第一回蘇州大学「作詩交流セミナー」

 2001年9月3日(月)から10日(月)にかけて、協定校・蘇州大学において漢詩(七言絶句)創作のセミナーを開催し、
蘇州大学の教員・大学院生と交流した。


9月3日(月) 教員2名(鷲野正明、藤森馨)と学生10名が成田を発って上海へ。
        大学のバスで蘇州入り。北京での語学研修のあと国内旅行をしてすでに蘇州入りしていた学生5名、
        交換留学生1名と合流して、総勢
18名が作詩セミナーに参加。
9月4日(火) 午前 蘇州大学大学院生の案内で虎丘・留園を見学。
        午後 蘇州大学副教授(文学研究所副所長、蘇州市詩辞協会副会長)周秦先生の
        「詩の格律の形成と作詩のポイント」の授業を受ける。
        7歳の時から学んだという周先生の絶妙な横笛の音色と、中州韻による詩の歌詠に聞き惚れながら、
        詩の神髄と歌詠を学ぶ。

      授業終了後、鷲野が次の七言絶句を呈した。

             呈周秦老師
           姑蘇聞久墨人淵 千里初來白露前 師説性靈詩作諦 阿蒙忽悟賦新篇


9月5日(水) 周秦先生の案内で、寒山寺・西園・文廟・滄浪亭を見学。
        一般の観光では知ることの出来ない詳細な説明を聞き、作詩への意欲を掻きたてる。

9月6日(木) 花園大学の下野健児先生と本学の陳栄生先生も参加し、太湖のほとりの東山へ。
        古紫金庵、彫刻大楼を見学ののち、太湖大橋を渡って西山へ。帰路は、蘇州城西南の盤門を見学。

9月7日(金) 作品発表会。九時から留学生第四楼208室にて、学生は徹夜で作った詩を推敲し、清書。
        
12時から作品を取りまとめて発表用の資料を作るかたわら、東洋史学専攻の北沢実が全作品を
        墨書し、2時からの発表会に臨む。

        発表会には、周秦先生と大学院生、通訳の唐鳳珍女史、花園大学の下野先生が出席。
        発表者は、墨書された自作を黒板に貼り中国語で朗読し、内容を説明。
        参加者から忌憚のない批評を受けた。

            発表会終了後は、国際文化交流学院院長・呉曉園氏主催による別離の宴。
9月8日(土) 呉院長、唐女史、交換留学生の山本徹に別れを告げ、水郷のまち周庄へ。夕方上海に到着。
9月9日(日) 上海博物館、豫園を見学。書店街、外灘を散策し、雑伎を鑑賞。
9月
10日(月) 台風の影響によって揺れる飛行機で帰国。

漢詩の創作講座が必修として設けられ、かつ、本場の中国や台湾で研修を行っているのは、我が国士舘大学だけである。
今回も学生の不眠の努力のお陰で初期の目的が達成でき、大きな成果を得ることができた。 

漢詩作品集

 我々の作品には格律の合わないところや、詩語のこなれていないものもあるが、以下、発表時のまま掲載する。
(発表順、学年は2001年当時)

    自上海到蘇州(九月三日)            鷲野 正明
  驅車速過滬州間 嘉定安亭又玉山 却想古來舟筏路 陶然臨水入仙寰

    口占(九月四日)                鷲野 正明
  午風輕渡弄紅英 別院深深柳樹清
 欲學眞詩同會處 隨師吹笛溢歌聲

    再訪留園(九月四日)              鷲野 正明
  上下回廊忘老躯
 尋行奇石自迷途 留園依舊多人訪 二十年前花已無

    早晨小雨(九月五日)              鷲野 正明
  朝雨無聲●
古城 青青楊柳水邊明 游人獨立石橋上 空送扁舟向北行    ●うるおす[サンズイ+邑]

    夢故郷(臨太湖)                鷲野 正明
  水路從横溢鴨頭 白雲涵影伴花流
 平●雙●夢郷處 孤鳥一聲千里幽    ●ひく[テヘン+施の旁]
                                                      ●かい〔将+木〕

