※ 「今月の衛星画像」 2025年のテーマは 境界 です ※
 Vol.27
-06     2025年06 月号

衛星画像 リモートセンシング 

タクラマカン砂漠を分ける境界  ホータン川
 

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  今回は,タクラマカン砂漠のほぼ中央を縦断するホータン川(Hotan River、中国語名:和田河)を取り上げる。タクラマカン砂漠を東西に分かつ境界線である。ただ,あと二つの境界線も図2には捉えられている。一つは画像の北にあるティエンシャン山脈とタリム盆地の境界,もうひとつはクンルン山脈とタリム盆地の境界である。これらもいずれ取り上げることにする。
  ホータン川は、中国・新疆ウイグル自治区を流れる内陸河川であり、タクラマカン砂漠を南から北へ貫く数少ない川の一つである。タクラマカン砂漠南縁のオアシスの付近で標高はおよそ1500m,タクラマカン砂漠北端では1000mほどでこの間の比高は500m程度である。
  ホータン川は、図2の南端にみえるクンルン山脈から流れ出る2つの源流、ユルンカシュ川(白玉河)とカラカシュ川(黒玉河)がホータン市付近で合流して形成され、そこからタリム川方面へ向かって約500kmにわたって北流する。源流を含めた全長は1000kmを超えるとされている。 ホータン川の水源は、主にクンルン山脈の氷河や雪解け水に由来しており、年間を通して降水量が非常に少ないこの地域において、夏季の氷河融水が流量を大きく左右する。そのため、この川は季節によって水量が大きく変動し、年によってはタリム川に達することなく、途中で砂漠の中に消失することもある(画像1の春季を参照)。
  ホータン川は、流域のオアシス地域にとって極めて重要な存在であり、ホータン市をはじめとする周辺住民の生活用水や農業用水を支える「命の水」となっている。また、流域は古代シルクロード南道の要衝としても知られ、交易や文化の伝播の重要な経路となっていた。
  さらに、この地域は玉(ぎょく;ヒスイをはじめとする宝石の総称)の産地としても古くから有名で、特にユルンカシュ川で産出される白玉、カラカシュ川で産出される黒玉は「和田玉」として中国国内でも最高級の評価を受けている。  ホータン川は、砂漠の過酷な自然環境の中で貴重な水資源を提供するだけでなく、歴史的・文化的にも重要な役割を果たしてきた河川といえる。
     
                       図1 画像1の位置            .   図2 タクラマカン砂漠  Google Rarth の画像を編集 
   
  
画像1 タクラマカン砂漠を縦断するホータン川流域の夏と春 LANDSAT9  2024年8月22日と2025年5月22日の画像 RGB:432 南北5シーンを接合 
夏の画像(左)では,砂漠を北に向かって縦貫するホータン川が見える(下流域は雲に隠れている)。春の画像では,まだ融雪水が十分でないらしく,北に向かうホータン川が砂漠の中で断流しているように見える。
      
  画像2 ホータン川中流域の夏と春  LANDSAT9  2024年8月22日と2025年5月22日の画像  
 
画像3 ホータン川上流域の夏  SENTINEL2  2024年8月26日のフォールスカラ画像(RGB:843) 
 
 
画像4 ホータン川下流域の夏  SENTINEL2  2024年8月26日のフォールスカラ画像(RGB:843)