磯谷達宏
<専門分野>  植生地理学,生態環境論
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<自己紹介など>
 山口県岩国市生まれで、幼少時は小倉・新潟・仙台・横浜と移り住み、6歳時からは東京都目黒区で育ちました。都立戸山高 卒業後、都立大学理学部の地理学教室で学部と修士課程を終え、東京農工大学の植生管理学研究室で博士課程を修了しました。その後の1年半は( )緑生研究所で植物調査や緑地計画の仕事を行うと同時に(財)国際生態学センターの設立準備に携わり、その後の5年間は同センターの研究員として勤務しました。本学には平成10年度(1998年度)から勤めています。
 私は、大学に入学するとき、文学部に入って哲学か地理学を学ぶか、理学部に入って地理学や生態学を学ぶか、農学部に入って環境について学ぶか、ずいぶんと迷いました。結果としては、学部と修士課程では理学部で地理学を専攻しましたが、博士課程では農学部で生態学とその応用について学び、国士舘では文学部に所属しています。つまり、高 生のときに入りたかった学部には、全て入ることができたわけです。内容的にも、学問の方法論に関することから、地理や生態の基礎 究、そしてそれに基づいた応用研究にも携わることができています。幸いにして、高 生のときに抱いた好奇心の多くを満たすことができているというわけです。
 主たる専門分野は植生地理学で、地域によってさまざまに異なる植生の実態とその成因を、地理学と生態学の視点から解明しようとしています。おもに照葉樹林帯やフォッサマグナ地域で研究を行ってきました。また、自然保護論や緑地計画論などの応用学のほか、以前から科学論(知識論)にも興味をもっています。
 私の研究室は世田谷の梅ヶ丘 舎にあり、ここと鶴川 舎にて総合教育科目の自然科学(生物系A,B)を担当しています。そして世田谷校舎では、専門科目の「自然環境調査法」、「日本の植生環境」、「地域の生態環境」と3・4年のゼミおよび各種の野外実習ならびに大学院の授業を担当しています。
 世田谷校舎で開講しているゼミでは、生物地理学の中でもおもに植生についてのテーマをとり扱っています。また、とくに植生に関連した範囲内で、生態環境論(自然保護論、緑地計画論など)に関するテーマも対象としています。さらに、自ら学んでいく意識が強い学生には、動物の生態地理に関するテーマも追求してもらっています。いずれにせよ、野外における生物調査を基本とする内容なので、生物と野外調査が好きな人には向いているゼミといえるでしょう。卒論では相当量のまとまった調査を必要とします。野外調査を行うにはそれなりの訓練が必要なので、3年時には授業時間以外にも何回かの野外実習に参加してもらっています。
 学生の皆さんには、本学での学びを通して、物事の本質を自ら正しく捉える力を養ってほしいと願っています。そして、時代の風潮に流されずに長期的な視野をもって、是非ともよい進路を見出していってほしいと願っています。


<最近のおもな研究業績(2006年4月~2010年度)>
・科学の諸分野において景観概念はどのように使われているか?.シンポジウ :景観を支えるもの.国士舘人文学,創刊号(通巻43号),59-69.国士舘大学文学部人文学会.2011年3月.(単著)
・茨城県北部の照葉樹林分布限界域における二次林の分布および組成と構 について.国士舘大学地理学報告18,19-36.2010年3月.(岩崎慶太・磯谷達宏の共著)
・Distribution of evergreen and summer-green broad-leaved secondary forests along a latitudinal gradient  in central Japan: with special reference to the subdivision of Japanese warm-temperate lucidophyll  forest zone. Geographical Reports of Tokyo Metropolitan University 44, 11-19. 2009年3月.(単著 )
・植生学の展開の4つの方向性(特集「植生学はどこに向かう?」).植生情 13,22-23.2009年6月.(単著)
・日本の植生帯に関する近年の研究-人文科学の関連領域としての展望-.国士舘大学文学部人文学会紀要 第40号,63-80.2008年3月.(単著)
・八ヶ岳西岳南西斜面における管理放棄型カラマツ植林の組成と構 .国士舘大学地理学報告15,1-14. 2007年3月.(磯谷達宏・樋口健太郎の共著)
・常緑広葉樹林の分布限界決定機構の解明に向けて?植生学的視点からの考察と提言.フェノロジー研究42,32-35.2007年2月.(単著)
・照葉樹林帯北部における地形に対応した森林植生の分化とその応用上の意義?とくに夏緑植物の出現に着目して.植生情 10,15-24.2006年5月.(単著)


<最近指導した卒論の例(2006~2010年度)>

●植生地理
・東限におけるイヌガシ(Neolitsea acciculata)個体群の分布と生育環境について(2010)
・佐渡島のスギ人工林内に侵入した広葉樹の標高にともなう種構成の変化について(2010)
・神奈川県西部の低標高域における壮齢二次林の樹種構成とその地域性(2009)
・中国山地東部地域におけるシオジ林とサワグルミ林の分布と組成およびそれらの規定要因(2008)
・島根県松江市における水田畦畔の植生-棚田と平野部および畦畔微地形の種組成の違いに着目して-(2008)
・分布限界域における竹林の分布とその拡大状況(2007)
・東京都におけるスダジイの海岸部から内陸部にかけての成長パターンの違い(2006)

●動物の生態地理
・神奈川県津久井町城山付近における中型哺乳動物のミクロな分布と行動(2009)
・北海道小樽市忍路湾と神奈川県三浦市江奈湾に生息するトビの行動の比較 究(2008)
・住宅地域に孤立した小規模公園における鳥類相の特徴(2007)
・東京都奥多摩日原川における河川性サケ科魚類の分布とその生息環境について(2006)

● 生態環境論(自然保護論,緑地計画論)
・埼玉県東松山市周辺におけるスギ衰退とその要因(2009)
・ブラジルの植生帯とその開発・保全についての諸研究の展望-セラード地域を中心として-(2007)
・日本でのオオカミ復元活動の現状とその可能性について(2006)