    秋思 (中文三年)               新井 俊崇
  姑蘇客舎夜三更 夢醒間窗孤月清
 獨歩閑庭虫語聽 俄驚處處見秋生

    臨劍池                     新井 俊崇
  清涼水面落花浮 小徑無人事事幽
 青史英雄求劍處 榮枯如夢夕陽流

    過日思(中文三年)              大久保裕一朗
  竹裏蕭然夜氣深 幽庭一榻坐澄心
 虫聲隱隱西風動 過日追思獨苦吟

    暑日                     大久保裕一朗
  流汗淋漓日午天 炎威未散燎長空
 窓前木榻読詩句 不覚陽斜到晩風

    山行  (中文三年)              山崎 勇一
  山中樹木亂鳴蝉
 溽暑淋漓八月天 頂上清風吹髪冷 爽涼心緒向誰傳

    古戰場                     山崎 勇一
  彈丸留跡映斜陽 滿目凄寥劇戰場
 人去路傍閑白昼 殘碑空立野花香

    来友(中文三年・交換留学生)          山本 徹
  
入秋再会笑相迎 把酒談君到二更 身在蘇州疑是夢 明朝将別暗愁生

    夜熱  (中文二年)              平井 裕貴
  炎威不滅夕陽沈 城市溽暑快不禁
 周到微涼無限好 窓前黙座又閑吟

    蘇州庭園(修士一年)              斎藤  聡
  松風颯颯故園中 奇石麗池西又東
 人坐閑談圖畫裏 吾還欲到古城宮

    夏夜窓辺(中文三年)              小林 啓五
  独坐窓辺仰月光 炎炎時節夜風涼
 虫声喞喞韻園圃 不覚低頭念故郷

    大暑日                     小林 啓五
  陽光直射暑如
 流汗喰冰耐日中 睡臥仔猫知好処 緑陰静泰有涼風    ●やく〔火+共〕

    偶睡  (中文三年)              都築 康子
  酷暑連天燎長空 竹林偶睡碧一叢
 緑陰深処虫鳴好 時有夢醒到涼風

    別離  (中文三年)              鈴木 博行
  行路迎朋轉忘疲 飲茶一笑慰相思
 東雲臨別都如夢 揮手暫時清涙垂

    姑蘇秋来(東洋史四年)             北澤  實
  炎気一新天地涼 姑蘇城内送斜陽
 月明清絶照楊柳 水路盈盈潮色光

    滄浪亭 (中文四年)              岩下 華世
  花笑雲流風意柔 江亭碧樹映清流
 一天釣魚人閑坐 不覚自心散積憂

    憶故郷 (中文三年)              山下 浩樹
  江南風景似家山 樹樹蒼蒼村落閑
 客舎微聞歌一曲 吾思離別涙潸潸

    夏雨                      山下 浩樹
  黒雲忽起雨紛紛 連日炎炎洗暑氛
 野老仰天乃一笑 樹林草木共欣欣

    寒山寺 (中文四年)              黒田 治子
  晩夏残蝉
裂帛鳴 溶溶水上石橋横 依然勝景寒山寺 遊子心頭別恨生

    滄浪亭                     黒田 治子
  竹陰避暑俗氛疎 石室清涼意自如
 処処閑窓風籟爽 枕書午下入華胥

    秋思                      藤森  馨
  啼虫切切暗涼生 庭院桂花照月明
 窓下敲詩秋夜永 心緒錯落句難成

    秋聲  (中文四年)              宍戸 輝子
  風到虎丘爽気流 白雲碧落入双眸
 池頭処処蜻蛉影 蓮葉空浮転感秋

    訪留園(中文四年)              藤井 みゆき
  
蒼苔怪石暮聲 碧水黄蓮一様清 四面幽閑風露湛 柳枝遥遥早涼生

    秋夜對月                   藤井 みゆき
  
姑蘇城内夜方深 月桂朧明孤客心 獨酌消閑衰柳下 懷家寂寂涙沾襟

    鐘楼 (中文四年)              上木 絵理子
  徐歩城中意悠悠 林徑鐘声五重楼
 名園蝴蝶来何処 絶境帰忘雲影流


第二回蘇州大学「作詩交流セミナー」

