第1条の規定に基づき、新石垣空港建設事業を進めるに当たって影響を受ける範囲と考えており、地元石垣島の八重山毎日、八重山日報の2社及び本県の琉球新報、沖縄タイムス社の計4社に限らせて頂きます。
(3) 方法書の縦覧場所は、環境影響評価法第7条及び施行規則第2条により、県庁、八重山支庁、石垣市役所での縦覧を考えております。縦覧は専用の部屋を準備するには無理がある事から、廊下や空いているスペースを利用して行い、テーブル、イスを
準備して対応したいと思います。
(4) 複数冊は準備し、貸し出し用も行う予定です。
(5) コピー機の準備はできませんが、貸し出し用を利用し複写して下さい。

 という回答文でした。意見1については、当然といえば当然の、方法書の“生態系の項目に「サンゴ礁」を追記する”との答えを得られました。その調査内容については、方法書(案)を見るまで不明です。それを見て、不備があれば、再び小林・酒井
の両名が提言することになると思いますが、公告・縦覧の際には、是非皆さんからも提言をしてください。
 意見2に対する回答では、公告・縦覧前に「方法書(案)」が環境検討委員に配布されることが明言されました。これまで事業者からの回答があいまいだった件が、こうした答えで明らかになったことは、一歩前進です。縦覧の方法については、これでも沖縄県ができる精一杯のところなのでしょうか。

 公告・縦覧の時期ですが、回答の中にもあるように、現在「方法書」について関係部局と調整中であり、それがいつ調整終了となるのかが事業者にも明確にはできない模様です。おそらく8月中の公告・縦覧を目指しているとは思いますが、9月にずれ
こむのかもしれません。
        
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Jul.3.2002 >>∈∋<< v..V        。
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//転載歓迎//  
<新しい夢>                  しまの めぐみ

市長選のあとに次のような会話が聞こえてきました。
「カラタケにカンムリワシの巣があるらしいが、それよりさっさと新空港をつくってほしい」
「そのうちハブも保護しろっていいだすだろう」
「市長再選、残念だ。何も変わらない。不景気をなんとかしてほしい」
彼らが新空港建設の恩恵に浴することができるのかどうかよくわかりませんが、金は天下の回りもの、いずれは回ってくるのかもしれません。
しかしハブの保護とは、なんと先を見通した鋭い視点だろうと思いました。
あとでこの時の会話を思い返してみると、どうやら現状に飽き飽きし、そして退屈して、行き詰まり、 やり場のない怒りを抱えた「愚痴」の一種ではないだろうかと思われるのです。
そのような状態を体験しているのは、もちろん彼らだけではありません。
私を含めて、他たくさんの友人が多かれ少なかれ、狭い島社会の中で様々な立場で飽き飽きしたり、行き詰まったり、やり場のない怒りを抱えたりしてい ます。
そして「変化」を求めたくなります。 市長交代とは違って「新空港建設」は変化にしても、夢にしても、目標にしても、 比べものにならないくらい壮大で、スケールがでっかいのです。
そして工事は何年も続き、その間ずっと夢が見られるのです。
新空港建設→工事バブル→活気→地場産業の活性化や観光客数の増加 劇的な変化を期待でき、思い描く夢の数も増えます。
しかしながら、新空港はなかなかできず、20年以上もの歳月が経ってしまいました。
そしてその間に時代の流れも随分変わりました。
見ている夢は誰かが作った張り子の虎で、 虎はただの紙くずになるかもしれない、とも囁かれるようになりました。
新空港完成後に本当に夢を手にする人間がどのくらいいるのだろうと、 そして手に出来ない人は、こんどはどんな夢が見られるんだろう。
夢やぶれて、酒と愚痴におぼれて美崎町をさまよう人の数が増えたりするんだろうか ・・ そんなことを心配してしまいます。
そしてこの大きな夢が随分色褪せてさみしくみえるのです。
今一度、新空港建設だけに夢を託すのではなく、 なにか新しい目標を持って、それに向かって夢を見ながら実現に向けて頑張れたら! と思うのです。
その新しい目標は新空港よりも夢があって、 スケールも世界規模でなくてはなりません。
島にとって大きな利となり、郡民が心をひとつに出来て、 誰も反対する理由の無いような、大きな目標と夢。 誰にでもわかりやすくて、誇りを持てるような。
そこで私が思いついたのは八重山全域の「世界遺産」登録です。
「世界遺産」の中には「自然遺産」「複合遺産」という項目もあり、 八重山は世界遺産登録を目標にねばり強く頑張り続ければ、 全く手が届かない話ではないくらいの豊富な資質を持っています。
沖縄のサンゴは世界中のダイバーが絶賛するというではないですか。
豊かな自然環境だけではもちろんありません、それと共に生きてきた人々の文化、 伝統、芸能、国の天然記念物、日本中が注目する沖縄の長寿も食材も 今度は世界が注目するのではないでしょうか。
それに世界遺産はわかりやすいし、有名だし、観光客が世界中から来るかもしれない。
私が思いつくくらいなので、誰でもきっと知っている。
そのうち気が付いたら「新空港建設」と言うことが時代遅れになってしまうかもしれ ない。
声高に叫ぶのは「利」のある人達ばかりという様になっているかもしれない。
「世界遺産登録」はまだひとつの小さな夢に過ぎません。 けれど私たちが、新空港建設から自由になれたとき、 もっともっと、新しい夢と新しい未来が現れてくるかもしれません。
先日、地場産業についての話題の中でひとりの友人が言いました。
「発想の転換こそが大切なんだ!」 発想の転換!これからの八重山に必要なのは、まさにこの発想の転換かもしれません。
夢と未来を一心に託した新空港建設という巨大公共事業から発想を転換して、 違う未来と新しい夢を見ることができたら、、、 それこそが、とても大きな変化を島にもたらすのではないでしょうか。

 <<しまのめぐみさんの自己紹介>>
(今回は、石垣島在住のしまのめぐみさんに寄稿をお願いしました。お願いついでに、 自己紹介もしていただきました。)
東京から移住して約10年くらいになります。
趣味は飲むこと食べること、散歩、 水泳そしてシュノーケリングです。
石垣島は食べ物とお酒がおいしく、散歩するたび に新しい発見があり、一年中泳げ て、最高です。
なのに時々自分も観光客になってどこか(他の)リゾートにいきたい?と思ったりす ることもあります。しかし帰ってくるとここが一番好きと思います。
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//転載歓迎//                   
                      
<環境アセス方法書(素案)への意見書>   小林 孝 Fジャパン「しらほサンゴ村」  

4月16日に行われた第6回新石垣空港環境検討委員会が、新石垣空港環境アセス の方法書作成に関する最後の委員会になることなどを、白保メールNo.24でお知らせしました。ただ環境検討委員に配布された「新石垣空港建設事業に関する環境影響評 価方法書(素案)」について意見があれば、5月中旬まで受け付ける、という事務局からの説明があったことも記しました。
 この「方法書(素案)」は、第1章:事業者の氏名及び住所、第2章:対象事業の目的及び内容、第3章:対象事業実施区域及びその周囲の概況(つまり新空港建設予 定地周辺の調査データ)、第4章:環境影響評価の項目並びに調査、予測及び評価の方法、という構成の500頁に及ぶ膨大な資料です。
その第4章の中の生態系についての項目中に、サンゴ礁環境の生態系について触れられていないことが大変気懸かりでした。例えば、カンムリワシ、コウモリについて は、生態系を把握するための具体的な調査内容が書かれています。一方、海に関して一切触れられていないのは片手落ちではないだろうか、と思ったのです。そのレベル の調査が、サンゴ礁に関しても必要です。
 それで、同委員会委員である小林と酒井委員(琉球大学助教授:サンゴ礁生態学が連名で、次の意見書を作成し、事業者である沖縄県、同委員会香村委員長、および 各委員に送付しました。

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2002年6月1日 沖縄県知事 稲嶺 恵一 様
          
新石垣空港環境検討委員  小林 孝  酒井 一彦

新石垣空港環境影響評価方法書(素案)について、ならびに公告縦覧の方法について の意見書  

新石垣空港環境影響評価方法書の内容について、また公告縦覧の方法について、下記のように提言いたします。
○第四章:「環境影響評価の項目並びに調査、予測及び評価の手法」に関して  この章の4−54頁から始まる(生態系)の項目に、「サンゴ礁生態系」の調査を、 項目として加えてください。
 新石垣空港カラ岳陸上案については、世界的に貴重な白保のサンゴ礁環境保全が、 最優先にされる課題のひとつであることは明らかです。しかし、その生態系の「調査 及び予測の手法」(水生生物)の項目に、サンゴ礁が含まれていません。
 生態系については、カンムリワシ、コウモリ類について調査手法が具体的に書かれ ています。一方で、陸域の開発による影響が甚大であると考えられる海域の生態系に ついて触れられていないのは、明らかに環境影響評価方法書としては不十分です。
 陸域では「生態系上位種」としてカンムリワシを位置づけ、カンムリワシを頂点と する食物連鎖の中で底辺となる動物として土壌生物について、生態系の調査手法が記 述されています。確かに「生態系上位種」をサンゴ礁海域で調査することは難しいこ とかも知れません。しかし、陸域で「地域を特徴づける生態系」の指標となる注目種 としてカンムリワシとコウモリ類が取り上げられているように、環境省が定義してい る「典型性」生物として、サンゴ礁を特徴づけるサンゴと魚類、またサンゴと並んで サンゴ礁生態系の基礎生産者として重要な海草と海藻を定量的に調査し、相互の量的 な関係や環境要因との関係を分析することで、サンゴ礁生態系としての分析が可能に なると考えます。
○環境影響評価方法書の公告縦覧の方法について
 環境影響評価方法書の公告縦覧の方法については、環境検討委員会でも要望してま いりましたが、再度、以下のようにお願い申し上げます。 ・方法書は、公告縦覧前の早期に環境検討委員会各委員に配布し、同委員会の了解を 得てから、公告縦覧に供してください。
・公告は全国紙新聞紙上でも実施してください。
・縦覧の場所は、県庁、八重山支庁、石垣市役所、在東京等の沖縄県事務所、などに も設定してください。また各場所に、縦覧専用の部屋を設けてください。
・充分な量の方法書を用意し、縦覧者にはスムーズな貸し出しが行われるよう配慮し てください。
・各縦覧場所にはコピー器を用意し、有償で構いませんから、複写の便宜も図ってく ださい。
以上、方法書の公告縦覧が、意味のあるかたちになるよう、強くお願いを申し上げる 次第です。

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こういう内容の意見書を提出したのです。後日、沖縄県新石垣空港建設対策室からは、1)サンゴ礁生態系の調査項目を出来るだけ方法書に盛り込む、2)方法書の縦覧場 所についての全国展開はしない、という口頭での返事を貰いました。  いずれにせよ、各委員からの意見や提言を反映させた方法書が完成し、関係主務省庁との調整が済むと、公告縦覧となるわけです。その時期は、7月が予定されていま したが、県の担当者の口ぶりからすると、どうも大分遅れそうな様子でした。また,新石垣空港建設工法検討委員会が7月に開催され、その後に第7回環境検討委員会が 開催されるという流れになっているようです。しかしその予定も、「何時とは申し上げられない」という、ずいぶん大雑把なもののようです。

        
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V..v 白 保 メ ー ル│\ May 29.2002
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                             //転載歓迎//


 
<続・不可解な『カラ岳陸上案』>            鷲尾 雅久

 前回(No.26)は、『カラ岳陸上案』の予定地の中に、かつて土地転がしが行われて問題となった土地が含まれており、今回も、位置選定の直前の2000年2月この土地
に50億円の抵当権が設定されたことをお話しました。
 今回は、多分マスコミ報道はされていない、その後の動きをご紹介します。

[50億円は法外な金額]

 ところで、50億円というのがどの位の金額なのか、考えてみましょう。土地の全体面積は128ヘクタールですから、1平方メートル当たり約3900円になります。
 一方、空港用地としての沖縄県の買収価格は、『宮良案』のときは農地で坪1万円(1平方メートル3000円)とされていました(県の説明会)。今回も県は、農地につ
いては同じくらいの金額を考えていたが、この土地は農地でないので、それ以下と見込んでいたとのことです(2000年3月2日琉球新報記事)。
 なお、一般の農地の価格は、1平方メートル当たり1000円前後といったところだそうです。
 単価も高いし、今回は予定地の1割程度を占めるだけですから、50億円とは法外な金額と言えるでしょう。

[問題の土地は本土企業の手に?]

 さて、この土地には、50億円の抵当権が設定された約半年後の2000年11月、代物弁済による「条件付所有権移転仮登記」がされています。条件は、50億円の貸付け契約
の債務不履行です。
 つまり、50億円が返せなかったら(債務不履行)、代わりにこの土地は貸主のものとなり借金はチャラにする(代物弁済)、ということです。
 同じ契約の関係なのに、所有権移転仮登記だけを位置選定のあとにしたのは、このことが明るみに出ると、位置選定の際もめる恐れがあると思ったからでしょうか。

 一つの貸付け契約で、返せなかった場合の保証として、抵当権設定と代物弁済が定められています。抵当権(借金が返せなければ競売してその代金で返す)と代物弁済
(借金が返せなければ、土地を貸主に渡す)との関係は、契約書が見られないので分かりませんが、仮登記までしているということは、土地を渡す方を主に考えているの
でしょう。
 
 この土地は、石垣市が何回かにわたり差押えています。多分固定資産税が払えなかったのでしょう。そんな会社に50億円の返済能力があるとは思えませんから、いずれは、
この土地は本土の企業のものになると見るべきでしょう。
 その時期は、借金をいつまでに返さなければならないか、などといったことが分かりませんから、いつとは言えませんが、もしかすると、登記が済んでいないだけで
(本登記にはかなりの費用がかかりますし)、すでに所有権が移っていることもあり得ます。

[土地疑惑は解消できるか]
 
 沖縄県は、この所有権移転仮登記について何も言っていません。しかし、所有者が変わったか、変わってしまう可能性が高いとすると、「抵当権を外してもらう」だけ
では済まなくなってしまった訳です。どう対処するのか、再度考えを明らかにすべきです。

 そのとき、新空港位置選定を見越して土地を取得したかに見える会社から、用地を買収することの是非は、改めて問われなければならないでしょう。

 少なくとも、県議会で答弁しているように、補償基準に則った買収がされるのでなければなりません。余分な土地を買ったり、単価を上乗せしたりといった「密約」が
されるようでは、土地転がしに加担することになります。

 また、この事実を公表しなかった県の「隠ぺい体質」も問題です。まさかこの取引を知らなかったということはないでしょう。

 県の対応によっては、「土地疑惑」は、いつまでも消えることはないでしょう。


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V..v 白 保 メ ー ル│\ May 23.2002
                             //転載歓迎//

 <不可解な『カラ岳陸上案』>              鷲尾 雅久

 
新石垣空港『カラ岳陸上案』が選定されたいきさつについては、『白保メール』
No.8、12、13 で既に述べました(<『カラ岳陸上案』はどう決まったか>その1〜3)。
 一言で言えば、十分な判断材料が提供されず、評価基準も定めない中で、極めて主観的な「評価」がなされた、しかも、評価の理由が説明されることはないまま、「多数」で決められた、というものです。

[誘致派を黙らせて] 
 
この経過の中で、不可解な点がいくつかあります。
 一つは、最終的に『カラ岳陸上案』と二者択一とされた『冨崎野案』については、地元に、ここへの誘致を図った人達がいましたが、なぜかその主張は軽視されたことです。さらには、この2案からの選定時には、主張を抑えるよう強要さえされたとのことです。
 地元が誘致するか反対するかは、大きな評価要素のはずですが、これではまるで、邪魔者扱いです。なぜそうまでしなければ、いけなかったのでしょう。

[いわくつきの土地]
 
もう一つの不可解な点は、今回の予定地の中に、かつて土地ころがしが行われて地価が暴騰した土地が含まれていることです。
 問題の土地は、カラ岳の全体とその東側海岸線に近い部分に南北に拡がる、128ヘクタールの広大なものです。1989年4月、『白保海上案』が地元白保とサンゴ礁の保護を求める世論の前に撤回を余儀なくされ、その4キロ北に予定地をずらし、カラ岳東側海岸部に建設する案(今回の位置選定での『カラ岳東側案』)が出されました。
これは陸上部分と海面埋立部分からなり、この土地は陸上部分の5割以上を占めていました。

 この土地は、もともと白保土地改良組合が石垣市から払い下げを受け、そのわずか1年後、不明朗な経過で一私企業の手に渡ったものです。
 これが1987年に別の企業に転売されたときは1平方メートルあたり400円だったものが、1989年2月にさらに別の会社に転売するとして国土利用計画法に基づく売買の届出がされたときには、5600円となっていました。2年で14倍の値上がりです。
 当時はバブルの末期、全国的に地価が高騰し、国土利用計画法の重点の一つは地価の抑制に置かれていました。通常なら、これはとうてい容認することのできない値上がりで、取引中止等の「勧告」がされるケースだったでしょう。
 しかし沖縄県は、「不勧告通知」を行いました。つまり、この売買は問題ないという御墨付きを与えました。さらに、この直後4月に上記の計画変更を発表しました。
 これに対し、土地転がしを容認したとの批判が出され、沖縄県庁内部から事前に情報がもれていたのではないかとの疑惑も生じました。

 一方、同じ土地は届出のあった企業とは別の企業に転売され(いきさつは、当事者でない私には知る由もありませんが)、こちらは国土利用計画法の届出がされていなかったため、問題となりました。業者は結局同法違反で有罪判決を受けています。

 以上の点をめぐり、県議会や国会で追及が行われました。土地買収交渉は頓挫し、この案での建設は結局できませんでした。

[『カラ岳陸上案』でも]

