活動報告　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　

　平成１１年９月６日（月）から１１日（土）にかけて、学術国際課・国際交流センター主催の「協定校間の交流セミナー」の一環として「作詩セミナー」を開催することになり、学生１１名を引率して台湾中山大学へ赴いた。
　今回のセミナーは、〈心を表現する漢詩を作る〉ことが目標であったため、物見遊山で終わりがちな名目的なセミナーとは異なり、漢詩を創作する過程と、作品完成後の「創作討論会（合評会）」をとおして、教員・学生間の真の交流が実現できた。　　　　

　参加学生は、中山大学で行われている授業と同じ形態の授業を受け、さらに学外活動で作詩の想を得、徹夜で作詩して合評会に臨んだ。提出作品は中山大学の学生から批評を受け、さらにこちらからは中山大学の学生の作品を批評するという、実力の試されるセミナーであったが、参加学生はよくその期待に応え、予想以上の成果を挙げた。　　　　　　　　　　　　　

　引率の教員、鷲野正明、河内利治も学生と同じメニューに参加し、授業やゼミのありかたを学び、また作品合評会に臨み、大きな収穫を得た。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　

　中山大学は、中国文学系（中国文学科に相当）が中心となり、教員が２〜３人、院生２〜３人、学生１０〜１４人が常に行動を共にして、講義・生活の公私にわたり面倒を見てくれた。宿泊はホテル並の施設（校友会館）が学内にあり、飛行場への送迎などの移動にはすべて大学のバスが利用された。食事は昼・夕は学内のレストランで中華料理のコースが供された。　　　　　　　　　　　　　　　

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　
１日目　９月６日　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　
　　　09：50　　成田発日本アジア航空二七五便にて空路高雄へ。
　　12：40　　高雄着。着後、中山大学の研修施設「校友会館」。
　　　16：　　　中山大学教授陣・学生との座談会（行政大楼５−００７）。
　　　18：　　　晩餐・歓迎会（中信大飯店）　　　　　　　　　　　　校友会館泊
２日目　９月７日
　　　06：30　　柴山登山。                                             
　　　07：30　　遠苑にて朝食。
　　　08：30〜10：30　講義１（西３００５室）。
　　　　　　　 中山大学副教授　劉昭明「古典詩欣賞：東坡西湖詩二首賞析」　　
　　10：30〜12：00　講義２（西３００５室）。
　　　　　　　　　　　中山大学副教授　蔡振念「古詩的平仄用韻」　　　　　　　　　　　　　
　　12：　　　昼食　学生活動中心
　　14：00〜15：00　講義３（西３００５室）。
  　　　　 　　中山大学副教授　簡　錦松「從地心引力到詩的創作」　　　　　　　　　
　　15：00　　夕食　学生活動中心　　　　校友会館泊
３日目　９月８日
　　　07：30　　遠苑にて朝食。
　　　08：30　　台南へ。赤嵌楼、大天后宮、安平古堡を参観
　　　12：　　　台南府城臨時攤販市場にて昼食。
　　　14：　　　台南孔子廟、鄭成功廟、成功大学などを参観。
　　　18：30　　学生活動中心で夕食。
　　　20：　　　宿舎の校友会館で各自作詩・推敲。    校友会館泊
４日目　９月９日
　　　07：30　　遠苑にて朝食。
　　　08:30　　西3005室にて、創作討論。
　　　12：　　　学生活動中心で昼食。
　　　14：　　　自由活動。
　　　18：　　　華王大飯店にて日中交流協会主催による晩餐。　　　　　　校友会館泊
５日目　９月10日
　　　07：　　　遠苑にて朝食。
　　　10：　　　高雄を発って空路台北へ。
　　　10：50　　台北着。着後、龍山寺、中正記念館を参観。
　　　12：30　　康華レストランにて昼食。
　　　14：　　　師範大学見学のあと、書家・杜忠誥氏のアトリエを訪問。氏の案内で、書店、
　　　　　　　文房具店で買い物。
　　　18：30　　悦賓楼レストランにて夕食。　三徳飯店泊。
６日目　９月11日
　　　07：　　　三徳飯店にて朝食。
　　　09：　　　忠烈祠を見学ののち、故宮博物院を参観。
　　　12：30　　東楽レストランにて昼食。（石鍋料理）
　　　14：35　　中正空港にて出国手続き。
　　　16：35　　日本アジア空港206便にて帰国の途に。
　　　20：40　　日本到着。解散。