 平成14年(2002)9月2日(月)から10日(火)にかけて、本専攻「漢詩文作法」の授業の一環として、蘇州大学において
第2回の作詩交流セミナーを開催した。


 日程と作品は以下のとおり。

9月2日(月)晴
  07:50  成田空港第2旅客ターミナル三階D39に集合。引率教員は鷲野正明、藤森馨。参加者学生15名。
  08:40  搭乗手続き。
  09:00  離陸。
  1100   上海浦東空港着。
  1200   入国。蘇州大学・唐先生及び大学院生が出迎えてくれる。
          バスにて上海の嘉定孔廟参詣の予定だったが、移動の途中バスが故障。参詣は残念ながら見送り。
        男子学生がバスを押して道路左側に寄せ、一同高架下にてしばらく休息。
        バスを乗り継ぎ、蘇州へと向かう。

  17:00  蘇州飯店到着。水郷楼にて夕食。
9月3日(火)晴
  09:00  蘇州大学・李彩蘭先生、大学院生とともに、呉王闔閭の墓陵・虎丘へ。
  09:50  虎丘到着、闔閭の薨去に際し埋蔵された刀剣類を始皇帝が発掘させ、試し切りをしたといわれる
       試金石等を見、宋代に建立された十五度の傾斜を持つ斜塔等を見学。この塔は、蘇州を代表する
       もので、列車で蘇州にやってくると、まずこの塔が見えるという。

  11:15  寒山寺へ。
  11:30  寒山寺到着。伊藤博文が岡田寒泉の斡旋により、同寺に送った鐘や塔などを見学。
       張継の『楓橋夜泊』に思いを馳せる。

  12:30  昼食。途中より蘇州大学の周秦先生が合流。一年ぶりの再会。
  14:25  唐寅故居址を訪問。故居は市内の小工業地帯に、あたかも時間が止まったかのよう。
       傍らには池があり、周辺ではいつもと変わらない日常生活が営まれている。
       故居には「唐寅故居遺址」の石碑が建ち、わずかにそこが唐寅の故居であることを示す。
       現在は、内山先生の知己・金世華氏が住んでおられる。
       金氏の案内で「準提庵」の遺跡を訪ねる。清代の建築物が今なお利用され、居住者がいる。

  15:30  三国時代の孫権が母の菩提のために建立したといわれる報恩寺の北寺塔を見学。
       塔上からの眺望は抜群で、蘇州市内が一望できた。

  16:20  拙政園到着。明の嘉靖年間(1522〜66)に王献臣が造営した庭園。献臣は中央朝廷に仕えたが、
       失脚後この地に隠棲。庭園名は『閑居賦』の「拙者之為政」に由来するという。
       雄大な庭園を周先生の案内で見学。北寺塔を借景としてあり、実に趣深い。

9月4日(水)晴
  09:10  東呉飯店(蘇州大学)において、周秦先生の講義「詩の余韻について」。通訳は唐先生。
       内容は作詩法にまで踏み込んだ充実したもの。

  12:00  講義終了後、昨年、蘇州大学でお会いした花園大学の下野先生と再会し、旧交を温め、
       午後は花園大学の学生諸君と行動を共にする。

  13:10  蘇州文廟に到着。五代時代に成立したといわれる大成殿を見学。修築なった巨大な孔子画像や
       祭祀楽器などを身近に実見した。

  16:20  蘇州で最古の庭園として有名な滄浪亭に到着。周先生の案内で園内を散策。
       当園は、五代の頃に、銭氏が造営し、宋代に改築して現代にいたっている。
       庭園名は『楚辞』の「滄浪之水清兮可以濯我纓」に由来する。
       この庭園は蘇州大学医学部に隣接しており、庭園前の川には釣り人が釣り糸を垂れていた。

9月5日(木)晴
  08:50  崑山市へ向けて出発。
  09:35  崑山市の帰有光の墓所である震川園到着。碑文によれば、明代の文人帰有光の墓所はもと金潼里に
       あったが、1989年現在地に夫人魏氏とともに遷葬され、公園として整備されたという。
       墓所には「明南京太僕寺丞帰有光先生之墓」と記され、頭像が建てられている。