 
この土地はその後、石垣市に本社を置く会社のものとなりましたが、今回『カラ岳陸上案』が選定される直前の2000年2月、これに50億円(1平方メートルあたり3900円)の抵当権が設定され、県議会で問題となりました。本土の企業が50億円を貸し付け、そのカタにこの土地を差し出させたというものです。
 金が返せなければ、貸主はこの土地を競売にかけて、その代金で貸した金を穴埋めするということですから、土地の買収交渉をするにしても、途中で相手が変わってしまうおそれがあります。それに、そもそも、この土地に50億円の値が付けられたことになりますから、相手もそう簡単に売るとは言わないでしょう。
 沖縄県は、2000年3月の県議会で、「用地の取得は公共事業損失補償基準に基づいて算定し正常な取引価格で行うことになる」と答弁し、位置選定委員会では、「抵当権を外してもらう」と述べています。
 
 『カラ岳陸上案』では、建設位置が南側に移ったため、問題の土地は空港予定地の1割程度を占めるにすぎません。もし買収されたとしても、とうてい50億円も手にいれることはできないはずですが、今回は、飛行の安全確保のためカラ岳を削らなければなりません。このあたりから補償の上積みを狙っているのでしょうか。また、空港隣接地としての開発も目論んでいるとしたら、うまいもうけ話になるのかもしれません。
 現に、位置選定委員会や地元調整会議の傍聴に、わずわざ関西から毎回のように傍聴に来ている人がいました。どちらかの会社の関係者でしょうか。


 
十年前と同様のことが繰り返されているように見えます。

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白保メール NO.26 02.5.23
発行者   鷲尾雅久 谷崎樹生 小林 孝
      shiraho@estate.ocn.ne.jp


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白保メール NO.25 02.05.08
発行者:鷲尾雅久、谷崎樹生、小林 孝shiraho@estate.ocn.ne.jp
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V..v 白 保 メ ー ル│\ May 8.2002
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                             //転載歓迎//
 <原風景を取り戻せ>                  谷崎 樹生

 
山の上の展望台や飛行機の窓から見える石垣島はとても美しい島です。森や川、放牧地・原野・棚田・湿地など昔ながらの土地利用が残されている所は美しいモザイク画のようで、ある種の調和美が感じられます。一方、まっすぐな道路で碁盤の目のように整備された農地には幾何学的な美しさがあります。 ところが、島内をドライブしてみると、なかなか絵になるような美しい風景を見つけることができません。道路沿いや農地の法面にはギンネムやナピアグラスなどの帰化植物が生い茂り、美観を損ねるだけでなく、視界を遮ってもいます。遠目には美しい風景でも、アップには耐えないということも多いのです。
 昔ながらの土地利用形態が保たれている所では、植生も在来種が優占しており、風景の調和美が保たれていますが、土地改良や道路工事・河川改修などで大規模な改変を受けた所では、帰化植物の暴走が起こり、風景が破壊されています。
 畦や土手まで丁寧に草が刈られ、こまめに管理された土地には美しい風景が育ちますが、重機で造成され、機械で芝草の種子が吹き付けられて緑化され、その後放置された法面や河畔では例外なく帰化植物の暴走が起こり、風景が破壊されています。 このように、人の営みが美しい風景を育てることもあれば、反対に破壊してしまうこともあるのです。
 調和のとれた美しい風景は観光資源という島の財産であるばかりか、その風景の中で日々暮らす人の心をなごませる効果もあるはずです。反対に、荒れ果てた風景の中では人の心まですさんでしまうのではないかと心配になってしまいます。気がかりなのは、本物の島の自然を知らず、帰化植物によって破壊された風景を緑豊かな島の自然だと思いこんでいる若い世代が増えていることです。生まれた時からすでに道ばたにはセンダングサ類の白い花が咲き乱れ、ナピアグラスやギンネムが藪を作り、海岸にはモクマオウが生い茂っていた、そういう環境で育ったのですから無理もありません。
 しかし、本物の島の自然には、やはり本物らしい美しさがあるものです。於茂登山やバンナ岳の山肌を覆う常緑照葉樹の森や信仰の対象として守られてきた仲筋ネバル御嶽の海岸林、厳しい環境に耐えられる限られた植物しか育つことができないマングローブ林やキノコ岩の上の海浜植生など、自然度の高い森には帰化植物の進入を許さない、在来種だけの調和美があります。
 また、こまめに草刈りがされて美しい曲線美を見せてくれる棚田や河川を覆う河畔林、牛の踏み跡が階段のような縞模様に残る山腹の放牧地、水牛が遊ぶ湿地、のように人や家畜の営みが石垣島の原風景を美しく演出している例もあります。
 原風景の中での緩やかな時間の流れには人の心を穏やかに癒す力があります。石垣島を訪れる観光客や石垣島に移り住んでくる人たちはそういう石垣島を求めて来るのだと思います。
 ところが、原風景の中での原体験が不足あるいは欠落したまま大人になってしまった世代が石垣島でも増えていて、新空港『カラ岳陸上案』が持ち上がったとき「カラ岳なんぞ全部削ってしまえば良いではないか」といった過激な発言もあったそうです。
あの山は海の向こうから神様が石垣島においでになる時の大切な目印の山だと聞いています。「神をも恐れぬ言葉」とはこういうものなのでしょう。「精神文化の荒廃ここに極まれり」の感がありますね。
 こんな話を思い出しました。昔、大日本帝国海軍があった頃の話です。日英同盟の関係で両国の海軍大臣が英国国会で自国の海軍自慢の演説をしたそうです。英国の大臣は「我が女王陛下の海軍は神様以外に恐れるものは何もない」と言った、すると、我が帝国海軍大臣は「我が大日本帝国海軍は神様といえども恐れるものではない」と、勇ましく演説し、「神をも恐れぬ日本海軍」と、嘲笑されたそうです。
 信教の自由は憲法でも保証されていますから神を信じないこともまた自由ではありますが、見えないものに対する「おそれ」を忘れてしまった文明が長続きした例を私は知りません。原風景の中での原体験の欠落が精神文化を荒廃させ、すさんだ世相を醸し出すようです。これに対する有効な処方箋は「原風景の回復」しかありません。全く昔のままの風景を復元する必要はありませんが、それに近い雰囲気を感じ取れるように風景を演出することは不可能ではないはずです。「人は自然によって生かされ、自然に根ざした文化によって育てられるもの」ですから、原風景の中での原体験はきっと人の心を豊かに育ててくれるでしょう。

 ところで、あなたの心の中には「取り戻すべき原風景」は、有りますか?
        

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◆ 前号(No.24)で下記の間違いがありました。お詫びして訂正します 
◆  新石垣空港予定地内に新たに発見された洞窟で確認されたカグラコウモリは、環境省レッドリストで「1B」(絶滅危惧1B類=1A類ほどではないが、近い将来における絶滅の危険性が高い種)指定となっています。「2B」としたのは間違いです。
  なお、ここでは文字化けを避けるため、アラビア数字の「1」としましたが、環境省はローマ数字を使用しています。

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白保メール NO.25 02.5.8
発行者   鷲尾雅久 谷崎樹生 小林 孝
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白保メール NO.24 02.04.27
発行者:鷲尾雅久、谷崎樹生、小林 孝shiraho@estate.ocn.ne.jp
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                             //転載歓迎//
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No.24 "" >>⊂⊃<< . . 。 .。,:'"*.,:'"*.,:'"*.,:'"*.,:,:'"*.,:'"*.・。。・ ・。。,; " * ,.                              
//転載歓迎//  

<第6回新石垣空港環境検討委員会>    小林 孝  
                     WWFジャパン「しらほサンゴ村」

[方法書縦覧までの最後の委員会]
 第6回の環境検討委員会が、2002年4月16日に那覇のホテル、チュラ琉球で行われ ました。土取り場の予定地として挙げられていた轟川河口部の計画は無くなったこと、 空港予定地内に新たな洞窟とそこに生息する約3000頭のカグラコウモリが発見さ れたこと、方法書作成までの環境検討委員会は今回が最後であったこと、などを報告 します。

[轟川河口部の自然は、当面は守られた]
 この委員会の直前(3月下旬)に事務局から配布された資料には、空港建設に不足 している100万立方メートルの土を採取する場所のひとつとして、轟川河口部南側 の県有地が挙げられていました。これは、3月8日に開かれた「新石垣空港建設工法 検討委員会」で提示されたもので、それが環境検討委員会にもやっと提示された形で す。ここは、かつての「新石垣空港白保海上案」の時に、ターミナルその他の施設に 使われる予定地でした。なぜこの場所から、空港建設に必要な土を採取する案が出て きたのでしょう。前号の白保メール(No.23)でも関連の説明があり、重複しますが、 再度確認しておきましょう。
 近年、まとまった雨が降るたびに、轟川流域の土地改良が施された耕作地から表土 (赤土)が、河川改修を受け排水路と化した轟川に流れ込み、さらに白保のサンゴ礁 の海を汚染して大きな社会問題になっています。石垣市では、その赤土対策が急務で あると認識しており、目に見える形での具体的な対策を考えています。そのひとつの 案が、轟川河口部南側一帯に広がる県有地を利用して大規模な沈砂池を作り、赤土が 海に出る直前で堰き止めようというものだったのです。その沈砂池の工事で出てくる 掘り起こされた琉球石灰岩を、新空港の事業で利用すれば、新空港の建設にも利用で きるうえ赤土対策にもなり、いわば一石二鳥の名案だというふうに沖縄県は説明して いました。この辺りは琉球石灰岩地帯であり、新空港の建設予定地の基盤と同質とい う意味で、適した地質ではあるのです。
 しかし、赤土問題の根元は、ひとつひとつの耕作地から表土が流失することだと考 えるべきであり、それらをひとまとめにして最後の段階で処理しようというのは、大 変に無理があります。しかも轟川河口部に至る数百メートルの流域は、河川改修から 逃れて、本来の川の姿、あるいは白保の原風景を残している貴重な場所なのです。し かも護岸工事がされていない自然河川は、上流域の赤土混じりの水を、相当なレベル で沈澱浄化する作用を持っています。そこを壊すことは決して名案ではないというこ とを、すでに石垣市には伝えてあります。それに、土地改良事業で設けられた沈砂池 が有効に作用している例を、私は知りません。それとも石垣島のどこかに、沈砂池の 成功例があるのでしょうか
   それはともかく、3月下旬に環境検討委員会に通知された、この轟川河口部の沈砂 池構想は、委員会の1週間程度前になって、撤回されたことを伝えられたのでした。 理由は、石垣市の計画がまだ構想段階でしかなく、新空港事業と同調できるものでは ない、ということでした。いずれにせよ、轟川の下流部がいたずらに開発されること は当面避けられたということでした。
 代わりの土取り場は、多良間島での新空港建設の際に出た公共残土と新石垣空港予 定地周辺の鉱山からの購入土砂でまかなうこととされました。

[新しい洞窟にカグラコウモリが3000頭]
 新空港予定地内のゴルフ場に、新たな洞窟が発見されたことが委員会の場で報告さ れました。場所については、すでに絶滅危惧種のコウモリ3種が生息していると発表 されたA洞窟の海側で、滑走路に近いという程度の説明しかありませんでした。その 新たな洞窟には、カグラコウモリ(環境省レッドデータリストの2B)が約3000 頭生息していることが確認できた、ということです。
 調査時季は彼らの休眠期間中で、これは、人間が洞窟に侵入することによる生息環 境への影響を最小限に留めるためでしょう、短時間の内に写真撮影をして、それを後 から解析したところ、3000頭がカウントできたというものでした。詳細な調査が 今後実施されれば、さらに他の絶滅危惧種のコウモリ、あるいは希少生物が発見され る可能性も高いのではないでしょうか。

[方法書の公告縦覧前の最後の環境検討委員会に]
 この委員会での議論や進め方について疑問があることは、すでにこの白保メールで も報告してきました。私は、こうした問題点に関する委員からの発言提言を議事録か ら抜粋し、充分審議を尽くすよう3点の提案を記載した提案書を作り、委員や事務局 に配布して今回の委員会に臨んだのです。提案1)としては、予備調査結果を方法書 に反映させること、提案2)は、調査結果の種の同定を正確にすべし、提案3)とし て、方法書作成を慎重に、という内容の3点の提案でした。
 他の委員からも、提案1)について、「事実関係として出て来ているものは、なる べくではなくて、それは絶対(方法書に)入れるべきだと思いますけどね」、「少な くとも個人的には一年分ぐらいは、春夏秋冬分ぐらいは、整理されてからがいいんじゃ ないかなという感触を抱いております」など、予備調査の結果を方法書に記載するの はきわめて妥当だとする意見が出されたのですが、事務局の答えは従来通り、「予備 調査の結果は2001年8月のものまでを方法書に記載する」に終始しました。
 また、方法書の素案が委員には「参考資料」として配布されましたが、そこに書か れているもので「方法書に必要な事項は満たしている。委員からの意見も網羅してい る」、だから方法書に関する討議はもう行わず、あとは新たな意見提言が出てきたら 最終的な方法書に盛り込み、関係各機関と調整が済んだら、公告縦覧に入る、という のが事業者の姿勢でした。
 私個人としては、まだ審議をし尽くしたとは思えないし、方法書を充実させるため に予備調査の実施を強行した(調査予測の方法を定めるのが方法書であり、それに従っ て調査をするのが筋でしょう)のだから、その結果は方法書段階で反映されるべきだ と考えます。が、事業者の態度は環境検討委員会の意見を尊重するものではありませ んでした。
 しかし一方で、事業者は「方法書の公告縦覧後の1年は、方法書に沿った内容で調 査を考えてゆく時期であり、その中でいろんな指標項目、環境項目の評価の対象を絞っ たらどうか、などが出てくると思う。そういったまとめを、来年度の準備書の中で詳 しく議論していく。もしそこでも足りなければ、追加調査をやっていく予定である」 という趣旨の約束を明言しました。つまり、今不足している情報や手法については、 準備書の段階で全てまとめていくということです。現段階では、その約束事で押し切 られた形になりました。ではお手並み拝見といったところでしょうか。

[公告縦覧の時期]
 方法書の素案は、A4サイズで3cmの厚さに達する膨大なものです。これに多少の 修正が加わり、公告し縦覧に入る予定です。その時期については、事務局の方でも明 確にはできない状況があるようで、つまり関係諸機関との調整にどの程度の時間が掛 かるのかが判らないので、明瞭にはされておりません。なお、委員に対しては、素案 について意見があれば、5月中旬までなら出せるとの説明がありました。
        

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白保メール NO.24 02.4.27 発行者   鷲尾雅久 谷崎樹生 小林 孝       
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V..v 白 保 メ ー ル│\ Apr.11.2002
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白保メール NO.23 02.04.11
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                             //転載歓迎//
 
<石垣市の考える赤土対策とは>             鷲尾 雅久

 3月14日、白保で住民と石垣市長との話し合いがもたれました。
 私にも、轟川の赤土流出対策について説明したいからと連絡が来ました。対象はカラ岳陸上案に反対している人達だと言うので、赤土流出対策の説明なら全住民にすべきだと思いましたが、沖縄で赤土汚染がもっともひどいという宮良湾を毎日目にし、かねてからこの問題に関心があったので、行ってみることにしました。
 会場へ行くと、白保の住民を中心に十数人の方が集まっていました。15分もかかった市長のあいさつのあと、職員が赤土対策の新年度事業を説明しましたが、わずか数分のあっけないものでした。話し合いの実績を作りたかっただけなのかと疑ってしまいましたが、頼んだら後で資料を送ってくれました。それによると、新年度(2002年度)の石垣市の赤土対策事業は次のようなものです。

[新年度の赤土対策事業]

1 ハード事業
 ・土地改良施設(沈砂池、砂防ダム、排水路等)に堆積した赤土等の除去 
  事業費 400万円
 ・法面保護、植生等の土砂流出対策、沈砂施設、圃場の勾配修正等
  事業費 4億8135万円

2 ソフト事業
 ・地力増強作物(緑肥)の鋤き込み  事業費 1759万円(農家負担含む)
 ・サトウキビ生産農家への緑肥種子購入補助  事業費 127万円(同上)
 ・心土破砕実証展示圃

3 流域環境保全農業確立体制整備モデル事業(環境省から県へ委託)
 ・赤土対策モデル基本方針策定調査(調査会社へ委託)
  事業費 4400万円
 ・モデル対策実施調査(市がモデル流域で営農対策実施、検証)
  事業費 1600万円

[足元から赤土流出?]