＊作品の合評会に先立ち、簡錦松教授の作品が配布された。その内の「鷲野君」の詩に対して、
　鷲野が和詩を贈った。草卒のうちに作り、平仄の合っていない箇所もあるが･･･

　　　　和簡教授詩
　　飮酒飮茶都守分　心閑體健近仙君　常説好喝惟一句　感謝丹情傳我神

＊９月10日は、河内助教授の誕生日であり、学生が内々裏に祝賀会を準備した。
　９日、日中交流協会主催の宴会が行われ、その場を借りて誕生祝いを行った。
　寄せ書きのなかで、鷲野は次の一首を書き付けた。

　　　　賀河内利治仁兄生日
　　今朝恰喜溢晴光　呼菜沽魚望故郷　　且勧青州従事盞　君逢四十一重陽
 

簡　錦松　教授の作品

「奉贈日本國士舘大學訪華諸君子」　　　　
　　民國八十八年、西暦一九九九年之九月、日本國士舘大學鷲野、河内二君率同學生十二人來我校參訪、
　　相約各作詩、因戲爲絶句六首。
　　　　校名國士有感
　　國士無雙事已茫　近年那復説堂堂　只聞名義堪爭起　手抉浮雲見太陽

　　　　鷲野教授無論茶酒皆得其樂称歐伊西一
　　未通言語最傳神　堪羨東來鷲野君　縱使飮茶兼飮酒　歐伊西一不須分

　　　　河内教授曾客杭州浙江美院二年、余亦武林舊客、曾賦傷時句、因戲用離合體。
　　知君曾客古杭城　我亦夢中憐水清　藝苑早知鳳毛異　哀時獨有句難平

　　　　海灘逢雨至密林下小坐
　　海日迷濛晩欲煙　偶成小雨亦娟娟　人間難得都無事　坐看潮頭萬里船

　　　　投壺夕
　　投壺女伴色凝脂　樓上盈盈笑語遲　樓外雨餘清冷甚　莫將長箭射相思

　　　　河内教授問教室以臥薪爲名
　　欲濟蒼生未可非　世無其人與誰歸　臥薪久已知滋味　萬里寒雲一雁飛

台湾中山大学　学生の作品

　　　　孔廟　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　張　嘉恵
　　孔居碧瓦漸微塵　雨後初晴物候新　開鼎留碑消退色　伝儒授道百年身

　　　　春暮　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　張　嘉恵
　　通幽曲徑覆春枝　持杖間行飛鳥遅　一抹残霞斜日影　三分余色酔花姿
　　遊原早恐黄昏近　臨水偏愁黒夜垂　将逝東風無限感　疏星点点映清池

　　　　間情　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　林　金燕　　
　　煙波浩渺映斜暉　向晩風涼倦鳥帰　独坐晴灘楊柳下　間観釣客鱒魚肥

　　　　同遊柴山有感　　　　　　　　　　　　　　　　　　許　静文
　　小徑依階緑並肩　蒼蒼碧海水連天　糸繁絮乱東西陌　富士前期願相逢

　　　　有感　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　蔡　イ●　　　　　　　　　●ｲ〔示+韋〕
　　囲坐名城古堡前　笑観飛燕舞翩翩　明朝各自奔南北　待到幾時再続縁

　　　　半月池畔　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　張　成●　　　　　　　　　●イ〔王+韋〕
　　愁雲惨淡半遮天　蕭颯寒風払面前　忽有鯉魚遥処寄　陰霾掃尽戯池辺

　　　　共賞西湾　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　陳　歩青
　　濛濛細雨西湾口　海浪衝撃岸上沙　遠到嘉賓齊共聚　同歓暢飲楽無涯