  10:30  帰有光関係の文物を求め、市博物館文史館に行く。残念ながら関係文献は微少。
  12:00  昼食。
  12:30  昼食をとったレストラン横の顧炎武の故居に行く。工事中のため参観は不可。蘇州へと帰路につく。
  14:45  蘇州城の遺跡盤門に到着。城壁と運河を組み合わせた独特の城門や瑞光寺塔、呉門橋等を見学、
       伍員祠などを参詣。蘇州城の歴史は紀元前の春秋時代に遡及するが、現在の城壁は元代のものという。

9月6日(金)晴
  09:00〜11:30 東呉飯店にて作品の発表準備。
  14:0017:15 東呉飯店305号室。緊張の中、作詩発表会が行われる。周先生講評。
       蘇州大学院生王瑜・張蕾・許各氏も参加。 
  17:3019:00 送別の宴。
9月7日(土)小雨
  09:50  蘇州飯店を出発。周先生と唐先生が見送りに来て下さった。周先生には、学生一同より御礼の品を進呈。
       先生は私ども一同のために、
送別の詩と、重陽にちなんだ月餅を贈って下さった。
  11:30  台風の影響で小雨降る水郷周庄に到着。周庄に入るには入園料を払わなければならない。
         昼食を終え、1230分頃より周庄の古民家や土産物店などを見学。その後、小舟に乗って運河から
       町並みを眺める。船頭の櫓さばきは見事で、驚嘆することしきりであった。

  15:00  周庄を後にして上海へ。
  17:00  上海駅近くの中亜ホテルに到着。
9月8日(日)晴
  09:20  上海博物館に到着。各自見学。展示替えや改装のため閉館部分が多く、彫刻類や印譜、書画及び
       少数民族に関する展示しか見られなかった。期待が大きかったため残念に思う者もいたが、
       再度の来館を期して
1130分に辞した。昼食。
  15:30  上海書城前で解散。自由行動。
  16:00  博物館駐車場に集合。バスに乗車し、友誼商店で下車。バンドを見学。
       対岸の明珠塔をはじめ林立するビル群の夜景はすばらしい。

  19:3021:00 大極時空と題する雑伎を見学。テーマ性があり、雑伎とは思えない舞台に目を奪われる。
9月9日(月)晴
  09:40  三国時代呉の孫権により建立された龍華寺に到着。ちょうど中興和尚の遷化法要が執行され、
       結縁を求める善男善女で境内は混雑していた。  

  11:30  老街の料理店で昼食。明代の名園豫園を見学後、自由行動。
  17:00  中亜ホテルに帰館。食事の時に、前夜作成の聯句の秀作の発表があり、一年生の荒井君・小島君、
       国文専攻の岸本君・高橋君に記念品を、そして聯句に高得票を得たエンターティナーの平井君に、
       特別賞を受与。

9月10日(火)晴
  09:00  ホテルロビーに全員集合。
  10:30  浦東空港に到着。今回一同を最初から最後まで案内して下さった蘇州大学の李彩蘭先生と別れ、
       出国手続。

  1310(中国時間) 離陸。
  1646(日本時間) 成田着。


 学生は蘇州で連日過密なスケジュールをこなし、かつ徹夜で作詩したため、上海では疲労気味だったが、怪我人・病人もなく、
無事に帰国した。



   漢詩作品集        於蘇州大學 九月六日

    向蘇州途上、車生故障而不動 九月二日        鷲野 正明
  炎威爍石路中央 車内淋漓汗若漿 且憩小陰塵滾滾 姑蘇遙想水花香

    伯虎故居偶遇師之知人 九月三日                        鷲野 正明
  行尋伯虎舊居邊 只有小池徒自憐 偶遇高年是師友 人間最愛好因縁

    訪唐寅故居 同                                           鷲野 正明
  北寺塔前家又榮 桃花塢外午風輕 今宵定夢呉歌裡 伯虎秋香傾一
●   ●さかづき・コウ〔角+光〕

    訪震川園 九月五日                                       鷲野 正明
  崑山城内震川園 頭像迎人
克繁 魏氏共眠新墓下 婁江流畔落花飜