 市側の説明の後すぐ、白保住民から、今轟川河口付近で行っている土地造成工事で、排水が轟川に直接流れ込むようになっていると指摘され、職員が急きょ現場を見に行くという一幕がありました。
 戻った職員は、工事中は仮の沈砂池を作っていたから赤土は流れていないとの現場担当者の説明を伝えましたが、その後私が見たときには、見当たりませんでした。仮の沈砂池を作っても、工事期間中ずっと維持するのでなければ、効果がありません。
 造成工事の場所は、ほぼ平たんですし、耕地の周りに水路を廻らせ、流れた水は浸透池に導くという工夫もされています(浸透池の規模が、目算で数百立方メートルしかないのは、小さすぎるのではないかと疑問を持ちましたが)。しかし、道路の側溝は、轟川に流入するようになっています。その後少し雨が降ったときに行ってみたら、案の定側溝に濁水が流れていました。工事中の法面から流れ出ているようでした。
 工事の主体は、市長が理事長となっている宮良川土地改良区ですが、轟川の赤土対策を説明しに来たはずの市長が、そこで工事をしていることも知りませんでした。上記の「ハード事業」についても、工事期間中の赤土流出防止が不十分だと、せっかくの事業が泣くことになります。ひとつひとつ地道な仕事をしてもらいたいものです。

 続いて住民から、狭い地区の対策ができないのに新空港の赤土対策ができる訳がないとの発言があり、話題は空港問題に移りました。市側の話は、新空港は必要だ、現空港拡張はできないと、今までの繰り返しでした。

[轟川河口の大沈砂池構想]

 
問題は、構想段階のものだ、との注釈付きで説明された、轟川河口の大型沈砂池の話です。どうやら担当より市長が熱心なようでした。
 私が以前から疑問に思っているのは、なぜ「沈砂池」や「砂防ダム」なのか、ということです。沖縄で問題なのは、「砂」ではなく「赤土」だからです。沖縄の赤土は粒子が非常に細かい上、川の水に混じると、マイナスに帯電してそれが磁石の同じ極のように反発し合うため、なかなか沈澱しません。1日の雨量が百ミリを超えることが珍しくないこの地域の河口付近で長時間水をためる沈砂池を作るとしたら、巨大なものが必要となります。石垣の水がめである底原ダムがもう一つ必要だと、事情を知る人達が冗談を言う程です。
 しかし、赤土は、海水と混じると、海水中のイオンの影響で沈澱します。河口近くなのでそれを期待しているのかもしれませんが、今度は堆積した赤土をどうやって除去するかが難題です。堆積したといっても少し動かせばまた舞い上がる状態なので、早く除去しないと意味がありません。
 また、轟川河口近くは、もとの川の流れが保たれ、自然の浄化作用もあります。白保の原風景を残すところでもあります。それを破壊して大型沈砂池を作るのでは、百害あって一利なしとなる可能性があり、住民の理解も得られないでしょう。
                  ◎
          
 赤土流出は、もとはと言えば大規模に自然に手を加えたことから始まっています。「ハード事業」は、その手直しという性格を持つのでしょうが、アイディアにすぐ飛びつくのでなく、本当に効果があるのか、十分に検討してから、計画してほしいと思います。
 また、今後の力点は農法の改善といった地道な努力に置かれなければならないでしょうから、農家への援助などに、さらに力を入れてほしいと思います。


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 <<環境検討委員会が開催されます>>
        
 第6回新石垣空港環境検討委員会が下記のように那覇で開催されます。環境影響評価方法書の姿がそろそろ見えてくるはずです。時間のある方は傍聴に行ってみませんか。
1. 日 時 : 平成14年4月16日(火)
       午後1時30分から4時30分まで
2. 場 所 : ホテル「チュラ琉球」(県庁近く) 会議室
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V..v 白 保 メ ー ル│\ Apr.3.2002
>>∈∋<< v..V        。 No.22
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白保メール NO.22 02.04.03
発行者:鷲尾雅久、谷崎樹生、小林 孝shiraho@estate.ocn.ne.jp
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 <かわいそうな沖縄の川>                谷崎 樹生

 観光ポスターの中の沖縄は、青い海と緑の山並み、咲き乱れる花と赤瓦の家並みで演出されていて地上の楽園のように見えます。ところが、観光ポスターには決して載らない普通の沖縄の風景はひどく荒れ果てていて決して美しいとは言えません。その荒れ果てた沖縄の風景を演出しているのが、ギンネム・ナピアグラス・モクマオウ・センダングサ類・パラグラスといった帰化植物たちです。そして帰化植物たちの暴走と言っても過言でない大繁茂を助長しているのが、植生管理や土地利用の間違いなのです。その典型的な例を、沖縄の平野部の河川に見ることが出来るので、その現状と原因と対策について考えてみたいと思います。

 本土の田舎で育った私は、復帰直後の沖縄島南部の荒れ果てた風景を初めて見た時「沖縄には山も川もないのか?」「子供たちはいったいどこで遊ぶんだろう?」と思ったものです。当時沖縄島南部の丘陵はススキとギンネム林で覆われ、川はことごとく二面張り・三面張りの排水路になっていました。私が育った田舎にあった森で覆われた山や、河畔林に包まれた川や、メダカやカエルと遊んだ小川などどこにもなかったのです。
 あれから四半世紀が経ち状況はずいぶん変わりました。いつか在来植生の森が復元されるだろうと期待していたススキやギンネムの丘は新興住宅街で覆われ、悪臭を放っていた排水路は蓋で隠され、子供の遊び場どころか「ネズミやハブはいったいどこへ行ってしまったんだろう?」と、気になるほどです。かろうじて残った貴重なオープンスペースである河川でも、両岸にはギンネムやナピアグラスが生い茂り、河床はパラグラスの暴走で覆い隠され、近寄りがたい場所になっています。
 そんな沖縄の川でも最近の近自然河川工法(役所では多自然型河川工法と言うようです)ブームに乗って、河川改修工事は全て近自然型で行われるようになりました。コンクリート護岸を撤去して緩やかなスロープの土手を作り芝生で覆うという工法が一般的なようです。ところがこのようにしてせっかく復元された土手も、その後の植生管理法を誤ると、たちまち帰化植物に覆われてしまい見る影もなくなってしまいます。
 では、本当の近自然工法が目指すべき沖縄の河川の原風景とはいったいどのようなものだったのでしょうか?

 実は、沖縄の中小河川が河川からただの排水路に変わり果ててしまった歴史はそれほど古いものではありません。昭和30年代までは沖縄島南部でもあちこちに水田地があり、河畔林で覆われた涼しげな瀬と淵を繰り返す川や、子供たちがエビをすくった小川がどこにでもある、そんな原風景が残されていたのです。当時、子供であった世代は川で泳ぎ森で遊んだ原体験を持っています。石垣島でも五十代以上の方は新川川や轟川で泳いだ体験を懐かしそうに語ってくれます。
 ところが、1959年(昭和34年)キューバ革命が成功すると、アメリカによるキューバ封じ込め政策のとばっちりを受けてキューバからの砂糖の輸出が止まってしまったため、砂糖の国際価格が高騰した結果、県内でサトウキビの大規模な増産運動が起こりました。水田地帯には排水路が掘られ、水田からキビ畑への転作が急速に進められ、沖縄の農村風景は一変してしまったのです。
 サトウキビは工芸作物ですから経営規模が大きいほど利潤が上がります。いきおい、土地の有効利用のため無駄な河畔林は伐採され、小川は埋められ、かつての稲作では普通に行われていたこまめな草刈りも行われなくなり、帰化植物の暴走の条件は整いました。こうして沖縄の農村の原風景は破壊されていったのです。
 その後、糖価の暴落があったにもかかわらず、土地改良と河川改修が一気に進み、今や原風景は年輩の方々の記憶の中にしか残されていません。河川を流域全体で管理するという思想と技術の欠落と、生産効率の追求によって失ったものはあまりに大きいのです。

 最近、これまでの土地利用効率・農地の生産効率・河川の排水効率追求一辺倒の方針に対する反省から、森林や河川・海岸などの自然の価値が再評価され、多様な機能を持たせられるように自然を育てるという方向に方針が変更されたようで、好ましい傾向だと思われます。
 ただし「近自然工法」と銘打って行われている河川改修の多くは親水公園のようなものでしかなく、完成後数年で帰化植物の藪に飲み込まれていく運命にあります。

 本来、川はメンテナンス・フリーのものであったはずです。川は森のスープを運ぶ道ですから、川の畔では木がよく育ち、河畔林をなしていました。よく茂った河畔林に囲まれた川では、その樹冠で直射日光が遮られ、河床での帰化植物の暴走と水温の上昇が抑えられ、多様な環境が提供されて様々な生物が見られました。大雨による増水は河床の砂や草を押し流して適度の浚渫や草刈りの機能を果たしていました。
 今後沖縄の河川が目指すべき近自然とはこのようなものでなければなりません。「森は海の恋人」であり「河畔林は川の恋人」なのです。
 それにしても、地球の裏側で起こった革命が沖縄の原風景を破壊してしまったのですから、最近よく耳にする「グローバリズム」という言葉の裏にある「恐さ」には充分注意したいものです。

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白保メール NO.22 02.4.3
発行者   鷲尾雅久 谷崎樹生 小林 孝
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白保メール NO.21 02.03.20
発行者:鷲尾雅久、谷崎樹生、小林 孝shiraho@estate.ocn.ne.jp
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<第2回新石垣空港建設工法検討委員会>  小林 孝
                      WWFジャパン「しらほサンゴ村」

 2月18日に第4回の、2月28日に第5回の、それぞれ新石垣空港環境検討委員会が開かれた後、3月8日には第2回新石垣空港建設工法検討委員会(委員長:上原方成琉球大学名誉教授)が琉球大学近くのホテルで開かれました。各委員会の開催の間隔が相当短く、事業者(沖縄県)はなにやら方法書の公告縦覧を急いでいるような感触を受けます。

[滑走路形状の変更、不足土量の減少]

 事務局から新たに提示された資料では、滑走路の設計図に変更が加えられていました。前回までは、空港の地表面が比較的単純な一平面上にあったのですが、地形情報の精度向上(要するに測量の精度を上げた)による詳細な見直しがされた上、かまぼこ断面形状の頂上に滑走路と誘導路を設けるようになりました。つまり滑走路と誘導路以外の地面は、標高が下げられ、その分土盛量が少なくなったのです。また滑走路の勾配にも修正が加えられました。その結果、従来案では不足土が約190万立方メートルでしたが、新たな案では約100万立方メートルと少なくなったのです。

[盛り土の設計案]

 空港建設に当たっては、「現在の水収支(雨水の浸透、表面流出、地下水の流れ)を極力変えないものとする」という基本的な考え方があり、空港敷地内に降った雨を適切に地中に透水させなければなりませんが、その課題に対し、3種類の盛り土設計案が提示されました。
(第1案)大部分にトムル層と呼ばれる地質の軟岩で盛り土をし、一部に透水性が高い琉球石灰岩の積層区域を作って、そこで地下への導水をさせるもの。
(第2案)第1案の構造に、鉛直ドレーン杭と呼ばれる、琉球石灰岩を充填した導水のための柱を地下に多数設けるもの。
(第3案)本来の土質と同じ琉球石灰岩を、滑走路・誘導路以外の区域に全面的に盛り土するもの。
 簡単に説明すれば、以上の3案です。しかし、どれもシミュレーションはされておらず、そのデータが無ければ選定は無理という委員からの意見に従い、次回委員会(6月が予定されている)までにデータを揃えて再審議ということになりました。また3案の要素を組み合わせた、新しい案もありうるだろうとする含みを持たせた意見も提言されました。

[土取り場についての3案]

 滑走路の設計変更によって、不足土量は減りましたが、いずれにせよ大変な量です。その土をどこから持ってくるのか? これについても3案が提出されました。しかし土取り場に関する資料は、委員だけに配布され、傍聴者には配布されませんでした。
 事務局の説明では、予定地周辺から工面する、多良間新空港建設や多良間港建設の際に出た残渣が多良間島にあるからそれを運び込む、さらには大量の琉球石灰岩が絶対必要とするなら、轟川河口域の南側に広がる県有地の海岸に琉球石灰岩地帯が広がっているので、そこから削り出して利用する、というものでした。
 この轟川南側一帯の海岸を壊して、という案は、相当無茶です。この辺りの前面の海が、まさしく白保のサンゴ礁海域であり、さらには干潮時の干潟はシギ・チドリが採餌のために利用している重要な場所でもあるからです。その海岸を壊してしまうのです。
 これは、轟川の赤土対策として、どうやら水面下で計画されている「轟川河口域に大型の沈砂池を建設する」ものとリンクしているようなのです。この轟川河口域の大型沈砂地構想も、かなり酷い。轟川で唯一残された自然河川部分(最下流の数百メートルだけが、河川改修されずに現風景を維持している)を人工的なものにしようというのですから。
 この案については、やはり委員からも否定的な意見が出されました。結局これも先の盛り土に関するデータが出てから再検討ということになりました。

[方法書にはどう書かれるか]

 新石垣空港環境検討委員会では、方法書に土取り場の場所を明記して環境アセスメントの対象にする、ということが事務局から明言されていました。しかし今回の工法検討委では、場所が決まりませんでした。どうするのでしょう。実は土取り場の候補地が3箇所あることを方法書に記載して、それで公告縦覧に供するというのです。記載されるだけで、それがアセスメント調査の対象にならないのだとしたら、つじつまが合いません。どういう表記になるのか、次回環境検討委員会で明らかになりますが、事業者の「方法書軽視」は、ここでも露見されています。

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白保メール NO.21 02.3.20
発行者   鷲尾雅久 谷崎樹生 小林 孝
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V..v 白 保 メ ー ル│\ Mar.16.2002
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白保メール NO.20 02.03.16
発行者:鷲尾雅久、谷崎樹生、小林 孝shiraho@estate.ocn.ne.jp
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                             //転載歓迎//

 <第4回・第5回新石垣空港環境検討委員会 続き>
              小林 孝   WWFジャパン「しらほサンゴ村


[調査・予測の手法について]

 事業者(沖縄県)・事務局(コンサルタント)から提出された方法書(案)を叩き台にして、それをより良い形にするため、環境検討委員から意見助言を提供する、というのがこの委員会の趣旨です。その中でも肝心要は、何を対象にどういう手法で調査・予測をするか、ということだと考えますが、2月18日の第4回委員会では、その途中で時間切れになり、引き続いて2月28日の第5回委員会に継続審議とされました。
 方法書(案)には、環境影響評価の項目並びに調査・予測手法とあり、対象項目として、大気質・水質・土壌・動物・植物・生態系・景観・人と自然との触れ合い活動の場・廃棄物等が挙げられ、各項目毎にどういう手法でどういう調査・予測を、いつどこでやるのかが書かれています。
 それぞれの項目で、各委員がそれぞれの専門的な立場からさまざまな意見・助言・苦言を述べました。いくつか紹介しましょう。

『予備調査のデータが生かされない』

(既に実施している現況調査の結果は、8月に実施した調査のものまでしか方法書には載らないことに対し)〈委員〉:「現在実施している予備調査の結果を踏まえないと、これまでの調査の意味が問われるのではないか。それ以降の調査結果によって、方法が変わるということになった場合、方法書を変えることは可能か。それが不可能なら、もっと慎重にやるべきではないか」〈事務局〉:「時間は流れていく。その中で、8月までの調査結果を報告した。秋以降の調査結果については、使えるものは使っていきたい。が、秋以降のデータは現在未確定である」
〈委員〉:「方法書が縦覧されて、そこでつまずくより、ちょっとぐらい遅れても、できるだけ完璧なものを作ってベストを尽くすべきだろう。そのためには、これまでの経過をきちんと踏まえておくべきではないか」

『定量的データが不足している』

〈委員〉:「『生息状況の調査』といった言葉がたびたび出てくるが、そういうことではなく、種ごとの個体数など、何を調べるのかきちんと書くべき。また個体数、サンゴで言えば被度、そういった定量的なデータを押さえる必要がある」
〈委員〉:「単にどういう昆虫、動物、哺乳類、爬虫類がいた、ということだけではなく、定量的なことを書いてほしい」

『上位種、注目種が云々の段階ではない』

〈委員〉:「生態系という概念の中に上位種ということばがでてくる。上位種とは何か?」
〈事務局〉:「環境省マニュアルによると上位種としか書かれていない。私たちの受け取り方は、食物連鎖あるいはエネルギーフローの上位に位置するものと捕らえている」
〈委員〉:「だとしたら、上だけみてもナンセンス。上位種の生存を支える一次生産の方も対象にしなければならない」
〈委員〉:「注目種の定義とか選び方を論議している段階ではない。予備調査をすでに1年近くやってきたのだから、その結果を踏まえて、この地域の注目種は何か、それを支えている植物やら土壌やらはどういう関連になっているのか、そういう話になるべき。ただ抽象的な表現を現段階でしていたら、今後の調査も結局実体がなく終わってしまうのではないか」
〈事務局〉:「…その辺の具体的な検討をするのが、ある意味、準備書の段階ではなかろうかと…」
〈委員〉:「上位種というのは、明らかにカンムリワシだろう。カンムリワシについては、すでに調査文献があるはず。そういうものについては調査内容を絞って、では彼らは何をどれくらい食べているのか、その餌になる側は何を食べているか、といったもっと踏み込んだ調査をしないと間に合わなくなるのではないか」
                  ◎
 ここでは委員の意見を抜粋したものしか載せられず、かなり大雑把な雰囲気しか伝えられませんが、全体として委員に共通した意見は、方法書の内容に具体性がなく、何を対象にするかが不明瞭ではないか、環境への影響を回避または最低限にするための方法を探る資料としては相当お寂しい、ということです。環境アセスメント作成マニュアルがあるとしたら、それを単純にコピーしただけの、八重山の地域性への配慮が足りない方法書(案)になっているようにも見えます。また事業者・事務局は、方法書は取りあえずのものであって、大切なのは準備書段階とほのめかしていますから、方法書の軽視とも受け取れます。

 これまで環境検討委員会で審議された内容が反映されるであろう方法書は、今年の4月に最終的なものに仕上がり、それから公告縦覧に供されることになっています。
公告は、沖縄県の新聞4紙に掲載され、また方法書(の要約版か)は、沖縄県の広報誌に掲載されるということです。縦覧の場所は、法に則ってということでした。沖縄県は新空港に関するホームページを立ち上げましたが、そこには方法書が掲載される予定はありません。
        
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白保メール NO.20 02.3.16
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白保メール NO.19 02.03.08
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                             //転載歓迎//
 
<ウミガメに選ばれた島>    
              谷崎樹生  石垣島ウミガメ研究会会長   
                                  
 「石垣島ウミガメ研究会」では1993年以来石垣島海岸でのウミガメの産卵状況調査を行っています。毎年ウミガメの上陸が始まる4月から最後の卵が孵化する12月頃まで定期的に島中の浜を歩いてまわり、ウミガメの上陸跡があれば産卵の有無・産卵日の推定・孵化脱出日の推定・孵化率の確認・種の判定など、一連の調査を行い精度の高いデータ収集を心がけています。
 調査開始当初は経験不足と人手不足のため、充分な成果を上げることができませんでしたが、ここ数年は会員の努力により、石垣島に上陸するウミガメによる海浜利用状況がほとんど見落としなく正確に把握できるようになりました。
 石垣島ではアオウミガメ・アカウミガメ・タイマイの3種のウミガメの産卵が確認されています。産卵は平久保半島やヤラブ半島など、無人地帯の海浜に集中していますが、その他の浜でも決して多いとは言えませんが、産卵は確認されています。特に南西部の富崎海岸と東部の轟川以北カラ岳東までの海岸は我々も注目している地域です。