　　　　與日本友人同遊台南　　　　　　　　　　　　　　　劉　毓柔
　　今朝再訪府城秋　堂廟巍巍草木悠　朋自遠来同伴賞　景雖依旧更間悠

　　　　仲夏　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　彭　東華　　
　　仲夏新知訪古城　沿途談笑顕温情　長吁日短難相聚　不道分離但定盟

　　　　記府城午後雷雨　　　　　　　　　　　　　　　　　廖　上萱
　　満天黒絮籠府城　午後雷雨擾遊情　無傘全遭陰雨沐　任情縦性踏水行

　　　　孔廟且雨寓目　　　　　　　　　　　　　　　　　　蔡　慧崑
　　入徳門中古壁間　游人胡画自翩遷　軽雷若帯廉繊雨　肯洗心頭一畝田

　　　　延平郡王祠即興　　　　　　　　　　　　　　　　　蔡　慧崑
　　　　　　拠河内教授云、日本対鄭成功亦有国姓爺之称呼
　　惆悵南朝事已空　郡王祠外雨随風　由来賜姓焚衣後　併覚瀛台道尚同

　　　　過赤坎楼　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　李　宜学
　　文昌赤坎併衝天　閣迥廊深複道連　休問翻清復明事　淒涼宝剣到吟辺

国士舘大学　教員・学生作品

　　　　初訪中山大学　　　　　　　　　　　　　　　　　鷲野　正明
　　清風緑樹絶塵園　詩友逢迎懇候門　不許西湾俗人到　乃応覓句養吟魂

　　　　夕雨　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　鷲野　正明
　　北窗猶且送炎風　返照入江翻甑中　乖覚雨師憐客困　急傾銀漢斂霞紅

　　　　書懐　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　鷲野　正明
　　十五年前学作詩　欲窮洛浦泛漣●　洞門迷路不行尽　花眼侵来霧満陂　　　　　　●イ・さざなみ〔ｻﾝｽﾞｲ+猗〕

　　　　歎日本時世粧　　鷲野　正明
　　城中男女好争妍　尽日凝粧填路旋　頭髪染成黄又赭　更驚脣白面施玄

　　　　納涼書懐　　　　　　　　　　　　　　　　　　　鷲野　正明
　　連天炎燠竟難当　村路迢迢訪水郷　固想無人清絶地　湾頭已満客乗涼

　　　　九月七日爬柴山　　　　　　　　　　　　　　　　河内　利治
　　半醒起身登柴山　中山国士交流間　良師益友如魚水　遙望清風西子湾

　　　　書懐　　　　　　　　　　　　　　　　　　　大日向　真紀子
　　西子湾岸暮色生　談論心中笑相迎　是洋広大難料得　不佑何時尽友情

　　　　偶成　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　河井　里枝
　　一雨涼生心欲摧　府城忘刻喜徘徊　心中如燃人間熱　無限交情挙祝杯

　　　　夏日雑詩　　　　　　　　　　　　　　　　　　　古城　広恵
　　白雲来往海辺楼　遊子心頭句可求　浦口東西船去尽　詩成迎友笑相留

　　　　赤坎偶成　　　　　　　　　　　　　　　　　　　土屋　明美
　　華国英雄跡尚存　功名成覇万年尊　依然山下野花発　歳月無限一路痕

　　　　偶成　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　野尻　由紀子
　　窗前海面水悠悠　魚躍扁舟釣不休　白雨吹涼消什熱　伴朋忘吾遣詩愁

　　　　夏山　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　平賀　智織
　　清風樹下汲清泉　峡谷仰看翠峭連　石徑遠登人跡少　古人詩味向誰伝

　　　　惜別　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　古谷野　大介
　　今宵酌酒一堂親　師友同和気色新　白雨一過山館夜　贈詩帰去遠行身

　　　　朋乗舟不帰　　　　　　　　　　　　　　　　　　中西　麻理子
　　千里雲天白雨催　送朋岸歩一声雷　孤舟今夜泊何処　豈楽悠悠自適哉

　　　　対聯　　　　　岸上　佳緒里
　　淡粧西施入夢時　朝陽入室昭書帷　

　　　　対聯　　　　　佐藤　美奈子
　　寿山雲湧近雷声　西子凝粧白雨清