    九月五日不得訪震川祠堂、夜讀「野鶴軒記」    鷲野 正明
  玉峯山下斷塵縁
 蒼碧●●涼亂蝉 野鶴軒中殊有趣 茶煙●處汲清泉   ●●リンジュン〔山+隣の旁〕〔山+旬〕
                                    ●あがる〔風+易〕
      新秋                                     藤森  馨
  殘炎不息火雲張 松下蝉
鳴已夕陽 驟雨一過涼徹骨 輕風瑟瑟白蓮香

    過虎丘                              修士二年 斎藤  聡
  梵宮古塔碧山中 四面千林立晩風 遠到蘇州異邦客 夕陽漸仄望西空

    滄浪亭                修士一年 北澤  実
  水流澹蕩返紅
 翠竹揺風涼滿亭 乘興戯遊時復息 浸忘俗累只觀星   ●ひかり・ケイ〔火火+ワカンムリ+火〕

    拙政園                             修士一年 重倉 政智
  池中碧水送清涼 無聴蝉聲秋色彰 風起樹揺消酷暑 庭園古屋浴斜陽

    虎丘                             修士一年 安西 孝行
  古堂樓閣倚高臺 雲去悠悠風蕩駘 漫歩忘歸天下勝 青山獨領美觀財

    訪故居                中文四年 新井 俊崇
  一片桐花在眼前 故居仰見獨蕭然 蟲聲忽起破閑寂 生命悠悠幾百年

    拙政園               中文四年 大久保裕一朗
  暮色倚稀籠冷泉 旅人無語聴潺湲 紅蓮微動起詩趣 如夢風光念舊年

    旅愁                 中文四年 都築 康子
  溽暑炎炎登小丘 松陰樹下與朋遊 晩來微到淙淙響 家遠歸心忽起愁

    偶成                 中文四年 徳丸 貴彦
  初到蘇州泊宿坊 閑窓静寂送斜陽 今天訪古得思慮 詩作忘言似老荘

    旅愁                  中文四年 山崎 勇一
  旅亭窓外聴遙雷 絲雨一過雲才開 獨夜無聊空對酒 心頭寂寞晩涼催

    消夏                 中文四年 山本 佳奈
  暑威未散午風疎 泉水送涼塵念虚
 落日幽庭殘柳下 蜻蛉款款自悠如

    拙政園                                国文三年 岸本真利子
  亭前竹樹
拷A繁 日暮紅雲映幽泉 微響蝉吟消俗念 詩成一榻枕書眠

    尋古堂                国文三年 高橋 明子
  古堂新翠夢中尋 笑語天高静寂侵 相照斜陽流水畔 蟲聲隱隱固無心

    詠姑蘇                中文二年 平井 裕貴
  濃陰夏日只蝉
聲 小徑風香一水清 遊子心頭無限好 森羅萬象動吟情

    蘇州偶成               中文一年 荒井  禮
  臨水村莊吐古香 金風吹袂近重陽 佳篇欲作擧杯處 美女嫣然吟席傍

    盤門                 中文一年 小島 美穂
  飛閣大城風景鮮 鳥聲滿樹旅愁新 登樓極目感無量 流水白雲隔炎塵

          柏梁體聯句     於上海 九月九日

       中国一歩未来光  小島
       蘇州庭園誇麗粧  安西
       百城煙水荷香  鷲野   ●ひし・キ〔クサカンムリ+支〕
       古来山水又非常  斎藤
       項羽西楚成覇王  山崎
       墨客去来滌塵腸  鷲野
       清昼蝉鳴火雲張  岸本
       一里曳杖坐池塘  徳丸
       泉水風起払垂楊  都築
       金風玉露一庭涼  平井
       村園日斜蜻揚  高橋   ●とんぼ・テイ〔虫+廷〕
       彩
雲紅湖麗夕陽  荒井
       柳条仰見月如霜  重倉
       菊花楚楚万古芳  山本
       幽巷誰歌詩一章  北澤
       忘時尽宴桃源郷  藤森
       一朝去呉碧空翔  鷲野
       忽到上海遊心昌  鷲野
       魔都夜景集人場  大久保
       外灘夕暮塔影長  新井