 さて、新石垣空港建設予定地に隣接する轟川河口からカラ岳東に至る海浜では、毎年ウミガメの上陸が確認されており、ほぼ毎年産卵も確かめられています。昨シーズン(2001年)は、5月16日の昼間の調査でウミガメの上陸跡(足跡)が発見されましたが産卵は確認されませんでした。昨シーズンの当地域で確認されたウミガメの上陸はこの一例だけでした。
 この上陸跡は16日に撮影された足跡の形・大きさからアカウミガメかタイマイのものと思われます。5月11日の調査時には無かったし、13日には台風の接近で風雨が強かったため、14日か15日の夜の上陸跡だと推定されます。なお、この上陸跡は後日(18日)にも再確認されています。しかし、その後風雨の強い日があったため、23日の昼間の調査時にはこの上陸跡はほとんど確認できないほどに消えていました。
 沖縄県の「新石垣空港環境現況調査」中間報告によると、この地域でのウミガメの産卵調査は4月24日、5月23日、6月25日、8月1日・23日・25日、9月10日・23日、10月10日に行われていますが、「産卵、上陸の形跡は確認できなかった」とされています。しかし、1ヶ月に1回の調査では上陸痕跡の確認は困難ですし、通常ウミガメの上陸がもっとも集中する7月に、なぜ一度も調査されなかったのかということも、おおいに疑問ではあります。
 県の中間報告では、他にも例えばサンゴについて種数と種類数(属の数のことか?)の区別ができない人が書いたとしか思えない記述もあり、環境調査全般について、専門家による厳しいチェックが必要だと思われます。  

 私たち「石垣島ウミガメ研究会」では、特にウミガメの上陸が多い海浜について、毎年5月から8月のピーク時にはほぼ毎晩産卵調査を行い、上陸したウミガメには標識をつけ、写真撮影を行い、個体識別ができるようにしています。その結果、同一個体が2?3年周期で同じ浜にやってくる例が多数確認されており、同じ個体が1シーズン中に同じ浜に5?8回も産卵した例もあります。
 このように、産卵場としての砂浜に対するこだわりの強いウミガメにとってはその浜は絶対的な価値を持つかけがえのない環境なのです。よその浜で産卵がたくさん見られるからといって、めったに上陸しない浜の環境が悪化してもよいということには決してなりません。
 カラ岳陸上案で新空港が建設された場合、騒音・震動の影響だけでなく、光漏れによりウミガメの行動が攪乱されることは必至です。

 ウミガメや渡り鳥のように地球規模の移動をする動物は、環境を総合的に評価する能力を持っているものと思われます。これは我々文明人がもうすでに失ってしまった能力なのかもしれません。
 自然の価値に対する認識は、人それぞれで、その自然に価値があるから保存しようとする人もいれば、価値があるからこそ利用すべきだと考える人もいます。しかし、このような人間側の勝手な議論は、何万年もの昔からその自然の中で生かされてきて、その自然がないと生きていけない野生生物にとっての自然の絶対的な価値の論理の前では、全く説得力のない空論でしかありません。
 石垣島の海岸は、ウミガメにとっては、産卵場という絶対的な価値のある環境なのです。最近の研究では、ウミガメでも母浜回帰の可能性が議論されています。そのことが事実なら、八重山のウミガメは、他の地域のウミガメとは遺伝的に独立した個体群である可能性があります。遺伝的多様性の保護のためにも、他の地域で多くのウミガメが残っているから八重山の小さな個体群は消滅してもよいということにはなりません。

 これからは、その自然が何にとってかけがえのない自然なのかを見極め、優先順位を考えた自然との関わり方のルール作りが必要になってくる、そんな時代なのです。
 ウミガメに選ばれた島の環境を守り、島の自然と共生することが、結局は島人の幸せに繋がるのだということを理解していただきたいものです。

 <<ウミガメ研究会意見書>>

 上に掲載した文章は、石垣島ウミガメ研究会が「新石垣空港カラ岳陸上案環境調査の信憑性についての疑問」というタイトルで沖縄県に提出した意見書に、加筆したものです。
 この意見書は、先頃那覇で開かれた第4回、第5回新石垣空港環境検討委員会の席上、WWFジャパン小林孝委員が取り上げ、県の見解を質しました。
 沖縄県の答えは次のようなものでした。
1)毎日連続して調査するのは難しい。
2)調査の頻度の関係から指摘されたようなことはどうしても起こるので、過去の事例等については取り入れていきたい。
3)方法書に記載するとしたら、「文献その他の資料調査」の部分だろう。
 しかし、今後事業者が実施する調査とウミガメ研究会等の民間団体への調査結果提供依頼との関係は不明確です。また、ウミガメの上陸地であることが確認されたのですから、ウミガメへの影響の予測・評価が不可欠であることとなったわけです。これらの点も環境影響評価方法書に明記する必要があります。
              
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白保メール NO.18 02.03.03
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<第4回新石垣空港環境検討委員会>    小林 孝
                      WWFジャパン「しらほサンゴ村」

 2月18日(月)の午後に那覇のホテルチュラ琉球で、第4回新石垣空港環境検討委員会が開かれました。午前中は、「新石垣空港に関する勉強会」と称する環境アセスメントについての、非公開のミーティングが開かれました。この勉強会が、新たな問題を呈したのです。

[非公開の勉強会で決まったこと]

 新石垣空港環境検討委員会の香村真徳委員長が呼び掛け人となって開催されたこの勉強会の趣旨は、同委員会で表出している様々な問題を解決して、今後の委員会の運営をスムーズにするため、沖縄県環境政策課の職員3名によるアセスのおさらいをしようというものでした。
 既報のように、前回委員会(2001年11月16日)後に環境アセスの専門家を委員会にアドバイザーとして招聘することを、委員全員の要望事項として事務局(事業者=沖縄県)へ提案することが決定しましたが、その後の香村委員長と事務局の間の協議では、何らかの理由により、アセス専門家の招聘はされず、その代わりとしての今回の勉強会にすり替わった模様です。
 勉強会では、県環境政策課職員による、環境省や沖縄県が発行した環境アセスのパンフレットに沿っての説明がありました。そして漠然と暫定的に提案されたことは、1)代替案を方法書に記載することをアセス法は求めていない、だから記載しない、2)ターミナル東側案でアセスを進めてゆく(地元の意向が重要だから)、3)環境アセスの専門家の招聘は、この勉強会を実施したから当面必要無し、というものでした。
 質疑応答の時間には、委員から事務局に対する疑問不満が噴出しました。この委員会が発足してからターミナル位置が東に変更されたことについて、「最初の委員会の時とはターミナル位置が変わったが、事務局はどう考えるのか」「ターミナル位置の変更による環境への負荷の増大があるが、それに対してこの委員会は何も言わず、変更された新たな計画について、それだけを審議するということか?」「例えばサンゴ礁を埋め立てる計画に変わった場合、それに対してどういう影響があるのか、それを話し合うだけの委員会なのか?」「西側か東側か、それによってどういう環境に対する影響が現れるのか、我々委員はそれを考えなければならない立場にいるはずで、それを抜きにして住民の意向を汲み変更してしまうというのはおかしい」といったものです。それに対する事務局・事業者の答えは、平謝り、また地元の意見を最大限に尊重したい、という説明に終始しました。

[時間切れの委員会審議]

 午後の委員会では、午前中の勉強会で「あいまいに提案」されたことの承認を得るため、委員長が挙手による「正式な了解」に導くための採択を強要しました。そこで審議は紛糾です。非公開の場でなんとなく決めたことを、正式な決定にしようとしたのですから。委員からは反発があり、再び「代替案のこと」「ターミナル東側案への変更」などについて、議論の蒸し返しが始まったのです。
 今回の委員会では、事務局から提出された環境アセス方法書(案)の「調査の手法」についての審議が肝心であったはずですが、委員会運営のあり方について委員から事務局への異論が続出し、また予備的に実施した現況調査の報告確認でも多くの質問や要望が事務局に提言されました。結局は時間切れになり、「調査の手法」については充分な審議がなされず、中途半端なところで継続審議となりました。次回(第5回)委員会は急きょ2月28日に開催されることになりました。2回の委員会にわたって話し合われた「調査手法」については、引き続き報告したいと思っています。

                  ◎
              
 沖縄県が考えている今後のスケジュールは、3月中に最終的な方法書案を委員会に提示し、新年度には公告縦覧に持ち込む、というものです。県は調査が終わってから提出する準備書こそが重要だと考えている模様ですが、まずはカラ岳周辺の自然環境がどのようなものであるのか、空港建設による環境への負荷がどの程度になるのかが正しく把握できるよう、きちんとした方法書を作成すべきです。少なくとも環境検討委員会で各委員が指摘したり要望したりしたことが、真摯に書面に反映された方法書が提示されることを、強く望みます。    (つづく)
        
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V..v 白 保 メ ー ル│\ Feb.15.2002
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白保メール NO.17 02.02.15
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                             //転載歓迎//


 <環境アセスメント報告会>   
小林 孝  WWFジャパン「しらほサンゴ村」

 2月3日(日)に、石垣市白保のWWF「しらほサンゴ村」で、白保メール発行者3名の主催による環境アセスメントの報告会を開きました。白保メール読者の皆さんと直接お会いして、新石垣空港計画の環境アセスメントの現状を報告するとともに、意見交換の場を持ちたかったからです。
 また、環境アセスメントという判りにくいシステムについて、アセスメント調査のなりゆきに注目している方々と、多少なりとも「アセスとは何か?」の知識を共有しておきたいという思いもありました。アセス法では、環境影響評価方法書の公告縦覧時、また準備書の公告縦覧時の2回、一般の人々(それは日本国民に留まりません)の意見を述べる機会が与えられています。その時のために準備しておこうという意味も含まれています。
 報告会には16名の方が参加しました。

■参加者からの発言
 当日の参加者の発言をいくつか紹介しましょう。

[新石垣空港環境アセスの方法について]

・現在沖縄県が実施している現況調査は、貴重種に力点が置かれているが、普通種の調査も充分に行わなければ生態系を包括的に把握することはできない。ベースになる種の存在まで見極めるべき。またスポット的な調査だけでは不十分である。
・カラ岳陸上予定地付近にはカンムリワシが営巣する環境がある。カンムリワシなどの餌となるものは、いわゆる普通種のカエルやヘビなどだ。そういう点に着目した、画期的な調査が必要であり、そうしないと生態系が把握できない。
・海岸の砂浜を形成する砂礫は、例えば有孔虫(星の砂、太陽の砂、など)の死骸だったりする。砂浜の砂の量とその白さを維持するためには有孔虫の生息環境を守らねばならない。その有孔虫の生息状況を把握するような調査も必要なはずだが、県の調査では全く不充分である。
・予定地周辺で発見された貴重種リストの中で、タイワンサワガニとヤエヤマサワガニの2種の記載があるが、同一種で現在はヤエヤマサワガニに統一されている。調査データについて、専門家が正確にチェックする必要がある。
・自分の得意分野で自主アセスといったものができれば良い。

[現空港拡張について]

・現空港拡張などいろいろな選択肢があるはずなのに、カラ岳陸上新空港案だけしか眼中にないような動きに終始している。
・B737−200が引退して、滑走路を300メートルでも伸ばせば、騒音がどう緩和されるかの調査もされていない。パインの出荷ができない時があるというが、一時期だけの問題。貨物専用便で対応することも可能だろう。300メートルの滑走路延長で、積載重量規制がどの程度緩和されるのか、本土直行便が宮古空港で給油しなくても直行できるようになるのかさえ、県は明らかにしていない。このような情報公開は県の責任で当然行うべきことだ。
・飛行機の騒音被害を受けている現空港周辺住民の苦労は判るが、現空港拡張しか良い方法はないと思う。現空港拡張が合理的である理由なり具体的な提案なりをして、周辺住民に理解してもらうという行動が現在は不足している。
・新空港問題の話になると、「なんであんな遠いところ(カラ岳陸上案のこと)に作らなければいけないのか?」と疑問を持つひとも多い。
・本土復帰前後は現空港拡張で青写真ができていて、周辺施設もそれに合わせて移転などをしてきた。それがいきなり白保のサンゴ礁の海を埋め立てる新空港計画に変わった(1979年に沖縄県が発表)のは不可解。

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 小さな報告会ではありましたが、自由に意見を言える社会環境作りの一端となれば幸いだと思っています。
 なお次回(第4回)新石垣空港環境検討委員会は、2月18日(月)午後1時半から4時半まで、那覇の「ホテル チュラ琉球」(県庁横)会議室で開かれます。是非、多くの皆様の傍聴をお願いします。
              

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 <<おかげさまで半年経ちました>>

 昨2001年8月15日に白保メールを発刊して、今日でちょうど半年経ちました。お約束?の隔週をやや上回る頻度で発行し、少しずつですが読者も増えています。マスコミ報道の少ない中で、本土の読者に新石垣空港関係の最新情報を提供するという目的は、ある程度達成されつつあると思います。
 しかし、もう一つの目的、八重山での新石垣空港や島の未来についてのタブーを作らない議論を興すことは、ようやく緒に就いたばかりです。あらためて、白保メールに御意見、御感想を寄せられるようにお願いします。御了解を得た上で、紙面に掲載します。
 また、白保メールへの投稿、特に御批判を歓迎します。なお、発行者3人は、個人の資格と責任で発言しています。投稿者も同様に、署名入りでお願いします。紙面でのペンネームの使用はかまいません。
        
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白保メール NO.17 02.2.15
発行者   鷲尾雅久 谷崎樹生 小林 孝
      shiraho@estate.ocn.ne.jp


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V..v 白 保 メ ー ル│\ Feb.6.2002
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白保メール NO.16 02.02.06
発行者:鷲尾雅久、谷崎樹生、小林 孝shiraho@estate.ocn.ne.jp
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  ★白保メール No.16 をお届けします。今回は初めて私たち三人以外の方の執筆です。
                             //転載歓迎//

 <白保サンゴ礁がよそと違うところ>   長谷川 均
                     国士舘大学文学部教授(地理学教室)

[キャサリン・ミュージックさんの報告]

 私はこの原稿を書きながら、20年ほど前にキャサリン・ミュージックさんがまとめたレポートを読み返してみた。1980年代に、沖縄各地のサンゴ礁調査を行っていたキャサリンさんは、白保サンゴ礁に深い思いを寄せていたようだ。私はマスコミを通じてしか彼女を知らないが、その調査ぶりは今でも白保のウミンチュウから聞くことができる。
 彼女は、1982-83年の時点で宮良や伊野田、通路口の造礁サンゴが「おそらく河川水のほかに、河川が運ぶ廃物」で壊滅的なダメージを受けていたにもかかわらず「白保ではサンゴが豊かに生育している」とし、「その理由ははっきりわからない」と記している。また、白保以外の場所でも「以前の条件はサンゴの生育に都合のよいものであった」と報告している。
 造礁サンゴは簡単に死に、条件がよくなればあっという間に増えるものもある。長年同じ場所をみていると、このような現場によくゆきつく。たとえば、石垣島東海岸の明石などでは、ミドリイシの群落がこのような推移を繰り返している場所がある。
 しかし、大局的にみれば石垣島東海岸の礁池で健全なサンゴ礁生態系が維持されているのは、20年前にキャサリンさんが観察して以来、白保くらいしかないということになるだろう。ただ20年前の白保は、干潮時にうっかり沖で取り残されると、「ごめんなさい、申し訳ない」とつぶやきながら、生きた枝サンゴをバリバリ踏み壊して歩かなければならないような海だった。それが今と少し違っていた。


[白保のサンゴ礁は浜の前にある]

 タンクを背負って、少し深場のサンゴを楽しむ場所は石垣島周辺にたくさんある。そのような場所は、礁斜面などとよばれる場所であることが多い。しかし、白保はそのような場所とは根本的に異なるサンゴ礁である。集落から近く、歩いてサンゴ礁の中へ入ることができ、住民の生活の場になっているのが、島の周りを囲むイノー(礁池)である。ダイビングで潜る礁斜面は、礁池の沖にある高まり(干瀬、礁嶺)の外側にある外洋側の斜面をいう。
 イノーは浜からつながっている。ジャブジャブ歩いていけば、生きたサンゴが観察できる。「裾礁」というタイプの日本のサンゴ礁では、これがひとつの大きな特徴といってよいだろう。ところが、この30年で沖縄では多くのイノーが死んでしまった。しかし、白保のイノーは生きている。

[サンゴ礁は開発しやすい遊びの場か?]