第三回蘇州大学「作詩交流セミナー」


 蘇州大学との作詩交流セミナーは、過去2回、平成13年(2001)、平成14年(2002)の9月に開催したが、
第3回目となる平成15年(2003)は、サーズの影響で9月に開催できなかったため、年度内の平成16年(2004)3月に開催した。
 参加者は、下記のように、学生5名、院生1名で、補助指導にOB1名の参加を仰いだ。

   引率      鷲野  正明(男)
   卒業生     斎藤  聡  (男) (過去2回参加、筑波大学院生)
   院生  修1  都築  康子(女)  (過去2回参加)
   学生  2年  荒井   礼(男)  (過去1回参加)
           中嶋    彩(女)  
           城沢  なつ乃(女)  
           西崎  奈央子(女)  
       1年  細川  貴詳(男)  
       
 
 蘇州大学・周秦教授の授業(3月22日)では、蘇州に関する明清時代の詩詞を鑑賞し、詩吟を学んだ。授業に先立ち、
先生の詩集『寸心書屋詩草』、及び、前回セミナーに参加した学生の作品が掲載されている詩集『鹿鳴』第一輯、第二輯が
参加者全員に贈呈された。
 古跡参観(22日〜25日)では、大学の授業の合間をぬって周秦教授と院生が案内してくれ、普通の観光では聴けない
詳細な説明を受けた。今回、院生は役割を分担し、古跡ごとに詳細な説明をしてくれた。
 作品発表会(26日)は、国士舘の学生が発表したあと、蘇州大学の院生が5名発表し、相互に批評し合った。詩吟や
演劇鑑賞の交流は数多くあるが、作詩の交流は国士舘だけであると、今回も国士舘の取り組みが高く評価された。
 通訳は、唐鳳珍先生はじめ蘇州大学日本語学科の学生、卒業生が担当した。上海での参観は卒業生の郭氏が全行程に従った。
 あいにく雨が降ったり曇ったりで、寒い日が続いたが、病人も怪我人もなく全行程を無事に終えることが出来た。
 具体的な活動と国士舘大学の作品は別紙の通りである(蘇州大学院生の作品は省略する)。


日程 実施内容
3月21日(日)小雨 日本〜上海  NH919便 09:45〜11:45
上海〜蘇州  蘇州大学構内見学                                  東呉飯店泊
22日(月)
曇り
午前 周秦教授の講義(東呉飯店3階会議室)  
午後 市内古跡参観 文廟、滄浪亭、可園    
    書店巡り                                              夜 作詩指導
23日(火)
曇り
午前 西郊古跡参観 寒山寺、西園
午後 虎丘、留園                                             夜 作詩指導
24日(水)
薄曇り
午前 市内古跡参観 北寺塔、拙政園
午後 郊外古跡参観 范成大祠、魚莊、唐寅祠                           夜 作詩指導
25日(木)
曇り
午前・午後 郊外古跡参観 紫金庵、霊巌寺
午後 市内古跡参観 盤門                                        夜 作詩指導
26日(金)
晴れ
午前 作品の手直しと発表準備
午後 作品発表会(東呉飯店3階会議室)
夕方 お別れパーティー (水郷樓)
27日(土)
曇り
午前 宝帯橋を見学の後、上海へ
午後 豫園見学
夜  雑技鑑賞(上海馬戯城)                                     上海聖達大酒店泊
28日(日)
曇り 時々小雨
午前 龍華寺、文廟、玉仏寺 見学
午後 南京路、淮海路 散策
夜 ワイタン
29日(月)
曇り
午前 上海映視楽園 見学
午後 新天地等で自由活動
夕方 東方明珠塔にて夕食
30日(火)
晴れ
午前 帰国準
午後 帰国、解散  NH920便 13:10〜16:40