 沖縄では、このサンゴ礁の海が生活や信仰と深く結びついてきた。しかし、アプローチのしやすさこそが、簡単に埋め立てられるということにもつながり、開発のターゲットにもなった。埋め立てに伴う、物と金の動きも大きな魅力であったろう。かつて、新石垣空港建設地が白保地先の海であったこともこれが大きな理由と推察される。
 昨年、沖縄県が作成した「新石垣空港環境影響評価方法書(素案)」を読んで驚いたことがいくつかあった。そのひとつは、白保サンゴ礁を「遊びの場」としか捉えていないことだった。白保サンゴ礁は生業の場であり、生活の場として生きている。白保サンゴ礁が、人と共存してきた歴史的な背景を評価せず、「遊びの場」という一面でしか見ないというのは、かんべんしてくれよと云いたくなるような評価ではある。


[白保サンゴ礁の特徴]

 白保サンゴ礁は、典型的な裾礁タイプのサンゴ礁で、様々なタイプの造礁サンゴが生息している。代表的なものが、北半球最大といわれるアオサンゴの大群落(南半球最大のアオサンゴ群落はどこに? 誰か知っていますか? 白保は世界最大の群落ではないのか?)であり、この他にも、ユビエダハマサンゴの大群落や、パラオハマサンゴの群落は、よそではあまり見かけないほど規模が大きい。そして、多数のマイクロアトールや塊状ハマサンゴの存在も、日本では白保サンゴ礁だけにみられる特徴である。さらに、多彩で密集度の高い生物の存在も白保サンゴ礁の景観を特徴づけている。
 地形的には、明瞭なワタンジ(浜から沖に続く高まり)が干瀬まで延びており、これが複数存在するのは白保だけといってよい。また、礁池の随所に深みが形成されているのも、よそではあまり見ない。そして、白保サンゴ礁は典型的な裾礁で幅が広いため、浜から海藻・海草帯?砂床?造礁サンゴ帯?干瀬という帯状構造がどこよりも明瞭に形成されている。教科書に出てくるようなサンゴ礁というか、教科書に描かれる裾礁の模式図の多くは、ここをモデルにしているといっても良いだろう(例えば、目崎茂和さんの本にしばしば登場する渡久地健さんが描いた立体図など)。
 ここにあげた白保サンゴ礁の特徴の多くは、存在理由や形成過程が明確に説明できない。海を案内した時に受ける素朴な質問の多くに、いまだうまい説明が付かないのも白保サンゴ礁の特徴といってもいいかもしれない。

                  ◎

 優れたサンゴ礁の景観は、海だけで作られるのではなく、海・陸一体となったバランスのとれた生態系が存在してはじめて維持されるものだと思う。そのような意味で、現在の白保はすでに危機的な状況にある。20年後に振り返ったとき、「20年前より状況は好転した」といえるようなしかけを、今のうちにできないものだろうか。



 <<長谷川先生のご紹介>>

 長谷川先生は、大学院生の時(1983年)に初めて白保の海の調査を行い、それまで調査してきた国内のサンゴ礁の海では見なかった光景をこの白保で見た、といいます。
つまり、浜から歩いたり泳いだりしていけるところに、これだけの枝状のサンゴが生息する海は他にない、ということです。以来、白保の海に関わりを持ち、近年は毎年、モニタリング調査を白保で行っています。
        
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♯ 2月3日に環境アセスメント報告会を開きました。次号でご報告します。
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白保メール NO.16 02.2.6
発行者   鷲尾雅久 谷崎樹生 小林 孝
      shiraho@estate.ocn.ne.jp
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白保メール NO.15 02.01.23
発行者:鷲尾雅久、谷崎樹生、小林 孝shiraho@estate.ocn.ne.jp
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                             //転載歓迎//

 <新空港建設は八重山郡民の総意か?>    小林 孝
                       WWFジャパン「しらほサンゴ村」

 新石垣空港の早期着工は20年来の八重山郡民の総意である、という表現が地元のメディアでは踊っています。今年の3月に投票が行われる石垣市長選でも、候補者たちは「民意はそこにある」という姿勢を取らざるをえず、新空港については候補者4名とも意見が一致し、争点無しとさえ言われています。しかし、実際はどうも違うようです。私があちこちで拾った郡民の声をご紹介しましょう。

[タクシー運転手]
 タクシーを利用する時には、私はなるべく運転手に、新空港計画についての意見を聞くようにしています。その大多数の方々が、カラ岳陸上に空港ができたら商売にならない、と予想していらっしゃるのです。理由はこうです。
 現空港の場合、ある便の到着で乗客を捕まえられなかったら、次の便が到着するまで街の中や離島桟橋(竹富島や西表島などへの乗船場)の辺りを流して別の乗客を捕まえることができるが、カラ岳での空港になったら、街に引き返すこともできない。
なにしろ街まで17キロの距離ですから。現空港と離島桟橋の距離は3キロ前後でしょうか。次の便までとにかく空港で足止め状態になり、水揚げが減る、というものです。
 また、街や離島桟橋までの距離があまりに遠いので、タクシー利用客は減るだろうという見方がもっぱらです。つまり安く移動できるバス利用客が増えるだろう、というのです。
 だとしたら、タクシー業界でカラ岳陸上案に対する意見表明をしてはどうか、と誘い水を向けるのですが、業界では世論に歯向うようなことはできない、個人でもできない、という意味のことをおっしゃるわけです。

[土木建設業の方々]
 ある建設業の社長さんは、「新空港が着工したとしても、工事は本土のゼネコンが受注するものがほとんどで、地元の土建屋にはメリットがほとんどない」とこぼしておられました。
 また別の土木業者の二代目からは、「新空港完成後のビジョンが何も無い。一体八重山から何を空輸してゆこうとしているのか、何も見えない。必要性が見えない新空港など不要だと思う。現空港を今後も利用して、もっと小型機の就航率を高めたほうが、八重山の産業にはプラスになる」との意見も聞くことができました。

[その他の方々]
・現空港の隣接地で農作業をする老婆:「私はこのままでよい。うるさいとも思わない」
・街の有力不動産業者:「私の本音は、現空港のままでよい」
・白保のウミンチュ:「ウミンチュが海を守るのは当たり前さぁ」
・白保住民:「カラ岳での建設が難しいということがもう少し明確になってくると、白保の人たちのカラ岳陸上反対の声も上がってくるはず」
                  ◎
         
 つまり、八重山の産業界の中心的な人たちのなかにも、地元白保住民の中にも、カラ岳陸上での新空港計画に疑問を抱いている方々は少なからずいらっしゃるということです。
 しかし、ここで紹介したことばは、タクシーの密室の中であったり、ひそひそばなしの時であったりで、おおっぴらな場所での意見ではありません。皆さん本音では新空港に対し疑問を抱いているが、「早期建設は八重山郡民の総意」という作られた世論に遠慮していることがうかがわれます。つまり民主的な空気が稀薄です。
 今、事業者である沖縄県は、八重山住民各戸に1枚ずつアンケートを配布して、新空港に関する意識調査を実施中です。せめて白保メール読者で、しかも八重山で生活していらっしゃる皆さんは、このアンケートに答え、自由に意見を述べることができる社会環境作りを進めようではありませんか。アンケートの締め切りは今月いっぱいです。
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 <<環境アセス報告会のお知らせ>>

 新石垣空港『カラ岳陸上案』の環境アセスメントが4月からの新年度早々にも始まろうとしています。
 現在はこの準備のため、『環境検討委員会』での議論とともに、「予備調査」として環境現況調査が先行して行われています。
 この概略については『白保メール』でお知らせしましたが、『環境検討委員会』の委員となっている小林孝が、下記のとおり報告を行います。環境現況調査中間報告の資料なども用意しますので、奮って御参加下さい。

 新石垣空港『カラ岳陸上案』環境アセスメント報告会

1 日時   2002年2月3日(日) 午後1時から
2 場所   しらほサンゴ村(WWFジャパンサンゴ礁保護研究センター)
       石垣市白保118 T.09808-4-4135(よいさんご)
                F.09808-6-8865
3 主催   白保メール

 準備の都合上、参加を早目に決められた方は、メール等でお知らせ下さい。
 もちろん、当日急きょ参加される方も大歓迎です。
        
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♪♪ 転載を歓迎しますが、著作権は各執筆者に属します。
    引用される場合は、執筆者にお断り下さい。
♯ 前号で環境アセスメント報告会を2月2日とお知らせしましたが、都合により
2月3日に変更します。ご諒承ください。
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白保メール NO.15 02.1.23
発行者   鷲尾雅久 谷崎樹生 小林 孝
      shiraho@estate.ocn.ne.jp


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白保メール NO.14 02.01.09
発行者:鷲尾雅久、谷崎樹生、小林 孝shiraho@estate.ocn.ne.jp
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 <「ものさし」について>                谷崎 樹生
 
 お正月のTVやラジオ番組で、少々気になる発言を聞きました。「貧困がテロや暴 動の大きな原因の一つになっている。貧困という問題を解決することで、このような 事件が起こることを未然に防ぐことができるだろう。だが、貧困の解決には長い時間 がかかる。」というような趣旨の発言を何度か耳にしたのです。
 我が国でも「家貧しくして孝子出づ」(貧しい家庭に親孝行な子供が育つ)と言わ れたのは昔のことで、最近では「家貧しくして孝子出ず」、貧困が非行の原因になっ てしまうようです(豊かすぎても子育てに失敗する例は多いようですが・・・)。い つの間に、どうしてこうなってしまったのでしょうか?それは「家風」とか「家訓」 という言葉が死語になりつつあることと関係があるのかもしれません。
 かつてはどの家庭にもその家独自の規則があり、価値観がありました。そしてそれ らは親から子へ、子から孫へと受け継がれていったものでした。文化の伝承の一つだ と言えるでしょう。ところが、社会に大きな混乱が起こり、文化の伝承がスムーズに 行われなくなってしまうと「ものさし」を失った人々は新たな「ものさし」を求める ことになります。この時、自ら考え、自ら判断する習慣まで失ってしまった人々は、 大勢に従い、共通の「ものさし」を持つことになってしまうようです。
 「皆が同じものさしを持って、同じ価値観で物事を評価する」一見すると、平等で 公平で、すばらしい社会ができそうですが、実はとんでもなく危険な罠が仕掛けられ た危うい社会ができてしまう危険性をはらんでいるのです。
 今日我が国で起こっている様々な混乱は、皆が同じ価値観を持ち、同じ豊かさを追 い求めた結果と言えるでしょう。すでにその間違いに気づき、軌道修正しようとする 動きも一部にはありますが、残念なことにここ沖縄では、特に行政においてはその気 配さえ感じられません。
 沖縄で「本土との格差是正」とか「本土並み」と言うときには「本土=東京」とい う暗黙の了解があるようです。東京は確かに日本の政治・経済の中心ですから、暮ら しやすい便利な街なのでしょうが、それにはあくまで「お金さえあれば」という但し 書きが付きます。沖縄はいくら頑張っても東京にはなれませんし、もし万一東京並み の経済的な豊かさを獲得したとしても、そのときには東京はさらに豊かになっている か、滅亡しているかのどちらかでしょう。
 本土の田舎には平均値以下の地域はいくらでもあるのです。それらの全てが貧しく て生活に窮しているかというと、決してそうではありません。元気な田舎は全国各地 にあります。元気な田舎の人達は自分の足元をしっかり見据えて、自分たちの地域に 自信を持っています。元気な田舎の人達の視線は東京など向いていないのです。
 島の自然に生かされて島人が生きていくためには、島の自然との共生関係を修復す ることが不可欠です。島の豊かさを再発見し、再評価せねばならないのです。
「貧困という問題を解決するには二十年三十年という長い時間がかかる」とよく言 われますが、豊かさを測る「ものさし」を換えさえすれば、問題の解決は簡単だと思 います。
 私たちはそろそろ東京製やアメリカ版の「ものさし」を捨てて、島本来の豊かさを 正しく評価できる「ものさし」を取り戻すべきではないでしょうか。
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 <<沖縄県に代わってお知らせ>>
 新石垣空港環境検討委員会と建設工法検討委員会の日取りが、概略下記のとおり決 まったそうです。
 いずれも那覇で行われる予定です。
1 第4回新石垣空港環境検討委員会   2月上旬   沖縄県は、環境影響評価方法書の案を提案することを考えているとのことです。
2 第2回新石垣空港建設工法検討委員会   3月(おそらく上旬)  もう一つ、県から「新石垣空港建設に関するアンケート調査票」が配布されていま した。住民が意見を言うことのできる数少ないチャンスです。八重山在住の方、もう お出しになりましたか?1月末までです。
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2002年最初の『白保メール』をお届けします。本年もよろしくお願いします。
♪♪ 転載を歓迎しますが、著作権は各執筆者に属します。
    引用される場合は、執筆者にお断り下さい。
♯ 2月2日しらほサンゴ村で環境アセスメントの報告会を予定しています。 詳細は次号でお知らせします。
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~ 白保メール NO.14 02.1.9 発行者   鷲尾雅久 谷崎樹生 小林 孝
      shiraho@estate.ocn.ne.jp


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白保メール NO.13 01.12.26
発行者:鷲尾雅久、谷崎樹生、小林 孝shiraho@estate.ocn.ne.jp
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 <『カラ岳陸上案』はどう決まったか>(その3)     鷲尾 雅久

[2案への絞り込み]
 2000年1月18日の第3回全体委員会では、学識部会から提案された、1.航空機騒音2.農政上の課題3.環境保全上の課題4.滑走路延長の可能性の4項目について、○△×で評価する方法が承認されました。また、次回以降、「農政上の課題」と「環境保全上の課題」の順に審議して、1案づつ落とすことが決められました。
 しかし、比較検討項目として4項目を挙げておきながら、その中の2項目をしかも順番に検討するというのは、どのような合理性があるのか首をかしげます。選んだすべての項目につき同時に評価し、それを総合するのでなければならないでしょう。例えば、それぞれを数値化し、さらに項目毎にウェイト付けして加算する方法も、すでに関西国際空港計画で取られています。
 1月31日の第4回全体委員会では、「農政上の課題」について審議されましたが、資料は潰される農地の面積位で、土地の肥沃度や特性、耕作農家の属性、生産高や金額などは明らかにされませんでした。判断材料が欠けていると言わざるを得ません。
 2月14日の第5回全体委員会では、まず「環境保全上の課題」について審議されましたが、これは前回書いたように、『冨崎野案』と『カラ岳陸上案』についての調査が行われていない中での不完全な資料に基づくものでした。その後「農政上の課題」と「環境保全上の課題」についての評価が行われ、それぞれ×が一番多かった『宮良案』『カラ岳東側案』が落とされました。手の込んだセレモニーで、最初から地元公民館の反対で無理だった案を外したということなのでしょうか。

[案の選定]
 3月5日の第6回全体委員会で、残る2案についての審議が行われましたが、慎重な論議を求める意見が出て、結論は先送りされました。
 3月11日の第7回全体委員会では、今までの方針をくつがえし、「総合的な観点から評価」ということで、4項目それぞれについての評価はしないこととされました。
評価は○△×により、2案とも×を付けることはできないとされました。とにかく一つを選ぶということでしょうが、これでは選定された案が妥当であるという保証はないことになります。また、航空機騒音、滑走路延長の可能性の2項目は評価項目に挙げられながら、結局評価がされないという奇妙なことになりました。
 結果は、『カラ岳陸上案』の方が『冨崎野案』より○が多く×が少ないというものでした。『カラ岳陸上案』に×を付けた人は4人いましたが、委員長は評価の変更を迫り、あくまでも×の評価を維持する人は理由を述べてほしい、と発言しました。しかし、これは奇妙なことです。×は単に反対ということではなく、「悪い」という評価なのですから、それを変更する人は理由を明らかにする必要があると思います。
 理由を述べて×の評価を変えなかったのは、WWFジャパンの小林委員だけで、予定地付近は世界的なサンゴ礁のある豊かな自然の残る地域で空港建設は不適当、と述べました。その他の3人は圧力に抗することがでず、沈黙しました。
 それから後は、小林委員に対する「説得」が行われ、今まで一言も発言しなかった委員までが、次々と発言しました。途中休憩が取られましたが、その間にも別室で説得が続けられたようです。しかし、委員達の発言は、地域の発展のためとか住民の期待といった一般論か、赤土対策はとれるという根拠のない断言で、『カラ岳陸上案』が妥当である、或いは少なくとも不適当ではないということを明らかにするものではありませんでした。委員達は、繰り替えし「お願い」という言葉を使いました。しかし、全体の雰囲気はこの言葉とは裏腹に、よってたかって一人を責めるといった異様なもので、私には中世の魔女裁判のように見えました。
 結局委員会は、反対1を残して『カラ岳陸上案』を選定しました。委員会の決定は全会一致とすることが最初に決められていましたが、その原則は放棄されました。

[残された問題]
 各委員から、なぜ自分はこの案を選んだのか、選ばなかったのかという説明が聞けなかったのは残念なことでした。選定委員会立ち上げに協力した地元出身の企業人は「どこに造るかよりどこならまとまるかだった」と語ったと言います(01.11.27朝日新聞記事)。しかし、それではなぜこの案なのかが分りません。
 地元合意も今は、主だった人の意見を聞けばいいという時代ではないはずです。また、事業費は9割国庫補助とされているのですから、負担者である国民に対する説明責任があります。白保のサンゴ礁をはじめとする、ここの自然を愛し訪れてくれる人達に対する説明責任もあります。これから行われる環境アセスメントなどを通じて、選定の可否が問われることになるでしょう。

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 <今頃アンケート?>

 数日前、石垣市報折り込みで新空港のリーフレットとアンケートが各戸配布されました。
 リーフレットは、表紙に新空港周辺を俯瞰した予想図、中は説明文、航空写真に落とした計画図などです。表紙の写真を何気なく見ていたら、11月の産業まつりで配られたリーフレットの表紙写真と空港の位置が違います。計画図と比べてみると、ずいぶん南にずれ、海から離れています。カラ岳の切削面や海岸部の盛土法面も示されていません。役所が悪徳不動産屋のようなことをしては困ります。
 説明文も、「赤土による海の汚染はありません」などと書いていますが、その心配があるから環境アセスメントを行う訳です。「中型ジェット機が飛びます」というのも、航空会社は今のところ白紙としているのですから、誇大広告の感があります。
 アンケートは、『カラ岳陸上案』を知っているか、よいと思うか、新空港の何に関心があるか、何を期待するか、といった内容です。しかし、なぜ今頃なのでしょう。住民の意見を聞くのなら、位置選定の前の方がよかったはずです。
 説明はこのリーフレットだけ、すべて県の一方的な主張ですし、情報不足です。質問項目も、『カラ岳陸上案』をよいと思わない人にだけ理由を書かせるようになっていたり、新空港に期待することを選ばせる質問に「期待しない」がなかったり、賛成の方に誘導するものとなっています。
 世帯1枚のアンケートでは、結果はあまり意味のある数字になりませんが、県の都合のいいように使ってほしくはありません。

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白保メール NO.13 01.12.26
発行者   鷲尾雅久 谷崎樹生 小林 孝
      shiraho@estate.ocn.ne.jp