   漢詩作品


    三訪蘇州(二十一日)                  鷲野正明
  雨中人少望茫茫  林立新村無古香  忽入姑蘇全若舊  呉音親接我回郷

     其二                         鷲野正明
  陽春時節訪蘇州  欲見野花江水頭  偶到雨煙風冷日  海棠微笑興偏幽

    文廟(二十二日) 昨夜強風折大柯             鷲野正明
  大街車衆往来頻  遊子逍遙難保神  境内森森春色静  適看古樹露年輪

    寒山寺(二十三日)                   鷲野正明
  江楓橋外建新亭  墻内刻碑聲不停  參拝人群常接踵  如何寒拾不成寧

    范成大祠(二十四日)                  鷲野正明
  煙景誘人湖上家  范公祠廟賞心加  院中小圃午風下  孤蝶飄飄入菜花

    唐寅祠(二十四日)                   鷲野正明
  風流才子逝長嗟  誰弔姑蘇郊外遐  池畔桃花開獨在  芳菲自落夕陽斜

    劉園                       一年 細川貴詳
  幽庭雨後草初萌  雲淡花鮮春興生  崑曲迎賓隨處好  留園美景惹詩情

    寒山寺                      二年 西崎奈央子
  鐘聲一杵寺門中  初見荘厳古梵宮  空海鑑真花下坐  忽懐昔日白雲籠

    北寺塔                      二年 城澤なつ乃
  庭院踏青歩自徐  春陰日午寺鐘傳  桃花舞落門前路  私想故郷心獨舒

    館娃宮                      二年 中島 彩
  幽庭風軟柳枝梳  水月模糊感有餘  故國難忘懷往事  美人含笑意何如

    遊石湖                      二年 荒井 禮
  遠寺風流憶舊時  漁荘無客使人悲  石湖萬里空回首  塔影山容凛逸姿

    訪蘇州                   大学院一年 都築 康子
  山中依稀不見花  風吹雨降薄寒加  連天縦使春如夢  幽草萋萋柳有芽

    過拙政園               筑波大学院生一年 斎藤 聡
  楊柳垂條蓋四隣  池邊花滿鳥聲新  鴛鴦亭内獨閑坐  與舊主人欲樂春







蘇州大学作詩セミナーに参加して               荒井 禮

 今回、ぼくがこのセミナーに参加するのは二度目になりますが、何回参加しても楽しいものです。
 蘇州の人たちは、人当たりが善く、男性は親切で、女性も愛らしい笑みを絶やさずにいます。蘇州には都会にはない素朴さと美しさ、数々の名勝古蹟があり、蘇舜欽、范成大、唐寅等といった文人たちが愛した土地でもあります。

 このセミナーは、主に作詩を目的としていますが、詩心を養うために、彼方此方と名勝をみてまわります。たとえば、張継の「楓橋夜泊」で有名な寒山寺、呉王闔閭にまつわる遺跡が多い虎丘、中国四大美女のひとり西施が呉王夫差と一時の愛を語った館娃宮(跡)などです。庭園にも多く足を運びました。滄浪亭、拙政園、留園での景色は、ぼくたちの眼を洗わんばかりに美しく、又、美しくみせる為の工夫も凝っていて、一日中散歩しても客人を退屈させません。古来、著名な詩人たちが、その詩に詠み込んできたのも分かる気がします。それから、このセミナーでは文人の生家やお墓にも訪れます。前回は帰有光の墓と唐寅の住居跡、今回は范成大の生家と唐寅の墓でした。これらのような場所は、一般の旅行プランには、まず組み込まれることがないはずです。こうした貴重な場所を訪れることができるのは、このセミナーだけの特権だと言うことができるでしょう。
 このセミナーでは前述したように、いろいろな詩跡をみてまわります。ですから、予めそれらの詩跡について知識を蓄えていくと、感慨もひとしおでしょう。しかし、知識が無かったとしても、蘇州大学の学生が処々で、中国語と日本語で解説してくれます。蘇州大学の学生は社交的で、話しかければ、拙い中国語でも聞き取ろうとしてくれるし、聞き取りができなくとも、ゆっくり丁寧に喋ってくれて、会話をしようとしてくれます。彼らの中には、軽く洒落の通じる人もいたので、楽しかったです。
 十日間と短い期間でしたが、名勝の観光だけでなく、既に述べたように、蘇州大学の学生は社交的でよく話してくれるので、自分の中国語の水準を知るいい機会でもあります。又、漢籍が安価で手に入り、漢詩も作れるようになるなど、非常に充実しています。
 またこのようなセミナーがあれば、ぜひ参加したいと思います。