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白保メール NO.12 01.12.19
発行者:鷲尾雅久、谷崎樹生、小林 孝shiraho@estate.ocn.ne.jp
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<『カラ岳陸上案』はどう決まったか>(その2)     鷲尾 雅久

[審議の実態]
 位置選定委員会は、1999年8月29日から2000年3月31日までの間に、全体委員会8回、学識部会4回、地元部会2回が開かれました。私は実質的な審議が行われた第2回以降の全体委員会を傍聴しましたが、沖縄県からの説明とそれに対する質問に終始し、各委員の意見はほとんど聞かれませんでした。
 1999年9月から11月中旬までの審議では、学識部会(那覇)、地元部会(石垣)の各2回が、4案の説明に費やされました。説明は、気象条件、航空機騒音、土地利用状況、文化財・史跡、代替地の確保、地権者の状況、事業費、事業期間、滑走路延長の可能性、市街地までの距離、議会の議決の状況、関係諸団体の理解、自然環境の改変、農政上の課題、地元状況等(賛否の意見表明)、環境保全等に対する意見、その他の17項目にわたって行われ、膨大な資料も配られました。
 このあとの審議を見ると、この説明と膨大な資料がどのように生かされたのか分りません。
 
[恣意的な評価項目選定]
 具体的な選定方法は、12月22日の第3回学識部会で検討されました。17項目の説明事項をもとに沖縄県側から24の評価項目が示され、学識部会はその中から4項目に絞って比較検討することとしました。1.航空機騒音2.土地利用状況・計画(農政
上の課題)3.自然環境の改変(環境保全上の課題)4.滑走路延長の可能性、です。
その他の項目は各案でさほど差がないという理由で、除かれました。
 17がなぜ24になったのかも分りませんが、なぜこの4項目が比較検討項目に選ばれたかも、よく分りません。除外された項目の中には、立地条件としてまず考えるべき市街地までの距離が含まれます。どの程度地形を変えなければならないかということも、あとでカラ岳の切削が問題となっているのですから、この段階で考えるべきことだったと思います。
 またそもそも、一部の項目で評価するという考え方自体、妥当なものかどうか疑問です。ウェイト付けはするにしても、挙げたすべての項目を検討するのでなくては、評価が偏るおそれがあると思います。

 4項目のうち、滑走路延長の可能性を挙げることには疑問があります。需要予測は最初の新石垣空港計画以来下方修正が続けられており、実際は中型機でさえ飛ぶかどうか分りません。いつかもっと大型の飛行機が必要な時が来ると言うのなら、その頃には短距離で離発着できる新型機が開発されているということも言えます。これは、今まで2500メートル滑走路が必要だと言い続けてきた役所の面子を保つためのものとしか考えられません。
 また、航空機騒音は、地形等の条件を無視して宮良案の騒音範囲をあてはめたものですし、環境の調査は、冨崎野案とカラ岳陸上案については実施されていませんでした。つまり、不十分な資料しかないものを検討項目に挙げたことになります。これでは的確な評価は期待できず、後でその選択が不適当だとされる可能性すらあります。

[○△×による評価]
 評価は○(良い)△(やむを得ない)×(悪い)によるものとされました。これはかつて白保海上案を選定したときにも使われ、批判があったものですが、何とも大雑把すぎます。
 評価をするには、その基準が必要です。一人一人の評価基準が違っていたら、相互の比較はできません。基準自体の統一が困難なら、少なくとも、なぜそう評価したかを相互に説明する必要があります。位置選定委員会では、評価基準についての議論はなく、評価理由の表明すらありませんでした。これでは共通の理解をもつことはできず、評価は主観的なもの、さらに言えば印象にとどまります。あとは数で決めるしかありません。○△×という大雑把な評価は、数で決めることには対応していたと言えるでしょう。                                    (つづく)

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<東京都、小笠原空港建設を断念>
 東京都は11月13日、小笠原空港計画(父島時雨山案)を撤回したと発表しました。 理由の一つは、学識経験者等により構成される『小笠原自然環境保全対策検討委員会』から「影響を被る貴重種が多数あり、保全方策を確実に講じたとしても影響軽減効果には限界がある」との意見書が提出されたことです。環境現況調査で確認された貴重種として、絶滅危惧種のムニンツツジなど44種の植物、国の天然記念物に指定されているオガサワラノスリなどの動物22種が挙げられています。
 もう一つは、環境保全対策を含めた事業の見直しにより、総事業費が 1,100億円を超える上、事業期間も長期化し、完成が早くても平成30年度以降となる見込みとなったことです。
 この計画の代わりとしては、「新たな航空路案」を検討することとされています。硫黄島の飛行場の利用(ヘリで乗り継ぎ)や飛行艇などを考えているようです。 なお、上記意見書は、インターネットで全文を読むことができます。これには「参考意見」として、空港案の見直しを求める意見書も付されています。
 小笠原に倍する貴重種がすでに確認されているカラ岳周辺についても、慎重な検討を期待したいものです。
http://www.metro.tokyo.jp/INET/CHOUSA/2001/11/60BBE100.HTM

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白保メール NO.12 01.12.19
発行者   鷲尾雅久 谷崎樹生 小林 孝
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白保メール NO.11 01.12.04
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 第1回新石垣空港建設工法検討委員会          鷲尾 雅久

 11月30日、第1回新石垣空港建設工法検討委員会が石垣市内のホテルで開かれまし た。現地視察の後、委員長副委員長の互選、事務局からの空港計画、計画地周辺の地 形・地質等の概要の説明、討議が行われました。
 沖縄県糸数新石垣空港建設対策室長はあいさつの中で、赤土流出防止対策などの環 境面への配慮のほか、工費縮減について助言をお願いしたいと述べました。環境に配 慮した工事は経費と時間を要し、工費縮減とは矛盾する面を持っていますから、今後 の検討に注目する必要があると思います。
 
[委員会の目的・構成・日程]
 委員会の目的は「新石垣空港基本設計に伴う赤土等流出防止対策及び施工計画等を 策定するにあたり、指導・助言を得るため」とされました。県から基本設計を受託し たコンサルタント業者が設置した形を取っています。しかし、県職員が出席し発言し ているのですから、本来は当然県が設置すべきものです。そうでないと、公費が何に どれだけ使われたか分らなくなってしまいます。
 委員は次の方々で、○は環境検討委員会の委員でもある方です。
 委員長 上原方成・琉大名誉教授(地盤工学)、副委員長 福島駿介・琉大工学部 教授(景観工学)、石山范・財団法人港湾空港建設技術サービスセンター常務理事( 航空行政)、○黒田登美雄・琉大農学部教授(地質学)、○渡嘉敷義浩・琉大農学部 教授(土壌学)、○仲座栄三・琉大工学部助教授(海岸工学)
 委員会は、来年10月までに計6回(今年度中にもう1回)開催する予定となって います。また県からは、環境検討委員会との合同開催または意見交換会開催の考えが 示されました。

[空港計画]
 県が6月に策定した空港基本計画については、まだ国の了解が得られず協議中との ことでしたが、需要予測、施設の配置などで詰めの段階に入っていることが明らかに されました。
 旅客需要予測は、2010年度193万人、2015年度217万人、2020年度245万とされまし た。しかし、2000年9月の地元調整会議の資料では、2015年度191万人、2020年度209 万人となっていました(2010年度の数字は示されず)。今年度に入って経済成長率は マイナスとなり、今後の経済成長の予測も下方修正されているのに、逆に増やすとい うのは何故なのか、理解に苦しみます。

[地形・地質等の説明]
・空港計画地は、東方の低地や白保沖のさんご礁への地下水の主要な涵養域となって いる。 
・計画地の南側は、侵食を受けやすく赤土流出の発生源となる「国頭マージ」土壌で 占められており、そこからの発生土に注意する必要がある。
・年間を通じて突発的な降雨がある。短時間に集中して雨が降る傾向が強く、赤土が 流出しやすい気象条件と言える。

[委員からの意見]
・赤土流出対策として、できるだけ切土と盛土を減らし、移動の距離も短くした方が よい。
・盛土は、同じような土質のものを持ってくることで、現況の地下水や透水性を確保 できる。石灰岩だけで見ると、計画地の中では切土と盛土のバランスが取れない。
・普段は枯れているが降雨時に水が流れる場所があり、そこから赤土が流出するおそ れがある。
・雨滴の大きさが赤土流出に関わる可能性があるので、データがほしい。

                  ◎

 次回は来年2月か3月に那覇で開催することになりました。県は、そのとき、盛土 の不足分190万立方メートルを確保する土取場の具体的な位置を提示するとの考えを 示しました。

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白保メール NO.11 01.12.4
発行者   鷲尾雅久 谷崎樹生 小林 孝
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白保メール NO.10 01.11.30
発行者:鷲尾雅久、谷崎樹生、小林 孝shiraho@estate.ocn.ne.jp
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 第3回新石垣空港環境検討委員会 環境現況調査中間報告 >
                 小林 孝  WWFジャパン「しらほサンゴ村」

 11月16日に行われた第3回新石垣空港環境検討委員会の環境現況調査中間報告について、要点をお伝えしましょう。配布された資料の目次だては、1.調査内容(調査時期、項目及び方法) 2.調査結果の概要 3.調査結果(3.1 大気環境 3.2 水環境 3.3 動植物の生息又は生育、植生及び生態系の状況 3.4 景観及び人と自然との触れ合い活動の状況)となっています。
 ただし、調査結果についてはとりまとめ中、あるいは解析中という項目が多く、委員からの質問に対し事務局から適切な返事が出てこないことも多々ありました。あくまで中間報告の域を出ない資料であったと言えましょう。その中から、重要な点だけを抽出してお伝えします。

[水環境]
 予定地周辺の海域と陸域で、水象、水質、底質、地下水について調べられました。
リーフ内では海水流に特定の傾向は無いという見解が示された他、降雨時に河川流量が多い上、轟川河口周辺海域では、降雨時に水汚染が高い傾向がある、というごく当然の結果が出ています。
 河川水に関しては轟川だけではなく、予定地内で降雨時だけ水が流れるところについての資料が無いのは問題であるとの指摘が委員からされましたが、事務局からは明確な答えはありませんでした。また白保海域の海象については、これまでの膨大な調査資料があるはずであり、それらとの比較は是非必要であると委員長からの指摘がありました。
 
[動植物の生息又は生育、植生及び生態系の状況]
 陸域、海域での、プランクトンを含む動物、植物の生息状況についての報告がありました。つまりどういう動植物が発見されたかのデータですが、資料では種類という表現が使われており、「種類と種は違う。種まで同定すべき。その中に重要なものが含まれていることがある。あいまいさが残っているといけない」「生物学の構成単位は基本的に種である。それを理解していない人間が資料を作成しているとしか思えない」など、複数の委員からの指摘がありました。また春と夏の2回調査がされていますが、夏の調査についてはまとまっていない項目が多くありました。

[貴重種について]
 発見された貴重種は、水生動物:30種、水生植物:1種、哺乳類:3種、両生類:1種、爬虫類:2種、鳥類:22種、陸上昆虫類:11種、甲殻類:7種、陸産貝類:6種、クモ類:1種、コウモリ類:3種、陸上植物:31種の合計118種となっています。ちなみに小笠原空港予定地で発見された貴重種は60種余りでした。
 ウミガメの上陸は確認されなかった、とされています。

[その他気になることなど]
・調査項目はピンポイントでの項目の羅列であって、生態系という概念、つまり面的あるいは空間的にお互いの環境が関連している、という考えがすっぽりと抜け落ちていると感じられました。
・陸上動物学の委員からは、「移植という手段が安易に選択されることがあるが、基本的に動植物は生活できる場所にいるのであって、それを移植するから大丈夫ということはおかしい」という趣旨の発言がありました。まったくその通りであり、泡瀬干潟の藻場移植が失敗している例を持ち出すまでもなく、場当たり的な手段を取る姿勢が多々見られる沖縄県(だけでもありませんが)は、大いに参考にすべき意見でしょう。
・「影響を考慮すべき環境項目」という議題もありました(本来、調査がすべて終了してから論議すべき議題でしょう)が、そこで地質学専門の委員から、「盛土の場合は、基盤と同じ土質のものを使えば透水性はあまり変わらない。しかし、切削したカラ岳の堆積物を違う土質のところに盛土材として使用すると、とんでもないことになる(つまり透水性が下がり、オーバフローした赤土混じりの雨水が海に流入する)」
との指摘がありました。
 ところで、190万立方米不足している盛土をどこから持ち込むのかは未定とのこと。方法書を作成する時点では明らかにされるはずですが、その場所のアセスも検討事項に入ることを、事務局は明言しました。

                  ◎

 今回の中間報告資料をさらに読み込めば、さまざまな問題点が出てくると思われます。それらについては、改めてお伝えしようと思います。

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 <<工法検討委員会が開催されます
        
 第1回新石垣空港工法検討委員会が下記のように石垣で開催されます。傍聴可とのことですから、時間のある方はのぞいてみませんか。

1. 日 時 : 平成13年11月30日(金)
       13時〜17時30分(現地視察を含むかもしれません)
2. 場 所 : 石垣グランドホテル(石垣港近く730交差点)

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♪  転載を歓迎しますが、著作権は各執筆者に属します。
    引用される場合は、執筆者にお断り下さい。

♪♪ 10号までこぎつけました。
    みなさまの御声援に感謝します。

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白保メール NO.10 01.11.28
発行者   鷲尾雅久 谷崎樹生 小林 孝
      shiraho@estate.ocn.ne.jp


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白保メール NO.9 01.11.21
発行者:鷲尾雅久、谷崎樹生、小林 孝shiraho@estate.ocn.ne.jp
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 第3回新石垣空港環境検討委員会>
                 小林 孝  WWFジャパン「しらほサンゴ村」

 11月16日に沖縄県八重山支庁で、第3回新石垣空港環境検討委員会が開かれました。議題としては、前回委員会の議事録(案)の訂正、ターミナル位置が西側から東側に移動した件、様々な団体から出された同委員会への要望書・意見書について、カラ岳周辺の現地視察、環境現況調査中間報告、空港建設による影響を考慮すべき環境項目、その他、となっていました。第1回、第2回の委員会については、白保メールNo.7で触れています。

[前回委員会のウソの議事録の訂正]
 前回委員会(3月22日開催)では、どういう環境アセスメントをするかの方法書ができる前に現地調査を実施したいとする事業者(沖縄県)の要求に対し、それはアセス法に抵触するルール違反ではないかとの疑問が委員から出され、アセス法の解釈をめぐって論議になりました。結局そこでは結論が出ませんでした。ところがその時の議事録(案)には、委員長が各委員にその是非を尋ねた際の記録として、(委員 はい、うなずく)との注釈が書かれていました。事実はまったく違います。アセス法の解釈をめぐって各委員が戸惑い、判断に迷っていましたから、反応のしようがなかった、というのがその場の様子でした。それを委員から承認を得たかのように議事録を恣意的に作り上げ、事業者は現地調査を強行しているのです。
 その議事録(案)のウソに対し、委員のひとりであるWWFジャパンの小林が意見書の中で指摘し、書き直しを要求しました。今回の委員会で配布された議事録では、その部分が(委員 特に発言なし)と書き直されていました。ただこの問題を指摘した委員はひとりだけ(他には沖縄環境ネットワークが意見書の中で言及している)であり、その指摘だけで資料が簡単に変更されるという、委員会の進行のずさんさが改めて明らかになったほか、委員が承認したわけではないのに現地調査が強行されているという問題点も残りました。
 この日の午後に行われた現地調査の中間報告は、次回以降にお伝えします。

[ターミナル位置の変更について]
 予定地として決まったカラ岳陸上案は、ターミナル位置は本来西側でした。それが一部の白保住民からの要請で東側に変更されたことは既報の通りです。環境検討委員会の存在を軽視するこの作業に対し、事務局から謝罪がありましたが、結局これも充分論議されることなく、カラ岳の切削量が西側の約2倍になる東側案で推進されることになりました。
 アセス法は、環境保全のためにベストを尽くすことを求めており、そのためには代替案の検討が不可欠です。ここでも、ターミナル西側と東側の両方を比較検討する作業が必要ですが、事務局は「これは事業アセスだから、案をひとつにしぼらないと国に提出できない」と言い張り、押し切ったのです。

[環境アセス専門家の招聘]
 沖縄環境ネットワーク、および小林は、環境アセス法の解釈が事務局の都合によってゆがめられていると懸念し、この委員会にアセスの専門家を招聘することを、委員長および事業者に要請しました。それに対する事業者からの答えは、「(手続きの中で)作成した一連の図書については、(沖縄県の)環境部局で設置している環境影響評価審査会の審査を受ける」から、同委員会にアセス専門家を入れる必要なし、というものでした。
 しかし今回の委員会でも、アセス法についての解釈が統一できない事態が生じています。例えば代替案の記載についてですが、アセス法では、可能な代替案すべてを検討する義務が事業者にはあるとされています。ところが事務局は、その必要はない、と突っぱねていました。水掛け論です。改めて小林が専門家招聘を委員会と事務局に要望したところ、委員会終了後に各委員がその点について協議し、香村委員長と大森副委員長に一任して、事務局への要望を行うことが決まりました。                  ◎

 次回委員会は2002年1月中旬に那覇で行われる予定です。その時までには方法書案が作成されるとのことですが、果たして…。


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白保メール NO.8  01.11.07
発行者:鷲尾雅久、谷崎樹生、小林 孝shiraho@estate.ocn.ne.jp
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 『カラ岳陸上案』はどう決まったか (その1)     鷲尾 雅久 

 今回の位置選定に当たり、事業者である沖縄県は、「新石垣空港建設位置選定委員 会」を設置し、その審議結果を踏まえて『カラ岳陸上案』を選定しました(『白保メ ール』NO.2及び5参照)。
 沖縄県は、位置選定委員会の決定をもって「地元合意」が得られたとしているよう ですが、果たしてそう言えるのか、位置選定委員会の性格と審議経過を検証してみた いと思います。

[委員の構成]
 位置選定委員会は、学識経験者8人と地元代表28人との合わせて36人の委員で 構成されました。
 ●地元代表
  八重山圏3自治体の首長と議長 計6人
  八重山圏選出県議会議員 2人
  関係集落公民館等代表 10人
  地元自然保護団体 2人(WWFジャパン白保サンゴ礁保護研究センター=白保サ ンゴ村、日本野鳥の会八重山支部)
  その他関係機関 8人(宮良川土地改良区、石垣市農業委員会、八重山郡農業協 同組合、八重山漁業協同組合、石垣市商工会、沖縄県建設業協会八重山支部、石垣市 観光協会、八重山青年会議所)

 このメンバーを見ていると、いくつかの疑問が湧いてきます。  
 予定地及び周辺の公民館長が委員となっているのは、今までの位置選定で地元公民 館の反対で事業が進まなかったことへの対策でしょう。しかし、地域代表としては、 位置案の対象となっていない地域からも出るのでなければ均衡が図れないのではない でしょうか。
 一番問題なのは、「その他関係機関」として経済団体しか入っていないことです。 住民にありうる多様な意見を聞くためには、経済団体代表では偏りがあると言わざる を得ません。例えば、消費者団体や労働団体も入れるべきではないでしょうか。特に 航空関連労組は欠かせないでしょう。
 一般市民を公募委員として入れることも、最近の自治体のこの種の委員会には多く 見られますが、そういう発想は全くなかったようです。

 また、委員の性格については、団体の意思なのか、個人の資格での参加なのか、は っきりしませんでした。公民館代表のうち決定を経て出席していると発言したのは、 冨崎野への誘致を表明した双葉公民館長だけでした。私の所属する宮良公民館も『宮 良案』反対のみを決めていました。

 これでは、地元の(おそらく有力者の)意見を聞いたということは言えても、地元 合意に直結はしないと思います。

 なお、学識部会は那覇で行われたため傍聴できませんでしたが、少なくとも全体会 議において学識委員は、発言を控えていました。大勢が決まりそうになって、多数派
の応援をしただけです。したがって、どのような専門知識と見識により選ばれたのか は分りませんでした

[4案からの選定]
 位置選定委員会は、県の提示した冨崎野、宮良牧中、カラ岳東側、カラ岳陸上の4 案から、新空港予定地を選定するものとされました。しかし、なぜこの4案なのかと いう疑問があります。
 特に、環境面の負荷が少なくて工事費も安く済み、早く使えるようになる現空港拡 張案を、最初から除く理由は見当たりません。沖縄県は地元住民の反対を主な理由に
現空港拡張案を採用しないとしていますが、『宮良案』や『カラ岳東側案』も地元公 民館の強い反対があったものです(今回のものと少し位置は違いますが、白保公民館 はカラ岳陸上案』にも反対していました)。現空港拡張案を除くのなら、これらの案 も除かなければ、理屈は通りません。

 この4案を検討対象としたところで、帰趨はある程度見えていたともいえます。巷 では、最初から『カラ岳陸上案』とすることが決まっていたという説もあります。そ の真偽のほどは分りませんが、白保地区に2案ということは、『カラ岳陸上案』への 白保地区の反対を弱める効果があったことは否定できないでしょう。 (つづく)

 
 <<環境検討委員会が開催されます
        
 第3回新石垣空港環境検討委員会が下記のように石垣で開催されます。審議は公開 ですから、時間のある方は傍聴してみてはいかがでしょうか。

1. 日 時 : 平成13年11月16日(金)
       10時30分〜16時30分(12時〜13時 休憩、13時〜14時30分 現地視察) 2. 場 所 : 沖絶県八重山支庁 2階大会議室
3. 議題(予定):
(1)第2回環境検討委員会の議事確認
(2)環境検討委員会及び沖絶県に寄せられた意見書について
(3)ターミナル位置の変更(西案から東案)の報告
(4)議事
  1) 春季及び夏季の環境現況調査結果(一部速報)について
  2) 調査・予測・評価項目について
(5)その他

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白保メール NO.8 01.11.7
発行者   鷲尾雅久 谷崎樹生 小林 孝
      shiraho@estate.ocn.ne.jp




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白保メール NO.7 01.10.25
発行者:鷲尾雅久、谷崎樹生、小林 孝shiraho@estate.ocn.ne.jp
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 新石垣空港カラ岳陸上案までの経緯>(その3)   

                小林 孝      WWFジャパン「しらほサン ゴ村」

 前回(白保メールNo.5)は、新石垣空港建設予定地がカラ岳陸上案に選定 されて から、地元調整会議で具体的な滑走路方向と滑走路端位置が詰められ、その 後、白保 公民館の要望によってターミナル位置が変更されたこと、この変更によってカ ラ岳の切削量は、当初の案の1.75倍になったことをお伝えしました。
 白保公民館の要望を地元調整会議があっさりと受け入れる以前に、新空港の 環境影 響評価手続きを沖縄県が進めるにあたり、その作業が適切に行われるよう指導助言する新石垣空港環境検討委員会が立ち上がっています。今回は、その経緯をお伝えしま す。

■2000年12月23日  第1回新石垣空港環境検討委員会:八重山支庁舎で開催。午後はカラ岳陸上案予定 地、白保海域を視察
●設置目的(同委員会設置要綱第1条)   新石垣空港(カラ岳陸上地区)において、環境影響評価の手続きを進める にあたり、環境影響評価方法書、環境影響評価準備書及び環境影響評価書の作成ならびに公 告縦覧後、提出された意見に対し、適切な指導及び助言等を得るため  
●委員(全11名) 9名は琉球大学の自然系の教授、助教授、2名は石垣 の自然 保護団体日本野鳥の会八重山支部、WWFジャパン)の担当者  沖縄県は新石垣空港事業について、1999年に施行された環境影響評価法に基づく環境影響評価を行うことを表明している。この法律は、事業者(この場合は沖縄 県)が 環境にどれだけ配慮して事業を進めるか、進めたかを国民に説明する義務と責 任があ るという考え方に基づき、それを満たすための手続きを定めている。

■2001年3月22日  第2回新石垣空港環境検討委員会:那覇の沖縄レインボーホテルで開催  
●新石垣空港計画の概要、空港予定地及びその周辺の現地調査計画(案)、 空港建設予定地及びその周辺の現況、などの資料配布  
●県が実施したコウモリの事前調査の報告  
●アドバイザー委員(コウモリ類の専門家)奈良教育大学の教授の紹介  第2回委員会では、環境影響評価方法書(環境影響評価の項目・手法を選定 する書 類)が完成する前に、現地調査を実施することを認めるかどうかが問題となっ た。事務局は事前調査だとして、これの実施を認めるよう求めたが、委員の意見はま とまら なかった。
 ところが後に事務局が配布した議事録案によると、各委員が調査の実施に同 意した かのような、事実に反する記録があり、それをもとに沖縄県は2億4千万円近 い費用 をかけた現地調査を実施している。
 委員の意見がまとまらなかった背景には、環境影響評価法の解釈が各委員で まちまちであり、どう解釈すべきかの判断も明確にはできなかったということがあ る。このことが委員会審議に混乱を招いている現状を憂い、沖縄環境ネットワークおよ びWWF ジャパンは、事務局に対し「同法の専門家をアドバイザー委員として参加させ る」よう要請している。現在、沖縄県はこの要請を拒みつづけている。
 第3回環境検討委員会は11月16日、石垣市で開催される予定です。


<B737-200の退役>                   鷲尾 雅久         

 石垣空港には現在、B737-200、B737-400、B737-500の3種のジェット機が就 航して いますが、旧式の200型機は騒音規制のため、2002年には運行できなくなりま す。
 200型機を就航させているJTA(日本トランスオーシャン航空)は、この 期限を待たずに、今年7月から来年2月までの間にすべての200型機を退役させ、400 型機に 統一するそうです。
 実は我が家は、現空港の滑走路北端から2.5キロのところにあります。風向 きによ っては、離陸する飛行機が右にカーブして真上を通ります。騒音でテレビや電 話の音 が聞こえなくなります。そのとき、こいつはうるさい!と思うと大抵200型機 なので す。
 石垣空港では、200型機は1日あたり6または8便(繁忙期は10便)就航 してい ます。それが数カ月後にはなくなることになります。特に夜7〜8時台の2、 3便が なくなることは騒音の緩和に役立つでしょう。
 現空港の騒音対策も、まずこうした個々の対策の積み重ねが行われなければ ならな いと思います。空港がなくなるか、このままかの二者択一というのは、乱暴な 話で、 本当に騒音対策を考えているのかと疑問を持ちます。

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♪ 転載を歓迎しますが、著作権は各執筆者に属します。
引用される場合は、執筆者にお断り下さい。 ♪♪
ずっと水曜日発行だったのに明日は用事があって、1日ずれてしまいま した。
なんだか残念な気がします。             (M)


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白保メール NO.6 01.10.10
発行者:鷲尾雅久、谷崎樹生、小林 孝shiraho@estate.ocn.ne.jp
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    ほどほどの幸せ 

   ─島の自然と社会のキャパシティーと島人の幸せについて─            谷崎 樹生

 石垣島では最近のわずか30年ほどの間に土地改良・道路整備・ダム建設・河川改修 などの大型公共工事が一気に押し進められてきました。その結果、農作業の機械化が 進み、道路事情もよくなり、旱魃に苦しむこともなくなりましたが、失ったものも決 して少なくはありません。
 地形や植生を変えてしまうほどの大規模な工事の結果、島の原風景が失われてしま ったのです。子ども達が大木の上から飛び込んだ深い淵のあった川は河川改修と赤土 汚染で見る影もなくなり、エビやカニと戯れた小川は三面張りの排水路に変わり果て てしまいました。秘密基地を作った森や洞窟も、野良仕事の疲れを癒してくれた木陰 や泉も、跡形もなく消えて無くなり、原風景はかつて子供であった現在の大人達の心 の中にしか残っていないのです。
 かつて島では、人は島の自然によって生かされ、島の自然に根ざした文化によって 育まれていました。先人達は島の自然を学び、それを末永く活用する術を心得ていま した。ところがいつの間にかそのような価値観や技術・文化の伝承がスムーズに行え なくなってしまったのです。このよう傾向は全国で見られますが、戦後と復帰後に大 きな経済的・社会的混乱を体験した沖縄ではなおさらです。
 特に復帰後の集中的な公共投資により、確かに島の経済は潤いましたが「公共事業 が基幹産業」という異常な産業構造が出来上がってしまいました。この路線を維持す るためには、島は未来に向かって果てしなく発展し続けなければなりません。そして 行き着く先は、おそらくバラ色の未来ではなく、地獄でしょう。
 私たちは一体何を間違え、何を求め、何を得るために何を失ってしまったのか、反 省すべき時期に来ているようです。今、時代は自然との共生を模索しています。経済 もゼロ成長を維持することさえおぼつかない状況にあります。かつてのように大規模 な公共投資による社会資本の整備や開発を続けられる状況ではないのです。今後は新 しいものを作るのではなく、すでにあるものを維持管理し質を高める工夫をしていか ねばなりません。
 確かに今の日本ではお金さえあれば何でもできます。島の中で足りないものがあれ ば牛の餌から石油や水まで、よそから買ってくることができるでしょう。だけど、で きる事と、していい事とは違うはずです。どこまでが許されることなのか?それは、 島の自然と社会のキャパシティー(許容量)が教えてくれます。キャパシティーを越 える行為や急激な変化に対して社会は混乱し、人心は惑わされ、自然は赤土汚染や畜 舎排水汚染など様々な警鐘を鳴らします。
 私たちはそのような社会と自然からの警告に耳を傾け、そろそろ島の完成イメージ を固めて、そこに軟着陸できるよう軌道修正する時期に来ているのです。
 最後に宮沢賢治の真似をしてこんなことを言ってみましょうか 「島中の全ての生き物が幸せにならない限り、島人の幸せなどあり得ないのだ」と。


   二つの判決                     鷲尾 雅久

 10月4日、公共事業をめぐる判決が二つ出ました。  一つは、東京の小田急電鉄高架化の事業認可取消しです。すでに工事が7割も進ん だ中でのこの判決は画期的です。判決理由は、騒音の解消への配慮がなかったことを 指摘するとともに、高架式を採用する決め手になった事業費について、地下式の方が 安くなる可能性が十分あったとしています。
 もう一つは、沖縄本島国頭ゴミ処分場の建設禁止仮処分決定です。地区住民の入会 権を認めたものですが、用地選定理由や手続きの不透明さが根底にあって起こされた 裁判だと思います。また、村が先月、裁判所の判断を待たずに工事着工を強行したこ とに対して、裁判所は法に基づいた適正手続きを行うよう、注意を促しています。
 この二つに共通するのは、考えられる案の十分な比較検討とその際の情報公開がお ろそかにされたことだと思います。しかし、公共事業も、行政の独りよがりはもう許 されません。



白保メール NO.6 01.10.10 発行者   鷲尾雅久 谷崎樹生 小林 孝       shiraho@estate.ocn.ne.jp


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白保メール NO.5 01.9.28
発行者:鷲尾雅久、谷崎樹生、小林 孝shiraho@estate.ocn.ne.jp
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 新石垣空港カラ岳陸上案までの経緯>(その2)
                        小林 孝 WWFジャパン「しらほサンゴ村」

 今回は、新石垣空港建設位置選定委員会が2000年3月に新空港予定地として カ ラ岳陸上を選定してから、新石垣空港地元調整会議(建設位置に関する新たな審議 機 関)が設立され、白保公民館の要望によって、カラ岳の切削量が大きくなる、ター ミナル東側案が決められるまでの流れをお伝えしたいと思います。

■2000年
4月8日 位置選定委員会は稲嶺沖縄県知事に提言書を提出
4月26日 沖縄県が『カラ岳陸上案』を建設位置に決定
9月20日 第1回地元調整会議:事務局はカラ岳陸上案の滑走路方位3ケースを説
明  
●宮良、白保、大里の関係集落公民館長、宮良川土地改良区副理事長、石垣市農業委員会会長、八重山 郡農業協同組合長、八重山漁業協同組合長、WWFジャパン職員、 日本野鳥の会八重山支部、石垣市長、 八重山支庁長、新石垣空港建設対策室長で構成
9月25日 白保公民館新石垣空港建設検討委員会(委員長:宮国文雄)設立
10月20日 第2回地元調整会議:滑走路方位の決定持ち越し
 ●白保公民館から、ターミナル位置を東にすること、地元説明会の実施、地域内 で の調整時間の確保、という要請が出され、これを受けて決定は持ち越された。
10月30日 カラ岳陸上案について白保住民への説明会実施
11月17日 『空港建設に反対し白保の自然を守る会』(迎里清代表)結成
11月20日 白保公民館は臨時総会を開催し、カラ岳陸上案受け入れを決議
11月22日 第3回地元調整会議:滑走路位置の選定
 ●土工量バランスが一番まともだとされ、カラ岳切削量も比較的少ない滑走路方 位 (原案と同じ)で、滑走路端を当初案から180m南東にずらした(海岸線からの 距 離は100m程度)位置が選定された。ただし環境負荷に関するデータは提示され ない条件下での選定であった。
 ●予定地内(ゴルフ場)の洞窟に、環境庁レッドリスト1Bに属する3種類の絶 滅危惧種コウモリ(ヤエヤマコキクガシラコウモリ、カグラコウモリ、リュウキュウ ユビナガコウモリ)が生息することが発表された。
12月23日 新石垣空港環境検討委員会発足

■2001年
5月31日 第4回地元調整会議:ターミナル位置東側案に変更決定
 ●白保公民館の要望を受け、新空港のターミナル位置を東側にすることが決定さ れた。これによってカラ岳の切削量は、ターミナル西側案の1.75倍になる。

 この間の大きなポイントは、地元白保公民館が、初めて新空港建設受け入れの決 議を行ったこと、その受け入れ条件(当初16箇条、その後増えて19箇条)には、 カラ岳切削量が増えるターミナル東側案が含まれていることが挙げられます。位置選 定後に、カラ岳周辺住民の強い要望でカラ岳の切削量をなるべく少なくするように配 慮して決定した具体的な位置決定と矛盾する項目であり、さらにその矛盾する要望 を、急遽開かれた(差し戻された)地元調整会議はいともあっさりと受け入れてしまっ たわけです。
 新空港建設が環境に与える負荷がどういう内容になるのか、それを探り検討する ための環境検討委員会が立ち上がってからの、またしても環境面でのデータがまった く不足する状況での安易な位置変更だと言わざるを得ません。
 環境保全に配慮した「新石垣空港計画」という謳い文句ですが、実は環境保全に は配慮が伴わない経過が連綿と続いていることが露呈されています。
                              (つづく)

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 <<読者からの声

 新石垣空港の話になると、私はいつも「101匹目の猿」の話を思い出してい ました。
 うろ覚えですが、海で完全に隔てられている島々に住む猿がいて、ある日、あ る島の猿が食べ物を洗って食べるようになる。そうするとその島の他の猿たちもだん だんと洗って食べるようになり、その数が100匹を越えたとき、海で隔てられ、交 流の持てないはずの隣の島の猿たちも洗って食べるようになり、やがてあっと言う間 にその現象が世界に広がる、という話です。
 今は、「新石垣空港を作る」と思う猿がたくさんこの世界にいるかもしれませ んが、「新石垣空港を作らない」と思う猿が徐々に増えて、そしてある数を超えたと きに、あっと言う間に世間の流れの主流になる。そんなことが起こらないだろうか と。
 このメール配信がたくさんの「作らないと思う猿」を生むことを、実は願って います。      (石垣 A.T.)

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♪ 前号(No.4)と今号で、読者から寄せられた感想を紹介しました。
  発行者一同、最初の方の3匹の猿となる栄誉を担うため、『白保メール』を続
けて行きたいと思っています。

♪♪ 転載を歓迎しますが、著作権は各執筆者に属します。
    引用される場合は、執筆者にお断り下さい。

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白保メール NO.4 01.9.13
発行者:鷲尾雅久、谷崎樹生、小林 孝shiraho@estate.ocn.ne.jp
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 <公共事業チェック議員の会沖縄視察 語録>       鷲尾 雅久 

 去る9月4日から7日まで、超党派の国会議員で構成される公共事業チェック議員 の会(会長中村敦夫参議院議員)が沖縄を視察しました。
 4日は石垣に10人の議員が来島し、新石垣空港予定地カラ岳のふもとで沖縄県な どから説明を受け、白保サンゴ村で住民の意見を聞きました。5日は沖縄本島の泡瀬干潟と佐敷干潟、6日は普天間飛行場の代替とされる辺野古を視察し、6日夕沖縄県 庁で記者会見を行いました。
 この中で、いくつも気になる、或いは心に残る言葉がありました。御紹介します。
☆ 時代認識に誤りがある = 白保サンゴ村で中村会長
  日本経済は破綻に瀕している。空港を造れば観光客が来るということはない。もし空港を造ったら、財政赤字に苦しむことになる。飛行機の利用率には余裕があり、一時的なピークのとき、工夫すればいい。もっと発展、と言う考え方そのものが間違っており、それを止めさせるために全国を回っている。新石垣空港についても、全国的な話題として広めていく。

☆ 行政担当者もロボットから脱して = 泡瀬で中村会長
 (「いかなる工法を取ってもジュゴンが絶滅するとなったらどうするのか」という質問に、那覇防衛施設局の職員が自分の立場では答えられないとしたことに対し)時代が変わった。行政担当者もロボットから脱して、自分はどう思うかを考えていかなければならない時代に入ったということを、我々のメッセージとしてお伝えしたい。

☆ 子や孫のためにこの自然を残したい = 辺野古の住民
  振興策と言っても公共事業、住民は道路などいらない。子や孫のためにこの自然を残したい。自分達だけが豊かになるために自然をこわしたくない。

☆ 自然環境なくして沖縄に未来はない = 記者会見で中村会長
  事業の推進者から危機感が全く感じられないのでびっくりした。どうにかなるだろうという、驚くほど楽観的な、むしろ空想的な思考でやっている。地球的規模で、自然を破壊して経済成長を続けることが不可能な時代に入っている。特に沖縄は、自然そのものが財産である。自然環境なくして沖縄に未来はない。もう少し国際情勢や日本の置かれている状況をリーダーになる人がしっかり認識しないといけない。

☆ 陸上と海の関係が軽視されている = 記者会見で金田議員
  白保の海には世界的に有名な貴重なサンゴがある。それにもかかわらず、陸上と海の関係が非常に軽視されているのではないか。私のいる北海道では以前から海で磯焼け現象(海藻が枯死し「海の砂漠化」と言われる)が起きているが、これは陸上部に原因があると言われている。そういった経験が顧みられていない。
  公共事業もバブル時代からの脱却が必要である。騒音対策も十分可能だと思う。
環境への負荷、費用対効果から、現空港拡張案を真剣に検討すべきである。

☆ 「実情知らぬ」 = ある地方紙
  白保サンゴ村での中村会長の「なにもする必要はない」という発言の言葉尻を捉え、コラムで「空港そのままでいいとは…。実情知らぬ」と書いています。これは需要面から新空港の必要性について言った発言ですから、文脈を無視しています(コラム氏こそ、経済情勢や国の財政についての実情知らぬ、とも言えるのですが)。悪意が感じられます。
  これは別としても、石垣視察のマスコミ報道は、扱いが小さく、一面に載せた新聞は一紙もありませんでした。しかも事業自体を問題とした発言はあまり取り上げられませんでした。さらに、記者会見における新石垣空港についての発言を、マスコミは全く伝えませんでした。
  報道の姿勢に疑問を持たざるを得ません。あるいは、報道させまいとする力が働いているのでしょうか。


 
 <<読者からの声

♯ 春に訪ねた10年ぶりの白保の海は、ちょっと愕然でしたね。慢性的に濁っているように思いました。
  白保ファンを増やしたくて、いつも人を誘って通った海なのに、あれではちょっと...飛行場が白保にできなきゃいい、という問題ではないのがよくわかりました。   その後をどうしたらいいか、訪ねていく立場からも参加したいので、ぜひ読ませて下さい。(東京 J.S.)

♯ 白保にはここ4年ほど毎年通っています。
  白保の海やカラ岳がいつまでも静かでほっとする自然にあふれた場所であることを心から願っている者です。 (神奈川 M.T.)

♯ WWFジャパンサンゴ礁保護研究センター「しらほサンゴ村」ができ、環境省のセンターもできたというのに、足下でこうしたことがまだ進んでいるとは、残念でまた悔しく思います。
  2004年の国際サンゴ礁シンポジウムの巡検に白保が入ることはまちがいないと思います。その時に、海外の研究者に恥ずかしくない白保を見せられるのでしょうか。   (東京 H.K.)

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♪♪前々号(No.2)の<新石垣空港カラ岳陸上案までの経緯>(その1)の続きは次号(No.5)に掲載します。来週発行予定です。

■ アメリカでの自爆テロ、沖縄も無関係ではありえません。米軍の報復出撃や基地への対抗テロの恐れ。アメリカ、日本、沖縄と拡がる経済不安…。世界は一つです。
                               (M)   
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白保メール NO.4 01.9.12

発行者   鷲尾雅久 谷崎樹生 小林 孝
      shiraho@estate.ocn.ne.jp

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白保メール NO.3 01.9.05
発行者:鷲尾雅久、谷崎樹生、小林 孝shiraho@estate.ocn.ne.jp
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<白保での新石垣空港建設に反対するアピール>

 沖縄県はこのほど、新石垣空港『カラ岳陸上案』のターミナルと滑走路の位置を変更した計画を策定しました。
 昨年決定された元の案も、海岸から台地にかけての斜面に用地を造成しようというもので、地形が一変し、赤土流出や地下水脈の切断で「白保のサンゴ礁」を存亡の危機におとしいれるものでした。白保の自然を根底から破壊するものとして、私達が反対したものです。
 さらに今度の案は、カラ岳の姿を変えるほど削るもので、とうてい認めることはで きません。白保は農業で栄えた村であり、カラ岳はその豊かな大地を見下ろす白保の顔です。県は地元の要望を容れたと言っていますが、カラ岳を失うことは、白保の心を失うに等しいものです。決して地元の人の賛成するものではありません。
 白保はまた、海と共に生きて来ました。今や、この「魚湧く海」は、北半球で最大最古と言われるアオサンゴの大群落で世界的に知られています。かつて、この海を埋め立てて空港を造ろうとしたことに対し、多くの人が反対し、IUCN(国際自然保 護連合)も日本政府に対し計画見直しを要請して、計画は撤回されました。
 沖縄県は、今回は陸上だから新しい土木技術によって赤土流出を抑えられると言っていますが、自然を軽視した机上の空論です。また、それが可能かどうかを判断する環境アセスメントについては、おざなりな姿勢を取り続けています。
 空港予定地内の洞窟には絶滅危惧種のコウモリが生息しています。近くには特別天然記念物のカンムリワシの営巣地もあると言われています。ここは石垣島東海岸の国立公 園予定地に入っているところです。この自然は、石垣島の宝として残すべきもので、 それを生かしてこそ、観光を初めとする産業の発展もあり得るものです。それを破壊 して石垣島の未来はありません。
 沖縄県に、再度案を見直すことを求めます。
 石垣市は「サンゴ礁に重大な影響がでること、環境への負荷が大きいことがわかった場合、大幅な修正や場所の変更等がなされること」をカラ岳陸上案選定の条件としています。石垣市に、これを再度確認することを求めます。
 また、我々世代は、子どもたちに、まだ生まれぬ者たちに、白保のサンゴ礁をはじめとするこの自然環境をのこす責任があります。それは、そこに住む者だけでなく、 すべての人が等しく負うものです。皆さまに、私たちの主張に耳を傾けていただくことをお願いします。
 2001年9月4日    空港建設に反対し白保の自然を守る会     代表 迎里 清


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♪ 「空港建設に反対し白保の自然を守る会」は、白保(カラ岳陸上)地区での空港建設に反対する地元住民などによって、昨年11月結成されました。
♪ 新聞紙上に紹介される機会は少ないと思いますので、『白保メール』に全文を掲載しました。
♪ 「空港建設に反対し白保の自然を守る会」では、このアピールを積極的に転載していただくことを希望しています。     ^~^~^~^~^~^~^~^~^~^~^~^~^~^~^~^~^~^~^~^~^~^~^~^~^~^~^~^~^~^~^~^~^~^~^~^~^~^~
白保メール NO.3 01.9.5 発行者   鷲尾雅久 谷崎樹生 小林 孝
      shiraho@estate.ocn.ne.jp

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白保メール NO.2 01.8.29
発行者:鷲尾雅久、谷崎樹生、小林 孝shiraho@estate.ocn.ne.jp
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 <新石垣空港カラ岳陸上案までの経緯>(その1)     
                    小林 孝    WWFジャパン「しらほサン ゴ村」
 現在の石垣空港では航空需要を満たせなくなる、滑走路が短いので危険性が 高い、 などの理由で新石垣空港建設が計画されてから20年余りが経ちました。現在 はカラ 岳陸上案が候補地として選ばれましたが、着工できるかどうか疑わしい状況で す。な ぜこれほどの時間が経過しても、新空港が建設できないのか。簡単にその歴史 からお さらいしてみましょう。
■白保から宮良牧中、そしてカラ岳陸上へ
1970年4月   琉球政府は現空港拡張計画報告書を作成
1972年8月8日 石垣市は沖縄県に、石垣空港(現空港)の拡張を要請
1975年1月1日 内原石垣市長は地元新聞紙上で海の埋立てによる新空港計画 を発表
1979年5月25日 沖縄県は白保東海岸を建設地として庁議決定
1979年12月30日 白保公民館(自治会)総会は、全会一致で新空港建設反対決 議
    以後、毎年反対決議。
1982年3月12日 運輸省が新石垣空港の設置を許可
1984年4月 クストー協会のR・マーフィー博士の調査で、白保海域に世 界的な アオサンゴ大群落が存在すること が認識されるようになる
1988年2月10日 IUCN(国際自然保護連合)第17回総会で、新石垣空港建 設計画 の撤回を日本政府に求める決議を全会一致で可決
1989年4月26日 沖縄県は新空港の建設位置をカラ岳東側海上に変更
1990年12月 IUCNは第18回総会で、新予定地のカラ岳東側案について も、 「生物的多様性に回復不能な損失が生じる」として「現空港 拡張を含む新しい解決法を探ることを勧告する」決議を採択
1992年11月26日 大田県知事は、「新しい解決法」となる宮良牧中案を予定地 として選定
1997年9月17日 石垣市議会は宮良牧中案撤回を決議
1999年2月27日 稲嶺県知事は、冨崎野、宮良牧中、カラ岳東海上、カラ岳陸 上の4案から、改めて新空港予定地を決定することを表明
2000年3月11日 新石垣空港建設位置選定委員会は、賛成34、反対1の投票結 果をもって、カラ岳陸上を新空港建設候補地として選定

 白保海上案から転々と建設予定地が変遷した新石垣空港のこれまでの経緯 を、極め て大雑把に捕らえれば、以上のようになります。もともとは現空港の拡張で計 画され ていた新空港ですが、いつの間にか新たに空港を建設する計画にすりかわりま した。 これについては改めて取り上げたいと思います。 新空港予定地は、当初は海を埋め立てる計画(白保東海岸)でしたが、白保 のサン ゴ礁保全という難しい課題を抱えたため、カラ岳東海上を経て宮良牧中に至 り、再び カラ岳陸上という白保地域に舞い戻ってきました。この間、それぞれの地元で は建設 反対運動が展開し、また、自然保護団体が白保の海を守るため応援活動を展開 しまし た。その一方で、新空港が八重山郡民に本当は何をもたらすのか、本当に必要 な公共 施設なのか、十分な議論がなされないまま20年間に渡って候補地が転々として きたの が、新石垣空港の一番の問題だと考えられるのです。(つづく)  

  || ・・ ・ ---==:    || ||   :==--- ・ ・・ ||  ≪白保メールに寄せられた声≫  『白保メール』の発刊に対して、お祝いのメールをいただきました。ありが とうご ざいます。  また、感想を書いて下さった方もいらっしゃいます。御本人の了解を得て、 次号に 御紹介しようと思います。

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白保メール NO.1 01.8.15
発行者:鷲尾雅久、谷崎樹生、小林 孝shiraho@estate.ocn.ne.jp
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<白保のサンゴ礁を守れないカラ岳陸上案>         小林 孝

 

 今年の6月上旬に、轟川河口付近の塊状ハマサンゴが約20ヘクタールに渡って死滅したという記事をごらんになったことと思います。100年以上の年齢を数える、国宝級と呼ぶ人もいる貴重なハマサンゴのマイクロアトール群が、極めて短期間に壊滅状態になってしまいました。轟川河口から南には、1998年の大規模なサンゴの白化現象から回復して、枝状コモンサンゴや枝状ミドリイシが成長してきた海域もありましたが、ここも死滅海域に飲み込まれてしまいました。
 この原因は、大潮の干潮時に河川からの淡水流入量が急激に増加し、海水の塩分濃度が下がったことが考えられるし、研究者によれば原因は特定できないとする慎重な判断がなされています。が、一般常識として考えられる原因は、赤土の海への大量流入としてほぼ間違いありません。赤土汚染常習海域でこれまで何とか耐えて生き延びてきたハマサンゴたちが、今回の赤土汚染でとどめをさされたと考えるのが、もっともわかりやすいのではないでしょうか。
 このようにデリケートな生物であるサンゴ礁が、それでも復帰以前とほぼ同じ状況で残る白保海域に、新たな脅威が襲い掛かろうとしています。隣接するカラ岳陸上に新石垣空港を建設する計画のことです。陸域と海域のつながりを断絶する、海岸線の巨大人工建設物が、白保海域に悪影響を与えないとは考えられません。また空港建設工事中の赤土処理をどうするのか、事業主から具体的には知らされていません。「新しい土木技術によれば赤土汚染は発生しない」というのがいつもの答えなのです。
 白保海域のサンゴ礁環境だけではなく、カラ岳周辺の自然環境の保全がほとんど見込めない新石垣空港カラ岳陸上案の実情を、これからお伝えしてまいりましょう。新空港が石垣島の将来をどう左右するのかを、なるべく多くの方々にきちんと見極めていただきたいからです。



<長年の懸案がいつまでも解決しないわけ>                 谷崎樹生


 世の中には長年の懸案というものがよくあるようで、新石垣空港問題も典型的な長年の懸案です。もうかれこれ20年以上も未解決のままになっているのですから・・・・。
 私たちは問題が起こったとき、その解決のために、問題の本質は何なのかを突きとめねばなりません。「何が問題か」がはっきり解らないと解決策も見つかりません。ところが、「解決困難な問題」とか「長年の懸案」といわれるような問題の場合、実は、何が問題なのかがよく解っていないということが多いのです。
 新石垣空港問題の場合も同様で、何が問題なのかよく解らないまま、二十余年の歳月が空しく過ぎてしまいました。その間行政は、新空港の規模や予定地を次から次へと変更してきました。それでもなかなか建設位置さえ決まらず、巷では「どこでもいいから早く着工してくれ」という「新空港建設工事待望論」まで聞かれるようになっています。
 問題がここまでこじれてしまったのは、情報の公開が不十分で、何が問題なのかが充分市民に知らされなかったことと、民主的で自由な議論がなされなかったことが大きな原因だったと言えるでしょう。さらに、無知と無関心が問題の解決をより困難にしています。
 島の社会は小さな社会で、いろいろなしがらみが多すぎて、個人的に自由に発言することさえ困難な状況が多々あります。役所の方針に反対する新聞投稿をしただけでお巡りさんの意味ありげな家庭訪問を受けねばならない、そんな不自由な社会に私たちは住んでいるのです。
 しかし、そういう状況をいつまでも容認しているわけにはいきません。新空港問題は、島の社会が成熟とまではいかないにせよ成長するきっかけには、なるはずです。
 このメールマガジンは、いろんな立場の人が肩書きやしがらみを捨てて、個人の資格と責任だけで、自分で考えたことを自分の言葉で自由に語ることができる、そういう場所にしたいものです。



<分らないこと>                    鷲尾雅久


 新石垣空港をめぐる議論には、よく分らないことが幾つかあります。

例えば、お客さんが増えるから今の空港では「限界」に達する、ということが新空港の必要な理由の第一に挙げられています。
しかし、それは20年間言われ続けてきたことです。どこが「限界」なのかよく分りません。低成長経済のもと、旅客需要の増加は以前ほど見込めず、需要予測は下方修正されています。「限界」も、再検討が必要ではないでしょうか。
 もう一つの分らないことは、今すぐ解決しなければならない問題に対して、県の見通しでも10年かかる新空港を、全能の切り札のように持ち出すことです。例えば、ピーク期における貨物の積み残し問題があります。この解決を10年間待つ訳にはいきません。今何をするかが問われなければならないはずです。
 分らないことの最大のものは、新空港さえできればうまく行く、と言わんばかりの論調です。八重山地域の振興発展のために新空港が必要だ、といった言葉をよく聞きますが、具体的に何を指すのか、よく分りません。

 現状ではどのような問題があるのか、それに対してどのような解決策が考えられるのか、その解決策はうまくいきそうか、ほかにマイナスの影響が出ることはないか。そういったことを、具体的実証的に考える必要があります。

 新空港問題は20年も空転してきました。
「急がば回れ」、新空港の早期建設を主張する方も、ここは一歩踏み止まって、何が最善の方法なのか改めて考えてみてはどうでしょうか。
 空港をめぐって析出される様々な問題を考えることで、「画に書いた餅」でない八重山の未来を展望したいと思います。

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